ジロ・デ・イタリアの厳しい山岳ステージで総合が動く。初の頂上ゴールが設けられた第14ステージでは序盤から逃げたアンドレイ・アマドールがステージ優勝。精鋭グループから先行したライダー・ヘジダルがマリア・ローザに再び袖を通した。

スタート直後からアタックが繰り返されるスタート直後からアタックが繰り返される photo:Kei.Tsujiいよいよ本格的な総合争いがスタートする第14ステージは、イタリア北部の街ケラスコをスタートし、トリノを経由してスイスとの国境にほど近いチェルヴィニアにかけての206kmで争われた。

先頭グループに向けてメイン集団からジャンプする別府史之(オリカ・グリーンエッジ)先頭グループに向けてメイン集団からジャンプする別府史之(オリカ・グリーンエッジ) photo:Kei.Tsujiスタート後から中盤までは比較的フラットなコースプロフィールだが、まずは159.9km地点に1級山岳コル・ド・ジューをクリア。一気にダウンヒルをこなすとマッターホルンのふもと、1級山岳チェルヴィニアへと突入する。

雨の中、山岳地帯を目指すプロトン雨の中、山岳地帯を目指すプロトン photo:Kei.Tsuji標高2001mに用意された頂上ゴールへ向けて標高差およそ1500mを稼ぎ出す上りのスペックは、平均勾配5.5%、距離27kmと非常に難易度が高く、難易度は5つ星が付けられる。このステージでマリア・ローザ争いの最初のシャッフルがかけられるものと予想された。

ここから厳しい山岳ステージが連続するため、この日は多くのスプリンターがスタートせず。

マーク・レンショー(オーストラリア、ラボバンク)マシュー・ゴス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)フアンホセ・アエド(アルゼンチン、チームサクソバンク)などがジロを去る一方、ポイント賞ジャージを着るマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームスカイ)は、目標とするミラノでのジャージ着用を目差してスタートラインについた。

レースは激しいアタック合戦で幕開ける。アタックと吸収を繰り返したまま距離を消化し、およそ50kmを走行した地点で数名が先行。集団もしばらくの追走したもののこの動きを容認し、この日の8名による逃げグループが形成された。

逃げた8名
アンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター)
マッテーオ・モンタグーティ(フランス、アージェードゥーゼル・ラモンディアール)
アレッサンドロ・デマルキ(イタリア、アンドローニジョカトリ)
ピエールパオロ・デネグリ(イタリア、ファルネーゼヴィーニ)
オリビエ・カイセン(ベルギー、ロット・ベリソル)
ニコラス・マース(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)
ネルソン・オリヴェイラ(ポルトガル、レディオシャック・ニッサン)
ヤン・バルタ(チェコ、チームネットアップ)

プレミオ・デッラ・フーガ(逃げ賞)を争うカイセンはこの日も逃げに乗ることに成功。昨ステージでマルティン・ケイゼル(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM)に奪われたプレミオ・デッラ・フーガ(逃げ賞)をこの日終了時点で引き戻すことに成功した。

1級山岳チェルヴィニアを目指すピエルパオロ・デネグリ(イタリア、ファルネーゼヴィーニ)とマッテオ・モンタグーティ(イタリア、アージェードゥーゼル)1級山岳チェルヴィニアを目指すピエルパオロ・デネグリ(イタリア、ファルネーゼヴィーニ)とマッテオ・モンタグーティ(イタリア、アージェードゥーゼル) photo:Kei.Tsuji協調体制を取って逃げ続ける先頭8名は、137.5km地点から始まるジュー峠の入口で集団に対して約12分のアドバンテージを獲得する。そしてまず上り初めの区間でバルタがアタックすると、デネグリ、モンタグーティ、アマドール、デマルキの4名が追走グループを形成して頂上をクリアした。

ドライとウェットが入り混じるテクニカルな下りではバルタのペースが上がらず。やがて追走4名から下りで抜けだしたアマドールがバルタをパスして単独先頭に立つ。

霧立ちこめる1級山岳チェルヴィニアを登るプロトン霧立ちこめる1級山岳チェルヴィニアを登るプロトン photo:Kei.Tsujiメイン集団にも動きあり。総合で遅れをとるホセ・ルハノ(ベネズエラ、アンドローニジョカトリ)がジュー峠の上りで抜け出しを図り、単独でダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD)が追走。やがてルハノが集団に戻ったことで、クネゴは一人メイン集団の20秒ほど前を先行する。

ダウンヒルをこなしチェルヴィニアの登りが始まると、デマルキが残り20kmで追走グループからアタック。追うバルタを背後に重いギアを踏んでいくデマルキは、9kmに渡る単独走の後に先頭を走るアマドールへと合流。先頭から約7分遅れて上りに入った集団は、リクイガス・キャノンデールの牽引によって人数を大幅に絞っていく。

