ミハエル・アルバジーニ(スイス、グリーンエッジ)が総合リードを守る中、混沌としているのが総合表彰台を懸けた争い。総合2位から総合15位まで全員同じ1分32秒遅れという拮抗状態を抜け出したのは、北京五輪金メダリストのサムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)。集団を振り切る勝利で、総合2位に浮上した。

コース上の交通事故によりレースが38分間ストップ

残り2ステージを闘う土井雪広(プロジェクト1t4i)残り2ステージを闘う土井雪広(プロジェクト1t4i) photo:Kei Tsuji「すでにスプリンターがリタイアしているので、集団スプリントになれば、一番スピードのあるユキ(土井雪広)で狙う」と、プロジェクト1t4iのクリスティアン・ギベルトー監督は難しい顔で答えた。「ユキは第4・第5ステージで先頭集団に残れなかったが、今日のコースレイアウトだと大丈夫だ。50名ほどの集団でスプリントになればチャンスはある」。

前日に仲良くグルペットでゴールしたケニーロバート・ファンヒュンメル(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM)と別府史之(グリーンエッジ)前日に仲良くグルペットでゴールしたケニーロバート・ファンヒュンメル(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM)と別府史之(グリーンエッジ) photo:Kei Tsuji3月24日、ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ第6ステージが、マンレザ郊外のサントフルイトス・デル・バヘスから、バルセロナ近郊のバダローナまでの169.4kmで行なわれた。

前半は内陸の山岳地帯で、3級のカテゴライズされた山岳を含め、標高500mほどの峠を連続して越える。海に向かう後半は比較的フラットだが、ラスト22km地点で2級山岳コンレリアを越える。

アタック合戦の最中、集団前方に位置する別府史之(グリーンエッジ)や土井雪広(プロジェクト1t4i)アタック合戦の最中、集団前方に位置する別府史之(グリーンエッジ)や土井雪広(プロジェクト1t4i) photo:Kei Tsuji2級山岳コンレリアで人数を減らし、バダローナのテクニカルな周回コースで小集団スプリント、というのがおおよその筋書き。その展開に持ち込まれた場合、プロジェクト1t4iのエースは土井雪広に託される。

現在レースに残っているのは125名。すでに60名近くがリタイアしており、多くのチームがスプリンターを欠いた状態。ちなみに、第3ステージで大量リタイア者を出したロット・ベリソルとチームスカイは、僅かに3名ずつしかレースに残せていない。

マンレザ北部に広がる山岳地帯を進むプロトンマンレザ北部に広がる山岳地帯を進むプロトン photo:Kei Tsuji「昨日は前半から思うように走れませんでしたが、今日は大丈夫。自分はアルバジーニを守るのが役目。スプリントに興味を示すチームが集団をコントロールするはずです」。晴れやかな太陽の下、晴れやかな表情で別府史之(グリーンエッジ)はそう話す。

この日もレース序盤からアタックの応酬。別府と土井は集団前方に位置し、大きな動きに目を配る。「4〜5人の動きはいいけど、6〜7人の動きがあると(逃げとして人数が)多いので、集団を率いてギャップを縮めるのが自分の仕事でした」と別府。

ようやくアタックが決まったのは40km地点。セドリック・ピノー(フランス、FDJ・ビッグマット)とダヴィ・モンクティエ(フランス、コフィディス)にミカエル・シュレル(フランス、アージェードゥーゼル)が加わって先頭は3名。タイム差はすぐさま3分まで広がる。

しばらく平穏にレースは進行していたが、70km地点でトラブル発生。コースを先行する警察バイクと普通車が正面衝突を起こし、負傷者が救急車とヘリで搬送される事態に。コースが一時寸断されたため、レースは38分間にわたってストップした。負傷者に関して、命に別状は無いとの情報が入っている。


58名の精鋭集団から飛び出した金メダリストサンチェス

リーダージャージのアルバジーニらとともに集団前方で走る別府史之(グリーンエッジ)リーダージャージのアルバジーニらとともに集団前方で走る別府史之(グリーンエッジ) photo:Kei Tsujiレースは中断前と同じタイム差でリスタートしたが、リズムを崩した先頭3名は、ゴール50km手前で吸収。ユッシ・ヴェッカネン(フィンランド、FDJ・ビッグマット)やヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア、アスタナ)がカウンターアタックで飛び出すも、2級山岳コンレリアまでに吸収される。

