休息日空けのジロ・デ・イタリア第16ステージは10人の逃げが成功。さらにゴール前ラスト4.6kmの坂で飛び出したヨン・イサギーレ(スペイン)が逃げ切って勝利した。

総合上位陣は約9分遅れで集団でフィニッシュ。上位10人に変動はなく、マリアローザはホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)が守った。

ブドウ畑の広がる渓谷を北上するブドウ畑の広がる渓谷を北上する photo:Kei Tsuji

マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームスカイ)をはじめ、各賞ジャージがスタートライン最前列にマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームスカイ)をはじめ、各賞ジャージがスタートライン最前列に photo:Riccardo Scanferla10人のアタックが決まる

スタート直後、ガルダ湖沿いの平坦路でペースが上がるスタート直後、ガルダ湖沿いの平坦路でペースが上がる photo:Riccardo Scanferla休息日が明けた16ステージはガルダ湖のほとりの街リモーネ・スル・ガルダからファルツェスまでの173kmで行われた。
カテゴリー山岳が1つも設定されていないにも関わらず、コースの難易度は3つ星。その秘密はゴール前にある。北イタリアの保養地ガルダ湖畔をスタートし、渓谷に沿って173kmを北上する。平坦ながら緩やかな上り基調の、道を進み、イタリア国内でありながらドイツ語が話されているチロル地方へと脚を踏み入れる。
そしてイタリア語名ファルツェス、ドイツ語名ファルツェンと呼ばれる山間の街に向かって、カテゴリー未設定の急勾配の登りが数キロにわたって続く。ゴール前4.6kmから約2kmにわたって最大12%の登りをこなし、2kmの平坦路を経てゴールへと至る。

トンネルが断続的に登場するガルダ湖沿いの平坦路トンネルが断続的に登場するガルダ湖沿いの平坦路 photo:Riccardo Scanferlaこのゴールが前回登場したのは2004年大会のジロ。当時はダミアーノ・クネゴ(当時サエコ)が独走アタックで優勝を飾り、マリアローザを決定的にしたステージだ。当時のサエコのエースはジルベルト・シモーニ。しかしマークがきつかったディフェンディングチャンピオンのシモーニがアシスト役のクネゴに独走アタックを命じ、13分の大きなタイム差がついてしまったために自らのジロ連覇のチャンスを逃してしまったという因縁のゴール地点だ。

2週間の疲れを1日の休養日で癒すことができたか、リフレッシュした174人の選手たちがジロ最終週の闘いにスタートしていく。ステファノ・ロカテッリ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス)がスタートせず。

美しいガルダ湖をスタートした時の気温は20度。しかしゴール地点の天候は冴えず、雨の可能性も報じられていた。休息日開け、そしてこのコースプロフィールでは必ずといっていいほど逃げができる。スタート8kmで定石通り飛び出したのは10人の選手たち。

逃げた10人の選手たち
ヨン・イサギーレ(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ)
アレッサンドロ・デマルキ(イタリア、アンドローニ・ジョカトリ)
スタフ・クレメント(オランダ、ラボバンク)
マティアス・フランク(スイス、BMCレーシングチーム)
ホセ・エラーダロペス(スペイン、モビスター)
マヌエーレ・ボアーロ(イタリア、チームサクソバンク)
マティアス・ブランドル(オーストリア、チームネットアップ)
ニコラス・マース(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)
ラルスイティング・バク(デンマーク、ロット・ベリソル)
ルーカ・マッツァンティ(イタリア、ファルネーゼヴィーニ・セッレイタリア)

大きなリードを得て逃げ続ける選手たち大きなリードを得て逃げ続ける選手たち photo:Kei Tsuji逃げはすぐに容認され、集団との差を開き始める。逃げた選手の中でもっとも総合成績がいいのはエラーダロペス(モビスター)の32分遅れとあって、集団は追う理由がなかった。タイム差は13分近くにのぼり、ゴール前4.6kmの坂が近づくまで縮まる気配さえ見せなかった。

ラスト4.5kmから始まる登りでアタックするヨン・イサギーレ(スペイン、エウスカルテル)ラスト4.5kmから始まる登りでアタックするヨン・イサギーレ(スペイン、エウスカルテル) photo:Riccardo Scanferla逃げグループ内でアタックがかかったのもゴール4.6kmの上りに入ってからだ。登り初めのサインであるコーナーを曲がると、まずエラーダロペス(モビスター)がアタック。すぐさまイサギーレ(エウスカルテル)が反応し、フランク(BMC)、デマルキ(アンドローニ・ジョカトリ)が続く。
この4人がやや抜け出す形で12%の勾配が待つ坂へと登り続けていく。

