クォータのラインナップ最高峰につけるフラッグシップ、KOMが2013年モデルでフルモデルチェンジを施した。その名に恥じない765gというフレーム重量を纏い、さらなる進化を遂げたKOM AIR(ケーオーエム エアー)の実力をテストする。

クォータ KOM AIRクォータ KOM AIR (c)MakotoAYANO/cyclowired.jp

インターマックスが正規代理店を務めたことで日本国内での認知度も高まったクォータは、2001年のミラノショーにおいてファーストモデルが発表された比較的歴史の浅いイタリアンブランド。しかしながら確かなカーボンに関する技術力やプロライダーへの供給も含め、今や世界的に大きなネームバリューを誇るに至った。

そんなクォータのラインナップにおいて、長きに渡りフラッグシップの座を維持し続けているのがKOMだ。2006年に第1世代のKOMが900g切りの超軽量マシンとしてデビューすると、2009年には第2世代に進化。そして剛性と運動性能のバランスを見直した結果、2011年からはフレーム単体重量940gのKOM EVOへと発展した。

トップ1-1/8、ボトム1-1/2へとボリュームアップしたヘッドトップ1-1/8、ボトム1-1/2へとボリュームアップしたヘッド シンプルかつ機能的なルックスにマットブラックの塗装が映えるシンプルかつ機能的なルックスにマットブラックの塗装が映える フロントフォークも刷新された。ストレート形状でダイレクトなハンドリングを確保するフロントフォークも刷新された。ストレート形状でダイレクトなハンドリングを確保する


そして2013年、KOMは更なる進化を遂げ生まれ変わった。それが今回のインプレッション車両であるKOM AIRだ。第4世代となるこのマシン最大のトピックスは前作と比較して200g近い軽量化を達成したこと。下から2番目のXSサイズで765gという重量を纏い、KOMは再び超軽量バイクとしての地位を取り戻した。

しかしKOM AIRは単に軽さやヒルクライム性能を追い求めただけの山岳用バイクではない。平地の高速巡航からスプリントにまで対応させるために安全・安定マージンをキープした上で軽量化が図られているが、それを可能とするのはクォータの持つテクノロジーに他ならない。

リアステーはより扁平形状となり、振動吸収性と路面追従性に貢献するリアステーはより扁平形状となり、振動吸収性と路面追従性に貢献する 大口径ヘッドチューブから繋がる角断面のトップ・ダウンチューブの造形大口径ヘッドチューブから繋がる角断面のトップ・ダウンチューブの造形


丸みを帯びた四角断面のダウンチューブ、ケーブルのインナールーティーンも無理が無い丸みを帯びた四角断面のダウンチューブ、ケーブルのインナールーティーンも無理が無い BB周辺の造形も前作と大きく異なる部分。シンプルな形状とし軽量化に貢献BB周辺の造形も前作と大きく異なる部分。シンプルな形状とし軽量化に貢献


空気のような軽さを意図して名付けられたKOM AIR。その軽さはカーボンのレイアップを改善したことに導き出された。丸みを帯びた角断面の各チューブなど一見するとあまり変化が無いように思えるが、フレームは細部に至るまで細やかな変更が加えられた。

従来のKOMシリーズの特徴だったBB周辺の複雑な造形は排され、ボリューム感がありながらも落ち着いたフォルムに。これはPF30システムを採用したことで強度増とし、シンプルなフォルムとすることで軽量化を求めたものだ。そこから続くチェーンステーも角型断面を採用した前モデルを踏襲しつつ、やや丸みを帯びた形状に変化した。路面追従性と快適性を向上させるためのチェーンステーの左右非対称の形状・積層は前作から引き継いでいる。

リアステーのシートチューブ取り付け位置はやや下げられ、リア三角を小さくすることで強度を増したリアステーのシートチューブ取り付け位置はやや下げられ、リア三角を小さくすることで強度を増した プレスフィットを採用したボトムブラケットプレスフィットを採用したボトムブラケット


扁平な三角形断面を用いていたシートステー上部は角の無い完全な扁平断面とし、27.2mm経にダウンサイズしたシートポストと合わせて柔軟性を高めた。さらにシートチューブへの接続位置をやや下げることでリア三角を小さくすることで強化を果たしている。ヘッドはトップ1-1/8”、ボトム1-1/2”へとボリュームアップし、それに伴ってフロントフォークも刷新された。

