この日のゴール地点シャルメイは、標高879mにある山間の街。2007年大会の第3ステージでも、同様にシャルメイにゴールするコースレイアウトが採用されている。当時ディスカバリーチャンネルに所属していた24歳のフミが、逃げ切った末のスプリントで破れ、2位になったステージだ。

ステージに上がる別府史之(グリーンエッジ)ステージに上がる別府史之(グリーンエッジ) photo:Kei Tsujiスタート地点ラ・ヌーヴヴィルは、ちょうどフランス語圏とドイツ語圏を分つビール湖の畔にある。ツール・ド・ロマンディ第3ステージは、4月27日、そんなラ・ヌーヴヴィルから山間の街シャルメイまでの157.6kmで行なわれた。

前日のスタート前にステムの高さを数ミリ上げ、SRMパワーセンサーでパワーアップを確認した別府史之(グリーンエッジ)。この日はフォークを交換し、更に数ミリ上げた。それでも昨年のポジションよりも低い状態だと言う。最善を求め、ジロ・デ・イタリアに向けて試行錯誤している。

リー・ハワード(オーストラリア、グリーンエッジ)は走りに集中するために数値は見ないリー・ハワード(オーストラリア、グリーンエッジ)は走りに集中するために数値は見ない photo:Kei Tsujiスタート前に、グリーンエッジのメカニックが黒いビニールテープをSRMメーターに貼っている。「数値が見えると集中出来ない」という理由で、メカニックにその作業を頼んだのはリー・ハワード(オーストラリア)。それが功を奏したかどうかは定かではないが、ハワードは逃げに乗ることに成功する。

5人の逃げグループの中に入ったハワードは、総合で3分43秒遅れ。この日もチームスカイのダニー・ペイト(アメリカ)やジェレイント・トーマス(イギリス)ががメイン集団の先頭に立ち、逃げとのタイム差に目を配りながらペースを調整する。

キャラバングッズのフラッグが至る所で振られるキャラバングッズのフラッグが至る所で振られる photo:Kei Tsuji3つのカテゴリー山岳を含み、ゴールに向かって登りが続くコースで勝ち目が無いと踏んだ世界チャンピオンのマーク・カヴェンディッシュ(イギリス)も、アシストとして集団牽引に参加する。リーダージャージを着るブラドレー・ウィギンズ(イギリス)は「カヴはチャンピオンとしての資質を見せてくれた。世界チャンピオンの背中を見て走るのは特別なこと。しかも全力を出してくれた」とその走りを讃える。

結局ハワードら5人の逃げは、ラボバンクやランプレ・ISDの集団コントロール参加も手伝って、シャルメイに至る登り口で吸収された。

チームスカイがメイン集団を率いるチームスカイがメイン集団を率いる photo:Kei Tsujiタンポポの生い茂る草原を横目にアナス・ルンド(デンマーク、チームサクソバンク)らが逃げるタンポポの生い茂る草原を横目にアナス・ルンド(デンマーク、チームサクソバンク)らが逃げる photo:Kei Tsuji
メイン集団は長時間にわたってチームスカイの支配下に置かれるメイン集団は長時間にわたってチームスカイの支配下に置かれる photo:Kei Tsuji

集団内でアップダウンコースをこなす別府史之(グリーンエッジ)集団内でアップダウンコースをこなす別府史之(グリーンエッジ) photo:Kei Tsujiカテゴライズされていないものの、ラスト6kmからラスト3kmにかけて、高低差170mを一気に駆け上がるゴール前のコースレイアウト。

ここで総合で危険度の高いサイモン・スピラック(スロベニア、カチューシャ)とロマン・クロイツィゲル(チェコ、アスタナ)がアタックし、ウィギンズを引き離しにかかる。

ルイスレオン・サンチェス(スペイン、ラボバンク)にジャンニ・メールスマン(ベルギー、ロット・ベリソル)が並ぶルイスレオン・サンチェス(スペイン、ラボバンク)にジャンニ・メールスマン(ベルギー、ロット・ベリソル)が並ぶ photo:Kei Tsuji一方のメイン集団は、チームスカイのリッチー・ポルト(オーストラリア)とマイケル・ロジャース(オーストラリア)の2人が淡々とハイペースを刻み、ウィギンズをエスコートする。

