前日に「短い登りのステージや逃げを狙いたい」と話していた土井雪広(アルゴス・シマノ)が、クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ第1ステージで早速逃げた。ステージ優勝の行方は終盤のアタック合戦に委ねられ、カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)が逃げ切りを飾っている。

逃げグループを形成する土井雪広(アルゴス・シマノ)ら逃げグループを形成する土井雪広(アルゴス・シマノ)ら photo:Cor Vos「逃げようかどうか迷っていた(ロードステージ)初日。今日は山岳賞でどこまで自分にチャンスがあるのかを確かめるという意味もあった」。全日本チャンピオンジャージを着る土井雪広は、レース序盤に形成された逃げグループに飛び乗った。

マーティン・チャリンギ(オランダ、ラボバンク)やセプ・ファンマルク(ベルギー、ガーミン・バラクーダ)と言った大柄な選手5名と一緒に、小柄な土井がローテーションを回す。

マイヨジョーヌを着るルーク・ダーブリッジ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)マイヨジョーヌを着るルーク・ダーブリッジ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) photo:Cor Vosこの日は2級山岳を含めて6つのカテゴリー山岳が設定された187km。プロトン相手に最大13分のリードを得た土井ら6名は、順調に山岳をこなしていく。2級山岳を4番手、4級山岳を2番手、3級山岳を3番手、4級山岳を3番手通過した土井はこの日を終えて山岳賞4位に。

プロトンを率いたのはチームスカイ。これにオメガファーマ・クイックステップやBMCレーシングチーム、オリカ・グリーンエッジ、ソール・ソジャサンが加わると、逃げグループとのタイム差は見る見るうちに少なくなって行く。

曇り空のフランス南東部を走る曇り空のフランス南東部を走る photo:Cor Vosゴールまで25kmを残してタイム差は2分。逃げグループの中で生き残りをかけたアタックが始まると、中からマルケル・イリサール(スペイン、レディオシャック・ニッサン)が飛び出して独走。土井は遅れてしまった。

土井は「他の逃げメンバーはみんなでかくて、平地が速くてまるでモンスター。さすがツールに向かって仕上げている選手は違うと感じました。自分のコンディションも悪くはないけど、風が強かったので軽量系の選手には不利だった。それに、逃げに入るまでの20分間、コフィディスの選手と全開で先頭4人を追ったので、そこでかなり体力を消耗してしまった」と振り返る。

逃げグループを形成する土井雪広(アルゴス・シマノ)ら逃げグループを形成する土井雪広(アルゴス・シマノ)ら photo:Cor Vos「エーススプリンターがパンクしたので、ホイールを渡して自分の仕事は終了」。エースのジョン・デゲンコルブ(ドイツ)にホイールを渡した土井は、7分遅れでゴールした。

「実は他のチームメイトもそこにいたけど、誰もホイールを渡したがらない。ツールのセレクションがかかっているからみんな自分の成績を残すことに必死になっている」。ツールに向けたチーム内抗争が静かに起こっていることを伺わせた。

落車したサムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)が23分遅れでゴールを目指す落車したサムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)が23分遅れでゴールを目指す photo:Cor Vos先頭イリサールを捉えたメイン集団は、ハイスピードでこの日最後の3級山岳シゼランヌを駆け上がる。ここで飛び出す選手は出なかったが、逆にアンディ・シュレク(ルクセンブルク、レディオシャック・ニッサン)とアレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)が遅れるという波乱が起きた。両者は3分10秒遅れでゴールしている。

マイヨジョーヌを着るルーク・ダーブリッジ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)も集団から脱落。この登りでメイン集団は90名ほどに人数を減らす。3級山岳シゼランヌの頂上からゴールまでは9km。テクニカルなダウンヒル区間に差し掛かった。

下りで長く伸びたメイン集団から、カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)、ジェローム・コッペル(フランス、ソール・ソジャサン)、アンドレイ・カシェチキン(カザフスタン、アスタナ)の3人がアタック。独走力を備えた3名が協力してメイン集団を突き放す。

ゴールスプリントで先行するカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)ゴールスプリントで先行するカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム) photo:Cor Vos多くのスプリンターを失ったメイン集団は統率力を欠き、先頭3名を捉えるには至らない。メイン集団を後方に従えたエヴァンス、コッペル、カシェチキンの3名が、4秒リードのままスプリント。総合成績のために積極的に前を引き続けたエヴァンスが、コッペルとカシェチキンを下した。

マイヨジョーヌに袖を通すブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)マイヨジョーヌに袖を通すブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ) photo:Cor Vosツールに向けてコンディションの良さとモチベーションの高さを見せつけたエヴァンス。「道が細くてテクニカルなダウンヒルだった。プロトンから飛び出すチャンスを見つけてアタックしたんだ。同じようなシチュエーションにいれば、誰もがアタックしていたはず。自分はレーサーであり、レースが好きで、今日のような動きも好きなんだ」。

1秒差でマイヨジョーヌ獲得はならなかったが、エヴァンスは前に向かって進み続ける。「ここまで良いトレーニングを積めていることの確認になった。でもまだツール・ド・フランスに向けてすべきことを山ほどある」。

ダーブリッジが遅れたため、メイン集団内でゴールしたブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)が総合首位に。「自分のスキンスーツを着て木曜日のタイムトライアルを走りたいので、この先のステージであえて数秒失いたい」。マイヨジョーヌを守ることへの意気込みは薄い。

レース前半に落車したサムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)は、チームメイト2人にサポートされて23分遅れでゴール。幸い骨折は免れている。この日は一日を通して落車の連続で、ピエリック・フェドリゴ(フランス、FDJ・ビッグマット)やダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・バラクーダ)も落車に遭っている。

ウィギンズとエヴァンスのコメントはレース公式サイトより。

クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ2012第1ステージ結果
1位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)      4h36'21"
2位 ジェローム・コッペル(フランス、ソール・ソジャサン)
3位 アンドレイ・カシェチキン(カザフスタン、アスタナ)
4位 ナセル・ブアニ(フランス、FDJ・ビッグマット)              +04"
5位 トニー・ギャロパン(フランス、レディオシャック・ニッサン)
6位 ボルト・ボジッチ(スロベニア、アスタナ)
7位 ゲラルド・チオレック(ドイツ、オメガファーマ・クイックステップ)
8位 ジュリアン・シモン(フランス、ソール・ソジャサン)
9位 ダニエーレ・ラット(イタリア、リクイガス・キャノンデール)
10位 エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、チームスカイ)
170位 土井雪広(日本、アルゴス・シマノ)                  +7'03"

個人総合成績
1位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)           4h43'04"
2位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)        +01"
3位 アンドレー・グリブコ(ウクライナ、アスタナ)               +02"
4位 カルロス・バレード(スペイン、ラボバンク)                +02"
5位 トニ・マルティン(ドイツ、オメガファーマ・クイックステップ)       +04"
6位 ポール・マルテンス(ドイツ、ラボバンク)                 +04"
7位 シルヴァン・シャヴァネル(フランス、オメガファーマ・クイックステップ)  +05"
8位 ジェローム・コッペル(フランス、ソール・ソジャサン)           +06"
9位 アンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター)              +06"
10位 エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、チームスカイ)       +06"
152位 土井雪広(日本、アルゴス・シマノ)                   +7'36"

ポイント賞
カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)

山岳賞
ジョヴァンニ・ベルノドー(フランス、ユーロップカー)

新人賞
エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、チームスカイ)

チーム総合成績
チームスカイ

text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos