ミラノで行われた最終第21ステージは28.2kmの個人タイムトライアル。ライダー・ヘジダルは6位のタイムでホアキン・ロドリゲスとの総合順位を逆転し、16秒差でマリアローザを獲得。カナダ人初のジロ覇者になった。

ドゥオーモをぐるりと半周してゴールドゥオーモをぐるりと半周してゴール photo:Kei Tsuji総合4位につけていたトーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM)はステージ5位のタイムをマーク。ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・ISD)との差を逆転し、総合3位に。自身2度目のグランツール参戦にして初の表彰台を獲得した。

最速タイムでステージを制したのはマルコ・ピノッティ(BMC)。33分06秒のタイムで2008年ジロの最終ステージに次いでミラノでの個人TTでステージ優勝を挙げた。また、チーム総合成績はモビスターからランプレISDに。

最期までもつれ込んだミラノ市街でのマリアローザ決戦

市街地のメイン通りを繋いで行くコースはほぼ真っ平ら。コーナーが連続し、トラムの線路がコースを横切り、使い古された石畳が点在する。ゴール地点は昨年同様、荘厳な教会に見下ろされたドゥオーモ広場だ。
当初31.5kmだったコースはミラノ市街の交通の都合により一部変更され、28.2kmに短縮となっている。

前日までの激しい山岳バトルを乗り越え、最終日に走ることができるのは157人の選手たち。酷使した脚を振り絞り、3503.9kmの闘いを締めくくる。

試走を終えたトーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM)試走を終えたトーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM) photo:Kei Tsujiホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)のバイクはピンクホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)のバイクはピンク photo:Kei Tsuji


マリアローザを争う第95代チャンピオン、そして表彰台に登壇できる3人目はとうとう最終ステージまで予想がつかない戦いとなった。総合トップのホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) と2位ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・バラクーダ) のタイム差はわずか31秒。タイムトライアルの得意なヘジダルが、いつもタイムトライアルでタイムを失うロドリゲスにリーチを掛ける。
総合3位争いも微妙だ。第20ステージで驚異的な走りを披露したトーマス・デヘント(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM)は2011年ツール・ド・フランス第20ステージ個人TTで4位のタイムを出していることで、グランツール終盤の個人TTでの強さを証明している。TTの得意と言えない総合3位のミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・ISD) のポディウムの座は危うい。
総合成績の下位の選手からコースへと走りだしていく。

別府史之が2年連続2度目のジロ・デ・イタリア完走

別府史之(オリカ・グリーンエッジ)は36分14秒のタイム。結果的にはステージ71位でゴールし、ジロ・デ・イタリア2度目、そして3度目のグランツール完走を果たした。

スタート前に紹介を受ける別府史之(オリカ・グリーンエッジ)スタート前に紹介を受ける別府史之(オリカ・グリーンエッジ) photo:Kei Tsujiスタートを切る別府史之(オリカ・グリーンエッジ)スタートを切る別府史之(オリカ・グリーンエッジ) photo:Kei Tsuji


トップタイムはピノッティ 2度目のミラノ個人TTを制する

トップタイムを叩き出したマルコ・ピノッティ(イタリア、BMCレーシングチーム)トップタイムを叩き出したマルコ・ピノッティ(イタリア、BMCレーシングチーム) photo:Riccardo Scanferlaステージ狙いの有力勢でまずマークすべきタイムを出したのはゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)の33分45秒。そのタイムを一気に39秒上回ったのがマルコ・ピノッティ(イタリア、BMCレーシングチーム)だった。3週間の戦いを経て平均時速は驚きの51km/h! 総合力を備えながら、何度もイタリアTTチャンピオンに輝いている36歳のベテラン選手であるピノッティのこのタイムは結局最後まで破られることはなかった。

マリアローザと表彰台を争う選手たちが、終盤2分おきに次々にコースへと走りだしていく。
筋肉質の身体を生かし、重いギアを踏むデヘントはスタートからうまくスピードに乗せる。昨日の激しいステージで消耗しているのか、それともまだ脚が残っているのかは走らなければわからない。

ヴァン・ヘイレンの「JUMP」のBGMに送られた最終走者は全身ピンクに身を包んだロドリゲスだ。小柄な身体で懸命にペダルを踏みしめる。今まで個人TTの遅さがもとで落としたステージレースは数知れず。しかし悲願のマリアローザへ向けてのモチベーションが後押しする。

脚の筋肉に頼るデヘントの走りは中間計測で暫定5位のタイムをマーク。ペースの上がらないバッソに抜かれないことは確実となり、さらに表彰台に向けて期待が高まる。しかしスカルポーニは+11秒のタイムで暫定13位と大健闘。ポディウムをキープできる可能性が高まる。
ヘジダルは13分55秒で通過し、暫定5位と順調な走り。そしてロドリゲスの通過タイムは14分24秒。この時点でマリアローザはわずか2秒のマージンとなってしまう。

平坦路を快走するライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・バラクーダ)平坦路を快走するライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・バラクーダ) photo:Riccardo Scanferla最終走者のホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)が平坦路を駆ける最終走者のホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)が平坦路を駆ける photo:Riccardo Scanferla


