伝統のアルミカーボンバック ビギナーに愛されるロングセラーモデル

NEORNEOR
NEORの原型となっているのは、今でもその人気が衰えないアルミ・カーボンハイブリッドフレームの元祖である初代プリンスだ。複雑な形状を描くONDAフォーク、緩やかな曲線で構成されたトップチューブ、そして左右非対称のアシンメトリックデザイン…。ドグマF8のデビューによって新時代を迎えたピナレロだが、長年受け継がれてきた「ピナレロの正統派様式美」は、今だ現役としてこのNEORに息づいているのだ。

NEORというネームがカタログに登場したのは2014年だが、実は2012年からFP UNOとしてデビューを飾っており、今年で丸5年目を迎えるロングセラーモデルであり、それはエントリーモデルとしての素質の良さを表しているとも言えるだろう。

アルミカーボンバックという形態はピナレロが先鞭をつけたものアルミカーボンバックという形態はピナレロが先鞭をつけたもの これまでのピナレロの様式美を纏うNEORこれまでのピナレロの様式美を纏うNEOR 伝統のONDAフロントフォーク伝統のONDAフロントフォーク

アルミニウムのメインフレームにカーボンファイバー製シートステイを組み合わせ、金属の剛性感を保ちながら路面からの振動を和らげるカーボンバック機構は、他の誰でもないピナレロが先鞭をつけたもの。カーボン全盛の現在では少数派となってしまったが、根強いアルミファンが存在することもまた事実であり、NEORはそのDNAを一身に背負う存在だ。

フレーム素材はトリプルバテッドの6061 T6と一般的だが、廉価なアルミモデルであるにも関わらず左右非対称のフォルムを持つ。当然カーボン製のリアバックやフロントフォークも合わせて左右非対称設計であり、ペダリングで発生する左右で不均衡な力の伝わり方を補正するようデザインされているのだ。ただコスト削減を狙ったモデルでないことは、トップチューブに光るUCI公認マークからも推測できる。2016年モデルのNEORはシマノ・ティアグラを装備した完成車販売となり、価格は220,000円(税抜)だ。

インプレッション

「初心者にベストなクセの無い安定した走り」

「初心者にベストなクセの無い安定した走り」「初心者にベストなクセの無い安定した走り」 鈴木:完成車で22万円とコストパフォーマンスで判断すれば安くはありません。でも久しぶりにアルミらしいダイレクト感のある踏み味を堪能できました。シャキッとした加速性能はカーボンバイクとは全く異なるものですね。

三宅:硬さが求められる部分は硬く、柔らかさが求められる部分は柔らかい。2つの素材が破綻することなく全体としての性能をまとめているので、バランス感には秀でているように感じました。とても走り自体は優秀ですし、このあたりはアルミカーボンバックの先駆者たるピナレロらしさを感じました。

鈴木:硬さと車重ゆえに登り性能はカーボンバイクに譲りますが、そこはあえて頑張らずにゆったりとしたケイデンスで走るのが良さそうですね。一方でハンドリングはかなり安定していますから下りが怖くなく、かつ速い。全体の動きがスムーズでナチュラルですから、初心者さんにとっては良いバイクだと思います。

三宅:急勾配は不得意ですが、スピードを維持したままクリアできる短い坂だったら全く問題無いように思います。スピードの掛かりが良いので短期距離クリテリウムレースには向くのでは無いでしょうか?

鈴木:最新のアルミレーシングフレームはとても性能が良くなっていて、それらと比較するとレース機材としては少し部が悪い。でもビギナー用として見れば、クセの無さや安定した走り、ピナレロらしいルックス、堅牢さなど、光る部分はたくさんあると思うんです。ティアグラの性能も十分ですし、ホイールやブレーキをアップグレードしてあげれば、もっと魅力的になる一台だと思いました。

ピナレロ2016年モデル一気乗りインプレッション総括

三宅:今回総合評価で一番良かったのはGAN Sでした。ノーマルのGANよりも性能は良く、かつメタリックの差し色もカッコ良かった。コストパフォーマンス的にもイチオシしたいですね。

「常に先進を行くピナレロらしさは全く薄まっていない」「常に先進を行くピナレロらしさは全く薄まっていない」
「今回の中ではGAN Sがコストパフォーマンス的に優れていると思いました」「今回の中ではGAN Sがコストパフォーマンス的に優れていると思いました」 鈴木:私はGAN RSでしょうか。性能的にはドグマシリーズが図抜けていますが、一般ユーザーとして考えるのであればRS。ドグマとの性能差もそこまで大きくありませんし、GANの下位2モデルよりシャキッと走る。

ドグマのラインナップはK8-Sの登場で幅も広がったドグマのラインナップはK8-Sの登場で幅も広がった 鈴木:周りよりも一歩、二歩先を常に行く先進性は従来からピナレロに息づいている部分ですし、今回試乗したラインナップにもそれは色濃くにじみ出ているように感じました。昨年はドグマのデザインや素材がガラッと変わり、今年はミッドレンジに当たるGANが登場し、さらにドグマもディスクブレーキモデルやK8-Sと幅が広がりました。

トップモデルと同じフォルムで、かつ一般ユーザーの手に届きやすい価格帯のモデルを最初に出したのもピナレロでした。そうしたポジションを変えることなく、新しいモノを継続してリリース出し続けているのはさすがですね。

三宅:そしてトッププロレース、しかもツール・ド・フランスを立て続けに勝っているのは影響力としても大きいですよね。それは性能が優れていることの証明ですし、勝利を狙えるトップチームに供給し続けている面にも企業としての力を感じますね。イタリアンブランドは北米系ブランドに押されてしまっている印象がありますが、ピナレロは全く色褪せません。

鈴木:そしてエントリーモデルであっても豊富なサイズ展開をしていることも、特に我々日本人にとってはありがたいですよね。お客様のバイク選びの場面でも苦労することがまず無いですし。ピナレロ本社の方と話す機会があれば、ぜひその部分を深く聞いてみたいと思います。

長年続いたピナレロの定型を大きく打ち破った新型ドグマラインナップ長年続いたピナレロの定型を大きく打ち破った新型ドグマラインナップ
三宅:カラーリングも同じですよね。ドグマに関しては、限定モデルも含めれば数限りないほど(笑)。他のブランドと比較して値段は高い傾向にありますが、性能以外の面でもユーザーフレンドリーなんです。カラーオーダーシステムも復活しますし、製品の価値はとても高いと感じますね。

鈴木:やっぱりオーナーであるファウスト・ピナレロ氏が熱心なサイクリストであるという部分が大きいのではないでしょうか。本社は大きいですが、そのルーツとなったトレヴィーゾのピナレロショップは今でもこぢんまりとしたお店だったりします。大企業というイメージからは外れますが、その分ユーザーとの距離が近く「良いものを届けたい」という路線に向くのかな。とは個人的に思う部分ですね。新しいラインナップになりましたが、「ピナレロらしさ」は全く薄れていませんし、それが分かったのも今回のインプレッションでの収穫でした。
提供:カワシマサイクルサプライ 編集:シクロワイアード アパレル&ヘルメット協力:rh+