スピラックとクロイツィゲルの吸収後に飛び出したヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア、アスタナ)も、ゴール前の緩斜面で吸収された。

両手を挙げるルイスレオン・サンチェス(スペイン、ラボバンク)と、抗議するジャンニ・メールスマン(ベルギー、ロット・ベリソル)両手を挙げるルイスレオン・サンチェス(スペイン、ラボバンク)と、抗議するジャンニ・メールスマン(ベルギー、ロット・ベリソル) photo:Kei Tsujiラスト1kmを切り、比較的フラットな最終ストレートになだれ込む70名ほどの大集団。「安全に集団で走りきることが最優先事項であり、ステージ優勝は狙わなかった」と話すウィギンズが番手を下げる中、スプリントで飛び出したLLサンチェスがジャンニ・メールスマン(ベルギー、ロット・ベリソル)を振り切った。

前日の第2ステージでスプリントに絡みながらも3位に終わっていたLLサンチェス。レース後の記者会見で「第1ステージはゴール前でスポークが折れて勝負に絡めず、昨日も惜しいところで敗れた。それでも変わらずチームメイトたちは自分を信頼してくれている。彼らの奮闘に勝利で応えたかった」とコメントする。

集団内でゴールしたブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)集団内でゴールしたブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ) photo:Kei Tsujiまた、10秒のボーナスタイムを得たLLサンチェスは、ウィギンズと1秒差の総合2位にジャンプアップした。タイム差10秒以内に5名、タイム差20秒以内に30名、タイム差30秒以内に54名という僅差のまま、ロマンディは残り2ステージを迎える。

第4ステージは標高1400mオーバーの1級山岳が3つ登場するクイーンステージ。そして最終第5ステージは1級山岳を含む山岳個人タイムトライアル。ウィギンズが総合優勝候補の筆頭であることに変わりはないが、まだまだ多くの選手に可能性が残されていると言える。

そんな中、この日はヤコブ・フグルサング(デンマーク、レディオシャック・ニッサン)がスタートしなかった。膝に痛みを抱えるフグルサングは、エースとして挑む予定だったジロ・デ・イタリアの出場もキャンセルしている。

レースの模様はフォトギャラリーにて!


ツール・ド・ロマンディ2012第3ステージ結果
1位 ルイスレオン・サンチェス(スペイン、ラボバンク)            3h58'29"
2位 ジャンニ・メールスマン(ベルギー、ロット・ベリソル)
3位 パオロ・ティラロンゴ(イタリア、アスタナ)
4位 アンドリュー・タランスキー(アメリカ、ガーミン・バラクーダ)
5位 バウク・モレマ(オランダ、ラボバンク)
6位 リナルド・ノチェンティーニ(イタリア、アージェードゥーゼル)
7位 マチェイ・パテルスキー(ポーランド、リクイガス・キャノンデール)
8位 ジャンパオロ・カルーゾ(イタリア、カチューシャ)
9位 ゴルカ・ベルドゥーゴ(スペイン、エウスカルテル)
10位 ファブリス・ジャンデボス(フランス、ソール・ソジャサン)
83位 別府史之(日本、グリーンエッジ)                    +1'40"

個人総合成績
1位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)           12h40'31"
2位 ルイスレオン・サンチェス(スペイン、ラボバンク)              +01"
3位 マイケル・ロジャース(オーストラリア、チームスカイ)            +07"
4位 バウク・モレマ(オランダ、ラボバンク)                   +09"
5位 スタフ・クレメント(オランダ、ラボバンク)
6位 アンドリュー・タランスキー(アメリカ、ガーミン・バラクーダ)        +11"
7位 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ラボバンク)
8位 デーヴィット・ザブリスキー(アメリカ、ガーミン・バラクーダ)        +12"
9位 サイモン・スピラック(スロベニア、カチューシャ)
10位 ルーベン・プラサ(スペイン、モビスター)
105位 別府史之(日本、グリーンエッジ)                   +10'15"

スプリント賞
ガティス・スムクリス(ラトビア、カチューシャ)

山岳賞
ラルスイティング・バク(デンマーク、ロット・ベリソル)

新人賞
アンドリュー・タランスキー(アメリカ、ガーミン・バラクーダ)

チーム総合成績
チームスカイ

text&photo:Kei Tsuji in Charmey, Switzerland

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