コーナーの内側ギリギリを行くヘジダルは、荒れた路面にスリップする危ういシーンも見せ、誰の目にも限界まで攻める走り。対してロドリゲスは限界まで攻めるもののコーナーで膨むロスも見せた。

第2計測地点ではスカルポーニがタイムを落とし、同じペースを刻み続けるデヘントに対するマージンは5秒になり、表彰台を逃す可能性が出てくる。ヘジダルはデヘントとほぼ同タイムで通過。

総合5位イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス・キャノンデール) の走りは伸びず、35分12秒の暫定24位でフィニッシュ。デヘントは34分07秒で暫定5位の好タイムでフィニッシュ。この時点でピノッティのステージ優勝はほぼ確定的に。

ステージ5位 トーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM)ステージ5位 トーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM) photo:Kei Tsujiステージ22位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・ISD)ステージ22位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・ISD) photo:Kei Tsujiステージ28位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)ステージ28位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス・キャノンデール) photo:Kei Tsuji


スカルポーニは35分00秒でフィニッシュし、デヘントに対して+53秒を喫して表彰台を逃す結果になった。
ヘジダルは34分15秒で、暫定6位でフィニッシュ。しかし第2計測地点からゴールまでのタイムを落としたことでロドリゲスにマリアローザ保持の希望の光が灯る。
ミラノへ向けて健闘を続けるロドリゲス。ペースを上げてドゥオーモに到達するが、35分02秒でステージ26位のフィニッシュ。ヘジダルに対し47秒遅れ、わずか16秒差でマリアローザを失うことになった。

ゴールに向かって突き進むライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・バラクーダ)ゴールに向かって突き進むライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・バラクーダ) photo:Kei Tsujiゴール後、出し切った表情を見せるホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)ゴール後、出し切った表情を見せるホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) photo:Riccardo Scanferla


ヘジダルがカナダ人初のジロ、グランツール覇者に

激戦をへてロドリゲスにわずか16秒差でジロ・デ・イタリア第95代チャンピオンに輝いたライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・バラクーダ) 。
マウンテンバイクのクロスカントリー競技をルーツにもつヘジダル。2010年ツール・ド・フランスでは総合7位で終えているヘジダルが初のグランツールの表彰台、それもジロのポディウムの中央を射止めた。
カナダ人のグランツール覇者は史上初の快挙だ。

ステージ優勝を飾ったマルコ・ピノッティ(イタリア、BMCレーシングチーム)ステージ優勝を飾ったマルコ・ピノッティ(イタリア、BMCレーシングチーム) photo:Kei Tsuji2012年ジロ・デ・イタリア総合表彰台2012年ジロ・デ・イタリア総合表彰台 photo:Riccardo Scanferla


総合優勝トロフィーにキスをするマリアローザにキスをするライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・バラクーダ)総合優勝トロフィーにキスをするマリアローザにキスをするライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・バラクーダ) photo:Kei Tsuji優勝トロフィーをミラノの空に掲げるライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・バラクーダ)優勝トロフィーをミラノの空に掲げるライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・バラクーダ) photo:Riccardo Scanferla


ジロ・デ・イタリア2012第21ステージ結果
1位 マルコ・ピノッティ(イタリア、BMCレーシングチーム)33′06″
2位 ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)+39″
3位 ジェシー・サージェント(ニュージーランド、レディオシャック・ニッサン)+53″
4位 アレックス・ラスムッセン(デンマークガーミン・バラクーダ)+01′00″
5位 トーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM)+01′01″
6位 ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・バラクーダ) +01′09″
7位 グスタフエリック・ラーション(スウェーデンヴァカンソレイユ・DCM)+01′14″
8位 マチェイ・ボドナール(ポーランド、リクイガス・キャノンデール)+01′15″
9位 スヴェイン・タフト(カナダ、オリカ・グリーンエッジ)+01′22″
10位 ジュリアン・ヴェルモト(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)+01′23″
71位 別府史之(オリカ・グリーンエッジ)+03′08″

個人総合成績
1位 ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・バラクーダ) 91h04'16"
2位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)+16″
3位 トーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM)+01′39″
4位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・ISD) +02′05″
5位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス・キャノンデール) +03′44″
6位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD)+04′40″
7位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、チームスカイ) +05′57″
8位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス) +06′28″
9位 セルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア)+07′50″
10位 ミケル・ニエベ(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ)+08′08″
121位 別府史之(オリカ・グリーンエッジ)+04h6′56″

ポイント賞 マリアロッサ・パッシオーネ
ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)

山岳賞 マリアアッズーラ 
マッテオ・ラボッティーニ(イタリア、ファルネーゼヴィーニ・セッレイタリア)

新人賞 マリアビアンカ
リゴベルト・ウラン(コロンビア、チームスカイ)

TVポイント賞
マルティン・ケイゼル(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM)

アッズーリ・デ・イターリア賞
マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームスカイ)

フーガ賞
オリヴィエ・カイセン(ベルギー、ロット・ベリソル)

敢闘賞
マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームスカイ)

フェアープレイチーム
オメガファーマ・クイックステップ

スーパーチーム賞
ガーミン・バラクーダ


text:MakotoAYANO
photo:CorVos,Kei.Tsuji,Ricccardo.Scanferla