8月20日から26日までの7日間、アメリカ・コロラド州を舞台に2012USAプロチャレンジが開催された。最終日の個人タイムトライアルでステージ2位に入ったクリスティアン・ヴァンデヴェルデが、それまで首位に立っていたリーヴァイ・ライプハイマーを抜き逆転総合優勝を飾った。

昨年大会覇者のリーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、オメガファーマ・クイックステップ)昨年大会覇者のリーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、オメガファーマ・クイックステップ) photo:CorVos/Mark Johnsonヨーロッパのサイクリング界がブエルタ・ア・エスパーニャで盛り上がりを見せる8月下旬、アメリカはコロラド州を舞台とした1週間のステージレース、USAプロチャレンジが開催された。第2回目の開催ながら、北米最大のレースであるツアー・オブ・カリフォルニアと同じ2.HCにランク付けされる大会だ。

USAPCに出場したイヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)USAPCに出場したイヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス・キャノンデール) photo:CorVos/Mark Johnsonロッキー山脈を舞台とした3つの頂上ゴールステージを経て、最終日はデンバー市街地での個人タイムトライアルに終わる7日間の行程は、グランツールにも引けを取らない内容の濃いもの。アメリカ系チームを中心に、6つのプロツアーチームを含む全16チームが参加した。

優勝候補は昨年大会の覇者であるリーヴァイ・ライプハイマー(オメガファーマ・クイックステップ)や、クリスティアン・ヴァンデベルデ(ガーミン・シャープ)、クリス・ホーナー(レディオシャック・ニッサン)、ティージェイ・ヴァンガーデレン(BMCレーシングチーム)などのアメリカ勢。

加えてツール3位のヴィンツェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)やカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)らの動きも注目された。そしてジョージ・ヒンカピー(アメリカ、BMCレーシングチーム)の引退レースだ。


第1ステージ デュランゴーテリュライド 202.2km
第1ステージ 集団スプリントを制したタイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・シャープ)第1ステージ 集団スプリントを制したタイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・シャープ) photo:CorVos/Mark Johnsonコロラド州南西部を舞台としたUSAプロチャレンジ初日は、途中3つのカテゴリー山岳を含む山岳ステージ。レース序盤からトム・ダニエルソン(アメリカ、ガーミン・シャープ)やニーバリなど、有力勢が逃げる展開に。標高3000mの第2山岳は独走でダニエルソンが通過したものの、ゴールへと至る平坦路で逃げは全て吸収。50名ほどまでに人数を減らした集団によるスプリントに持ち込まれた。

最後はロングスプリントを掛けたロリー・サザーランド(オーストラリア、ユナイテッドヘルスケア)の背後から飛び出したタイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・シャープ)が後続を大きく突き放す圧倒的なスプリントを決めてガッツポーズ。今シーズン勝ち星に恵まれていなかったファラーだが、復活の狼煙を上げるとともにリーダージャージの獲得に成功した。

2012USAプロチャレンジ第1ステージ結果
1位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・シャープ)4h42′48″
2位 アレッサンドロ・バッザーナ(イタリア、チームタイプワン)
3位 ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)
総合首位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・シャープ)


第2ステージ モントローズークレスティドビュート 159.3km
大会2日目にして設定された上りゴール。山岳地帯を駆け抜けるコースは序盤に700m級の山岳を序盤に2つ越え、最後はクレスティドビュートの登坂を駆け上がる。

レースはスタートともに12名の逃げグループが形成され、ティージェイ・ヴァンガーデレンやクリスティアン・ヴァンデヴェルデ、ニーバリが入った。協調して逃げる12名はタイム差をゴールまでキープすることに成功し、最後のクレスティドビュートへ突入。

コロラド州の高地を駆け抜けるUSAプロチャレンジコロラド州の高地を駆け抜けるUSAプロチャレンジ photo:CorVos/Mark Johnson第2ステージ 頂上ゴールでのスプリントをティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシングチーム)が制す第2ステージ 頂上ゴールでのスプリントをティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシングチーム)が制す photo:CorVos/Mark Johnson


