革新的な性能を持って生まれたミシュランの新たなるハイエンドロードタイヤ「POWER」シリーズ。本章では1日半のプレゼンテーション中に開催された転がり抵抗テストを含めたインプレッションを紹介したい。

テストで浮かび上がる、POWER COMPETITIONの類稀れなる「転がりの軽さ」

POWERシリーズの核となるCOMPETITION。その特徴は転がり抵抗を極限まで削減していることだが、プレゼンテーションではその効果を可視化するための実走比較テストが行われた。

ミシュランのテストコースでPOWER COMPETITIONのテストライドを行う筆者ミシュランのテストコースでPOWER COMPETITIONのテストライドを行う筆者 photo:Michelin
テストコースで転がり抵抗比較実験の準備を進めるジャーナリストたちテストコースで転がり抵抗比較実験の準備を進めるジャーナリストたち photo:Michelinテストのためにホイールを交換するメカニックテストのためにホイールを交換するメカニック photo:Michelin距離5.5kmで平均18.3秒を短縮したという実験結果が示された距離5.5kmで平均18.3秒を短縮したという実験結果が示された 被験者となるのはプレゼンテーションに同席した各国ジャーナリストたち。内容は1周2.75kmのテストコースを使い、まずは前作であるPRO4を装着したテストバイクで2周し、その後POWER COMPETITIONに履き替えてタイム差を計測するというもの。ペースを一定に保つために、参加者はSTAGESを用いたパワーデータを指標に、計測中は180Wイーブンで走行することが義務付けられた。

結果的には参加した25名中21名がPOWER COMPETITIONを用いて、距離5.5kmで平均18.3秒短縮、平均スピードは28.6km/h→29.4km/hと0.8km/hものスピードアップを果たしたのだ。あくまで簡易的なテストであることに加えて当日は強風に悩まされたものの、転がり抵抗の優位性を証明するに十二分ではないだろうか?

実際の使用感としても、非常に軽やかな走り心地がこのタイヤの特徴だ。現地でのテストではシマノRS-11と廉価版のホイールが用意されていたのだが、まるで軽量ホイールを使っているかのようにゼロ発進が軽く、巡航に乗せてからも舗装したばかりのアスファルト上を走っているようなフィーリングで大変に驚かされた。

特にスピードを求められる緩斜面の登りでは転がりの軽さが顕著に現れ、ダウンヒルでも普段の感覚よりスピードの乗り方が僅かに速い。開発者へのインタビューではコンパウンドの変形を抑えることで抵抗を減らしたと聞いていたが、確かにフィーリングとしては固め。コーナーで深くバンクさせても、タイヤが潰れたりヨレたりする感触はかなり薄く、それでいて接地感が悪いということも無いのだ。この相反する二つの要素が高いレベルでミックスされているので、乗り慣れない段階で筆者は頭に随分と?マークを浮かばせながら走ることになる。

ハイグリップタイヤにありがちなペタッと張り付く感覚も見られないため、連続するコーナーでの切り返しやダンシングでも非常に小気味良い。データによればCOMPETITIONは他の2モデルに比べて特別グリップ力強化を謳っていないが、複合コーナーでバンク角が深くなっても、限界はまだまだ先にあるように感じる。従来のクリンチャータイヤとは性格が異なるため、ハイスピードで走るには少しの慣れが必要だが、まさに「COMPETITION」たるネーミングにふさわしいハイスペックぶりだ。

安定感際立つENDURANCE

COMPETITIONの軽やかさを「新感覚」と表現するならば、耐久性を強化したENDURANCEの乗り味は、ー誤解を恐れずに言うならばー「定番ど真ん中」、だろうか。

未舗装路に突っ込んでも頼もしい限りの安定感未舗装路に突っ込んでも頼もしい限りの安定感
[img_assist|nid=198474|title=荒れた林道を長距離走ってもパンクはもちろん、トレッド上に目立つ切り傷は見られなかった|desc=|link=node|align=right|width=360|height=]耐パンク性を狙ってCOMPETITIONよりもケーシング値を落としているためか、ENDURANCEの走り心地はややどっしりめ。硬めではあるものの、慣れを要するCOMPETITIONと比較すればとても自然なフィーリングで、乗ってすぐ感覚に馴染む素直さがある。

