9月3日、ブエルタ・ア・エスパーニャ第14ステージが行われ、逃げ集団からアタックを成功させたレイン・ターラマエ(エストニア、コフィディス)が区間優勝。総合争いでは、総合2位のヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)が脱落。総合順位を大きく下げた。

ターラマエ、デラフエンテがリードするこの日の先頭集団ターラマエ、デラフエンテがリードするこの日の先頭集団 photo:Tour of Spain/Graham Watson山岳続きのブエルタは、この2週目の終わりにクライマックスを迎える。翌日に悪名高きアングリル山頂ゴールを控えた第14ステージもまたラ・ファラポーナの山頂ゴール。総距離175kmのこの第14ステージはレース中盤から2級、1級、超級と次第に険しくなるカテゴリー山岳が待ち受け、ふるい落としのサバイバルレースが予測された。そして事実総合上位の選手がふるいにかけられることとなった。

ベンタナの下りで落車し林に突っ込んだカールステン・クローン(オランダ、BMCレーシング)ベンタナの下りで落車し林に突っ込んだカールステン・クローン(オランダ、BMCレーシング) photo:Cor Vosこの日も総合争いの選手の隙をつくステージ狙いの選手と、アシストの仕事として前を走りたい選手たちが先頭集団を形成。30km地点を前に17名の選手が集団から飛び出した。メンバーは、レイン・ターラマエ(エストニア、コフィディス)、ダビ・デラフエンテ(スペイン、ジェオックスTMC)、ルイスレオン・サンチェス(スペイン、ラボバンク)、カールステン・クローン(オランダ、BMCレーシング)、リー・ハワード(オーストラリア、HTC・ハイロード)、ギヨーム・ボナフォン(フランス、アージェードゥーゼル)、エデュアルド・ヴォルガノフ(ロシア、カチューシャ)、アレクサンダー・クチンスキー(ベラルーシ、カチューシャ)ら。

ラ・ファラポーナを先頭で駆け上がるレイン・ターラマエ(エストニア、コフィディス)ラ・ファラポーナを先頭で駆け上がるレイン・ターラマエ(エストニア、コフィディス) photo:Kei Tsujiこの逃げ集団は最大で8分の差をもって、104km地点の2級山岳に突入。ここからの70kmが、本当の第14ステージ。まずは標高1590mの2級山岳ラ・ベンタナへ登る。この登りでは動きは起こらず、デラフエンテを先頭に山頂通過。しかしこのベンタナのテクニカル・ハイスピードな下りでクローンとセップ・ファンマルケ(ベルギー、ガーミン・サーヴェロ)がコース脇の林に飛び込む落車。クローンはリタイヤを余儀なくされた。

2番手でラ・ファラポーナを登るダビ・デラフエンテとファンホセ・コーボ(ともにスペイン、ジェオックス・TMC)2番手でラ・ファラポーナを登るダビ・デラフエンテとファンホセ・コーボ(ともにスペイン、ジェオックス・TMC) photo:Kei Tsuji132km地点から始まる1級山岳サン・ロレンソで逃げ集団からアタックを見せたのはターラマエ。この動きにデラフンテが合流し、先頭は2名に。チームスカイがコントロールする集団は3分までその差を詰めており、ステージ優勝のために超級山岳を待たずに2名は飛び出した。

ラ・ファラポーナでメイングループをリードするブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)ラ・ファラポーナでメイングループをリードするブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ) photo:Kei Tsujiここで集団からはマルツィオ・ブルセギン(イタリア)とベナト・インチャウスティ(スペイン)のモビスターコンビがアタックで抜け出す。総合15位のブルセギンのジャンプアップ狙いの動きだが、集団はノーリアクション。これを好機と見たか総合9位のダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)もアタック。続いてホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)も様子見のアタックで集団に揺さぶりをかける。

ウィギンズのペースに堪らず千切れるユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、オメガファーマ・ロット)ウィギンズのペースに堪らず千切れるユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、オメガファーマ・ロット) photo:Kei Tsujiレオパード・トレックが牽引していた集団から再度ロドリゲスがスピードアップを見せると、替わってデニス・メンショフ(ロシア、ジェオックスTMC)が集団先頭でハイペースを刻む。2007年のブエルタ覇者メンショフは現在総合17位。チームメイトで現在総合8位につけるファンホセ・コーボ(スペイン)のための走りを見せる。

