レース最大のハイライトとなるマウントバルディ山頂ゴールが待つステージで前年覇者クリス・ホーナーとレディオシャック・ニッサン勢の総攻撃がかかった。しかし山頂を制したのはロバート・ヘーシンク(ラボバンク)。ステージと総合の両方を手中に収めた。

バルディー山頂を制したロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)バルディー山頂を制したロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク) (c)CorVos

スタート前に談笑する元チームメイトのクリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・ニッサン)とリーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、オメガファーマ・クイックステップ)スタート前に談笑する元チームメイトのクリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・ニッサン)とリーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、オメガファーマ・クイックステップ) (c)www.amgentourofcalifornia.com第7ステージはオンタリオ〜マウントバルディの126.0km。ステージの距離は短いながらも、序盤にある標高1380mのグレンドラリッジ山岳ポイントを越え、ゴール地点となるバルディ山へと上り詰める厳しいステージだ。フィニッシュラインの待つスキーリゾートは標高約1964m。急勾配の15のつづら折れの坂を登る先にある山頂フィニッシュがツアー・オブ・カリフォルニアの勝者を決めるだろう。

第7ステージをスタートする選手たち第7ステージをスタートする選手たち (c)www.amgentourofcalifornia.comレースはスタートしてすぐにアタックが開始され、12人の逃げが決まる。逃げの中でもっとも総合成績が上位なのは2分7秒差につけるマルク・デマール(ユナイテッドヘルスケア)だが、この逃げ集団の中にはレディオシャック・ニッサンからイェンス・フォイクト、ジョージ・ベネット、グレゴリー・ラスト、クリストファー・ホーナーの4人もの選手が入った。レディオシャックはここまでの総合で2分50秒のタイムを失っている前年覇者ホーナー(アメリカ)のステージ優勝、あるいは一発大逆転による総合成績のジャンプアップを狙っているのだ。

平坦路ではフォイクトが力強く牽引し、逃げのタイムを3分にまで開く。後続メイン集団はガーミンに加えてラボバンクがコントロールし、差を大きくは開かせない作戦だ。
第7ステージに走りだしていく選手たち第7ステージに走りだしていく選手たち (c)www.amgentourofcalifornia.comフォイクトがゴールまで残り40㎞のバルディー山登り口までの牽引を終え遅れていくと、ホーナーが一人でペースを上げ始める。そのスピードに逃げグループは急速に分解。反応できたダーウィン・アタプーマ(コロンビア、コロンビア・コルデポルテ)だけがホーナーに喰らいついて行く。

ここからのホーナーの走りが驚異的だった。ひとりで飛ばし続けるディフェンディングチャンピオンは、組織だって追走するメイン集団との差をじりじりと開き出す。残り30km地点ではタイム差は3分40秒になり、ヴァーチャルリーダーに。
レディオシャック・ニッサンの4人が入った逃げ集団が強力に先行するレディオシャック・ニッサンの4人が入った逃げ集団が強力に先行する (c)CorVos追走集団もペースは上げている。メイン集団からはトム・ボーネン(オメガファーマ・クイックステップ)や土井雪広(アルゴス・シマノ)らをはじめ、次々と選手たちが脱落していく。

破壊力のあるホーナーの走りに焦りの見え始めたメイン集団。ガーミン勢もアシストを使い果たし、ザブリスキーを守るのはトム・ダニエルソンだけになる。代わってBMCレーシングも牽引をはじめる。それを手伝うラボバンク。BMCは総合2位につけるティージェイ・ヴァンガーデレンのために、そしてラボバンクは総合3位につけるロバート・ヘーシンクのために。

終盤の集団をラボバンクがコントロールする終盤の集団をラボバンクがコントロールする (c)CorVos残り20kmを切ってから差は徐々に縮まり出す。残り15kmで1分30秒、残り10kmで1分25秒。ホーナーとアタプーマの逃げ切りが怪しくなってきた。

残り5kmを切ったところでホーナーの後方で力を温存していたアタプーマがアタック。ホーナーを置き去りにして独走をはじめる。
時を同じにして後方追走集団ではラボバンクのペースアップからヘーシンクがアタック。それにダニエルソン(ガーミン)とヴァンガーデレン(BMC)が追いすがる。しかしリーダージャージのザブリスキーはこれについていくことができず、後退を始める。リーダージャージのピンチだ。そして総合上位陣に逆転の可能性が出てきた。

アシストに守られたロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)が追い上げるアシストに守られたロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)が追い上げる (c)CorVosダンシングを続けハイペースを刻むヘーシンクは、ゴールまで残り3kmでアタプーマに追いつく。アタプーマは遅れることなくヘーシンクの後輪に食い下がり、ステージ優勝に向けて意欲を見せる。いったん勾配が緩くなり、そして急勾配のゴールまでの坂をテールトゥノーズで上るふたり。

