登坂距離17.4km・平均勾配7.1%というツール・ド・フランス初登場の超級山岳グラン・コロンビエール峠で、役目を終えた新城幸也(ユーロップカー)は逃げから脱落。ユキヤのアシストを受けたトマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー)が逃げ切り勝利を飾るとともに、敢闘賞とマイヨアポワを手中に収めた。

第10ステージ・コースプロフィール第10ステージ・コースプロフィール image:A.S.O.膝の故障により、一時はツール欠場も噂されたヴォクレールが、名誉挽回とばかりに得意のコースで逃げた。その伴侶となったのがユキヤ。マコンからベルガルド・シュル・ヴァルスリーヌまでの194.5kmで行なわれた第10ステージで、ユキヤが2度目の逃げを試みた。

レース序盤に決まった25名の逃げレース序盤に決まった25名の逃げ photo:A.S.O.この日はジュラ山脈の真骨頂とも言える厳しい山岳が3つ登場。ゴール43km手前に鎮座する超級山岳グラン・コロンビエール峠は登坂距離17.4km・平均勾配7.1%で、コースディレクターのジャンフランソワ・ペシェ氏曰く「フランスで最も厳しい峠」だ。

休息日明けのこの日、左手首の骨折を抱えながら走っていたトニ・マルティン(ドイツ、オメガファーマ・クイックステップ)やマシュー・ロイド(オーストラリア、オメガファーマ・ロット)、そしてドーピング容疑で逮捕されたレミ・ディグレゴリオ(フランス、コフィディス)を欠く175名がスタート。フラッグが振られると同時にアタックの応酬となる。

逃げグループ内で走る新城幸也(ユーロップカー)逃げグループ内で走る新城幸也(ユーロップカー) photo:Makoto Ayanoアタック合戦の激しさは、1時間目の平均スピード49.8km/hという数字が物語る。ようやく逃げが決まったのは32km地点。ユキヤやヴォクレール、そしてポイント賞1位と2位のペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)とマシュー・ゴス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)を含む25名が飛び出した。

総合で10分27分遅れのミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・ISD)が逃げに入っていたため、チームスカイは慎重にタイム差をコントロール。逃げグループのリードは7分に抑え込まれた。

130km地点の中間スプリントポイントは、サガンを下したゴスが先頭通過。両者のポイント差は27ポイントにまで縮まったが、サガンのアドバンテージはまだまだ大きい。

逃げグループを率いる新城幸也(ユーロップカー)逃げグループを率いる新城幸也(ユーロップカー) photo:A.S.O.


超級山岳グラン・コロンビエール峠を登る超級山岳グラン・コロンビエール峠を登る photo:Cor Vosそして迎えた超級山岳グラン・コロンビエール峠。6分リードでこの難所に差し掛かった逃げグループを、ユキヤが牽引する。「思った以上に勾配がきつくて2kmぐらいしか引けなかった」と話すユキヤはここで任務終了。ヴォクレールに望みを託し、自分のペースで登りを進んだ(15分04秒遅れでゴール)。

急勾配の登りが続くグラン・コロンビエール峠で、逃げはヴォクレール、ドリス・デヴェナインス(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)、ルイスレオン・サンチェス(スペイン、ラボバンク)、そしてスカルポーニの4人に。

超級山岳グラン・コロンビエール峠を登るトマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー)ら超級山岳グラン・コロンビエール峠を登るトマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー)ら photo:Cor VosLLサンチェスのメリハリある走りを封じたヴォクレールが先頭で頂上を通過。山岳賞25ポイントを獲得し、マイヨアポワ獲得を決めた。

一方のメイン集団は一時的にロット・ベリソルがペースを作るシーンも見られたが、メンバーを揃えるチームスカイが鉄壁のコントロールを見せる。

山岳ステージで積極的に動いたペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)山岳ステージで積極的に動いたペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール) photo:Cor Vosエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー)からバトンを受け取ったリッチー・ポルト(オーストラリア)が、ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、ロット・ベリソル)やピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー)のアタックを封じた。

グラン・コロンビエール峠の下りで、メイン集団からはヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)がアタック。逃げグループから脱落したサガンがこれに合流し、強力にニーバリを引き上げる。サガンのサポートを受けたニーバリは、1分のリードを奪ってこの日最後の3級山岳リシュモンへ。しかしメイン集団を振り切るにはゴールまで距離がありすぎた。

