現在開催中のクリテリウム・ドゥ・ドーフィネと並行して、スイスでは第76回ツール・ド・スイス(UCIワールドツアー)が開催される。ライプハイマーやヘーシンク、クロイツィゲル、バルベルデ、Fシュレク、クネゴらが出場する通称「第4のグランツール」の見どころをチェックしておこう。

総合を決める3つの本格山岳ステージと2つの個人TT

ツール・ド・スイス2012コースマップツール・ド・スイス2012コースマップ image:www.tourdesuisse.ch同時期開催のクリテリウム・ドゥ・ドーフィネと並んで、ツール・ド・フランス前哨戦として知られるツール・ド・スイス。7月のツールを狙うオールラウンダーやスプリンターたちが挙って出場する。

ツール・ド・スイス2012第2ステージ・コースプロフィールツール・ド・スイス2012第2ステージ・コースプロフィール image:www.tourdesuisse.chその歴史は古く、第1回大会が開催されたのは今から78年前の1933年。ドーフィネよりも14年歴史が長く、今年で開催76回目を迎える。全9ステージで、歴史だけではなく開催期間もドーフィネよりも長い。かつては12ステージで行なわれていたことから「第4のグランツール」とも呼ばれた。

2009年ツールでアルベルト・コンタドール(スペイン)が制したヴェルビエが第2ステージのゴールとして登場2009年ツールでアルベルト・コンタドール(スペイン)が制したヴェルビエが第2ステージのゴールとして登場 photo:Cor Vos2年連続レースはスイス南部イタリア語圏のルガーノでの7.3km個人タイムトライアルで始動。フランス語圏に限定した4月のツール・ド・ロマンディと比較すると、ツール・ド・スイスのコース取りはダイナミック。南部のイタリア語圏から西部のフランス語圏に入り、後半は北部〜東部のドイツ語圏を走る。「スイス一周レース」という名に相応しく、スイス全土を巡るイメージだ。

コースの特徴としては、スプリンターにチャンスがある平坦ステージが多い(ドーフィネ比)。そのためツールに向けて最終調整に入るスプリンターたちの出場は、ドーフィネではなくこのスイスに集中している。

頂上ゴールが設定された本格的な山岳は3ステージ。大会2日目の第2ステージで早速総合が動く。隣国イタリアをスタートし、標高2005mの超級山岳シンプロン峠をこえてスイスへ。大会最長218kmコースには2つの超級山岳が含まれており、最後は超級山岳ヴェルビエを登ってゴールを迎える。ここで総合首位に立った選手はしばらくイエロージャージを着ることになりそうだ。

起伏のある34.3kmで行なわれる第7ステージ・個人タイムトライアルで再び総合は動く。そして最後は2連続難関山岳ステージ。標高1739mの超級山岳アローザにゴールする第8ステージと、2つの超級山岳を越えて2級山岳ゼーレンベルクにゴールする第9ステージで大会は締めくくられる。

ツール・ド・スイス2012ステージリスト
6月9日(土)第1ステージ ルガーノ〜ルガーノ 7.3km(個人TT)
6月10日(日)第2ステージ ヴェルバニア〜ヴェルビエ 218.3km
6月11日(月)第3ステージ マルティニー〜アーベルク 194.7km
6月12日(火)第4ステージ アーベルク〜トリンバッハ/オルテン 188.8km
6月13日(水)第5ステージ トリンバッハ/オルテン〜ガンジンゲン 192.7km
6月14日(木)第6ステージ ウィトナウ〜ビショフスツェル 198.5km
6月15日(金)第7ステージ ゴッサウ〜ゴッサウ 34.3km
6月16日(土)第8ステージ ビショフスツェル〜アローザ 148.2km
6月17日(日)第9ステージ ネフェルス・リンタネーラ〜ゼーレンベルク 215.8km

ツール狙いのオールラウンダーやスプリンターが終結

リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、オメガファーマ・クイックステップ)リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、オメガファーマ・クイックステップ) photo:Luis Barbosa昨年の覇者リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、オメガファーマ・クイックステップ)を中心に、今年はツールでの活躍も期待される六強がスイスに揃った。

ライプハイマーは春先の交通事故で腓骨(膝から足首に至る骨)を骨折。しばらくレースから遠ざかったが、5月のツアー・オブ・カリフォルニアでレースに復帰し、総合6位という成績を残している。本調子ではないものの、ディフェンディングチャンピオンとしてその走りに注目したい。

ロマン・クロイツィゲル(チェコ、アスタナ)ロマン・クロイツィゲル(チェコ、アスタナ) photo:Riccardo Scanferlaジロ・デ・イタリアで失速し、第19ステージで勝利したものの総合15位に終わったロマン・クロイツィゲル(チェコ、アスタナ)は、2008年大会の総合優勝者。その名を世界に知らしめるきっかけとなった相性の良いスイスレースでジロの悔しさを晴らせるか。

同じくダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD)も不本意な成績でジロを終えている。クネゴは昨年このスイスで6日間イエロージャージを着用。しかし最終日の個人タイムトライアルでライプハイマーに逆転され、僅か4秒差で総合優勝を逃している。

ファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・ニッサン)ファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・ニッサン) photo:Riccardo Scanferla2010年大会で総合優勝しているフランク・シュレク(ルクセンブルク、レディオシャック・ニッサン)は、ヤコブ・フグルサング(デンマーク)やアンドレアス・クレーデン(ドイツ)といった屈強なオールラウンダーたちに囲まれての出場。しかしレディオシャック・ニッサンの最大の注目は、上記3選手ではなく、レースに復帰するファビアン・カンチェラーラ(スイス)の存在だろう。

ロンド・ファン・フラーンデレンの補給ポイントで落車し、鎖骨を骨折したカンチェラーラがついにレースに復帰する。2009年大会の総合優勝者でもあるカンチェラーラ。久々の「スパルタクス」の登場に地元スイスは沸くはずだ。

ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク) photo:www.amgentourofcalifornia.com4月のアルデンヌ・クラシック以降しばらくレースから遠ざかっているアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)は、このスイスでツールに向けて動き出す。

出場選手の中でおそらく最も調子が良いのは、ツアー・オブ・カリフォルニアで総合優勝したロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)。ラボバンクからは、昨年大会総合3位のステフェン・クルイスウィク(オランダ)も出場する。この2人が大会の台風の目となる可能性は充分にある。

ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール) photo:Mark Johnson/CorVosスプリンターの中で注目したいのは、カリフォルニアで驚異のステージ5勝を飾ったペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)。ある程度の登りもこなせ、スプリント力でピュアスプリンターを圧倒する韋駄天は、ツールに向けてここで更に勢いをつけるか。

トム・ボーネン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)やタイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・バラクーダ)、オスカル・フレイレ(スペイン、カチューシャ)、アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、ランプレ・ISD)ら、ベテランスプリンターたちも集結。第3〜第6ステージでは彼らの雄姿が見られるだろう。

text:Kei Tsuji