真っ先にゴール前に現れたのはシマノレーシングの西薗良太と畑中勇介。西薗が先にゴールしてリーダージャージを獲得。鈴木譲も4位に入り、チームは最高の出だしになった。優勝候補最右翼のダンジェロアンティヌッチィ・NIPPOはまさかの5位以下に沈んだ。

優勝盾の返還。清水都貴(チームブリヂストン・アンカー)から優勝盾の返還。清水都貴(チームブリヂストン・アンカー)から photo:Hideaki.TAKAGI昨年の覇者、清水都貴(チームブリヂストン・アンカー)らが集団の先頭昨年の覇者、清水都貴(チームブリヂストン・アンカー)らが集団の先頭 photo:Hideaki.TAKAGI52km地点本別付近、逃げる澤田賢匠(CIELVO NARA PRO CYCLINGTEAM)を追う集団52km地点本別付近、逃げる澤田賢匠(CIELVO NARA PRO CYCLINGTEAM)を追う集団 photo:Hideaki.TAKAGI快晴の空の下、選手が目指す雌阿寒岳方面が見える快晴の空の下、選手が目指す雌阿寒岳方面が見える photo:Hideaki.TAKAGIツール・ド・北海道がいよいよ始まった。快晴の帯広の空の下、20チーム99人が開会式に集う。選手宣誓は、昨年第3ステージで大学生初のステージ優勝を飾った山本元喜(鹿屋体育大学)が行う。初日のため、スタート最前列はその山本と、昨年個人総合優勝の清水都貴(チームブリヂストン・アンカー)、北海道地域選抜で昨年山岳で活躍したブライアン・バークハウス、そして昨年完走した北海道大学の冨岡亮太が並ぶ。

9時30分定刻にスタート。最初の4kmはパレード走行だ。
今大会の最強チームは紛れもなくダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPOだ。5月のツール・ド・熊野で圧倒したメンバーに伸び盛りのカンパニャーロ・シモーネを加えて隙なしの体制。このNIPPOに国内コンチネンタル勢がどう立ち向かうかが注目された。

中盤まで続いたアタック合戦

スタートから1時間に渡ってアタック合戦となる。北海道ではあまり無い展開。第1ステージのため各チームとも心理的な駆け引きも入る。ようやく決まったのが澤田賢匠(CIELVO NARA PRO CYCLINGTEAM)の単独アタック。ホットスポットも1位通過。アタック合戦はいったんは収まったもののふたたび10人ほどの追走ができ、メイン集団もペースが上がってすべて吸収、振り出しに。

2つ目のホットスポットはマッシミリアーノ・リケーゼ(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)が先頭通過。ジロ2勝のスプリント力を見せる。
その後は再びアタック合戦。約30人の逃げに追走集団が2つ、そしてメイン集団の構図となるが、これもすべてひとつに。

ここからジャン・キュング(大韓民国自転車競技連盟)とルビアーノ・チャヴェス(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)の2人が抜け出し逃げる。ジャンは昨年の個人総合山岳賞、ルビアーノは熊野で個人総合2位。強力な2人の逃げだが、メイン集団はこれを容認、差は最大3分にまで広がる。

強力な2人の逃げに対し、メイン集団はようやく追撃を開始する。先頭を引くのはおもにシマノレーシングの鈴木真理・青柳憲輝、清水都貴(チームブリヂストン・アンカー)。ここで3つ目のホットスポットをリケーゼ先頭で通過。そのままKOMの上りへ突入する。

KOMを越えて10人の逃げが完成

ここでペースを上げたのは鈴木真理。そのあとを鈴木譲が担い加速していく。ここでメイン集団がばらけ、その先頭は10人ほどに。増田成幸(宇都宮ブリッツェン)とヴィンチェンツォ・ガロッファロ(マトリックスパワータグ)がこの上りで千切れてしまう。ここででできた追走集団8名が、先頭の2人を追いKOMを越え下る。この下りで追いつき、先頭集団は10名に。シマノが西薗、畑中、鈴木譲、NIPPOがカンパニャーロ、ルビアーノ、佐野淳哉、BSアンカーが井上和郎、普久原奨、さらにジャン、黒枝士揮(鹿屋体育大学)だ。

10名のままでラスト8kmの丘陵地帯に突入。ここでシマノ、NIPPO勢がアタックをかける。西薗のアタックを追ったのは佐野。これをマークしたのは畑中と鈴木譲。この時点ですでに後続は離れ、ジャンだけが追走する。ここで鈴木譲がアタックして畑中とともに西薗に合流。ジャンがこれを追走し鈴木譲が全開で引いた後、西薗と畑中が抜け出してワン・ツーフィニッシュ。ジャンがこれに続く。

