全日本U23を制したのは安達康将(日本大学)。大学4年で手にした初めてのビッグタイトルだ。今まで2連覇してきた大本命の山本元喜(鹿屋体大)は11位に沈んだ。

大会2連覇中の山本元喜(鹿屋体育大学)とチームメイトの黒枝士揮大会2連覇中の山本元喜(鹿屋体育大学)とチームメイトの黒枝士揮 photo:Hideaki.TAKAGIレースは11時にスタート、15.8kmを11周する5時間弱の戦いだ。1周目からレースは動いた。上りを経て7人の逃げができる。逃げたのは徳田鍛造・石橋学(鹿屋体育大学)、逢坂弘紀・北村彰也(日本大学)、黒瀬耕平(中央大学)、箭内優大(法政大)、安原大貴(マトリックスパワータグ)。

メイン集団はこの逃げを容認し、差はすぐに大きく開いていく。5周目には先頭は徳田、石橋、黒瀬、箭内、安原の5人になるが、差はいっぽうで5分にまで広がる。

4周目、5分差のメイン集団4周目、5分差のメイン集団 photo:Hideaki.TAKAGI残り5周でも5分の差に、メイン集団からは山本元喜(鹿屋体育大学)と黒枝士揮(鹿屋体育大学)がペースアップを仕掛けるが、集団のマークが厳しくて抜け出すことはできず、タイム差も変わらない。

7周目、均衡を破るように中根英登(TEAM NIPPO-中京大)がメイン集団からアタック、それを追って黒枝士揮(鹿屋体育大学)も抜け出す。さらに原川浩介(キャノンデール・スペースゼロポイント)や山本元喜(鹿屋体育大学)らが抜け出して一気に活性化する。

7周目、メイン集団から抜け出す中根英登(TEAM NIPPO-中京大)と黒枝士揮(鹿屋体育大学)7周目、メイン集団から抜け出す中根英登(TEAM NIPPO-中京大)と黒枝士揮(鹿屋体育大学) photo:Hideaki.TAKAGI一方で逃げの5人はやがて鹿屋体大の石橋と徳田の2人だけに。そしてメイン集団からはアタックが絶えずかかるが、安定しないまま8周目に突入する。9周目に8人の追走集団ができ、決定的な逃げとなる。ここに安達康将(日本大学)らは入るが、鹿屋勢は一人もいない。

10周目へ、先頭の徳田鍛造と石橋学(鹿屋体育大学)10周目へ、先頭の徳田鍛造と石橋学(鹿屋体育大学) photo:Hideaki.TAKAGI10周目、ついに追走の8人は逃げ続けていた2人を吸収し、さらに上りで安達、面手利輝(明治大学)、和田力(日本大学)の3人が差をつけて先頭で逃げる。この3人は20秒から30秒と差を広げてゴールを目指す。メイン集団からも追撃の動きができるが、単発になって差を縮めることができない。
ついに3人で争われたゴール、安達が先頭で、ジャージを整えてから歓喜のガッツポーズで駆け抜けた。


最終周回、逃げる先頭の3人最終周回、逃げる先頭の3人 photo:Hideaki.TAKAGI優勝した安達康将(日本大学)のコメント

本当に嬉しいの一言です。僕一人の力ではできなかったことで、一緒に逃げた和田君に感謝します。彼が引っ張ってくれたおかげで脚が残っていました。今までこれという成績を残せていなかったので嬉しいです。今回はタイミング、運が良かっただけと思います。今年のインカレは鹿屋体育大学といい勝負ができるように精進します。30連覇を意識するのではなく、僕たち一人ひとりがレベルアップすることが目標です。卒業後は指導者の道にできれば進みたい。

安達康将(日本大学)が優勝安達康将(日本大学)が優勝 photo:Hideaki.TAKAGI日本大学と鹿屋体育大学の対照

「作戦はなく、選手たちが思うように走りました。ラスト1周だけ、4年生の安達に優勝するように指示をしただけです」と日本大学監督の井上氏は語る。中盤までの逃げにメンバーを送ってはいたが、その後は特にチームを意識した動きはなかった。ラスト3周で追走に2人乗せてから意識したのが始まりだろう。

「逃げに2人を乗せて終盤まで逃げ続けたまでは良かったが…」と言う鹿屋体育大学の黒川監督。「今回は石橋が粘りの走りを見せたのは収穫。だが、ラスト5周の時点で逃げとの差が5分。メイン集団を活性化させようと山本や黒枝が動いたが、同調するチームがなく脚を使ってしまっただけになった」。
この直後に追走の動きができたが、これに鹿屋体大は一人も乗せることができなかった。これが大きなポイントだった。

山本元喜をはじめとする鹿屋勢、そしてNIPPO勢は上位にくることが確実と見られていたが、まさかの順位に。
前だけを見てアタックし、そしてゴールを目指した日大の安達と和田。チームを信じて150kmを逃げ続けた鹿屋体大の石橋と徳田。それぞれの全日本選手権が終わった。

両大が威信をかけて戦うインカレは、8月下旬に鹿児島で行われる。「ウチは春先ではなく、これから強化を始めてインカレにピークを持っていく」と、今はまだ準備段階だと言う井上監督。大学対抗30連覇をかけて戦うインカレに向けて、好感触をつかんだのは確実だ。



結果 MU23 173.8km
1位 安達康将(日本大学)4時間41分46秒(37.00km/h)
2位 面手利輝(明治大学)+07秒
3位 和田力(日本大学)+12秒
4位 布施光(順天堂大学)+43秒
5位 倉林巧和(日本体育大学)+54秒
6位 石橋学(鹿屋体育大学)+1分10秒
7位 榊原健一(TEAM NIPPO-中京大)+1分11秒
8位 大中巧基(早稲田大学)+1分25秒
9位 森田雅士(立教大学)+1分36秒
10位 中根英登(TEAM NIPPO-中京大)+2分25秒
11位 山本元喜(鹿屋体育大学)+2分44秒
12位 山本隼(中央大学)+2分47秒
13位 早川朋宏(TEAM NIPPO)
14位 吉岡直哉(京都産業大学)+2分52秒
15位 逢坂弘紀(日本大学)+3分24秒

photo&text:Hideaki.TAKAGI

最新ニュース(全ジャンル)