プレゼンテーションで語られたようにCOMPETITIONと比べれば走りの軽やかさは落ちるものの、ライバルメーカーの同ジャンル製品と比べれば、あくまでもレース用たるアドバンテージはある。3層構造のケーシングのためかENDURANCEもコーナリング中の変形は特に感じないが、タイヤの肉厚が増していることで路面の凹凸をいなすため、荒れた舗装のダウンヒルでも高い安心感を得ることができた。路面を捉えている接地感もENDURANCEの方が上回る。

このためかグラベルに突っ込んでも安定感は頼もしい限りで、ガレた林道を長距離走ってもパンクはもちろん、トレッド上に目立つ切り傷は無し。9000円のタイヤで未舗装ツーリングに繰り出すのはどうしても気が引けてしまうが、非常に厳しい環境が再現されていたテストコースを見学できたことや、20000km(テスター200名×1000km)でノーパンクだったというテスト結果は私自身、大きな安心材料となった。

グラベルにも屈しない安定感と耐パンク性を誇りながら、舗装路での素直な扱いと転がり抵抗の軽さを兼ね備えているENDURANCE。日々のトレーニングや通勤でパンクを気にせず軽い走りを楽しみたい方はもちろん、例えば都心から街道経由で林道に行く方にとってはベストなチョイスになるかもしれない。今回のPOWERシリーズの中では、マッチするユーザーが最も多いタイヤがENDURANCEだろう。

ALL SEASON:柔らかなコンパウンドがもたらす強力なグリップ力

ウェットでのブレーキの効き具合は他の2モデルの追随を許さないほどに高く、明らかに制動力が短くなるウェットでのブレーキの効き具合は他の2モデルの追随を許さないほどに高く、明らかに制動力が短くなる ジャーナリスト達に披露されたテストコースでのウェットテストの模様ジャーナリスト達に披露されたテストコースでのウェットテストの模様 (c)MichelinそしてALL SEASON。COMPETITIONとENDURANCEを試してから使用したのだが、このタイヤは他の2モデルとかなり性格が違うことに驚かされた。タイヤそのものの剛性は高い一方コンパウンドが非常に柔らかく、まるで無数の細かい爪を路面に引っ掛けているかのようにグリップ力が高いのだ。

そのグリップ力は、他の2モデルを試した後では「転がり抵抗が重い?」と感じてしまう(カタログ値ではPRO4 GRIP比較で8.6W減)ほど強力で、路面に粘りつくかのよう。ウェットコンディションでも使用してみたところ、特にブレーキの効き具合は他の2モデルの追随を許さないほどに高く、明らかに制動距離が短くなる。

滑り始めの挙動を掴みやすいことで安心感が高く、不意に沁み水が流れる山奥の林道を下った時には大きな味方になったことが印象的だった。もちろんドライ路面と同じようにはいかないが、とりあえず車体を立ててブレーキを当てれば何とかなる!という自信が生まれるのだ。ブレーキがよく効くことで不必要な力を要さず、腕や肩のストレスを軽減してくれるメリットも感じた。

また、コンパウンドの柔らかさゆえ凹凸に対する当たりが丸く、ENDURANCEよりも乗り心地が良かったことも記しておくべきだろう。ハイグリップタイヤは総じて減りが早い印象があるが、荒れた林道やサーキットを含めて500kmを走行してもフラット面は現れておらず、ロングライフにも期待できそうだ。

COMPETITION、ENDURANCE、ALL SEASON 個性際立つPOWER3兄弟

それぞれに全く異なる思想を注ぐことで個性を打ち出した3種類。どれも特色を持ったタイヤだが、バイク本来の性能を引き出す硬めのフィーリングが共通点だ。この部分こそ近い将来のディスクブレーキ化に対応する新たなロードタイヤのスタンダードであり、ハイエンドレーシングタイヤとしての主張なのだろう。

ミシュランのテクノロジーセンターで、メディアに初披露されたPOWERシリーズミシュランのテクノロジーセンターで、メディアに初披露されたPOWERシリーズ
自動車用タイヤにおいて、ミシュランはタイヤに求められる全ての性能をクリアしながら、それぞれをバランスさせる「ミシュラン・トータル・パフォーマンス」という標語を掲げているが、POWERシリーズの本質を支えてるのは正にその部分だと感じる。

従来のPROシリーズと決別し「飛躍的な進化を表した」というPOWERのネーミングは、決して伊達や酔狂によるものではない。プレゼンテーションで披露された圧倒的な数値の数々は、テストを重ねるにつれて自然と私の中に溶け込んでいった。
提供:日直商会、深谷産業 text : 磯部聡 制作:シクロワイアード編集部