山岳ステージを前にした平坦ステージ。あいにくの雨にたたられたが、この日はようやく落車事故が起こらない平穏なステージになった。勝利を取り戻したカヴ。緑のジャージも手にしたが、この先を考えれば決して安泰ではない。

飛び交いだした移籍情報

スタート地点で笑顔で話すトル・フースホフト(ノルウェー、ガーミン・サーヴェロ)とフィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット)スタート地点で笑顔で話すトル・フースホフト(ノルウェー、ガーミン・サーヴェロ)とフィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット) photo:Makoto Ayanoリラックスしているのはマイヨベールに身を包むジルベール。虹色ジャージに着替えたフースホフトと笑顔で談笑中。なにやら耳打ちしては大声で笑いあう様子。

朝から移籍情報が飛び交う。このスタート前に顔を揃えたふたり、ジルベールとフースホフトがBMCと契約するという情報が出た。クイックステップもジルベールとコンタクトしていることを認めている。ユーロップカーがフースホフトを欲っしている話も以前から出ている。
しかしUCIの定めた協定では、移籍契約については8月1日までは公表してはいけないことになっている。


ハイロードのスポンサー探しが続く

プロトンの到着を待つボブ・ステイプルトンHTC・ハイロードGMプロトンの到着を待つボブ・ステイプルトンHTC・ハイロードGM photo:Makoto AyanoそしてニュースがないのがHTCハイロードだ。アンドロイド携帯でおなじみ台湾のHTCとの契約は今年いっぱいまで。休息日に新スポンサーの発表があると言われていたのに、とくになにもなかった。

ハイロードのセネラルマネジャー、ボブ・ステイプルトン氏がこの日はじめてツールに姿を見せたが、まだスポンサー探しの様子だ。

ステイプルトン氏が専念しているのは現在のメインスポンサーであるHTCと関係を続けること。そしてオプションとして他の企業とも話しあいを続けているようだ。

「今、いくつもの話し合いを重ねていて、忙しくしている。まだ言えることは何も無い。デッドラインもとくにない」
もちろんチームメンバーはすでに移籍の可能性をみて動いていると予測される。カヴェンディッシュは母国イギリスのチームスカイと数週前にサインを済ませているとも言われている。シウトソウがスカイと契約したという話も出た。

ツール・ド・フランスは最高の公開マーケット。選手たちはツール中はツールに専念しているが、選手の代理人や監督たちも水面下で話し合いを調整している。ツール中に出るビッグネームの移籍話は、あまり信用ならない。ツールが終わって「あけてビックリ」は昨年のコンタドールの例が象徴的だ。


ジルベールはマイヨヴェールのプレッシャー無し

マイヨ・ヴェールを着るフィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット)マイヨ・ヴェールを着るフィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット) photo:Makoto Ayanoジルベールは今のところカヴェンディッシュ、そしてロハスとのマイヨヴェール争いで接戦中。今日のスプリントで失う可能性が高いが、これから続く山岳ステージではカヴが山で遅れるため、中間スプリントで有利に立てる。

上りスプリントがこなせると話題の今年のカヴだが、さすがに山岳がこなせるというほどではない。

ジルベールは言う「ポイント争いは接戦だね。昨日はゴールでポイントを失ったけどグライペルの勝利でハッピーだった。今日もゴールのポイント争いではカヴに負ける。中間スプリントもトライはするけど、彼も意欲的だ。僕はピュアスプリンターじゃないからね。マイヨヴェール争いは一日一日をみてゆく。これからの山岳ステージで有利なのは本当だろう。中間ポイントを狙っていくのは確かに僕の解決法だろうね。ストレス、プレッシャーはぜんぜんないよ」。


スプリント前に降りだした大雨

ローテーションを廻しながら逃げる6名ローテーションを廻しながら逃げる6名 photo:Makoto Ayano昨夜は夜10時頃に落雷が続いた。投宿したトゥールーズ近郊のホテル周辺でも何度か雷が落ち、街がしばらく停電した。

