超軽量カーボンバイクなど時代を常にリードするマシンを次々に送り出し、トレンドを作り出してきたSCOTT(スコット)。そんな自転車界のリードブランドが放つ次世代のロードバイクが「FOIL(フォイル)」だ。今回はその最先端を行くエアロロードマシンにフォーカスを当てる。

スコット FOIL Premiumスコット FOIL Premium (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp

スコットはこれまで、2004年にフレーム重量880gという驚異の軽さを実現したCR-1を発表。現在に至るまで熟成を進め、2007年には更に軽量なレーシングモデルとしてフレーム重量790gとなったADDICTを発表した。得意の最先端カーボン技術を用いることで、軽量で高剛性のロードバイクを次々に発表し、超軽量カーボンロードバイクという分野を牽引する存在に。

そんなスコットが、次なるテーマとしたのがエアロダイナミクスだ。「スコット・エアロダイナミックサイエンス」と命名されたチームを発足させ、メルセデス・ベンツF1チームとパートナシップを組むことで、膨大な時間を風動実験に費やした。60種類以上ものチューブ形状がテストされ、ロードバイクの速度域における空力性能の最大化が求められていった。そうして試験が繰り返された末に誕生したエアロロードバイク。それが「フォイル」だ。

エアロ効果を高める内蔵式シートクランプエアロ効果を高める内蔵式シートクランプ 1-1/8、1-1/4サイズの上下異形テーパードヘッドチューブ1-1/8、1-1/4サイズの上下異形テーパードヘッドチューブ エアロ効果を持たせたフロントフォークエアロ効果を持たせたフロントフォーク


フォイルのフレームを形成する各チューブは、F01エアロテクノロジーと呼ばれる後縁のない部分的な翼断面形状を持つ。最近の翼断面形状は、おおむねNACA(航空宇宙諮問委員会)によって飛行機向けに提唱されたモデルや縦横比に基づいたもの。

しかし航空機と速度域の全く異なるバイクでは、これらの比が必ずしも使えるとは限らない。そこで、スコット・エアロダイナミックサイエンスのエンジニアは、対気速度が低い状態で空力効率を最大限に引き出す、縦横比を3:2、三角形の各面にアールを持たせた特徴的なフォルムのチューブを生み出した。

特徴的な形状を持たせることで、剛性とエアロ効果を両立特徴的な形状を持たせることで、剛性とエアロ効果を両立 スコットのエアロテクノロジーがトップチューブへあしらわれるスコットのエアロテクノロジーがトップチューブへあしらわれる


翼断面の後方を切り落としたようなフォルムのダウンチューブ翼断面の後方を切り落としたようなフォルムのダウンチューブ トップチューブ形状はTTマシン「プラズマ」から受け継ぐものトップチューブ形状はTTマシン「プラズマ」から受け継ぐもの


このチューブは、一般的な翼断面チューブと同様の空力効果を持たせることに成功。そして断面を円形に近づける事によって、他メーカーの「空力」ロードフレームよりも総重量を抑えながら、フレームの強度・剛性と垂直方向の柔軟性を引き上げることに成功したのである。

チューブはフレーム全体でエアロ効果が最大になるように配置される。ダウンチューブとヘッドチューブが風の影響を受ける最初のポイントとなるため、これらのチューブの前縁に合わせて各チューブの方向が決められる。フレーム前部で受けた空気がスムーズに抜けるようにリアステイはシートチューブ面に対して4度の角度をもつ。さらにフレームと一体化したシートクランプを搭載することも特徴だ。

エアロ効果を高めるため、ケーブルを内蔵エアロ効果を高めるため、ケーブルを内蔵 BB部分は横幅を広くし、ねじり方向に対する剛性を高めたBB部分は横幅を広くし、ねじり方向に対する剛性を高めた


肉厚を増やすことなく横方向の剛性を高めるため、BB周辺でワイドに広がるダウンチューブと大きくボリュームが取られたBBを採用し、駆動側ボトムブラケットの外径もSRMなどパワーメーターに対応するよう考慮がされた。チェーンステイへとシームレスにつながる特徴的なデザインは乱流を抑え、高い空力的メリットも同時に生み出している。

