ヘンダーソンに発射されたアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)が下り基調のホームストレートで踏み始める。70km/hオーバーのハイスピードスプリントで、グライペルが片手を挙げた。

スタートライン最前列に並ぶフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)らスタートライン最前列に並ぶフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)ら photo:Kei Tsuji2013年1月20日、ツアー・ダウンアンダー開幕。真夏の南オーストラリア州を舞台にした1週間の闘いが始まった。

初日は、アデレード市内のライミルパークを囲むように設置された1.7kmコースで行なわれるクリテリウムレース。UCIワールドツアー本戦に出場する選手が全員顔を揃えるが、UCI非公認であり、顔見せ的な意味合いが強い。また、この日の成績はUCIワールドツアー本戦の総合成績には反映されない。

1周目から逃げるイェンス・フォイクト(ドイツ、レディオシャック・レオパード)とザッカリ・デンプスター(オーストラリア、UniSAオーストラリア)1周目から逃げるイェンス・フォイクト(ドイツ、レディオシャック・レオパード)とザッカリ・デンプスター(オーストラリア、UniSAオーストラリア) photo:Kei Tsuji概ねフラットな1.7kmコースを30周する51km。日が傾いた午後7時にスタートが切られるとすぐ、ザッカリ・デンプスター(オーストラリア、UniSAオーストラリア)とイェンス・フォイクト(ドイツ、レディオシャック・レオパード)の2人が集団から勢いよく飛び出す。カウンターアタックはかからず、1周目で早速2人の逃げが決まった。

アシストとして集団前方で走る宮澤崇史(サクソ・ティンコフ)アシストとして集団前方で走る宮澤崇史(サクソ・ティンコフ) photo:Kei Tsuji2008年のTOJ(ツアー・オブ・ジャパン)大阪ステージで優勝し、現在ネットアップ・エンドゥーラに所属するデンプスターと、前日のチームプレゼンテーションで地元オージー選手以上の大きな声援を受けていた41歳のフォイクト。2人は協力して1分近いリードを築くことに成功する。

5周毎に設定された合計4つのスプリントポイントは、いずれもデンプスターが先頭で通過。デンプスターは合計2000ドルの賞金を荒稼ぎすることに成功する。レース後フォイクトは「スプリントは狙わなかった。地元の若者の見せ場を奪う必要なんてないだろ?」と語っている。

メイン集団を最も長くコントロールしたのはグライペル擁するロット・ベリソルで、オリヴィエ・カイセン(ベルギー、ロット・ベリソル)が集団先頭で逃げとのタイム差に目を配らせる。ここにアルゴス・シマノやガーミン・シャープ、FDJのアシストが合流。レース後半に入って徐々にスピードを上げるメイン集団は、4つめのスプリントポイント通過後、ゴールまで8周を残して先頭2名を捉えた。

観客が詰めかけたアデレード市街地サーキット観客が詰めかけたアデレード市街地サーキット photo:Kei Tsujiレース終盤に向けてスピードを上げて行くレース終盤に向けてスピードを上げて行く photo:Kei Tsuji
観客が詰めかけたアデレード市街地サーキット観客が詰めかけたアデレード市街地サーキット photo:Kei Tsuji

集団前方に選手を揃えるロット・ベリソル集団前方に選手を揃えるロット・ベリソル photo:Kei Tsujiここからレースは毎周回ラップタイムを更新しながら進行。勝負に向け、スプリンターチームはメンバーを揃えて集団前方に上がる。「残り3周からチームとして前に上がる予定が、7周を切った辺りでチームメイトが前に上がり始めた」という宮澤崇史も集団先頭に姿を見せる。

ゴールまで2周を切ると、更にスプリンターチームによる位置取りが激化。主導権を握ったのはロット・ベリソルで、アダム・ハンセン(オーストラリア、ロット・ベリソル)が強力な引きを見せて最終周回へ。

アダム・ハンセン(オーストラリア、ロット・ベリソル)が集団を率いて最終周回へアダム・ハンセン(オーストラリア、ロット・ベリソル)が集団を率いて最終周回へ photo:Kei Tsuji昨年6位のジョナサン・キャントウェル(オーストラリア、サクソ・ティンコフ)を強力に引き上げた宮澤は、残り1周半で後退。エーススプリンターにあとを託す。「ジョナサンを連れてポジションを上げ、グライペルの後ろに着いた。グライペルの後ろにジョナサンが入るのを確認してから離脱した」。

しかしキャントウェルは最終周回の位置取りでポジションを落としてしまう。先頭ではハンセンに代わってユルゲン・ルーランズ(ベルギー)が発進。スカイプロサイクリングやオリカ・グリーンエッジの追随を許さず、ロット・ベリソルが先頭のポジションを守ったまま最終コーナーへと向かう。

ゴスを振り切って先頭で突き進むアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)ゴスを振り切って先頭で突き進むアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル) photo:Kei Tsujiグライペルの発射台は、2010年大会で優勝しているグレゴリー・ヘンダーソン(ニュージーランド)。ラスト200mでヘンダーソンが最高速まで上げ、下り基調のホームストレートでグライペルを発射した。

大きくラインを変えたグライペルにはマシュー・ゴス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)が食らいついたが、トップスピードに乗ったジャーマンスプリンターの前には出られない。発射台を務めたヘンダーソンが先に両手を挙げ、グライペルが続いて筋肉質の片手を振り上げた。

マシュー・ゴス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)を振り切って勝利したアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)マシュー・ゴス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)を振り切って勝利したアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル) photo:Kei Tsuji2年連続のクラシック勝利。その秘訣をグライペルは「去年と同じメンバーで闘ったこと」と話す。「この周回コースで集団の先頭をキープすることがどれだけハードなことなのかを心得ている。逃げを捕まえるという責任を負いながら、去年と同じプランに沿って走った」。

2位のゴスによると、スプリント時の最高速度は75km/h。最終周回のラップタイムは1分45秒。単純計算で平均スピードは58.3km/hだ。

平坦ステージでは向かうところ敵無しの感があるグライペル。仕事を終えて集団から遅れてゴールした宮澤も「チームメイトが揃っていたとは言え、あのスピードで脚を残しているのは調子の良い証拠」と証言する。2位のゴスとともに、翌々日から始まるダウンアンダー本戦でも一暴れ、二暴れしてくれるに違いない。

ボアーロとゴール後に話す宮澤崇史(日本、サクソ・ティンコフ)ボアーロとゴール後に話す宮澤崇史(日本、サクソ・ティンコフ) photo:Kei Tsuji豪快なスプリントで勝利を収めたアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)豪快なスプリントで勝利を収めたアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル) photo:Kei Tsuji

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ツアー・ダウンアンダー2013クラシック結果
1位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)          1h04'01"
2位 マシュー・ゴス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
3位 グレゴリー・ヘンダーソン(ニュージーランド、ロット・ベリソル)
4位 ボイ・ファンポッペル(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM)
5位 エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、スカイプロサイクリング) +02"
6位 ダヴィデ・チモライ(イタリア、ランプレ・メリダ)
7位 スティール・ヴォンホフ(オーストラリア、ガーミン・シャープ)
8位 ホセホアキン・ロハス(スペイン、モビスター)
9位 アンソニー・ジャコッポ(オーストラリア、UniSAオーストラリア)
10位 ヤウヘニ・フタロヴィッチ(ベラルーシ、アージェードゥーゼル)
111位 宮澤崇史(日本、サクソ・ティンコフ)                +25"

text&photo:Kei Tsuji in Adelaide, Australia
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