7月30日、ツール・ド・フランス閉幕から僅か6日で次なるUCIプロツアーレースが開催される。スペイン・バスク地方を舞台にしたクラシカ・サンセバスティアンには、ツールで活躍した選手が多数出場。今年は全日本チャンピオンジャージを着る別府史之(レディオシャック)が初出場する。

ハイスキベル峠とアルカレ峠が勝敗を分つ

ビスケー湾の真珠と呼ばれるサンセバスティアンをスタートビスケー湾の真珠と呼ばれるサンセバスティアンをスタート photo:Cor VosUCIプロツアーカレンダーに組み込まれたクラシカ・サンセバスティアンは、熱狂的な自転車ファンを有するバスク地方最大のワンデーレース。「クラシカ(クラシック)」の名を冠しているが、今年で開催31回目。比較的その歴史は浅い。

レースの舞台となるサン・セバスティアンは、ビスケー湾に面した港湾都市。バスク語名はドノスティア。「ビスケー湾の真珠」と形容されるバスク地方随一のリゾート地であり、フランス国境から僅か15kmしか離れていないこともあり、シーズンには国内外から多数の観光客が詰めかける。真夏の太陽の下、バカンス中の観客たちが声援を送る。

クラシカ・サンセバスティアン2011コースプロフィールクラシカ・サンセバスティアン2011コースプロフィール image:clasica-san-sebastian.diariovasco.com山がちなバスク地方の内陸部を駆け抜ける234kmはアップダウンの連続で、1級山岳ハイスキベル峠(平均勾配5.8%・登坂距離7.8km)と2級山岳アルカレ峠(平均勾配6.3%・登坂距離2.7km)が大会の名物だ。

昨年、この勝負の掛かる2つの登りを2回ずつ(以前は1回ずつ)通過するレイアウトに変更され、コースの難易度がアップした。最後のアルカレ峠はゴールの15km手前であり、大集団でのスプリント勝負に持ち込まれるケースは少ない。これまでの大会のほとんどが、複数名or小集団によるスプリント勝負で決している。

脚質的には登坂力に長けたクラシックレーサー向き。スプリント力に長けていたとしても、上りで失速すれば勝利は見えてこない。栄えある優勝者には、バスク地方特有の大きなベレー帽が授与されるのが特徴だ。

LLサンチェス、サンチェス、ジルベールが三強か 別府史之の活躍に期待

ツール第9ステージで優勝を飾ったルイスレオン・サンチェス(スペイン、ラボバンク)ツール第9ステージで優勝を飾ったルイスレオン・サンチェス(スペイン、ラボバンク) photo:Cor Vos過去30年の歴史の中で、11名のスペイン人優勝者が誕生している。1990年にはミゲール・インドゥライン(スペイン)が優勝。特にここ数年はスペイン人選手の活躍が顕著で、栄光のベレー帽は、2008年から3年連続でスペイン人選手の手に渡っている。

サンセバスティアンでの“勝ち方”を心得ているのは、オレンジはオレンジでもオランダのオレンジ、優勝経験者を2人擁するラボバンクだ。2009年大会覇者のカルロス・バレード(スペイン)と、2010年大会覇者のルイスレオン・サンチェス(スペイン)が揃って出場する。

ツールでマイヨアポワを初受賞したサムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)ツールでマイヨアポワを初受賞したサムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル) photo:Makoto AyanoLLサンチェスはツール第9ステージで優勝。バレードはツール終盤の山岳で調子を良さを見せた。今年はこの2人にオスカル・フレイレ(スペイン)が加わる。1ヶ月半後に控えたロード世界選手権に向けてのフレイレの仕上がりにも注目したい。

サンセバスティアンの特徴は、ツールで総合を争った選手がズラリとスタートラインに並ぶことだろう。

ツール第1ステージ 登りスプリントで飛び出し勝利を決めたフィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット)ツール第1ステージ 登りスプリントで飛び出し勝利を決めたフィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット) photo:Makoto Ayano今年は総合3位フランク・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック)、総合6位サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)、総合7位ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD)、総合8位イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)が出場する。

中でもバスクチーム所属のサンチェスはモチベーション高くレースに挑むはず。ツールで山岳賞に輝いたサンチェスは、登坂力、ダウンヒル能力、スプリント力、独走力を兼ね備えたオールラウンダー。バスクチームとバスクファンのバックアップを受けて初タイトルを目指す。なお、エウスカルテルはまだこのサンセバスティアンで勝ったことがない。

全日本チャンピオンの別府史之(レディオシャック)全日本チャンピオンの別府史之(レディオシャック) photo:Hideaki.TAKAGIツールでポイント賞を競り合ったフィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット)とホセホアキン・ロハス(スペイン、モビスター)も出場。世界屈指のワンデーレーサーとして、今年アルデンヌ・クラシック3連勝を飾ったベルギーチャンピオンは、その爆発的な走りでバスクレースを制するか。ジルベールはツール後の興業クリテリウムレースで調子の良さをアピールしている。

ツールで果敢に動いたフランスチャンピオンのシルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ)や、今年ブレイクしたトーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM)らにも注目。逆に、ツール出場を逃したホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)やカルロス・サストレ(スペイン、ジェオックス・TMC)らスペイン勢は、このサンセバスティアンでシーズン後半に向けて再始動したいところ。サストレはデニス・メンショフ(ロシア)とのタッグで挑む。

そして、日本からは唯一別府史之(レディオシャック)がスタートラインに並ぶ。今年ジロ・デ・イタリアを完走し、全日本選手権でダブルタイトルを獲得したフミが、サンセバスティアンに初出場。赤と白の全日本チャンピオンジャージを着て、地元バスク出身のアイマル・スベルディア(スペイン)らをアシストすることになるだろう。

クラシカ・サンセバスティアン歴代優勝者
2010年 ルイスレオン・サンチェス(スペイン)
2009年 カルロス・バレード(スペイン)
2008年 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン)
2007年 レオナルド・ベルタニョッリ(イタリア)
2006年 シャビエル・フロレンシオ(スペイン)
2005年 コンスタンティーノ・サバーリャ(スペイン)
2004年 ミゲールアンヘル・ペルディゲロ(スペイン)
2003年 パオロ・ベッティーニ(イタリア)
2002年 ローラン・ジャラベール(フランス)
2001年 ローラン・ジャラベール(フランス)
2000年 トーマス・デッケル(オランダ)

text:Kei Tsuji

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