この結果、従来の丸形のチューブに比べると抵抗が20%減少。45km/hでライダーが乗車した状態では、平均して4~5%の抵抗が減少する。つまり算出すると、45km/hで走行するエネルギーが15W軽減されるという実験結果が得られている。

こうして生み出されたフォイルは採用するカーボングレードの違いによって2つのモデルが用意され、上位モデルはエアロロードバイクにしてフレーム単体重量840gを達成。並み居るエアロロードバイクとは重量面で決定的なアドバンテージを生み出すに至っている。

チューブ集合部は美しく仕上げられるチューブ集合部は美しく仕上げられる リッチー製の専用設計シートポストリッチー製の専用設計シートポスト メルセデス・ベンツF1チームと共同開発して生み出されたメルセデス・ベンツF1チームと共同開発して生み出された


組み合わされるコンポーネントの違いによる全7バリエーションが存在し、フレームセットの販売も行われる。使用目的に合ったチョイスが出来るのもユーザーにとっては嬉しい点で、トップモデルでこれだけのバリエーションを持つマシンも珍しいと言えるだろう。

今回インプレッションに登場するのは、その完成車ラインナップ中最高峰につけるマシン、フォイル・プレミアムだ。スコットが放つ最新・最高峰マシンをインプレライダー両氏はどのように評価するのだろうか。早速インプレッションをお届けしよう。




ーインプレッション

「圧倒的な加速力。そして巡航性能の高さを味わえるマシン」鈴木祐一(Rise Ride)

圧倒的な加速力が際立つマシンという第一印象を受けました。エアロバイクながら軽量ですが、軽いバイクにありがちな力が逃げるような感覚が全くありません。フレーム自体にパワーを感じるような、タフさがあるマシンだと感じました。

フレーム全体の完成度が非常に高く感じました。剛性があるため、体重をかけて一気にペダルを踏み込んでも全くよじれず、推進力を逃がしません。絶対的な重量面での軽さ、そしてジオメトリーによる設計での軽さがここに加わり、気持りの良い加速感を楽しむことができました。

一般ライダーでも瞬間的に600~700W要するシチュエーションはありますが、大きなパワーを出してもまったくロスになりませんでした。単にスピードを上げる加速のみならず、常に加速を強いられるようなヒルクライムにおいても、この性能は際立つでしょう。

「圧倒的な加速力。そして巡航性能の高さを味わえるマシン」鈴木祐一「圧倒的な加速力。そして巡航性能の高さを味わえるマシン」鈴木祐一

加速した後の巡航性能も非常に優秀です。エアロ形状による性能ももちろんながら、前述した通り力を逃さないので、パワーをセーブして走ることができるでしょう。一番エネルギー消費をする加速において有利で、その後の巡航が楽。つまり長丁場で速く走れるマシンではないでしょうか。

レーシングバイクに当たるマシンですので乗り心地は硬めと言えます。ただ、衝撃のカドを取ってくれるフィーリングは感じることができます。ロードインフォメーションを確実に伝えつつ、体に対するストレスは軽減するという、レーシングフレームとしてちょうど良い味付けを感じました。

ハンドリングはバイクの軽さも加わってかなりクイックです。若干神経を使う部分もありますが、レーシングマシンですからバイクの乗り味の軽さにも繋がっていると言えます。旋回性能の速さや俊敏な動きから、気持よくコーナーを曲がることができ、乗っていて楽しさがあります。

レースにおいて、このマシンはそのポテンシャルを引き出すことができると思います。加速力・巡航性を活かしてツール・ド・おきなわ210kmや、耐久レースのソロ部門などには最適だと思います。長い距離のヒルクライムにも適しているのではないでしょうか。

全体のレベルが高い次元でまとめられているので、これ一台でレースからロングライド・サイクリングにまで対応出来ます。なにより乗っていての楽しさがありますので、どこへ持っていってどんな乗り方をしても十分満足のできる優秀なマシンだと思います。


「エアロ効果で確実にアドバンテージを稼ぎだすことができる」戸津井俊介(OVER-DOバイカーズサポート)

まず乗ってみて、明らかな剛性の高さを感じることができました。フォルムの外見から堅すぎて弾かれてしまうかと思いましたが、路面にピタッと吸い付くマイクロサスペンションのような振動吸収性も感じることができました。

