アジアツアーの“シーズン”は10月から、新年度2012シーズンに切り替わっている。アジアツアー、チームランキング1位という目標を抱え、昨シーズンを6位で終えた愛三工業レーシングチームの別府匠監督に、2012シーズンへの意気込みを伺った。

ヨーロッパでもなく、国内でもなく、“アジア”をターゲットにする愛三工業レーシングチームの特徴ある明確なビジョンに注目して欲しい。

別府匠監督(愛三工業レーシングチーム)別府匠監督(愛三工業レーシングチーム) (c)Sonoko.TANAKA2011シーズン、UCIアジアツアー最終チームランキング
1 タブリーズ・ペトロケミカル(イラン) 1,183
2 アザド大学(イラン) 663
3 ジャイアント・ケンダ(台湾) 594.67
4 トレンガヌ(マレーシア) 371
5 ファルネーゼ・ヴィーニ(イタリア) 332
6 愛三工業レーシングチーム(日本) 302
7 ルトゥーア(マレーシア) 294
8 CCCポルサット(ポーランド) 272
9 ペルトニナ(スロベニア) 267
10 ダンジェロ・NIPPO(イタリア) 266

-- 昨シーズン、別府監督にとって初めてのシーズンでしたが、良かったところと、今後の課題となったところを教えてください。

「6位という結果でしたが、4位以下のポイントは僅差ですし、もう少し上の順位で終えたかったというのが正直な感想です。具体的に大きな失敗や反省というものはありませんが、すべてのレースで、もう少しづつポイントを獲得したかった。特にシーズン最後のレースとなったツアー・オブ・チャイナでは、もっとポイントを取れたはずなので悔しく思いますね」

「良かった点は、ツール・ド・ランカウイ、ツール・ド・熊野、ツール・ド・シンカラと3つのUCIレースで4勝できたこと。また大学生上がりの2選手を除いた全ての選手がUCIポイントを獲得できたことです。つまり、出場したほぼ全てのレースで結果を出すことができました。

これまでは、決まった選手だけが勝つ、というパターンが多かったのですが、選手の意識が高まったこともあり、どの選手でも勝てるというチームの体制が作れました。攻撃の幅が広がって、さまざまなレース展開にも対応できますし、選手の自信にも繋がっています」


愛三工業レーシングチーム。3選手が2回目の出場となる愛三工業レーシングチーム。3選手が2回目の出場となる (c)Sonoko.TANAKA-- 2012シーズン、チームの目標は?

「引き続きアジアツアーのチームランキング1位をめざしていきます。昨シーズンで築くことができた“誰でも勝てる”という自信を強みにして、選手たちにもっとチャレンジしてもらうシーズンにしたいですね。

たとえば、福田真平選手は若いスプリンターです。熊野や加東ロードで勝っていますが、彼には中間スプリントも狙って欲しいと思っています。UCIポイントとは直接結びつかないため、今まではゴールに備えて体力を温存する意味でも、必要がない場合は狙っていませんでした。しかし、毎回中間スプリントでスプリントの体制を組むことによって、その経験が今後ゴールスプリントに生きてくると期待しています。

そのように若い選手には多くのことを経験したその先で“勝つ”ということを学んで欲しいと思っています。一方、綾部、盛、西谷というベテランの選手たちは、勝つことにこだわって走ってほしい。また若い選手を次のステップへと導くことも彼らの仕事です。多くのチャレンジの積み重ねが、チームの総合力を上げるとと考えているんです」


-- アジアツアーで戦う意義や魅力は何ですか?

「チームの母体、愛三工業が自動車メーカーで多くの工場や支社をアジアで展開していることがベースになっていますが、アジアは、距離、実力ともにヨーロッパと日本の中間に位置しているため、現状として、すぐにヨーロッパに行くことが難しいチームにとって、最良のサーキットになっています。アジアにいながら世界トップのプロチームと戦えるんです。

近年、世界的に見てアジアのレースやマーケットが注目されています。レース数が増え、レースの難易度も上がっています。急成長を遂げるアジアのレースシーンで、やはり日本のチームはそこに参戦するべきだと思っています。突然、レースに出たいと言っても招待をもらうことは難しいですし、アジアツアーならではのノウハウも必要になってきますから。つまり、どこかのチームが実績を作っておくべきで、自分たちにはそれができる。だからここで戦っているという意味もあります。

アジアツアー個人ランキングトップの選手やアジアのHCレースで勝った選手が、ヨーロッパのプロチームに移籍するというニュースが出ているとおり、選手たちにとっても、アジアツアーで結果を残すことで、世界のトップチームに移籍できるという可能性があります。

しかし、アジアツアーの課題として、レベルの高いレースがある一方で、そのレースの主導権を握るのはヨーロッパチームという場合がほとんどです。アジアのレースで、アジアのチームが主導権を握れるよう、自分たちのチームだけでなく、アジアのチームで協力してレベルの底上げを図っていきたいと思っています。さらに、問題のあるレース運営には積極的に意見を出し、よりよいレースを作っていくことも、アジアツアーを転戦する自分たちに課せられている使命なんです」



photo&text:Sonoko.TANAKA

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