シマノ西薗良太、畑中勇介がワン・ツーシマノ西薗良太、畑中勇介がワン・ツー photo:Hideaki.TAKAGI

チームがうまく機能したシマノレーシング

鈴木譲のスーパーアシストが大きな勝因だ鈴木譲のスーパーアシストが大きな勝因だ photo:Hideaki.TAKAGIゴール後、西薗と畑中が鈴木譲に駆け寄り「最高の動きだった」と称える。ラスト8kmの最終局面でNIPPOとジャンに対して最も効果的に動いたのが鈴木譲だった。それ以前に先頭2人を追走しメイン集団を牽引したのは青柳と鈴木真理。そしてKOMで8人の追走を作ったのは鈴木真理と鈴木譲。全員がそれぞれの場所で自分の可能性を捨てて動いた結果だ。
西薗は北海道4回目にして飛躍的に結果を出した。完走するのがやっとだった3年前から今や力勝負でUCIレースにまで勝利する実力を身につけた。


またしても勝つことができなかった佐野淳哉(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)またしても勝つことができなかった佐野淳哉(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO) photo:Hideaki.TAKAGI順調に進んでいたNIPPOだったが

ラスト8kmに入るまではNIPPOの望む展開で進んできた。ヒルクライマーのルビアーノが逃げ、スプリンターのリケーゼはことごとく集団の頭を取ってきた。先頭集団には気鋭のカンパニャーロ、そして佐野も送り込んだ。しかしそのルビアーノは独走で疲弊していた。そしてシマノ3人のアタックでほか2人も疲弊し、佐野が追走に回った時点でNIPPOは一人になってしまった。「連携がうまくいかなかった」と大門監督は語る。シマノの若手がどれほどの力かを見誤ったこともあるだろう。


個人総合時間&ポイント賞 西薗良太(シマノレーシング)個人総合時間&ポイント賞 西薗良太(シマノレーシング) photo:Hideaki.TAKAGI優勝候補の増田とガロッファロがKOMで千切れたことも大きかった。2人とも中盤までのアタック合戦で追走に回る時間が長く、そこで力を大きく使ってしまった。本来ならば先頭集団でラスト8kmを戦ったであろうメンバーだ。

翌日の第2ステージはいきなり標高差650mの厳しい津別峠を上る。そしてその後約180kmはおおむね平坦。集団コントロール力が試される区間だ。シマノ1、2、4位にNIPPOは5、6、7位と圧倒的にシマノ有利。だが峠プラス平坦なコースで戦略の難しいステージ。シマノの総合力が試されるのが第2ステージだ。

結果
第1ステージ 198km
1位 西薗良太(シマノレーシング)4時間35分48秒
2位 畑中勇介(シマノレーシング)
3位 ジャン・キュング(大韓民国自転車競技連盟)+05秒
4位 鈴木譲(シマノレーシング)+11秒
5位 カンパニャーロ・シモーネ(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)+14秒
6位 ルビアーノ・チャヴェス(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)+16秒
7位 佐野淳哉(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)+39秒
8位 普久原奨(チームブリヂストン・アンカー)+58秒
9位 井上和郎(チームブリヂストン・アンカー)+1分14秒
10位 黒枝士揮(鹿屋体育大学)

個人総合時間賞 
1位 西薗良太(シマノレーシング)4時間35分38秒
2位 畑中勇介(シマノレーシング)+04秒
3位 ジャン・キュング(大韓民国自転車競技連盟)+09秒
4位 鈴木譲(シマノレーシング)+21秒
5位 カンパニャーロ・シモーネ(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)+22秒
6位 ルビアーノ・チャヴェス(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)+24秒
7位 佐野淳哉(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)+49秒
8位 普久原奨(チームブリヂストン・アンカー)+1分08秒
9位 井上和郎(チームブリヂストン・アンカー)+1分24秒
10位 黒枝士揮(鹿屋体育大学)

個人総合ポイント賞
1位 西薗良太(シマノレーシング)25点
2位 畑中勇介(シマノレーシング)20点
3位 ジャン・キュング(大韓民国自転車競技連盟)19点

個人総合山岳賞
1位 ルビアーノ・チャヴェス(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)7点
2位 ジャン・キュング(大韓民国自転車競技連盟)5点
3位 カンパニャーロ・シモーネ(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)3点

個人総合U23賞
1位 黒枝士揮(鹿屋体育大学)4時間37分02秒
2位 山本元喜(鹿屋体育大学)+1分30秒
3位 中尾佳祐(順天堂大学)+1分39秒

団体総合時間賞
1位 シマノレーシング 13時間47分35秒
2位 ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO +58秒
3位 チームブリヂストン・アンカー +4分39秒

photo&text:高木秀彰

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