ワイヤー類のフルインナー通しもKOM EVOより引き継がれる部分。デビュー当時のEVOは外通しのワイヤーを採用していたが、2012年モデルからはインナールーティーンに。これからも分かるように、クォータは継続モデルでも積極的に細やかなブラッシュアップを行うブランドだ。しかもそのこだわりはハイエンドに限らず、ケベルのようなミドルグレードでも行われてきた。

扁平形状のシートステーに対し、チェーンステーは角型断面でねじり剛性を追求扁平形状のシートステーに対し、チェーンステーは角型断面でねじり剛性を追求 27.2mm径とし、前作に比べダウンサイズしたシートポスト。乗り心地の良さを求めたものだ27.2mm径とし、前作に比べダウンサイズしたシートポスト。乗り心地の良さを求めたものだ BBシェル下側にもボリュームを持たせることで強度を増す造りBBシェル下側にもボリュームを持たせることで強度を増す造り


クォータがサポート行なってきたアージェードゥーゼルは、前作のKOM EVOをステージレースから石畳のクラシックレースまで採用してきた。2012年のツール・ド・フランス以降に本格供給が行われたAIRだが、前作と同じくオールラウンドな性能は引き継いでいることだろう。

幾多の大幅なモデルチェンジ、マイナーチェンジを重ねながらも常にクォータのトップレンジに輝き続けるKOM。その第4世代としてデビューしたKOM AIRの実力はどのようなものだろうか。テストライダー両氏が検証する。





―インプレッション

「振動吸収性も下り性能も備え、その中で輝くヒルクライム能力がある」藤野智一(なるしまフレンド)

手にとって軽く、実際に乗ってみても軽さが際立つバイクです。しかしただ単に軽いだけのフレームでは無いことは、実戦で使われてきた前モデルのKOM EVOからも判断できるところ。前作の良いところどりをした自転車なのかなと感じます。

「振動吸収性も下り性能も備え、その中で輝くヒルクライム能力がある」藤野智一(なるしまフレンド)「振動吸収性も下り性能も備え、その中で輝くヒルクライム能力がある」藤野智一(なるしまフレンド) 軽量フレームであってピュアスプリンターの好みにピッタリとくる性格ではありません。しかしレースの世界ではスプリントが必要な場面も絶対ありますし、山岳コースでも最後まで集団で行けばスプリントが必要です。このバイクはそんな場面でもしっかりと対応出来るだけの剛性感が与えられていますね。さらに下り性能も十分。KOMという名でありながらオールラウンドに走れるバイクという第一印象でした。

低速からの瞬発的な加速が非常に軽いですね。特に重たいギアでトルクを掛けていくより、比較的軽めのギアを使って踏み出した際にはスパスパッと軽快にスピードが乗っていきます。ペダリングに関してはトルクを長く掛けるよりもピンポイントで踏んでいくとより良いかと思います。

具体的に説明しましょう。ペダルが上死点からダウンチューブのあたり(時計で言うと0~2時)付近でグッと力を掛け、ダウンチューブから水平位置(2~3時)辺りでその力を継続して踏み込む。そんなペダリングをした時にこのバイクは一番進むように設計されていると感じました。上りに関しても同様で、テンポ良く車体を振って行けば重たいギアでも軽いギアでもシャキシャキとバイクが進んでくれます。軽いからといって剛性不足は感じません。

軽く、硬く、チューブの薄い自転車は振動吸収性が良くない事が多々あるのですが、乗り心地が良かったことも印象的でした。チューブラータイヤが装着されていたためそう感じたのかと思ったのですが、クリンチャーホイールに変えてもさほど大きな違いはありません。必要な情報のみをライダーに伝え、無駄な振動はカットしてくれます。ただ剛性は高いので、踏み込んだ際の反発は感じました。

ダウンヒルではねじれるかと思いきや、芯がしっかりとしているため不安感もありませんね。フレーム1kgぐらいの自転車であればより安心感はありますが、問題にはならないレベルでしょう。テスト中、道幅の細い下りコーナーの内側に歩いている人がいてラインを振ったところ今度は対向車が来ました。その時に速い切り返しをしたのですが、ラインがブレて怖い思いをすること無くちゃんと思ったとおりにバイクが付いてきてくれました。

オールラウンドに使える性能を持っています。その中でフレームの重量や性格を活かした走りをすれば良いのではないでしょうか。やはり得意なシチュエーションはヒルクライム。長い上りや、サーキットでの耐久レースのような何回も短い上りが連続する場面において特にアドバンテージが得られるでしょう。


