白波が立つレマン湖の畔で、平均スピード60km/h弱の高速バトルが繰り広げられた。下りを含む3.34kmコースで最速タイムを叩き出したのは、25歳のゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)。別府史之(グリーンエッジ)は並みいるオールラウンダーを上回る70位のタイムで初日を終えている。

ゴール地点はローザンヌの湖岸通りゴール地点はローザンヌの湖岸通り photo:Kei Tsuji4月24日、レマン湖の畔に位置する人口13万人のローザンヌで第66回ツール・ド・ロマンディ(UCIワールドツアー)が開幕した。

国際オリンピック委員会(IOC)の本部が置かれていることから、ローザンヌは通称「オリンピックの首都」。博物館などのオリンピック関連施設が街に点在している。ツール・ド・ロマンディの大会メインスポンサーであるスイスの保険会社ヴォドワーズ社(Vaudoise)の本社も、このローザンヌに置かれている。

トップタイムで優勝したゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)トップタイムで優勝したゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ) photo:Kei Tsuji標高370mのレマン湖の対岸に広がるのは、季節外れの雪によって白く染まった山々。レース当日の最高気温は9度で、湖から吹き付ける冷たい風が雨雲を街に運び込む。白波が湖岸に打ち付け、その一部が岸壁を超えてコースを濡らす。

プロローグのコースは、レマン湖から標高差40mほどを登った街中をスタートし、湖岸に向かって直線的にダウンヒル。直角的なコーナーを経て湖岸通りに入り、斜め前からの向かい風の中を踏み倒してゴールに至る3.34km。

4秒差・ステージ2位 ジャコモ・ニッツォロ(イタリア、レディオシャック・ニッサン)4秒差・ステージ2位 ジャコモ・ニッツォロ(イタリア、レディオシャック・ニッサン) photo:Kei Tsujiこの日の天候は下り坂で、最終20名ほどの選手たちは小雨に降られた。しかしグリップ力がスピードに直結するようなテクニカルコースではない。ドライコンディションの中を走り、3分29秒43のトップタイムを叩き出したトーマスも「確かに天候がレースを左右したと言える。でも実際にスピードに差が出るようなコーナーは一カ所だけだった」と話す。

トラックレースとロードレースを走り、その双方で成績を残す25歳のトーマス。ロードレースでは、昨年ドワーズ・ドア・フラーンデレン2位、ロンド・ファン・フラーンデレン10位、そしてツール・ド・フランスで6日間マイヨブラン(新人賞ジャージ)を着用している。

6秒差・ステージ3位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームスカイ)6秒差・ステージ3位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームスカイ) photo:Kei Tsujiトラックレースでの活躍が顕著で、2008年の北京オリンピック団体追い抜きで金メダルを獲得。今月上旬にオーストラリア・メルボルンで行なわれたトラック世界選手権の団体追い抜きでは、3分53秒295の世界記録をマークし、3度目の世界チャンピオンに輝いている。同大会マディソンでは銀メダルを獲得した。

「今日はチャンスがあると思っていた。2年連続出場となるこのレースで勝てて嬉しいよ」。平均スピード57.4km/hという驚きの速さで3.34kmを駆け抜けたトーマスは、ステージ優勝とマイヨジョーヌを同時に手にした。

マイヨジョーヌに袖を通したゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)マイヨジョーヌに袖を通したゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ) photo:Kei Tsuji2008年大会のプロローグ覇者で、トーマスのチームメイトであるマーク・カヴェンディッシュ(イギリス)は3位。元TT世界チャンピオンのマイケル・ロジャース(オーストラリア)が4位に入っている。小雨の中を走ったエースのブラドレー・ウィギンズ(イギリス)は11位。

トーマスは「リーダージャージを手にしたけど、明日からはカヴのスプリント勝負をアシストする。山岳ステージでは総合狙いのブラドレー(ウィギンズ)をサポートする。チームスカイは大きな野望をもってこのロマンディに挑んでいるんだ」とコメントする。なお、トーマスはジロ・デ・イタリアに出場予定。ロンドンオリンピックのトラックレースに集中するため、ツールは欠場する。

