アメリカのBMCレーシングチームには、フィリップ・ジルベール(ベルギー)とトル・フースホフト(ノルウェー)という2人のスター選手が加入する。2012年のツール・ド・フランスはBMCレーシングチームの支配下にある?チームリーダーのカデル・エヴァンス(オーストラリア)に、イタリア在住のグレゴー・ブラウンが単独インタビューを行なった。

ツールを制したカデル・エヴァンス(オーストラリア)ツールを制したカデル・エヴァンス(オーストラリア) photo:Makoto Ayano「来シーズンが楽しみだ」。自宅で寛ぎながら、2009年の世界チャンピオンは声を弾ませた。「チーム内にリーダーが乱立することを危惧する人もいる。だけど、シーズン前半のプレッシャーを軽減し、ツールそのものに集中できる環境づくりが可能となる。ジルベールはアルデンヌ・クラシック、フースホフトはパリ〜ルーベやフランドルなどの北のクラシックで活躍するだろう」

BMCレーシングチームは、ツール終了後の8月9日にフースホフト獲得を発表した。さらにその10日後、今シーズン最も成功しているワンデーレーサーであり、UCIワールドツアーランキング首位のジルベール獲得を発表。

世界最高のワンデーレーサーと名高いフィリップ・ジルベール(ベルギー)世界最高のワンデーレーサーと名高いフィリップ・ジルベール(ベルギー) photo:Cor Vos他チームでエース級の選手が合流することになるが、エヴァンスがステージレースにおけるエースであることに変わりはない。エヴァンスは今年、ツール・ド・フランス、ティレーノ〜アドリアティコ、ツール・ド・ロマンディで総合優勝を果たしている。

来シーズンに向けての話題性は抜群。しかし、ジルベールやフースホフトなどの“費用のかかるスター選手”の獲得より、ツールでの戦力アップを図るべきだという声もある。

ツール・ド・フランスでステージ2勝を飾ったトル・フースホフト(ノルウェー)ツール・ド・フランスでステージ2勝を飾ったトル・フースホフト(ノルウェー) photo:Makoto Ayano「彼らの獲得を初めて知ったとき『ちょっと待て。我々はツールで総合優勝を狙う。そのことが最優先なはずだ』と首脳陣に言ったんだ。するとジム(オショウィッツ代表)はこう説明した。『いや、チームに加わりたいと言ったのは彼ら(ジルベールとフースホフト)だ。ツールで君をサポートしたいと』」

今年のツールで、ジルベールは開幕ステージで優勝し、マイヨジョーヌを1日着用した。フースホフトは第2ステージから1週間にわたってマイヨジョーヌを着続け、さらにアルカンシェルを着てステージ2勝という大活躍。エヴァンスはこの2人が来年のツール出場メンバーに欠かせない存在になると予想している。

BMCレーシングチームはジルベールとフースホフトの他にも、スティーブ・クミングス(イギリス)、マルコ・ピノッティ(イタリア)、ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ)を獲得している。

その一方で、クリス・バートン(アメリカ)、チャド・ベイヤー(アメリカ)、アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー)、カルステン・クローン(オランダ)、ジェフリー・ラウダー(アメリカ)、ジョン・マーフィー(アメリカ)、シモン・ザーナー(スイス)を放出した。

「難関山岳での戦力アップが課題なんだ。山岳アシストのサンタロミータは今年精彩を欠いた。新加入のスティーブ・クミングスとティージェイは山岳ステージで心強い存在になると思う」。23歳のティージェイ・ヴァンガーデレンは、ステージレースにおける第2エースという位置づけ。シーズン前半のパリ〜ニースやクリテリウム・ドゥ・ドーフィネ、ツール・ド・スイスなどでは、エースを担うことになるだろう。

今年史上2例目となるアルデンヌ・クラシック3連勝を果たしたジルベールは、クラシックレースにおける唯一無比のエース。「フィルが勝利を狙えるよう、チームは全力でレースをコントロールすることになると思う」。過去にフレーシュ・ワロンヌを制しているエヴァンスもそのことに同意する。

エヴァンスは2月26日に開催されるGPルガーノでシーズンインする。その後ジロ・デル・フリウリに出場し、連覇の懸かったティレーノ〜アドリアティコに挑む。

text:Gregor Brown
translation:Kei Tsuji

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