夏季オリンピックが開催された2012年。ロンドンで行なわれた4年に一度の祭典から、ブエルタ・ア・エスパーニャ、ロード世界選手権、イル・ロンバルディア、そしてUCIワールドツアー最終戦のツアー・オブ・北京まで、シーズン終盤に向けた動きをプレイバック!

8月

ウランをスプリントで下したアレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン)ウランをスプリントで下したアレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン) photo:Cor Vosロンドンオリンピックでは、“現役最後のレース”と銘打って出場したアレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)がロードレースで金メダルを獲得。逃げた別府史之(オリカ・グリーンエッジ)が22位、新城幸也(ユーロップカー)が48位という結果に。女子ロードレースはマリアンヌ・フォス(オランダ)が優勝。

ロンドンオリンピックのタイムトライアルで優勝したブラドレー・ウィギンズ(イギリス)ロンドンオリンピックのタイムトライアルで優勝したブラドレー・ウィギンズ(イギリス) photo:Cor Vosツール・ド・フランス覇者のブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)は、タイムトライアルで開催国イギリスに金メダルをもたらすことに成功。7月のマイヨジョーヌと8月の金メダルを各と臆したウィギンズには、2013年の英国王室叙勲式で「ナイト」に叙任され、「サー」の称号を与えられることが決まっている。

登りスプリントを制したモレーノ・モゼール(イタリア、リクイガス・キャノンデール)登りスプリントを制したモレーノ・モゼール(イタリア、リクイガス・キャノンデール) photo:Riccardo Scanferlaイギリスの快進撃はオリンピックのトラックレースでも継続。チームスプリントと団体追い抜きでは世界記録で優勝。10種目の中で、イギリスは7つの金メダルを獲得。銀と銅を合わせて実に9つのメダルを獲得した。

オリンピックMTBのタイトルはヤロスラフ・クルハヴィ(チェコ)の手に渡り、山本幸平(スペシャライズド)は27位。片山梨絵(スペシャライズド)は女子MTBレース20位。

ツールと同時期に行なわれたツール・ド・ポローニュでは、フランチェスコ・モゼールの甥にあたる21歳のモレーノ・モゼールがステージ2勝の活躍を見せ、ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ)との接戦を制して総合優勝している。

別府史之はポローニュに続いてエネコ・ツアーにも出場。リーダージャージ擁するチームの一員として奮闘したものの、名物「ミュール・カペルミュール」を3回通過する難コースで総合1位のスヴェイン・タフト(カナダ、オリカ・グリーンエッジ)は脱落。アレッサンドロ・バッラン(イタリア、BMCレーシングチーム)と逃げたラース・ボーム(オランダ、ラボバンク)が逆転総合優勝に輝いた。

クラシカ・サンセバスティアンはルイスレオン・サンチェス(スペイン、ラボバンク)、ヴァッテンフォール・サイクラシックスはアルノー・デマール(フランス、FDJ・ビッグマット)がそれぞれ優勝。GPウエストフランス・プルエーでは宮澤崇史(サクソバンク・ティンコフバンク)が逃げに乗るも吸収。エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、チームスカイ)が優勝を飾り、新城幸也が27位に。

9月

メイン集団を牽引する土井雪広(アルゴス・シマノ)メイン集団を牽引する土井雪広(アルゴス・シマノ) photo:Kei Tsujiグランツール最終戦ブエルタ・ア・エスパーニャには土井雪広(アルゴス・シマノ)が2年連続出場。アシストとして連日集団を牽引し、エーススプリンターであるジョン・デゲンコルブ(ドイツ)のステージ5勝を支えた。

第17ステージで劇的な勝利を収めたアルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・ティンコフバンク)第17ステージで劇的な勝利を収めたアルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・ティンコフバンク) photo:Kei Tsuji総合争いは、近年まれに見る厳しい山岳ステージで白熱。ドーピングによる出場停止処分から復帰したばかりのアルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・ティンコフバンク)やアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)が果敢に攻めたが、ステージ3勝のホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)がリードして進んで行く。

独走でゴールに飛び込むフィリップ・ジルベール(ベルギー)独走でゴールに飛び込むフィリップ・ジルベール(ベルギー) photo:Kei Tsuji大きくレースが動いたのは、誰もが油断した第17ステージ。2級山岳フエンテ・デの頂上ゴールで、総合逆転を懸けたコンタドールが勇敢なるアタック。3連続山岳ステージと休息日を終えたロドリゲスに反応する力は残っておらず、マイヨロホはコンタドールの手に。超級山岳ボラデルムンドにゴールする最終日前日の難関山岳ステージではなく、中級山岳ステージでブエルタの全てが決まった。