登り口で抜けだしたマティアス・フランク(スイス、BMCレーシングチーム)の動きは成功せず、続いたヴァンガーデレンのアタックで集団は崩壊。ヴァンデベルデとのスプリントに競り勝ったヴァンガーデレンがステージ優勝とリーダージャージを手中に収めた。

2012USAプロチャレンジ第2ステージ結果
1位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシングチーム)3h52′24″
2位 クリスティアン・ヴァンデヴェルデ(アメリカ、ガーミン・シャープ)
3位 イワン・ロフニー(ロシア、ラスヴェロ) +06″
総合首位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシングチーム)


第3ステージ ガニソンーアスペン 210km
コロラド州中部の山岳地帯を駆け抜ける第3ステージは、獲得標高1200m超の山岳が2つ登場。途中見舗装路も登場する難易度の高いもので、最後は標高3700mのインデペンデンス・パスからの30kmのダウンヒルを経てゴールする。

最初の上りで決まった逃げグループに入ったのは、山岳賞ジャージを着るトム・ダニエルソンら10数名。残り60km地点から始まるインデペンデンス・パスではアタック合戦が勃発し、独走を成功させたダニエルソンがメイン集団に2分差で頂上を通過し、長い下りをこなしていく。最後は背後に迫る集団を背にゴール前に現れたダニエルソンが、2秒の差を持ってゴールへと先着した。

第3ステージ リーダージャージを着てレースに臨むティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシングチーム)第3ステージ リーダージャージを着てレースに臨むティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシングチーム) photo:CorVos/Mark Johnson第3ステージ 集団を振り切ってゴールに飛び込むトム・ダニエルソン(アメリカ、ガーミン・シャープ)第3ステージ 集団を振り切ってゴールに飛び込むトム・ダニエルソン(アメリカ、ガーミン・シャープ) photo:CorVos/Mark Johnson


総合争いを繰り広げるヴァンガーデレンとヴァンデベルデは互いに2秒遅れの集団内でゴールし、総合で同タイム、同ポイントに並んだため、規定によりこの日先着したヴァンデベルデが総合首位となった。

2012USAプロチャレンジ第3ステージ結果
1位 トム・ダニエルソン(アメリカ、ガーミン・シャープ)5h02′06″
2位 ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、リクイガス・キャノンデール) +02″
3位 ヤコブ・フグルサング(デンマーク、レディオシャック・ニッサン)
総合首位 クリスティアン・ヴァンデベルデ(アメリカ、ガーミン・シャープ)


第4ステージ アスペンービーバークリーク 156.4km
第4ステージ イェンス・フォイクト(ドイツ、レディオシャック・ニッサン)が長距離エスケープを成功させ、単独でゴールへ第4ステージ イェンス・フォイクト(ドイツ、レディオシャック・ニッサン)が長距離エスケープを成功させ、単独でゴールへ photo:CorVos/Mark Johnson序盤に前日にも登場したインデペンデンス・パスを越え、ゴールのビーバークリークに向けてゆるやかに下る第4ステージ。ピーター・ステティーナ(イタリア、ガーミン・バラクーダ)やロマン・クロイツィゲル(チェコ、アスタナ)を含む逃げグループからインデペンデンス・パスで飛び出したイェンス・フォイクト(ドイツ、レディオシャック・ニッサン)が独走を開始すると、その勢いは衰えることが無かった。

最大で6分まで拡大したタイム差をキープしたフォイクトは、そのリードを最後まで保ち続ける。来シーズンの現役続行を発表したばかりの大ベテランが後続に3分差をつけたまま単独でゴールへと飛び込み、長距離に渡る独走劇を成功させた。

また、この日もタイム差ゼロの2人による激しい総合争いがゴール前で繰り広げられた。集団前方でヴァンデベルデに先着したヴァンガーデレンがリーダージャージの奪回を果たしている。

