ロンドンパラリンピック自転車トラック競技3日目の9月1日、大城竜之/パイロット伊藤保文のペアは1kmTT〔男子B〕に出場し6位、石井雅史は個人追抜〔男子C4〕に出場し9位となった。

大城ペア1kmTT、自己ベストで6位

大城ペア、1kmTT(男子B)大城ペア、1kmTT(男子B) (c)Yuko SATO

スタートリスト12組の1番目に出走したオーストラリアのベテランと若手パイロットのペア、モドラ/マクフィー組が、序盤から1分03秒120のタイムを出す。トップクラスの英国勢は1分1秒台かそれを超えたタイムを出してくると予想した各国とも、きっちりタイムを詰めてきた。日本は6番目の出場。スタートは少々滑らかではなかったものの順調に加速し、北京大会同種目での大城ペア(パイロットは高橋仁)のタイム1分04秒593を上回る、1分04秒266の自己ベストタイムで6位となった。

一礼して走路に入る大城ペア一礼して走路に入る大城ペア (c)Yuko SATO1kmTT(男子B) ファキー/ストーリー(イギリス)1kmTT(男子B) ファキー/ストーリー(イギリス) (c)Yuko SATO


優勝は、1分01秒351の世界新をマークした英国のニール・ファキー/バーニー・ストーリー組。バーニーは北京パラリンピックの1kmTT〔男子B〕ではアンソニー・カップスと組み、世界新のタイムで優勝したベテランパイロット。そしてニールは北京大会の後に陸上から自転車に転身、2009年にマンチェスターで行われたUCIパラサイクリングトラック世界選手権でバーニーと組み1kmTT世界新での鮮烈なデビューを遂げた選手だ。

またも幻に終わった新記録

前日に続き、有力選手が再発走できずにDNFとなる「事件」があった。
この1kmTT〔男子B〕で金メダルの本命とされていたのは、スタートリストの最後に名を連ねていた、北京の覇者アンソニーとそのパイロット、シドニー五輪チームスプリントのメダリスト、クレイグ・マクリーンだった。
ナショナルチームに選抜されたりUCIチームに所属していた選手は、それぞれ規則で定められた36カ月といった期間ののちでないとパイロットとして出場できない。その待機期間が終了したクレイグが「チームGB」(英国チーム)に加わった。健常者と障害者の活動や人材の交流が進んでいるブリティッシュサイクリング(日本でいえば車連にあたる)。英国は他競技のアスリートからの才能発掘・育成プログラムなどもおおいに利用し、自国開催のロンドン大会にむけ、粒ぞろいの強力な選手をずらりと揃えてきた。

カップス/マクリーン(イギリス)。どんなタイムを叩きだすのか期待されたが…カップス/マクリーン(イギリス)。どんなタイムを叩きだすのか期待されたが… (c)Yuko SATO1回目のスタートはチェーントラブルで中断。調整を待つマクリーン(右端)1回目のスタートはチェーントラブルで中断。調整を待つマクリーン(右端) (c)Yuko SATO


2011年イタリア・モンティキアリでのUCIパラサイクリングトラック世界選手権では、アンソニーとバーニー、ニールとクレイグがペアを組み、両ペアともに1分2秒台での1、2位と、格上のところを見せつけた。走り終えたニール組の世界新タイムをたたえる歓声のなか、アンソニー組はロンドンでは果たして何秒を出してくるのか、1秒台を、そして1分を切ってくるかもしれない――会場は固唾をのんで見守った。

2回目の「失敗スタート」をピストルでとめられたが、マクリーンたちは走るつもりだったと主張2回目の「失敗スタート」をピストルでとめられたが、マクリーンたちは走るつもりだったと主張 (c)Yuko SATODNFを告げられるも拍手で承認する意地を見せたカップスDNFを告げられるも拍手で承認する意地を見せたカップス (c)Yuko SATO


しかしこのペアは、2度の「スタートミス」で失格に終わる。ピストルが鳴り計時がストップしたが、ルール上3回目の発走は許されない。アンソニーは最終的な決断がくだされたと知ると、このジャッジを静かに受け入れ、立ち上がって拍手を送った。その姿に、会場からは大きな歓声がわき起こった。

男子C4個人追抜で石井9位、3位には雪辱のジョディ

石井は7組中3組目のスタート。C4クラスは4kmの距離を走る。序盤はおさえ気味にスタート、徐々にペースアップし5分02秒100のタイムで9位となった。

個人追抜(男子C4)予選を走る石井雅史個人追抜(男子C4)予選を走る石井雅史 (c)Yuko SATO

優勝はルーマニア登録のUCIコンチネンタルチームTUSNAD CYCLING TEAM に所属する、Carol-Edward NOVAK(ルーマニア)、そして2位は、2010年に同チームの一員としてツール・ド・モロッコなどにも出場経験のあるイェリ・イェジェク(チェコ)と、予想通りの実力派選手が表彰台にのぼった。
また前日の痛恨のDNFで涙を飲んだジョディ・カンディは、「1kmTTに絞って練習してきた」にもかかわらず、中距離でも3位と意地を見せ、会場からの拍手を浴びていた。

個人追抜(男子C4)1位のキャロル・エドワード・ノヴァク個人追抜(男子C4)1位のキャロル・エドワード・ノヴァク (c)Yuko SATO個人追抜(男子C4)3位のジョディ・カンディに会場の喝采が送られた個人追抜(男子C4)3位のジョディ・カンディに会場の喝采が送られた (c)Yuko SATO個人追抜き(男子C4)表彰個人追抜き(男子C4)表彰 (c)Yuko SATO


気持ちを切り替えてメダルを獲得した笑顔のジョディと彼女のクリスティーナ気持ちを切り替えてメダルを獲得した笑顔のジョディと彼女のクリスティーナ (c)Yuko SATO

▼個人追抜〔男子C4〕

1位 Carol-Edward NOVAK(ルーマニア)4分40秒315(世界記録)
2位 イェリ・イェジェク(チェコ)4分41秒593
3位 ジョディ・カンディ(英国)4分42秒005

9位 石井雅史 5分02秒100


▼1kmTT〔男子B〕

1位 ニール・ファキー/バーニー・ストーリー(英国)1分01秒351(世界記録)
2位 ホセ エンリケ・ポルト/ホセ アントニオ・ビラヌエバ(スペイン)1分02秒707
3位 Rinnne OOST/Patrick BOS(オランダ)1分03秒052

6位 大城竜之/1分04秒266

1kmTT(男子B)表彰1kmTT(男子B)表彰 (c)Yuko SATO

Photo&Text Yuko SATO

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