バルディ山頂を制したロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)バルディ山頂を制したロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク) (c)CorVosゴールまでの残り2つの急コーナーでアタプーマがインコーナーに差し込んで先行を狙うが、ヘーシンクが再び力で抑え込む。しかしヘーシンクはオーバースピードでゴール前50mの最終コーナーで膨らみ、あわやバリアに接触しかける。しかしすれすれでクリアして、踏みなおしてゴール。僅差でアタプーマを下しステージ優勝を挙げた。ヘーシンクのカリフォルニアでの勝利は2008年の第4ステージに遡る。

後続は14秒遅れでファビオアンドレス・ドゥアルテ(コロンビア、コロンビア・コルデポルテ)が3位に。そしてリーダージャージのザブリスキーは10位圏外でフィニッシュし、総合首位もヘーシンクに移った。
総合3位にはダニエルソンが上がった。

ヘーシンクは昨年9月の世界選手権を前にしたトレーニング中に落車し、右大腿骨を骨折するという大怪我を負った。今回の勝利はそれ以来の怪我からの完全復活を証明する勝利と言えそうだ。

ツアー・オブ・カリフォルニアは残り1ステージ。明日の最終第8ステージは平坦基調のロードレースで、ゴールはロサンゼルスのクリテリウム。タイム差がつきにくいスプリントステージのため、総合争いはほぼ今日で終わりだ。

ステージ勝利と総合リーダーを手に入れたロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)のコメント

「僕は復活した! 先月は本当にハードに練習して追い込んできた。でもなかなかうまく波に乗れなくて苦しんだんだ。アスリートとして難しい時期だった。いつでも勝利を待っていたんだ。そしてこの難しい上りでハイレベルに戻ったことを証明できたのは本当に信じられないことだ。
1年ちょっと前に僕は父を亡くし、死んだような気分になっていた。そして負傷し、困難な年を過ごした。ホーナーやザブリスキー、ティージェイ(ヴァンガーデレン)らを下しての勝利はほんとうに信じられないくらいうれしいね」。

ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)が総合リーダーも獲得 赤ちゃんと一緒にポディウムに上がるロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)が総合リーダーも獲得 赤ちゃんと一緒にポディウムに上がる (c)CorVos


クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・ニッサン)のコメント
「ゴールした時、全く悪い気分ではなかったね。ショーをやり遂げたかったけど、ただうまく行かなかっただけ。僕が本当に欲しかったのは総合成績だった。それをとるにはすべてのリスクをとらなければいかなかった。皆がショーを楽しんだんじゃないかと思う。
チームは最初僕にステージ優勝を狙わせたかったけど、僕は総合優勝しにこのレースに来たんだ」。

※写真は現地より届き次第追加します。

ツアー・オブ・カリフォルニア2012第7ステージ結果
1位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)3h37'08"
2位 ダーウィン・アタプーマ(コロンビア、コロンビア・コルデポルテ) 
3位 ファビオアンドレス・ドゥアルテ(コロンビア、コロンビア・コルデポルテ)+14"
4位 ジョセフ・ドムブラウスキー(アメリカ、ボントレガー・リブストロング)+18"
5位 トム・ダニエルソン(アメリカ、ガーミン・バラクーダ)+26"
6位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・ニッサン)+35"
7位 ウィルコ・ケルデマン(オランダ、ラボバンク)+1'04"
8位 ティアゴ・マシャド(ポーランド、レディオシャック・ニッサン)+1'06"
9位 リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、オメガファーマ・クイックステップ)+1'08"
10位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)+1'22"

個人総合成績
1位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)29h14'52"
2位 デーヴィッド・ザブリスキー(アメリカ、ガーミン・バラクーダ)+46"
3位 トム・ダニエルソン(アメリカ、ガーミン・バラクーダ)+54"
4位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)+1'17"
5位 ファビオアンドレス・ドゥアルテ(コロンビア、コロンビア・コルデポルテ)+1'36"
6位 リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、オメガファーマ・クイックステップ)+2'13"
7位 ウィルコ・ケルデマン(オランダ、ラボバンク)+2'30"
8位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・ニッサン)+2'49"
9位 ティアゴ・マシャド(ポーランド、レディオシャック・ニッサン)+2'54"
10位 ピーター・ウィーニング(オランダ、ラボバンク)+3'05"

山岳賞
セバスティアン・サーラス(カナダ、オプタム)

ポイント賞
ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)

新人賞
ルーク・ダーブリッジ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)

チーム総合
レディオシャック・ニッサン

text:Makoto.AYANO
photo:Mark johnson/CorVos,amgentourofcalifornia