2012USAプロチャレンジ第4ステージ結果
1位 イェンス・フォイクト(ドイツ、レディオシャック・ニッサン)3h54′00″
2位 アンドレアス・クレーデン(ドイツ、レディオシャック・ニッサン) +2′58″
3位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシングチーム)
総合首位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシングチーム)


第5ステージ ブリッケンリッジーコロラドスプリングス 189.7km
標高3500mオーバーのフーザーパスをクリアし、市街地のコロラドスプリングスへと下る第5ステージ。オリバー・ザウグ(スイス、レディオシャック・ニッサン)らを含む序盤からの逃げは終盤のサーキットコースで全て吸収され、チームメイトと共に飛び出しを図ったダミアーノ・カルーゾの動きも失敗に終わる。

第5ステージ USAチャンピオンジャージを着て走るティモシー・ダッガン(アメリカ、リクイガス・キャノンデール)第5ステージ USAチャンピオンジャージを着て走るティモシー・ダッガン(アメリカ、リクイガス・キャノンデール) photo:CorVos/Mark Johnson第5ステージ 2勝目を飾ったタイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・シャープ)第5ステージ 2勝目を飾ったタイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・シャープ) photo:CorVos/Mark Johnson


最後は集団スプリントに持ち込まれ、他選手の動きを見てタイミングを付いたタイラー・ファラーがスプリント勝利。第1ステージに続く大会2勝目を挙げることに成功した。2位にはテイラー・フィニー(アメリカ、BMCレーシングチーム)。ステージ14位のヴァンガーデレンがリーダージャージを守った。

2012USAプロチャレンジ第5ステージ結果
1位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・シャープ)3h58′27″
2位 テイラー・フィニー(アメリカ、BMCレーシングチーム) 
3位 アレッサンドロ・バッザーナ(イタリア、チームタイプワン)
総合首位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシングチーム)


第6ステージ ゴールデンーボルダー 165.5km
第6ステージ 山岳で独走勝利を飾ったロリー・サザーランド(オーストラリア、ユナイテッドヘルスケア)第6ステージ 山岳で独走勝利を飾ったロリー・サザーランド(オーストラリア、ユナイテッドヘルスケア) photo:CorVos/Mark Johnsonコロラド州北部のボルダーに場所を移して行われた第6ステージは、中盤に標高2800mのボルダーキャニオンを越え、最後はボルダー郊外にある標高差450mの登坂を駆け上がりゴールする165.5km。このステージで総合が動いた。

この日も序盤から2日前に独走勝利を挙げたイェンス・フォイクトを含む逃げグループが形成され、人数を減らしながらも最後のヒルクライムへと到達。フォイクトのアタックは不発に終わり、代わって抜けだしたロリー・サザーランド(オーストラリア、ユナイテッドヘルスケア)が独走で頂上ゴールを制した。

その頃メイン集団では、これまで沈黙を守っていた昨年覇者リーヴァイ・ライプハイマーがニーバリの動きに乗じてアタック。独走でゴールすると、総合タイムでヴァンデベルデに対して9秒、やや遅れたヴァンガーデレンには21秒をつけたことで一躍総合首位に浮上した。

第6ステージ ライバル勢から先行してゴールに向かうリーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、オメガファーマ・クイックステップ)第6ステージ ライバル勢から先行してゴールに向かうリーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、オメガファーマ・クイックステップ) photo:CorVos/Mark Johnson第6ステージ リーダージャージを獲得したリーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、オメガファーマ・クイックステップ)第6ステージ リーダージャージを獲得したリーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、オメガファーマ・クイックステップ) photo:CorVos/Mark Johnson


2012USAプロチャレンジ第6ステージ結果
1位 ロリー・サザーランド(オーストラリア、ユナイテッドヘルスケア)4h06′12″
2位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ) 
3位 イェンス・フォイクト(ドイツ、レディオシャック・ニッサン)
総合首位 リーヴァイ・ライプハイマー(オメガファーマ・クイックステップ)


