パヤクングからイスタノバサまで102kmで開催された第3ステージは単独で逃げ切ったオスカル・プジョル(スペイン、アザド大学)がステージ優勝を挙げた。愛三工業レーシングは伊藤雅和のリーダージャージを守るべく走り、無事にリーダージャージをキープした。

伊藤雅和の総合リーダーを守りたい愛三工業レーシング

リーダージャージを着る伊藤雅和と愛三工業レーシングチームリーダージャージを着る伊藤雅和と愛三工業レーシングチーム (c) Sonoko Tanaka昨日に引き続き、曇り空のもとで迎えた第3ステージは、授業時間にも関わらず、会場に集まってくれたたくさんの子どもたちに見送られてスタートを迎えた。102kmという短いステージながら、2つの2級山岳ポイントが組み込まれたコースレイアウト。スタート直後から、最初の山頂に向けて激しいアタックが繰り返された。

この日もレースリーダーは第1ステージを制した愛三工業レーシングの伊藤雅和。第4、第5の本格的な山岳ステージを前に、チームは第3ステージまでリーダージャージを守ることを最優先課題としていたため、前半戦のハイライトとなるとても重要なステージとなった。チームは、ライバルチームよりも1人少ないことや、監督が不在なこと、いくつかの不安要素を抱えていたが、ジャージを守るという目標に一致団結。集団の前方には、終始懸命にレースをコントロールする愛三工業レーシングチームの姿があった。

パヤクングの街をスタートする選手たちパヤクングの街をスタートする選手たち (c) Sonoko Tanaka
のどかな田園風景が広がるインドネシア、スマトラ島のどかな田園風景が広がるインドネシア、スマトラ島 (c) Sonoko Tanaka

優勝候補、オスカル・プジョルが逃げる


2つ目の登坂区間で独走に持ち込んだオスカル・プジョル(スペイン、アザド大学)2つ目の登坂区間で独走に持ち込んだオスカル・プジョル(スペイン、アザド大学) (c) Sonoko Tanaka集団は最初の登坂区間でのアタックを押さえ、下りでオスカル・プジョル(スペイン、アザド大学)を含む4人の逃げを容認する。プジョルは昨年までオメガファーマ・ロットに所属し、ブエルタ・ア・エスパーニャなど第一線で活躍していた選手だが、今シーズンは移籍先が見つからず、春になってようやくアザド大学との契約に行き着いたという経歴をもつ。

そして彼は、これまでのキャリアから見ると、格下となるアジアのチームに加入すること、アジアツアーを走ることについて、非常にポジティブに捉えている。「新しいチームに、新しいチームメイト、文化も食事もすべて違う環境にいる。でもこれは自分に取って得るものが大4人の逃げグループで先頭を走るオスカル・プジョル(スペイン、アザド大学)4人の逃げグループで先頭を走るオスカル・プジョル(スペイン、アザド大学) (c) Sonoko Tanakaきいと感じているんだ。とにかく、自分はレースを走りたかった。だから、その機会を与えてくれたチームには本当に感謝している。来年のことは未定だけど、いい条件で契約できるなら、今のチームで走ることも現実的に考えているんだ」と話す。

そしてプジョルが2つ目の山岳ポイントを前に、4人の先頭集団から単独で抜け出すことに成功する。実力の違いを見せつけるかのように後続の3人をグングンと引き離し、フィニッシュをめざして独走態勢に持ち込んだ。

渾身の走りで、リーダージャージを守りきった伊藤雅和


チーム一丸となりレースをコントロールする愛三工業レーシングチームチーム一丸となりレースをコントロールする愛三工業レーシングチーム (c) Sonoko Tanakaその頃の集団では、愛三工業レーシングと、総合2位につけるジェネシスが、プジョルの総合逆転を阻止すべく集団を牽引する。鈴木謙一は「集団との差を1分程度に保つように、前半は綾部さんと中島さん、そして後半の登坂区間では自分が中心となりコントロールしていました。しかし、プジョルが先行してから、タイム差は2分3分と開いていったので、慌てて自分とジェネシスが必死で追い上げました」とレースを振り返る。

その後、プジョルが単独で逃げ切り勝利を挙げたが、鈴木らの動きが功を奏し、トップから遅れることわずか8秒というタイム差で、総合リーダーの伊藤を含むメイン集団はゴールラインへと飛び込み、愛三工業レーシングチームは伊藤のリーダージャージの守備に成功する。

