2年ぶりにイヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)が日本に戻ってきた。昨年2度目のジロ・デ・イタリア制覇を成し遂げ、33歳というベテランの域に達したバッソの目線の先には何がある?ジャパンカップを控えた10月20日にインタビューを行った。

東京のホテルの一室でインタビューに応じてくれたイヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)東京のホテルの一室でインタビューに応じてくれたイヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス・キャノンデール) photo:Makoto AyanoCW:お帰りなさい、イヴァン
バッソ:日本に帰ってきた!時差があるのはもう慣れたよ。時差をどう克服するのかもプロの仕事。眠たいけどね(笑)

CW:あなたにとってジャパンカップとは?
バッソ:出場停止処分が明けた2008年10月に、ジャパンカップでレースに復帰した。当時、モチベーションは当然高かったけど、不安も同居していて、自分自身の走りに確証を得ていなかったのも事実。でも日本のファンは暖かく迎えてくれた。第2のキャリアを歩みだす場所として素晴らしい選択だったと思う。あの瞬間から、新しい“イヴァン・バッソ”が始まった。だからジャパンカップは自分にとって特別な存在なんだ。

正直に言って、僕が優勝候補の筆頭に挙がるコースではない。でも日本のファンから大きな期待を受けていることも知っている。3月の大震災で尊い命が奪われ、経済的にも、そして精神的にもダメージを受けたこの日本で最高の走りをしたいと願っている。

CW:ずばり、2012年の目標は?
バッソ:ツール・ド・フランス。まずはツールだ。でもこれはチームの判断に依存する。リクイガス・キャノンデールにはヴィンチェンツォ・ニーバリもいる。彼がどのレースを走り、僕がどのレースを走るのか。これから冬の間に2012年のプログラムを煮詰めて行く。でも基本的に今シーズンと変更はないと思う。

ツールはまだ獲得したことのないタイトルであり、子供のころからずっと優勝を夢見てきた。ジロ・デ・イタリアのコースも魅力的だけど、ジロを走ってからツールを走るのは非現実的。ツールを狙うなら、残念ながらジロはスキップすることになると思う。

リエージュ〜バストーニュ〜リエージュを走るヴィンチェンツォ・ニーバリとイヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)リエージュ〜バストーニュ〜リエージュを走るヴィンチェンツォ・ニーバリとイヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス・キャノンデール) photo:Kei TsujiCW:ツールのコースを見た印象は?
バッソ:コース発表後、ずっとこの質問を受けているけど、まだ具体的な話をするには早すぎる。それに、君たちジャーナリストと話す前に監督たちに印象を伝えるよ(笑)カデル・エヴァンス向きのコースだと言われていることも知っているし、たしかにそうだろう。でもリクイガス・キャノンデールも負けていない。

CW:ツールの勝利を故アルド・サッシ氏に捧げたいという思いはある?
バッソ:アルドは僕にとって非常に大きな存在だった。レースに復帰して、今こうしてトップ選手として走れているのは彼のおかげ。もっとビッグレースで勝利して、彼の功績を讃えたい。

CW:ツール以外に狙いたいレースは?
バッソ:リエージュ〜バストーニュ〜リエージュとジロ・ディ・ロンバルディアかな。今年のロンバルディアは4位。2004年の3位には届かなかったけど、ヴィンチェンツォ・ニーバリも積極的に動いたし、チームとしてできる限りのことをした結果。

自分は淡々とハイペースを刻むような登りが得意なんだ。今年のゴール前に新たに加わったヴィッラ・ヴェルガノの登りは急勾配で、爆発力のある選手向きだった。ギザッロの登りで脱落した選手の多くが復帰したので、その時点で優勝のチャンスは薄かった。自分としては良い走りだったと思う。

来年も同じコースなら、ヴィッラ・ヴェルガノに到達した時点でもっと集団を小さくしておきたい。250kmを超えるレースでは極限の耐久力が問われるんだ。その点、150kmちょっとのジャパンカップとはまた違う。

2年ぶりにジャパンカップを走るイヴァン・バッソ(リクイガス・キャノンデール)2年ぶりにジャパンカップを走るイヴァン・バッソ(リクイガス・キャノンデール) photo:Makoto AyanoCW:2012年の世界選手権は起伏に富んだコースだけど?
バッソ:イタリア代表チームのメンバーを選ぶのは僕じゃない。まずはその“小さな問題”をクリアしないといけない。確かにアルデンヌ・クラシックのようなコースで、僕のようなクライマーが必要になるかもしれない。ただし、距離も長いし、ただ登坂力があるだけでは勝負にならない。生粋のクライマー向きとは言えない。
優勝候補はフィリップ・ジルベール(周りで聞いていたチームメイトも頷いて賛同)。きっと刺激的なレースになるよ。

CW:長いシーズンの中で、リラックスする瞬間は?
バッソ:家族と過ごす時間。9歳の娘ドミティッラと5歳の息子サンティアゴと一緒にゆったりとした時間を過ごすこと。写真はいつも持ち歩いているよ。そう、2006年のジロで生まれたばかりのサンティアゴの写真を掲げてゴールしたのが5年前。あれから5年が経つ。

CW:イタリアで自叙伝を出したって本当?
バッソ:そう、これまでのキャリアに関する話をまとめて本にしたんだ。タイトルは『In salita controvento. Emozioni, cadute e traguardi della mia vita(逆風の登りの中で。情動、挫折、そして人生のゴール)』。日本では売ってないかも。持ってきたらよかった…。

スペシャルシューズを見せるイヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)スペシャルシューズを見せるイヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス・キャノンデール) photo:Makoto AyanoCW:いま履いているシューズはスペシャルモデル?
バッソ:このジャパンカップに合わせて、特別に作ってもらったんだ。世界に2足しか存在していないスペシャルモデル。1足は自分で履いて、もう1足はジャパンカップ後のパーティーでオークションにかけて、その売り上げを大震災のチャリティーに充てようと思う。

CW:このジャパンカップの後はバカンス?
バッソ:そう、長いシーズンが終わる。家族と一緒にバカンスを過ごして、徐々に、ゆっくりと動き出すんだ。オフシーズンのリラックスした時間はプロ選手に欠かせない。

CW:キャノンデールの新型スーパーシックス・エボには満足している?
バッソ:2009年にスーパーシックスを初めて乗ったとき、もうこれ以上改善点は無いように感じた。でも今年新しくなったエボに乗って驚いたよ。登りでの軽快感は抜群だ。それでいて平地や下りでのバランスも優れている。相変わらずキャノンデールは選手の要望を製品に反映させるのが上手くて早い。ますます“完璧”に近づいた。

CW:時々完璧な日本語でツイートしているけど、翻訳ソフトを使っている?
バッソ:それはトップシークレット!実は日本語を話せるんだ、ということにしておいて(笑)」

来日直後にも関わらず笑顔でインタビューに応じるイヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)来日直後にも関わらず笑顔でインタビューに応じるイヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス・キャノンデール) photo:Makoto Ayano

interviewed by Kei Tsuji

協力:キャノンデール・ジャパン

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