先頭で1級山岳チェルヴィニアを登るアレッサンドロ・デマルキ(イタリア、アンドローニ・ジョカトリ)とアンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター)先頭で1級山岳チェルヴィニアを登るアレッサンドロ・デマルキ(イタリア、アンドローニ・ジョカトリ)とアンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター) photo:Kei.Tsujiここからマルツィオ・ブルセギン(イタリア、モビスター)とアメツ・チュルカ(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ)がクネゴに合流し、さらにチュルカが先を行くものの、この動きは全てペースを上げる集団に飲み込まれる。

ゴールスプリントを制したアンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター)ゴールスプリントを制したアンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター) photo:Kei.Tsujiタイム差が急速に縮まる中、バルタが追いつき3名となった先頭は、1分弱の差をもってラストの平坦区間へ突入し、逃げ切りを確定させる。最後はゴールまで踏み抜いたアマドールが、追いすがるバルタを抑えて優勝。キャリア最大となる勝利を挙げた。

メイン集団から飛び出してゴールするライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・バラクーダ)メイン集団から飛び出してゴールするライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・バラクーダ) photo:Kei.Tsuji一方メイン集団は、ラスト3km地点でレースに大きな動き。ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(コルナゴ・CFSイノックス)のアタックを踏み石に再びマリア・ローザ獲得を狙うヘジダルが飛び立った。一躍先行すると、ヘジダルの勢いは衰えない。

17秒差の2位につけるヘジダルの先行に焦りを感じたロドリゲスの追撃は届かず、逆に後続へと吸収されてしまう。そのままリードを保ったヘジダルはロドリゲスに対して26秒先行してゴールし、マリア・ローザ奪還を決めた。

序盤から逃げに乗り、ステージ優勝を飾った25歳のアマドールはロシアとコスタリカのハーフ選手。「この1年半は記憶から消し去りたい辛い時期だったよ」とまず語る。

「去年はチームメイトのトンドが亡くなり、ソレルが深刻な落車事故に遭った。そして僕はジロの準備をしていた時に鎖骨を骨折して、今度はツールの前に足首を故障したんだ。本当にツキのない1年だった。」
さらにこれ以前にはコスタリカで一人で練習中に強盗に遭い、肺挫傷や腎障害を伴う暴行を受け、意識不明の状態から回復した経緯を持つ。

「コスタリカの一番人気のスポーツはサッカーだけど、僕が活躍したことで自転車もポピュラーになってきたんだ。今日勝てて本当に嬉しい。夢がついに叶った」。

ステージ優勝を飾ったアンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター)ステージ優勝を飾ったアンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター) photo:Kei.Tsujiマリアローザ奪回に成功したライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・バラクーダ)マリアローザ奪回に成功したライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・バラクーダ) photo:Kei.Tsuji


マリア・ローザを再びポディウムで受け取ったヘジダルも喜びを口にする。「一旦このジャージを手放したときは悲しい気分だったよ。今日取り戻すことができて嬉しく思っているよ。まだまだレースは続いていくし、強い選手も多くいるから自分の思っているように進めるのは難しいと思う。でも今日のような姿勢でレースを続けていきたい。ジロがどんな結末を迎えるのか見定めていくよ。」


ジロ・デ・イタリア2012第14ステージ結果
1位 アンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター) 5h33'36"
2位 ヤン・バルタ(チェコ、チームネットアップ) 
3位 アレッサンドロ・デマルキ(イタリア、アンドローニジョカトリ) +02″
4位 ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・バラクーダ) +20″
5位 パオロ・ティラロンゴ(イタリア、アスタナ) +46″
6位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、チームスカイ)
7位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
8位 トーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM)
9位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・ISD)
10位 ジョン・ガドレ(フランス、アージェードゥーゼル・ラモンディアール)

個人総合成績
1位 ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・バラクーダ) 59h55'28"
2位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) +09″
3位 パオロ・ティラロンゴ(イタリア、アスタナ) +41″
4位 サンディ・カザール(フランス、FDJ・ビッグマット) +01′05″
5位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス・キャノンデール) +01′06″
6位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、アスタナ) +01′07″
7位 ベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター) 
8位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、チームスカイ) +01′19″
9位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・ISD) +1′20″
10位 ドミニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス) +01′21″

ポイント賞 マリアロッサ・パッシオーネ
マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームスカイ)

山岳賞 マリアアッズーラ 
ミカル・ゴラス(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ)

新人賞 マリアビアンカ
リゴベルト・ウラン(コロンビア、チームスカイ)

チーム総合成績
モビスター


text:So.Isobe
photo:Kei.Tsuji,Riccardo Scanferla,CorVos

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