雨のゴールスプリントを制した西谷泰治(愛三工業レーシング)雨のゴールスプリントを制した西谷泰治(愛三工業レーシング) photo : Sonoko Tanakaコンタドールは2008年に続く2度目のブエルタ制覇。ロード世界選手権を控えたこのブエルタで、フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)はステージ2勝を飾ることに成功している。

オランダ・リンブルフで開催されたロード世界選手権エリート男子ロードレースには、2010年大会で9位に入った新城幸也(ユーロップカー)、別府史之(オリカ・グリーンエッジ)、宮澤崇史(サクソバンク・ティンコフバンク)、土井雪広(アルゴス・シマノ)、福島晋一(トレンガヌ・プロサイクリング)、畑中勇介(シマノレーシング)が出場した。

下馬評通り、隣国ベルギーがライバル国の攻撃を封じ込め、最終周回のカウベルグでジルベールがアタック。強烈な加速で独走に持ち込んだジルベールが、キャリア初のアルカンシェルを手にした。日本チームは落車やメカトラなど、相次ぐトラブルで失速。宮澤崇史の54位が最高位だった。

トニ・マルティン(ドイツ、オメガファーマ・クイックステップ)は個人タイムトライアルで連覇を達成。18年ぶりの開催となったチームタイムトライアルはオメガファーマ・クイックステップが制している。女子ロードレースでは、フォスがロンドンオリンピックに続く金メダルを獲得。

一方、中国のツアー・オブ・チャイナ1では、西谷泰治(愛三工業レーシングチーム)がステージ優勝をマーク。同時にポイント賞ジャージを着用した。愛三工業レーシングチームは2日間の休息日を経て開催されたツアー・オブ・チャイナ2にも出場したが、緊迫する日中関係と中国全土で起こっている反日デモを受け、オーガナイザーからレース退去を言い渡されるという事態が発生している。

10月

雨のレッコにゴールするホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)雨のレッコにゴールするホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) photo:Riccardo Scanferla「落ち葉のクラシック」ことイル・ロンバルディア(ジロ・ディ・ロンバルディア)と言えばシーズン最終レース。しかし。中国レースの台頭により、名物イタリアレースの開催時期は10月から9月に移行した。

大雨に見舞われたイル・ロンバルディアには、アルカンシェルを着るジルベールが出場したが、新世界チャンピオンは濡れた下りで落車してリタイア。最後の登りで仕掛けたロドリゲスが独走勝利を掴んだ。

独走でゴールするトニ・マルティン(ドイツ、オメガファーマ・クイックステップ)独走でゴールするトニ・マルティン(ドイツ、オメガファーマ・クイックステップ) photo:Riccardo Scanferlaティレーノ〜アドリアティコ総合6位(ステージ1勝)、ブエルタ・アル・パイスバスコ総合2位(ステージ2勝)、フレーシュ・ワロンヌ優勝、ジロ・デ・イタリア総合2位(ステージ2勝)、ブエルタ・ア・エスパーニャ総合3位(ステージ3勝)という好成績を残してきたロドリゲス。ロンバルディアの勝利により、UCIワールドツアーランキング首位の座を確定させた。

ランス・アームストロング(アメリカ、レディオシャック)ランス・アームストロング(アメリカ、レディオシャック) photo:Kei Tsujiしかししかし、所属するカチューシャはUCIワールドツアーライセンス更新を逃してしまう。カチューシャはCAS(スポーツ仲裁裁判所)に提訴。事態は長期戦の様相を呈している。

イル・ロンバルディアに代わってシーズン最終戦となったツアー・オブ・北京は、尖閣問題の影響により日本人選手を除外して開催。山岳ステージで独走勝利したマルティンが大会連覇を果たしている。

10月に最もロードレース界を揺るがせたのは、ランス・アームストロング(アメリカ)のツール7連覇のタイトル剥奪と、永久追放処分だろう。10月10日にUSADA(アメリカアンチドーピング機関)が発表した報告書によって明るみになった過去のUSポスタル内のドーピングスキャンダル。元チームメイトのジョージ・ヒンカピー(アメリカ)らが過去のドーピングを告白。10月22にはUCI(国際自転車競技連合)が、USADAがアームストロングに対して下したタイトル剥奪と永久追放処分を認めると発表した。

長年プロチームをサポートしていたオランダのラボバンク社がスポンサーから撤退するなど、ツール7連覇というレジェンドの失墜の影響は甚大。ラボバンクはブランコ・プロサイクリングチームとして2013年を闘うことが決まっている。

10月には多くの日本人選手の海外チームへの移籍が発表された。増田成幸がキャノンデール・プロサイクリング、佐野淳哉がヴィーニファンティーニ、西薗良太がチャンピオンシステム、竹之内悠がコルバ・スペラーノハム、そして全日本チャンピオンの萩原麻由子がウィグル・ホンダに移籍。2013年も日本人選手の活躍を中心に、海外ロードレースから目が離せない!

text:Kei Tsuji

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