ドーフィネ・リベレ(UCIプロツアー)第4ステージは距離の長い個人タイムトライアル(以下個人TT)。アルカンシェルのベアト・グラブシュ(ドイツ、チームコロンビア)がトップタイムを叩き出し、2位のカデル・エヴァンス(オーストラリア、サイレンス・ロット)が首位に返り咲いた。

前を見てハイペースで走るカデル・エヴァンス(オーストラリア、サイレンス・ロット)ステージ2位前を見てハイペースで走るカデル・エヴァンス(オーストラリア、サイレンス・ロット)ステージ2位 photo:Cor Vos22km地点に4級山岳が設定された42.4kmのコースで最速タイムを叩き出したのは、現世界TTチャンピオンの証、アルカンシェルを着るグラブシュだった。

“アルカンシェルを着ると成績が伸び悩む”。そのジンクスを体現するかのように、グラブシュは今シーズン勝利から遠ざかっていた。「去年の世界選手権以来、4位か5位に食い込むことはあっても、実は1勝もしていなかった。ようやく勝利に手が届いたよ。非常に意味のある勝利だ」と、久々の勝利を喜ぶ。

クライマー体型ながら高出力のアルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)ステージ5位クライマー体型ながら高出力のアルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)ステージ5位 photo:Cor Vos身長179cm・体重78kgのグラブシュは、TTスペシャリストとしてもカラダの芯が太い。しかしそのマッチョなカラダから生み出されるパワーを活かし、中盤の4級山岳をものともせず、平均スピード49.462km/hでゴールまで突っ切った。

「最近走ったのは12kmと25kmの個人TT。今日のような長距離個人TTの方が自分に適しているということだ。今日のコースは大きな上りが無くて、ビッグギアを踏み倒すような僕の走りにマッチしたコースだった。そのチャンスを活かせて嬉しいよ。今日は前半から飛ばして、中盤(の上り)でカデルが挽回。後半にかけてまた僕がリードした。ラストの10kmは本当にリミットまで追い込んだよ」。

平地を駆け抜けるアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)ステージ12位平地を駆け抜けるアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)ステージ12位 photo:Cor Vos2004年から4年連続でツール・ド・フランスに出場していたグラブシュだが、昨年は出場を逃した。ツール出場に関してグラブシュは「まだ仮のメンバーリストに13〜14人の候補がいる。ツールのメンバー選考はツール・ド・スイスが終わってからじゃないと分からないけど、僕が出場するなら、当然個人TTで全力を尽くす。2つ目の個人TT(第18ステージ・40km)は距離が長くてフラット。僕向きだと思う」と意気込みを語る。

最速タイムを叩き出したベアト・グラブシュ(ドイツ、チームコロンビア)最速タイムを叩き出したベアト・グラブシュ(ドイツ、チームコロンビア) photo:Cor Vosそして忘れてはならないのが世界選手権だ。「9月のスイスのメンドリシオ(ロード世界選手権)でアルカンシェルを防衛することも個人的には重要な目標。どう転んでも、今から数ヶ月は重要な目標で溢れている」とコメント。来るべき重要なレースに向けて、この日の勝利はモチヴェーションアップに繋がったハズだ。

前日にステージ優勝を飾り、リーダージャージを着てスタートしたのはニキ・テルプストラ(オランダ、ミルラム)。しかしレース中盤にオーバースピードでコーナーに突っ込んで落車。スペアのTTバイクが用意されておらず、ノーマルバイクでレース後半を走った。当然タイムは伸ばせず、失意の114位。リーダージャージを明け渡した。
落車の影響でノーマルバイクで走るニキ・テルプストラ(オランダ、ミルラム)落車の影響でノーマルバイクで走るニキ・テルプストラ(オランダ、ミルラム) photo:Cor Vosドーフィネの総合争いはエヴァンスを中心に回る。安定感ある走りでグラブシュから7秒遅れの2位に入ったエヴァンスは、一日でテルプストラからリーダージャージを奪い返した。エヴァンスは最大のライバルであるアルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)から37秒のリードを奪うことに成功。「今日は勝つ必要は無かったが、リードを広げるには絶好のステージだった」。リーダージャージに返り咲いたエヴァンスはそう振り返った。

エヴァンスからタイムを失ったコンタドールだが、「今日の結果は充分満足のいくものだった。まだTTバイクでトレーニングを積む必要はあるけど、ツールに向けての準備は完璧だ」と、最大の目標であるツールに向けて自信を覗かせる。総合成績ではエヴァンスから45秒遅れの2位につけている。

アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)は、トップから1分38秒遅れでフィニッシュ。「今日のようなTTスペシャリスト向きのコースで12位という結果には満足している。他の選手と比べても大きくタイムロスすることはなかった。今日は僕が長距離TTでも結果を出せることを証明出来た。これは将来的にも重要なこと。明日からは山岳だ。山岳こそ僕の領域であり、何か成し遂げればいいと思っている」と語る。ディフェンディングチャンピオンは現在トップから1分54秒遅れの総合8位だ。

新城幸也(Bboxブイグテレコム)はチーム内の8名中3位となる64位でフィニッシュ。チーム内3位と言っても、トップのローラン・ルフェーヴル(フランス)との差は僅かに7秒。チームトップクラスのスプリント力を誇る新城としては好成績だと言えるだろう。

ドーフィネは翌日から過酷な山岳ステージが4つ連続する。山岳シリーズの幕開けを告げるのは、標高1909mの超級山岳「死の山」モンヴァントゥーの頂上ゴールだ。総合リーダーのエヴァンスも「明日のモンヴァントゥーが頭から離れない」とコメントするほど、総合争いにおいて重要な一戦になる。エヴァンスvsコンタドールの闘いに注目だ。


ドーフィネ・リベレ2009第4ステージ結果
1位 ベアト・グラブシュ(ドイツ、チームコロンビア)51'26"
2位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、サイレンス・ロット)+07"
3位 デーヴィッド・ミラー(イギリス、ガーミン)+39"
4位 フランティセク・ラボン(チェコ、チームコロンビア)+40"
5位 アルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)+44"
6位 スタフ・クレメント(オランダ、ラボバンク)+1'01"
7位 コース・ムーレンハウト(オランダ、ラボバンク)+1'19"
8位 セバスティアン・ロセレル(ベルギー、クイックステップ)+1'20"
9位 ミケル・アスタルロサ(スペイン、エウスカルテル)+1'23"
10位 リナルド・ノチェンティーニ(イタリア、アージェードゥーゼル)+1'24"
64位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)+3'38"

個人総合成績
1位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、サイレンス・ロット)11h16'19"
2位 アルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)+45"
3位 ベアト・グラブシュ(ドイツ、チームコロンビア)+48"
4位 フランティセク・ラボン(チェコ、チームコロンビア)+1'07"
5位 デーヴィッド・ミラー(イギリス、ガーミン)+1'09"
6位 スタフ・クレメント(オランダ、ラボバンク)+1'33"
7位 セバスティアン・ロセレル(ベルギー、クイックステップ)+1'46"
8位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)+1'54"
9位 コース・ムーレンハウト(オランダ、ラボバンク)+2'01"
10位 ミケル・アスタルロサ(スペイン、エウスカルテル)+2'07"
65位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)+4'36"

ポイント賞
カデル・エヴァンス(オーストラリア、サイレンス・ロット)

山岳賞
レミ・ポリオル(フランス、コフィディス)

チーム総合成績
チームコロンビア

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