惜しくも2位に入ったジャコモ・ニッツォロ(イタリア、レディオシャック・ニッサン)は、昨年レオパード・トレックでプロデビューした23歳。昨年のバイエルン一周ではデゲンコルブやボアッソンハーゲンを下してステージ優勝しており、ベンナーティに続くイタリアンスプリンターとして今後さらなる成長が期待される。

ニッツォロとトーマスの総合タイム差は4秒。この先のステージでニッツォロはボーナスタイム(1位10秒、2位6秒、3位4秒)による総合逆転を狙う。

18秒差・ステージ70位に入った別府史之(グリーンエッジ)18秒差・ステージ70位に入った別府史之(グリーンエッジ) photo:Kei Tsuji
9秒差・ステージ11位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)9秒差・ステージ11位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ) photo:Kei Tsuji大会連覇が懸かったカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)は、19秒遅れのステージ80位に沈んだ。他にもアンドレアス・クレーデン(ドイツ、レディオシャック・ニッサン)が16秒遅れの56位、ロマン・クロイツィゲル(チェコ、アスタナ)が17秒遅れの69位。イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)に至っては24秒遅れの123位と大きく出遅れている。

全日本チャンピオンジャージを着る別府史之(グリーンエッジ)は、18秒遅れの70位で初日を終えた。

ステージ80位に終わったカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)ステージ80位に終わったカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム) photo:Kei Tsujiフミは「前半の平坦区間で、いきなりコースに出てきたおじいさんとぶつかりそうになった。ハンドルを持ち替えたので、そこからの下りにスピードを乗せることが出来なかった。(向かい風が吹く)ゴールの手前でダンシングしたのも失敗だった」と話しながらも、エヴァンスらを上回るタイムでゴールしている。単純計算で平均スピードは52.7km/h。

オーストラリアチャンピオンのルーク・ダーブリッジがマークした19位が、グリーンエッジ勢の最高位。フミのタイムは、ダーブリッジ、ハワード、マイヤー弟、デーヴィスというオージー4人に続くチーム内で5番目。「やっぱり彼らはトラックレースがベースにあるから速い」とフミ。「でも自分も走れていることを確認出来たし、明日からしっかり走れそうです」。グリーンエッジは翌日からもステージ優勝を狙って走る。


レースの模様はフォトギャラリーにて!

ツール・ド・ロマンディ2012プロローグ結果
1位 ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)               3'29"
2位 ジャコモ・ニッツォロ(イタリア、レディオシャック・ニッサン)       +04"
3位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームスカイ)           +06"
4位 マイケル・ロジャース(オーストラリア、チームスカイ)
5位 ユルゲン・ヴァンデワール(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)
6位 ジュリアン・ヴェルモト(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)   +07"
7位 バウク・モレマ(オランダ、ラボバンク)                  +08"
8位 スタフ・クレメント(オランダ、ラボバンク)
9位 マヌエーレ・ボアーロ(イタリア、チームサクソバンク)
10位 アレックス・ラスムッセン(デンマーク、ガーミン・バラクーダ)
70位 別府史之(グリーンエッジ)                       +18"

個人総合成績
1位 ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)               3'29"
2位 ジャコモ・ニッツォロ(イタリア、レディオシャック・ニッサン)       +04"
3位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームスカイ)           +06"
4位 マイケル・ロジャース(オーストラリア、チームスカイ)
5位 ユルゲン・ヴァンデワール(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)
6位 ジュリアン・ヴェルモト(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)   +07"
7位 バウク・モレマ(オランダ、ラボバンク)                  +08"
8位 スタフ・クレメント(オランダ、ラボバンク)
9位 マヌエーレ・ボアーロ(イタリア、チームサクソバンク)
10位 アレックス・ラスムッセン(デンマーク、ガーミン・バラクーダ)
70位 別府史之(グリーンエッジ)                       +18"

新人賞
ジャコモ・ニッツォロ(イタリア、レディオシャック・ニッサン)

チーム総合成績
チームスカイ

text&photo:Kei Tsuji in Lausanne, Switzerland
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