ゲンティンハイランドでの山頂決戦を終え、レースは残すところ平坦4ステージ。今日は序盤から活躍の場を見いだしたい選手が、次から次へとアタックを仕掛け、レースは平均時速51kmというハイスピードでマレーシアの田舎道を駆け抜けた。

取材環境からレースの規模が垣間見える

壊れてしまったバイクを大慌てで直すドライバー壊れてしまったバイクを大慌てで直すドライバー photo:Sonoko Tanaka私はというと、レースとは対称的にスロースタートを迎えていた。乗る予定のオートバイが故障し、レースがスタートして15分経っても、ただ1人スタート地点に取り残されていた。

幸いにして距離が長く、高速道路と平行して走るルートのため、なんとかしてフィニッシュ地点に行こうかと、メディアスタッフにSOSの電話をしようとした瞬間、工具を使ってバイクを分解し始めたドライバーが笑顔を見せ、無事にエンジンが掛かり始めた。

スタート地点に並んだ警察のオートバイスタート地点に並んだ警察のオートバイ photo:Sonoko Tanakaこの手のトラブルはよくあること。オートバイの予備はなかったが、ツール・ド・ランカウイでは常に隊列の後方にはトラックが走り、走行不可能となったバイクを回収してくれる(今回はお世話にならずにすんだわけだけど)。

バイクが壊れた…と文句を言いたくなるが、ランカウイはヨーロッパのプロフェッショナルなオーガナイザーが介入し、これまでの実績も高いとあって、カメラマンに対するオートバイの待遇はアジア屈指。

今日も沿道にはたくさんの子どもたちが集まってきた今日も沿道にはたくさんの子どもたちが集まってきた photo:Sonoko Tanaka日本のレースでは、メディア用として数台のオートバイしかレースに入れないのが現状だが、ランカウイで用意されるメディア用バイクは全部で14台。5台を国際カメラマンに、5台を国内カメラマンに、4台をテレビにと割り振られている。

取材に訪れた国際メディアはカメラマンが18人、ジャーナリストが25人ほどで、その大部分がレース側から飛行機チケットが提供されているのだ。

ほかにもバイク関係で驚いてしまうのは警察のバイクだろう。今回レースに帯同しているバイクは全部で53台。朝会場に着くと綺麗に整列して駐め、毎日恒例の朝礼と準備運動が始まる。ほかにもチームカーは各チームに2台供給され(ヨーロッパでは2台だが、通常アジアのレースでは1台)、故障に備えて予備のチームカーも控える。

そのほかにもレース30分前にはツール・ド・フランスさながらのキャラバン隊がコースを走ったりと、アジア最高峰・ツール・ド・ランカウイの規模はやはり他とは比べものにならない。

モスクの前から第7ステージがスタートモスクの前から第7ステージがスタート photo:Sonoko Tanaka細い田舎道を行く選手たち細い田舎道を行く選手たち photo:Sonoko Tanaka


果敢に逃げた鈴木謙一(愛三工業レーシング)

レース準備をする愛三工業レーシングのもとにネコがやってきたレース準備をする愛三工業レーシングのもとにネコがやってきた photo:Sonoko Tanakaそんなこんなで、スタートから大きく遅れてレースに追いつくと、13人の大きな逃げが決まった。日本人選手は愛三工業レーシングの鈴木謙一が「重要な逃げになる」と確信し、その列車に飛び乗った。

第7ステージは愛三工業レーシングにとって今大会中、もっともステージ優勝を狙っているステージだった。先頭集団は常に後続集団との差を意識しながら徹底的にタイム差をコントロールしながら走り、逃げ切りが濃厚となると、もとから速かったペースがさらに上がったという。

イエロージャージを着てスタートを待つホセ・セルパ(コロンビア、アンドローニ・ジョカトリ)イエロージャージを着てスタートを待つホセ・セルパ(コロンビア、アンドローニ・ジョカトリ) photo:Sonoko Tanakaそして鈴木は「ゴールが近づき何人かの選手がアタックをかけたとき、必死で前を追ったが、その差は縮まなかった。前に追いつく力が残っていなかったことを悔しく思う」とレース後に振り返った。しかし、持っている力を出し切る力走だった。

明日、第8ステージは、100.8kmのショートステージ。マレーシアやインドネシア特有の金曜日のレースとなる。マレーシアの国教であるイスラム教の礼拝が午後に行われるため、その時間を避けるレーススケジュールになっている。

逃げる鈴木謙一(愛三工業レーシングチーム)ら13名逃げる鈴木謙一(愛三工業レーシングチーム)ら13名 photo:Sonoko Tanaka10位でゴールした鈴木謙一(愛三工業レーシング)のもとにチームメイトが集まる10位でゴールした鈴木謙一(愛三工業レーシング)のもとにチームメイトが集まる photo:Sonoko Tanaka


text&photo:Sonoko Tanaka
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