小柄な体を生かして差を開いたのはイサギーレ。連日逃げのアタックを繰り返しているデマルキが追いすがるも、追いつけないまま頂上を越え、ゴールまで2.3kmの平坦区間へと入る。

ラスト4.5kmから始まる登りでアタックするヨン・イサギーレ(スペイン、エウスカルテル)ラスト4.5kmから始まる登りでアタックするヨン・イサギーレ(スペイン、エウスカルテル) photo:Riccardo Scanferlaイサギーレは懸命にペダルを踏み続ける。後ろはデマルキ、フランク、エラーダロペスの3人が協力しあって追うが、その差は縮まらない。そしてその3人からフランクが脱落。後方からはクレメント(ラボバンク)が追い上げてきていた。

しかしイサギーレの勢いは衰えなかった。差を開いたままゴールへと飛び込み、感無量のポーズでフィニッシュ。プロ入り2年目の23歳のバスク人選手が、グランツール初の勝利を挙げた。

後続を振り切り、独走でゴールするヨン・イサギーレ(スペイン、エウスカルテル)後続を振り切り、独走でゴールするヨン・イサギーレ(スペイン、エウスカルテル) photo:Riccardo Scanferla後続は16秒遅れでデマルキが先頭でゴール。悔しさに顔を歪ませて、ハンドルを叩きながらフィニッシュラインを超えた。3位は追い上げてきたクレメント。19秒遅れの4位にフランク。逃げた10人は結局9分の差を持ってゴールにバラバラと到達した。

メイン集団は上りで43人まで人数を絞り、総合争いの有力選手をすべてこのなかに含んでフィニッシュ。無駄に体力を使わず、明日からの難関山岳に備えてスプリントさえしない省エネの徹底ぶりで走りきった。もちろんマリアローザはロドリゲス(カチューシャ)がキープ。
ポイント賞マリアロッサ・パッシオーネはカヴェンディッシュ(チームスカイ)、山岳賞 マリアアッズーラはラボッティーニ(ファルネーゼヴィーニ)、新人賞マリアビアンカはエナオモントーヤ(チームスカイ)
がそれぞれキープした。

集団最前列で登りをこなすホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)集団最前列で登りをこなすホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) photo:Kei Tsuji優勝した ヨン・イサギーレ(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ)のコメント

今シーズンでプロ入り2年目なんだ。でもこれが今までで最も大きな勝利。ジロの第3週でステージ優勝できたということは、僕は回復力に優れたいいステージレーサーだということを意味しているよね。
カチューシャチームやロドリゲスとはとくに逃げを容認する取り決めはなかったよ。僕らには強くて総合が狙えるミケル・ニエベがいる。これから僕らは彼を助けて走るよ。

ジロ・デ・イタリア2012第16ステージ結果
1位 ヨン・イサギーレ(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ)4h02'00"
2位 アレッサンドロ・デマルキ(イタリア、アンドローニ・ジョカトリ)+16″
3位 スタフ・クレメント(オランダ、ラボバンク)
4位 マティアス・フランク(スイス、BMCレーシングチーム)+19″
5位 ホセ・エラーダロペス(スペイン、モビスター)+21″
6位 マヌエーレ・ボアーロ(イタリア、チームサクソバンク)+37″
7位 マティアス・ブランドル(オーストリア、チームネットアップ)+43″
8位 ニコラス・マース(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)+45″
9位 ラルスイティング・バク(デンマーク、ロット・ベリソル)
10位 ルーカ・マッツァンティ(イタリア、ファルネーゼヴィーニ・セッレイタリア)+48″

個人総合成績
1位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) 69h22'04"
2位 ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・バラクーダ) +30″
3位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス・キャノンデール) +01′22″
4位 パオロ・ティラロンゴ(イタリア、アスタナ) +01′26″
5位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、アスタナ) +01′27″
6位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・ISD) +01′36″
7位 ベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター) +01′42″
8位 セルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア、チームスカイ) +01′55″
9位 ダリオ・カタルド(イタリア、オメガファーマ・クイックステップ)+02′12″
10位 サンディ・カザール(フランス、FDJ・ビッグマット) +02′13″

ポイント賞 マリアロッサ・パッシオーネ
マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームスカイ)

山岳賞 マリアアッズーラ
マッテオ・ラボッティーニ(イタリア、ファルネーゼヴィーニ・セッレイタリア)

新人賞 マリアビアンカ
セルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア、チームスカイ)

チーム総合成績
モビスター


text:Makoto.AYANO
photo:Kei.TSUJI,CorVos,Riccardo Scanferla

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