メイン集団から飛び出したピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー)とユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、ロット・ベリソル)メイン集団から飛び出したピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー)とユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、ロット・ベリソル) photo:Cor Vosニーバリが吸収されると、今度はロランとファンデンブロックが再びアタック。この2人は最終的にメイン集団から32秒タイムを奪ってゴールしたが、総合順位に変動をもたらすには至らなかった。

メイン集団に対して3分リードで3級山岳リシュモンを越えた先頭のヴォクレール、LLサンチェス、スカルポーニ、デヴェナインスは、牽制しながらラスト10km。すると、グラン・コロンビエール峠で脱落したイェンス・フォイクト(ドイツ、レディオシャック・ニッサン)が後方から4人に合流する。

ゴールに向かうルイスレオン・サンチェス(スペイン、ラボバンク)やトマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー)らゴールに向かうルイスレオン・サンチェス(スペイン、ラボバンク)やトマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー)ら photo:Cor Vos逃げ切りを確定させた5人によるアタックと牽制。ラスト3kmでデヴェナインスが飛び出し、これをヴォクレールとフォイクトが追う。ラスト1kmを切ってコースが登り基調に変わると、ヴォクレールが単独先頭に。LLサンチェスらの追走を振り切ったヴォクレールがそのまま単独でゴールした。

「『今日は逃げ切りが決まる』と思っていたけど、逃げのメンバーが強かったので、最後まで気が抜けなかった。ラスト500mで振り返ってフォイクトとサンチェスが見えた時、自分のチャンスは終わったと思った。そこからゴールまでどれだけ長かったことか!」とヴォクレールは振り返る。

ガッツポーズでゴールするトマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー)ガッツポーズでゴールするトマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー) photo:Cor Vosヴォクレールは2009年と2010年に続くステージ3勝目。敢闘賞とマイヨアポワを同時に獲得した。昨年ツールでマイヨジョーヌを10日間着用して総合4位に入った33歳が、再びツールの檜舞台に立った。

「ツール前に膝を痛めて8日間バイクから離れた時は、もうツール出場は間に合わないと思った。でも自分は今、自分が望んでいた場所にいる。このマイヨアポワをそう簡単に失うわけにはいかない」。

ロランとファンデンブロックに先行を許したメイン集団は、カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)を先頭に3分16秒遅れでゴール。ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)がマイヨジョーヌを危なげなく守った。フォイクトをステージ3位に送り込んだレディオシャック・ニッサンがチーム総合成績のリードを広げている。

選手コメントはレース公式サイトより。

ゴールに向けてペースを上げるカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)ゴールに向けてペースを上げるカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム) photo:Cor Vosマイヨアポワに袖を通すトマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー)マイヨアポワに袖を通すトマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー) photo:Cor Vos


ツール・ド・フランス2012第10ステージ結果
1位 トマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー)            4h46'26"
2位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・ISD)             +03"
3位 イェンス・フォイクト(ドイツ、レディオシャック・ニッサン)        +07"
4位 ルイスレオン・サンチェス(スペイン、ラボバンク)             +23"
5位 ドリス・デヴェナインス(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)   +30"
6位 サンディ・カザール(フランス、FDJ・ビッグマット)            +2'44"
7位 エゴイ・マルティネス(スペイン、エウスカルテル)
8位 ピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー)
9位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、ロット・ベリソル)
10位 デミトリ・フォフォノフ(カザフスタン、アスタナ)            +2'52"
11位 ティボー・ピノ(フランス、FDJ・ビッグマット)              +3'16"
12位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)
13位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)
73位 新城幸也(日本、ユーロップカー)                     +15'04"

個人総合成績 マイヨ・ジョーヌ
1位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)          43h59'02"
2位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)       +1'53"
3位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)               +2'07"
4位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)   +2'23"
5位 デニス・メンショフ(ロシア、カチューシャ)               +3'02"
6位 アイマル・スベルディア(スペイン、レディオシャック・ニッサン)     +3'19"
7位 マキシム・モンフォール(ベルギー、レディオシャック・ニッサン)     +4'23"
8位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、ロット・ベリソル)       +4'48"
9位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、アージェードゥーゼル)         +5'29"
10位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシングチーム)   +5'31"
95位 新城幸也(日本、ユーロップカー)                  +1h00'13"

ポイント賞 マイヨ・ヴェール
ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)

山岳賞 マイヨ・ブラン・アポワ・ルージュ
トマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー)

新人賞 マイヨ・ブラン
ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシングチーム)

チーム総合成績
レディオシャック・ニッサン

敢闘賞
トマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー)

text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos

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