2級山岳で決定的なアタックは生まれず、メイン集団は60名弱ほどに絞られた状態で頂上をクリア。バダローナの周回コースに入る。

38分のレース中断の影響でゴール時間が遅くなり、陽が西に傾く38分のレース中断の影響でゴール時間が遅くなり、陽が西に傾く photo:Kei Tsuji短い登りと下りが組み合わさった周回コースで、ゴールまで2kmを残し、サンチェスがアタック。一発でアタックを成功させたサンチェスは、コーナーでさらに差を広げ、数秒のリードでフラットな最終ストレートへ。

「五輪金メダリストのサンチェスが先行!」という高らかなアナウンスが鳴り響く中、追いすがる集団を振り切ったサンチェスがガッツポーズ。2秒差をつけてゴールした。

メイン集団を振り切ってゴールするサムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)メイン集団を振り切ってゴールするサムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル) photo:Kei Tsujiエウスカルテルに貴重なシーズン1勝目をもたらしたサンチェス。ステージ優勝の他にも、タイム差2秒による総合2位ジャンプアップというボーナスを得た。なお、これによりUCIプロチームの中でシーズン0勝はアージェードゥーゼルだけとなる。

先頭集団中程の30位でゴールした土井は「ラスト2.5kmのコーナーでチームメイトからはぐれ、番手を下げてしまった。あれほど大きな集団でスプリントしたことがなく、位置取りが出来ずにスプリントに絡めなかった」と、スプリントへの挑戦を振り返る。「最終日も伸び伸び思いっきり走ります!」

メイン集団内でゴールする土井雪広(プロジェクト1t4i)、奥に別府史之(グリーンエッジ)メイン集団内でゴールする土井雪広(プロジェクト1t4i)、奥に別府史之(グリーンエッジ) photo:Kei Tsuji別府は、集団スプリントで先頭ゴールしたアラン・デーヴィス(オーストラリア)の位置取りに力を使い、32位でゴール。「最後は自分と(クリスティアン)メイヤーと(ダリル)インペイの3人でデーヴィスを前に連れて行った。スプリントに向けての動きは良かったと思う」と話す。

アルバジーニは堅実にリーダージャージを守り、グリーンエッジはミラノ〜サンレモに続くUCIワールドツアーレース制覇に王手。

別府は「明日はコースが短くて速い展開になると思う。前半はランカスターとデーヴィス、そして中盤にかけて自分とインペイが集団をコントロール。アルバジーニはクライマーではないけど、調子が良い。問題なく最後までリードを守れると思う」と、最終日に目を向けた。


ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ2012第6ステージ
1位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)          4h04'50"
2位 アラン・デーヴィス(オーストラリア、グリーンエッジ)           +02"
3位 ジュリアン・シモン(フランス、ソール・ソジャサン)
4位 フアンホセ・アエド(アルゼンチン、チームサクソバンク)
5位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD)
6位 フランチェスコ・ガヴァッツィ(イタリア、アスタナ)
7位 ファビオ・サバティーニ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)
8位 ダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・バラクーダ)
9位 ダヴィデ・アッポローニオ(イタリア、チームスカイ)
10位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、ロット・ベリソル)
30位 土井雪広(日本、プロジェクト1t4i)
32位 別府史之(日本、グリーンエッジ)

個人総合成績
1位 ミハエル・アルバジーニ(スイス、グリーンエッジ)          21h28'43"
2位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)           +1'30"
3位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、ロット・ベリソル)      +1'32"
4位 ダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・バラクーダ)
5位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、チームスカイ)
6位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD)
7位 セルヒオ・パルディージャ(スペイン、モビスター)
8位 ロベルト・キセロフスキー(クロアチア、アスタナ)
9位 ダリオ・カタルド(イタリア、オメガファーマ・クイックステップ)
10位 マッテーオ・カラーラ(イタリア、ヴァカンソレイユ・DCM)
44位 土井雪広(日本、プロジェクト1t4i)                  +10'36"
109位 別府史之(日本、グリーンエッジ)                  +41'17"

山岳賞
クリスアンケル・セレンセン(デンマーク、チームサクソバンク)

スプリント賞
トマシュ・マルチンスキー(ポーランド、ヴァカンソレイユ・DCM)

チーム総合成績
ガーミン・バラクーダ

text&photo:Kei Tsuji in Badalona, Spain