第7ステージ デンバーーデンバー 15.3km(個人タイムトライアル)
1週間の戦いは、第7ステージの個人タイムトライアルで決着する。コースはデンバー市街地に設定された15.3kmで、プロフィールはほぼフラットと純粋な独走力が問われるレイアウトだ。

序盤に好タイムを記録したのはナショナルチャンピオンジャージを着るデーヴィッド・サブリスキー(アメリカ、ガーミン・シャープ)。しかし第5ステージのスプリントで2位に入ったサラブレッド、テイラー・フィニーがこれを45秒塗り替えるタイムを叩き出しホットシートに着く。

第7ステージ ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシングチーム)は僅差で3位に第7ステージ ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシングチーム)は僅差で3位に photo:CorVos/Mark Johnson第7ステージ リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、オメガファーマ・クイックステップ)はタイムが伸びず第7ステージ リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、オメガファーマ・クイックステップ)はタイムが伸びず photo:CorVos/Mark Johnson第7ステージ 総合優勝に向けて走るクリスティアン・ヴァンデベルデ(アメリカ、ガーミン・シャープ)第7ステージ 総合優勝に向けて走るクリスティアン・ヴァンデベルデ(アメリカ、ガーミン・シャープ) photo:CorVos/Mark Johnson


ヴァンガーデレンはフィニーから19秒遅れのタイムを記録したものの、総合2位に付けるヴァンデベルデはフィニーを9秒上回る。リーダージャージを着るライプハイマーは思うようにタイムを伸ばすことができず、最終的に43秒遅れの9位に。

これによってステージ2位となったヴァンデヴェルデのUSAプロチャレンジ総合優勝が確定。チームTTを除き個人としては2009年のパリ~ニース第4ステージ以来、直近の総合優勝は2008年のツアー・オブ・ミズーリにまで遡る久々の勝利だ。

第7ステージ キャリア最後のレースに臨むジョージ・ヒンカピー(アメリカ、BMCレーシングチーム)第7ステージ キャリア最後のレースに臨むジョージ・ヒンカピー(アメリカ、BMCレーシングチーム) photo:CorVos/Mark Johnsonジョージ・ヒンカピー(アメリカ、BMCレーシングチーム)の引退セレモニーが催されたジョージ・ヒンカピー(アメリカ、BMCレーシングチーム)の引退セレモニーが催された photo:CorVos/Mark Johnson


「今日はとても集中して臨んだ。なぜだかわからないけれどツール以来タイムトライアルの調子が良かった。最終ステージで何かできると信じていたよ。レースのスタートからフィニッシュまでを通して信じられない気分で、その締めくくりにリーダージャージ着ていることに興奮しているよ」とヴァンデヴェルデは語った。

そしてジョージ・ヒンカピーは1分3秒遅れのステージ23位でゴール。総合順位を41位とし、19年の現役生活最後のレースを走り終えた。

USAプロチャレンジ総合表彰台USAプロチャレンジ総合表彰台 photo:CorVos/Mark Johnsonチーム総合優勝を飾ったレディオシャック・ニッサンチーム総合優勝を飾ったレディオシャック・ニッサン photo:CorVos/Mark Johnson



2012USAプロチャレンジ第6ステージ結果
1位 テイラー・フィニー(アメリカ、BMCレーシングチーム) 17′25″
2位 クリスティアン・ヴァンデヴルデ(アメリカ、ガーミン・シャープ)+10″
3位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシングチーム)+19″

個人総合成績
1位 クリスティアン・ヴァンデヴルデ(アメリカ、ガーミン・シャープ)25h57′34″
2位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシングチーム) +21″
3位 リーヴァイ・ライプハイマー(オメガファーマ・クイックステップ) +24″

ポイント賞
タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・シャープ)

山岳賞
イェンス・フォイクト(ドイツ、レディオシャック・ニッサン)

新人賞
テイラー・フィニー(アメリカ、BMCレーシングチーム)

チーム総合成績
レディオシャック・ニッサン


text:So.Isobe
photo:CorVos/Mark Johnson