王宮の前で開催された表彰式王宮の前で開催された表彰式 (c) Sonoko Tanaka
ステージ優勝を挙げたオスカル・プジョル(スペイン、アザド大学)ステージ優勝を挙げたオスカル・プジョル(スペイン、アザド大学) (c) Sonoko Tanaka伊藤は「チームのみんなが1日中自分のために動いてくれたので、最後の上りでは絶対に遅れたくない、という気持ちでいっぱいでした。そしてジャージを守れたときはホッとしました」

「今日はチームワークがとてもうまく機能した1日でした。リーダージャージを守りたいという共通認識からチームが役割分担とともに、とてもよくまとまっています」」

「明日は厳しい登坂区間のケロックで、ここまで脚を貯めてきた有力選手がどこまで速いか、という不安はありますが、自分のペースを乱さずに登っていきたいと思いリーダージャージを守れたことに握手を交わす伊藤雅和と鈴木謙一(愛三工業レーシング)リーダージャージを守れたことに握手を交わす伊藤雅和と鈴木謙一(愛三工業レーシング) (c) Sonoko Tanakaます」とコメント。

明日、明後日の山岳ステージは愛三工業レーシングチームにとっては厳しいステージになると予想されているが、展開によってはリーダージャージを守ることも可能だとチームは話し合っている。昨年とほぼ同じメンバーでの参戦となっているが、昨年よりも役割分担が明確となり、より1人1人の責任感も高まっていると話す彼らは頼もしい。リーダーチームというレースの核になっているため、キツいけどやりがいのある有意義なレースになっていると言う。

明日の第4ステージはアナリゴルフクラブからパダンパンステージ優勝を挙げたオスカル・プジョル(スペイン、アザド大学)が喜ぶステージ優勝を挙げたオスカル・プジョル(スペイン、アザド大学)が喜ぶ (c) Sonoko Tanakaジャンまでの157km、3級、1級、2級と山岳ポイントが3つ組み込まれるハードな山岳ステージになる。



ツール・ド・シンカラ第3ステージ結果

1位 オスカル・プジョル(スペイン、アザド大学) 2h37'40"
2位 ジョエル・ペルソン(オーストラリア、ジェネシス)+08"
3位 サウヒ・マットセナン(マレーシア、トレンガヌ)
4位 ピエール・モンコルジュ(フランス、レーヌ・ブランシュ)
5位 ハミド・シリシサン(イラン、ウズベキスタン・スラン)
6位 ペトルス・ウエスタンブルグ(オランダ、グローバルサイクリング)
9位 平井栄一(日本ナショナル
20位 寺崎武郎(日本ナショナル)
23位 山本元喜(日本ナショナル)
27位 秋丸湧哉(日本ナショナル)
30位 伊藤雅和(愛三工業)
49位 鈴木謙一(愛三工業)+58"
60位 清水太己(日本ナショナル)+3'28"
70位 六峰亘(日本ナショナル)
84位 中島康晴(愛三工業)+10'32"
104位 木守望(愛三工業)+13'53"
107位 綾部勇成(愛三工業)+14'02"

個人総合順位
1位 伊藤雅和(愛三工業) 7h37'38"
2位 ジェイ・クラウフォード(オーストラリア、ジェネシス) +06"
3位 フェン・チュンカイ(台湾、アクション) +14"
4位 シーケオング・ロー(マレーシア、OCBCシンガポール)+19"
5位 ダディ・スラディ(インドネシア、プトラペルジャンガン)+20"
6位 アレクサンドル・クレメンツ(オーストラリア、オーストラリアナショナル)+22"
7位 山本元喜(日本ナショナル) +22"
14位 秋丸湧哉(日本ナショナル)+1'31"
19位 寺崎武郎(日本ナショナル)+1'35"
45位 鈴木謙一(愛三工業)+4'42"
65位 中島康晴(愛三工業)+11'16"
70位 平井栄一(日本ナショナル)+13'26"
74位 木守望(愛三工業)+16'03"
77位 六峰亘(日本ナショナル)+16'51"
99位 綾部勇成(愛三工業)+30'56"
100位 清水太己(日本ナショナル)+31'39"

ポイント賞
オスカル・プジョル(スペイン、アザド大学)

山岳賞
フェン・チュンカイ(台湾、アクション)

チーム総合首位
オーストラリアナショナル


photo & text : Sonoko Tanaka

最新ニュース(全ジャンル)