「上りを誰よりも速く駆け抜けたい方に。剛性感を崩さないアッセンブルが良い」三上和志(サイクルハウスMIKAMI)

King Of Moutainと謳うだけあって、上りを誰よりも速く駆け抜けたい!そんなライダーにオススメしたいバイクだと感じました。ペダリングパワーを溜めてからスピードに繋がるような感じは皆無で、パワーをかけたその瞬間からダイレクトな加速を見せてくれます。そういった気持ちのよい加速感を求めて作られたバイクなのだなと感じました。それが760gという車重で実現されているところに技術の進歩を感じました。

全体的に剛性感のあるバイクですが、特にヘッド周りからBB、チェーンステーといった部分にパワー感を感じます。チェーンステーの造形を見ると細くして力を逃がそうという意匠は感じられませんね。ガッチリとパワーを受け止めてくれるので、どんな踏み方をしても縦にも横にもブレがありません。ただ踏んでいけるパワーをどこまで持続できるかはライダー次第です。性能を発揮させるならば身体を鍛えて乗ったほうが良いかと(笑)。

「上りを誰よりも速く駆け抜けたい方に。剛性感を崩さないアッセンブルが良い」三上和志(サイクルハウスMIKAMI)「上りを誰よりも速く駆け抜けたい方に。剛性感を崩さないアッセンブルが良い」三上和志(サイクルハウスMIKAMI)

レーサーならばトップレベルのホビーライダーからプロレーサーに向いていますね。一方で平地での加速感やコーナリングなど全てにおいてシャープさがあるため、ロードバイクの面白さや軽快感を味わいたい方にもオススメ。乗る時間が短くとも、パワー系のライディングをする方、したい方には良いかと思います。下りでも少しも遅れること無く操作に反応してくれますので、狙ったラインにバイクを通していくような、ダイレクトなハンドリングを求めるライダーにはぜひとも乗って頂きたいですね。

アルミフレームのような低速でもゴツゴツくるような硬さはありませんが、たわんで衝撃や力を逃してくれるような感覚はありませんでした。カーボン自体の持ち味で路面の凹凸や微振動は吸収しますが、マンホールを踏んだ時の衝撃などはダイレクトに伝わってきます。そういった意味でもプロ向けの味付けに感じられました。

フレームの造りやルックス的には目立った部分こそ無く、個人的にはもう少し尖っていても良いかなと思いますが、レーシングバイクとしての完成度は高いですね。

ホイールを入れ替えてテストしてみましたが、硬いホイールを入れフレームの持ち味を活かす組み合わせをしてあげたいですね。テストバイクに装着されていたのはライトウェイトですが、相性は非常に良いと感じます。ヒルクライムに絞り、メカニカルコンポを使って軽量バイクとして組む場合にも強度や剛性感を崩さないアッセンブルが良いでしょう。

クォータ KOM AIRクォータ KOM AIR (c)MakotoAYANO/cyclowired.jp

クォータ KOM AIR
フレーム:カーボンモノコック、Di2対応
サイズ:XXS、XS、S、M、L
カラー:マットブラック
ヘッドセット:トップ1-1/8”、ボトム1-1/2”
フレーム重量:765g
フォーク重量:300g
フレームセット価格:340,000円(税込)
付属品:カーボンシートピラー、ヘッドパーツ





インプレライダーのプロフィール

藤野智一藤野智一 藤野智一(なるしまフレンド)

92年のバルセロナオリンピックロードレースでの21位を皮切りに、94・97年にツール・ド・おきなわ優勝、98、99年は2年連続で全日本ロードチャンピオンとなるなど輝かしい戦歴を持つ。02年に引退してからはチームブリヂストン・アンカーで若手育成に取り組み、11年までは同チームの監督を務めた。2012年より出身チームのなるしまフレンドに勤務する。

なるしまフレンド


 三上 和志 三上 和志 三上和志(サイクルハウスMIKAMI)

埼玉県飯能市にある「サイクルハウスMIKAMI」店主。MTBクロスカントリー全日本シリーズ大会で活躍した経験を生かし、MTBに関してはハード・ソフトともに造詣が深い。地元でのスクール活動も積極的に展開。ロードレースやシクロクロスレースにも参戦し、ジャンルを問わず自転車遊びを追求している。使用目的に合った車種の選択や適正サイズに関するアドバイスなど、特に実走派のライダーに定評が高い。

サイクルハウスMIKAMI


ウェア協力:レリック


text:So.Isobe
photo:Makoto.Ayano

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