スポーツマネージメント会社のVelofuturが、このほど鹿屋体育大学自転車競技部と包括的なマネージメント契約を結んだ。同大3年生の黒枝士揮と山本元喜は、契約選手としてサポートを受ける。

左より黒川剛監督、山本元喜、黒枝士揮、ホアン・リポーイ氏、田代修一氏左より黒川剛監督、山本元喜、黒枝士揮、ホアン・リポーイ氏、田代修一氏 photo:Hideaki TAKAGI
国内の大学では実力・実績ともにナンバーワンの国立鹿屋体育大学自転車競技部が、このほどスペインに本社をもつVelofutur(ヴェロフトゥール)と包括的なマネージメント契約を結んだ。在学4年間での選手育成やレースなどの機会の提供はもとより、卒業後の進路としてプロチームとの橋渡しまで行うもの。

和やかな雰囲気で進められた発表会和やかな雰囲気で進められた発表会 photo:Hideaki TAKAGIライバルだが仲もいい2人ライバルだが仲もいい2人 photo:Hideaki TAKAGI2009年インターハイ・ロード 山本元喜が優勝、黒枝士揮は3位に。榊原健一(左端)は現在中京大&チームNIPPO2009年インターハイ・ロード 山本元喜が優勝、黒枝士揮は3位に。榊原健一(左端)は現在中京大&チームNIPPO photo:Hideaki TAKAGI2010年ツール・ド・北海道第3ステージ優勝の山本元喜。大学生で初2010年ツール・ド・北海道第3ステージ優勝の山本元喜。大学生で初 photo:Hideaki TAKAGI2012年ツール・ド・北海道第1ステージを制した黒枝士揮2012年ツール・ド・北海道第1ステージを制した黒枝士揮 photo:Hideaki.TAKAGI12月8日(土)、東京都文京区にある鹿屋体育大学東京サテライトキャンパスにて、両者提携の発表会が行われた。
Velofutur社からはホアン・リポーイ アジアエリアマネージャー、田代修一調査員が出席。鹿屋体育大学からは黒川剛監督、3年生の黒枝士揮、山本元喜の2選手が出席した。

Velofutur社とは

Velofutur社は本社をスペインに置く1999年創業のスポーツマネージメント会社。プロチームの運営サポート、プロサイクリスト代理人、マネージメントをおもに行う。具体的にはチームに対しての技術顧問、スペインあるいは世界でのレーススケジュール管理など。個人へはプロチームとの契約交渉代行、技術アドバイス、広報活動などを年間を通じてサポートする。

チームではエウスカルテル、モビスター、レディオシャックなどにチームと選手に関わっている。2013年シーズンにエウスカルテルにスペイン以外の選手が加入するが、同チームがVelofutur所属の6人と契約したことによるものだ。

鹿屋体育大学について

1995年創部の18年目を迎えるチーム。「日本の自転車競技をメジャーにするために、創造し私欲を捨てて社会貢献できる、本物の人材育成」を理念として活動を続けている。多くの学連所属校は4年間で結果を出すことを優先する中、同大はその後の進路も見据えた育成をしていることが大きな特徴。進路にはプロ選手、指導者、研究者、自転車業界など多岐に渡るが、その誰もが最前線で活躍を続けていることがその証だ。

ロンドンオリンピックには前田佳代乃が、そしてOGの萩原麻由子も出場した。いくつかの学連記録、日本記録を更新し、UCIレースではステージ優勝を挙げ、その行動と活躍の範囲は大学の枠を超えるもの。だがただひとつ、インカレの男子総合優勝だけはまだ1回も達成していない。

共同活動について

「若いサイクリストの活躍の場を世界に求める」ため、両者は包括的なマネージメント契約を締結した。同社にとってチームごとの包括的な契約は世界初の事例。今まではチーム活動の一部分や個人単位での契約だった。

同大にとっても4年間と限られた期間での人材育成とその後の進路についての未確定要素が多く、両者の理念が一致して今回の契約に至った。またプロデビューするための契約交渉まで行うのが活動内容だが、いっぽうで「代理人はほかからも選べる内容」(黒川監督)という。

リクルート活動を始める2選手

さらに卒業後の進路、特にプロチーム入りを希望する2選手とも契約した。現在3年生の黒枝士揮と山本元喜だ。2人とも卒業後の目標はプロ選手。黒枝は「海外で活躍している日本人選手を尊敬している。周りに日本人がいない環境で走りたい」と意欲的で、夢はグランツールに出て「ステージ優勝すること」。

山本は「スピード持久力を強化して逃げる選手として評価してもらえたら」と語り、グランツールでは「日本人選手で初めての事をしたい」と夢を語る。また2人ともに高校2年の弟がおり、それぞれが「兄弟で将来同じレースを走れたら」と期待もかける。

この2選手は高校時代からのライバルで、それぞれインターハイ、全日本選手権で優勝しているがいずれも2人で競り合っている。黒枝は2012年にツール・ド・北海道第1ステージ優勝そしてUCIレースとして初めての学生でのリーダージャージ着用。さらには対極にあるといえるトラックのケイリン(国体)で優勝とスピードに長ける選手。山本は2010年ツール・ド・北海道第3ステージ優勝(学生初)、2011年ユニバーシアード大会ロード銀メダル(世界的なロードレースでの日本人初メダル)など、アタックとスピードが武器の選手。

黒川監督は「ヨーロッパで走りたいと考える選手はぜひ大学に入ってほしい。4年間大学で走ることがプラスになることを知って欲しい」と説く。ただし大学としては「学連に育ててもらったチーム。インカレは大事なレースでこれからも、いまだ成し遂げていない男子総合優勝を目指したい」と語り、大学としての世界への挑戦はその後との考えを示した。

現役2選手がチームNIPPOへ

さらに発表されたのが現在2年生の石橋学と徳田鍛造のチームNIPPOへの加入だ。この2選手は通年でコンチネンタル登録し、おもに春季と夏季の長期休業期間にヨーロッパへ行き、レースとトレーニング活動する。「NIPPOでコンチネンタル登録することによって、鹿屋として出られないレースがあるかもしれないが、2人の将来のほうが重要」と黒川監督が判断した結果だ。

photo&text:高木秀彰