ラ・ファラポーナを登る総合5位のヤコブ・フグルサング(デンマーク、レオパード・トレック)ラ・ファラポーナを登る総合5位のヤコブ・フグルサング(デンマーク、レオパード・トレック) photo:Kei Tsuji142km地点のサン・ロレンソ山頂はターラマエが先頭で通過。先頭集団からこぼれた選手たち、ブルセギン・インチャウスティ、独走のモレーノを挟んで集団は2分30秒差でここを通過。レースは残り33km。超級のラ・ファラポーナ山頂を待つのみ。

下りでモレーノがブルセギンらに合流。ここには先頭から下がってきたヴォルガノフが入り、カチューシャ2人、モビスター2人の4名で追走グループを形成。どちらのチームも、総合のジャンプアップを狙いで利害が一致。協調体制をとって前を追う。

16.8kmに及ぶ登坂距離のラ・ファラポーナへ先頭2名が突入。1分13秒差でモレーノら4名、メイン集団はさらにそこから48秒遅れで登りに入る。我慢の登り始め、集団は来るべき総合争いに備えて若干ペースを落としたが、残り7kmからの勾配がきつくなる区間で一気に前との差を詰めていく。

カチューシャの2人が積極的に牽引していた追走グループも、残り6km地点で集団に飲み込まれ、レースは先頭2人対総合有力勢の構図に。しかしハイテンポでの急勾配は総合上位の選手を早くもふるいにかける。最初に脱落したのは総合11位のヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア、レディオシャック)。

集団からはアメツ・チュルカ(スペイン、エウスカルテル)がアタック。10秒ほどの差で粘るチュルカだが、先頭の2名との差は縮まらない。残り4kmで集団からはモレーノが再びアタック。この動きにはコボが追走。モレーノは伸びず、先ほどの1級山岳でも好調さを見せていたコボがモレーノをかわし、さらにチュルカまで抜き去って単独3位に躍り出る。

残り3kmを先頭のタラマエ&デラフエンテから45秒遅れで通過したコボ。集団はさらに19秒遅れで通過したが、この集団にヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)とロドリゲスがついていけない。総合2位のニーバリの脱落を最大のチャンスと見たのはマイヨロホのブラッドレー・ウィギンズ(イギリス)と総合3位のクリス・フルーム(イギリス)のチームスカイ勢。この日は他チームの動きに潜む走りをしていたリーダーチームが、メイン集団のペースを上げる。

まずはフルーム、そしてウィギンズのハイペースは他の総合上位勢も振り落としていく。総合4位のフレデリック・ケシアコフ(スウェーデン、アスタナ)、総合5位のヤコブ・フグルサング(デンマーク、レオパード・トレック)、6位のマキシム・モンフォール(ベルギー、レオパード・トレック)らをマイヨロホが引き離していく。

残り2kmで、先頭を行くデラフエンテは追い上げてくるチームのエース、コボを待ったために、ターラマエが単独先頭に躍り出る。デラフエンテに合流したコボは力を合わせて前を追うが、ターラマエも力強いペダリングで山頂を目指す。

大ブレーキのヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)大ブレーキのヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール) photo:Tour of Spain/Graham Watsonグランツール初勝利を飾ったレイン・ターラマエ(エストニア、コフィディス)グランツール初勝利を飾ったレイン・ターラマエ(エストニア、コフィディス) photo:Tour of Spain/Graham Watson区間2位に入り総合で4位まで浮上したファンホセ・コーボ(スペイン、ジェオックス・TMC)区間2位に入り総合で4位まで浮上したファンホセ・コーボ(スペイン、ジェオックス・TMC) photo:Tour of Spain/Graham Watson


完璧な走りを見せたクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)が手を挙げる完璧な走りを見せたクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)が手を挙げる photo:Tour of Spain/Graham Watson今年のツール・ド・フランスで新人賞争いを繰り広げたターラマエは、その高い総合力を改めてグランツールの舞台で発揮。逃げ切りを成功させてラ・ファラポーナ山頂を制した。ターラマエにとってこれがグランツール初勝利。追い上げを見せたコボはデラフエンテを切り離して25秒差の2位でゴール。区間優勝はならなかったが、ボーナスタイム12秒を獲得し、総合順位という点では成功の走り。3位には29秒差で尽くす走りをしたデラフエンテが入った。

先頭から20分遅れでラ・ファラポーナの頂上を目指す土井雪広(スキル・シマノ)先頭から20分遅れでラ・ファラポーナの頂上を目指す土井雪広(スキル・シマノ) photo:Kei Tsuji昨日同様、ゴール前で集団から飛び出したワウテル・ポーエルズ(オランダ、ヴァカンソレイユ)が40秒遅れの4位。45秒遅れのメイン集団はウィギンズが先頭でゴール。集団といってもここに残ったのはフルーム、メンショフ、バウク・モレマ(オランダ、ラボバンク)のみ。他の総合上位陣は軒並み遅れをとった。

ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、オメガファーマ・ロット)は1分遅れ、フグルサングは1分24秒、ケシアコフは1分59秒、そしてニーバリとロドリゲスは2分6秒の遅れを喫した。山岳の力で防戦となることが予測されたチームスカイだったが、フタを開ければその真逆。ほぼ全てのライバルにタイム差をつける会心の走りで翌日の最難関ステージ、アングリルへ臨む事となった。遅れたニーバリは総合7位へ転落。ステージ2位のコボが総合4位、ステージ7位のモレマが総合3位まで順位を上げることに成功している。

土井雪広(日本、スキル・シマノ)は中盤の山岳ポイントから集団前方に位置し、2級山岳の下りで起きた落車を回避。20分23秒遅れの62位でゴールした。「1級山岳はひたすら集団に食らいついて走っていましたが、ラスト頂上までラスト3キロを残してついて行けなかった」「あんな危ないダウンヒルを越え、無事生きて帰ってこれたことに感謝し、明日からも頑張ります!」と翌日のアングリルに前向きなツイートをしている。ヨーロッパ屈指の激坂を土井がどう走るか注目したい。


ブエルタ・ア・エスパーニャ2011第14ステージ結果
1位 レイン・ターラマエ(エストニア、コフィディス)            4h39'01"
2位 ファンホセ・コーボ(スペイン、ジェオックス・TMC)            +25"       
3位 ダビ・デラフエンテ(スペイン、ジェオックスTMC)             +29"       
4位 ワウテル・ポーエルズ(オランダ、ヴァカンソレイユ)            +40"       
5位 ブラッドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)            +45"      
6位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)                  
7位 バウク・モレマ(オランダ、ラボバンク)          
8位 デニス・メンショフ(ロシア、ジェオックスTMC)                    
9位 ミケル・ニエベ(スペイン、エウスカルテル)                +55"
10位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、オメガファーマ・ロット)    +1'00"
13位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)              +1'17"
14位 マキシム・モンフォール(ベルギー、レオパード・トレック)        +1'18"
15位 ヤコブ・フグルサング(デンマーク、レオパード・トレック)        +1'24"
21位 フレデリック・ケシアコフ(スウェーデン、アスタナ)           +1'59"
26位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)             +2'06"
27位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)            
126位 土井雪広(日本、スキル・シマノ)                   +20'23"

個人総合成績(マイヨロホ)
1位 ブラッドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)             55h54'45"
2位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)                   +7"
3位 バウク・モレマ(オランダ、ラボバンク)                     +36"
4位 ファンホセ・コーボ(スペイン、ジェオックス・TMC)               +55"
5位 ヤコブ・フグルサング(デンマーク、レオパード・トレック)            +58" 
6位 フレデリック・ケシアコフ(スウェーデン、アスタナ)               +1'23"
7位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)       +1'25"
8位 マキシム・モンフォール(ベルギー、レオパード・トレック)            +1'37"
9位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、オメガファーマ・ロット)        +2'16"
10位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)                 +2'24"
11位 デニス・メンショフ(ロシア、ジェオックス・TMC)               +2'56"
14位 セルヒオ・パルディージャ(スペイン、モビスター)               +3'30" 
15位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、アージェードゥーゼル)           +3'32"
18位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)                +4'17"
19位 マルツィオ・ブルセギン(イタリア、モビスター)                +4'40"
20位 ヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア、レディオシャック)           +5'19"    
22位 カルロス・サストレ(スペイン、ジェオックス・TMC)               +6'50"
168位 土井雪広(日本、スキル・シマノ)                      +3h24'30"

ポイント賞(プントス)
1位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)          81pts
2位 バウク・モレマ(オランダ、ラボバンク)              78pts
3位 ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)    75pts

山岳賞(モンターニャ)
1位 ダヴィ・モンクティエ(フランス、コフィディス)         50pts
2位 マッテオ・モンタグーティ(イタリア、アージェードゥーゼル)   38pts
3位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)          32pts

複合賞(コンビナーダ)
1位 バウク・モレマ(オランダ、ラボバンク)             17pts
2位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)          17pts
3位 ファンホセ・コーボ(スペイン、ジェオックス・TMC)       25pts

チーム総合成績
1位 ジェオックスTMC       167h13'37"
2位 レオパード・トレック        +2'26"
3位 モビスター            +18'39"


text:Yufta Omata
photo:Kei Tsuji,Cor Vos, Unipublic

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