剛性が非常に高いので踏み出しが軽く、スムーズに加速してくれます。どの速度域でもスピードの乗りが早く、どこまでも安定して上げ続けられるようなイメージを持ちました。レーサーのためのバイクですが、その中でも快適性が加えられています。150~200km以上走った後に力を蓄えることを意識した味付けとで、そういった意味で非常に作りこまれたバイクです。

常に安定した走りで、コーナリング中や下りでもバタつくような感じは一切感じません。ハンドリングはクイック気味ですが、フロントフォークの剛性が適切なため、ソリッドなラインを選んで走っても怖さを感じませんでした。下りの直線ではエアロ効果も働いて、スッと前に出る感覚がありました。

「エアロ効果で確実にアドバンテージを稼ぎだすことができる」戸津井俊介「エアロ効果で確実にアドバンテージを稼ぎだすことができる」戸津井俊介

ヒルクライム性能も優秀ですね。剛性が高めですので、軽いギアを回していくような場合にはある程度ペダリングスキルが求められるかと思います。ダンシングというよりは、上半身を固めてトルクを掛けて踏み込んでいったほうがより性能を生かすことができるでしょう。

完成車として、即レースに使えるコンポーネントやパーツアッセンブルです。ヒルクライムから短距離ロードレースまで、幅広いレースで満足して使うことができるでしょう。レーサーとしてのウィークポイントは無いと言って良いと思いました。エアロ効果を活かしてトライアスロンでも俄然有利だと思います。

マットブラックなカラーリングで落ち着いたフォルムですよね。スコットのバイクはこれまで派手なイメージでしたが、誰にでも受け入れられる雰囲気ではないでしょうか。

フォイルはグリーンエッジが実際に使用し、春先から結果を出しているマシンです。エアロ効果が大きければ大きいほど、同じシチュエーションでも体力をセーブすることができます。シビアなコンディションにおいて、ライバルよりか着実にアドバンテージを稼ぐことができるバイクです。

スコット FOIL Premiumスコット FOIL Premium (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp
スコット FOIL Premium
サイズ:XXS、XS、S、M、L、XL、XXL
フレーム:FOIL Carbon Aero, HMX-Net fibers, IMP 3 tech
フォーク:HMX-Net, carbon steerer 1-1/8、1-1/4
コンポーネント:シマノ・デュラエースDi2
パーツ:リッチー・WCS
サドル:フィジーク・アリオネCX
ホイール:ジップ・404Firecrest Carbon Clincher
タイヤ:コンチネンタル・Grand Prix 4000
重 量:6.62kg
価 格:1,280,000円(本体価格1,219,048円)



インプレライダーのプロフィール

戸津井俊介(OVER-DOバイカーズサポート)戸津井俊介(OVER-DOバイカーズサポート) 戸津井俊介(OVER-DOバイカーズサポート)

1990年代から2000年代にかけて、日本を代表するマウンテンバイクライダーとして世界を舞台に活躍した経歴を持つ。1999年アジア大陸マウンテンバイク選手権チャンピオン。MTBレースと並行してロードでも活躍しており、2002年の3DAY CYCLE ROAD熊野BR-2 第3ステージ優勝など、数多くの優勝・入賞経験を持つ。現在はOVER-DOバイカーズサポート代表。ショップ経営のかたわら、お客さんとのトレーニングやツーリングなどで飛び回り、忙しい毎日を送っている。09年からは「キャノンデール・ジャパンMTBチーム」のメカニカルディレクターも務める。
OVER-DOバイカーズサポート


鈴木祐一鈴木祐一 鈴木 祐一(Rise Ride)

サイクルショップ・ライズライド代表。バイシクルトライアル、シクロクロス、MTB-XCの3つで世界選手権日本代表となった経歴を持つ。元ブリヂストン MTBクロスカントリーチーム選手としても活躍した。2007年春、神奈川県橋本市にショップをオープン。クラブ員ともにバイクライドを楽しみながらショップを経営中。各種レースにも参戦中。セルフディスカバリー王滝100Km覇者。
サイクルショップ・ライズライド


ウェア協力:PISSEI

text:So.Isobe
photo:Makoto.AYANO
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