安定しない天気が続くツール。スタート時間を迎えて雨が小降りになったが、この日は結局、一日中降ったり止んだり。トゥールーズ近郊はツールの風景としておなじみのひまわり畑と、ワインの葡萄畑が広がる素晴らしい景観。しかしこの天気のおかげで映えない。

逃げたペレス(エウスカルテル)、ボーム(ラボバンク)、グリブコ(アスタナ)、ドラージュ(FDJ)、ヴァランタン(コフィディス)、アングルヴァン(ソール・ソジャサン)ら6人。ドラージュは今日もまた逃げ距離を更新し、ボームは最後まで粘りを見せた。

ラース・ボーム(オランダ、ラボバンク)ラース・ボーム(オランダ、ラボバンク) photo:CorVos果敢な独走をみせたボームは逃げのスペシャリスト。昨年のツールでは第1ステージの第1アタックはボームだった。オランダが誇るシクロクロスとトラックもこなすマルチタレントだ。

ボームは言う「最初のうちに多分ハードに行き過ぎた。そして4人ではスーパースプリントに備える集団を前に十分な差をつけることができなかった。ときどき強すぎる風が吹いた。

フランス人はOKなんだけど、そんなにハードに攻めないね。最後まで逃げきるのは難しすぎた。たぶんもう少しグループに留まってから行くべきだったんだ。そうしたら逃げ切れたかも。一日じゅう逃げ集団にいるのは、落車の危険を心配しなくて済むからいいね」。

雨に濡れた路面。しかし今日の選手たちは連日続いた落車の悲劇をうまく避けることができたようだ。

日本からのファンはハチマキ「必勝」!日本からのファンはハチマキ「必勝」! photo:Makoto Ayanoもっとも影響が大きかったのはゴールまで10kmに迫った時点での大雨だ。あまりに勢いのある滝のような雨に、集団もたまらずスローダウン。

そこまでにスピードをあげることで最終的なスプリントへ臨む体制をつくってきたチームの仕事も仕切り直しだ。

ゴール地点ではラインに沿って配置についたカメラマンたちが屋根の下に退避することもできず濡れネズミに。

ラヴォールのゴール地点脇には、日本の観客がたくさん陣取っていた。ツールの山岳ステージを走るアマチュアレース「エタップ・デュ・ツール」を終えてツール観戦にきた日本のサイクリストたちだ。「必勝ハチマキ」を額に締めているが、肝心の日本選手はいない(まあ、忘れよう!)。

後半、逃げ集団との差を詰めたのはHTCハイロードのラルスイティング・バク(デンマーク)とダニー・ペイト(アメリカ)。ゴール前の位置取り争いはチームスカイ、ガーミン・サーヴェロ、オメガファーマ・ロットとHTCハイロードのトレインがしのぎを削った。


キックで差をつけろ! 同じ過ちを繰り返さないカヴ

パンク修理の間も時間をムダにはしないパンク修理の間も時間をムダにはしない photo:CorVos昨ステージでグライペルに負けを喫したカヴェンディッシュ。世界最強スプリンターに、元チームメイトがつけた黒星。もし今日同じように負ければ、精神的にもこれからの闘いがきつくなる。
しかしゴール前は発射台マーク・レンショー(オーストラリア)とのコンビが完璧に決まったカヴ。残り170mから行く早めのスプリントで、グライペルを寄せ付けなかった。今ツール3勝目、ツール通算では18勝目だ。

「ただ行ったんだ。もし僕がいつもどおりのキックをすれば、差は開くと言ったよ。昨日はそれが弱かったんだ。僕の弱点は僕の加速。それ(キック)ができさえすれば差をつけられて、ゴールまで差を保てるんだ」

マイヨヴェールと手にしたマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、HTC・ハイロード)マイヨヴェールと手にしたマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、HTC・ハイロード) photo:Makoto Ayano「昨日、僕は今日は勝つと言ったはずだよ。チームにアシストされていながら最後に僕が仕事を果たせないのはハードだね。今日はどうしても勝つと決めていた。グライペルはパーフェクトだったよ。でも今日は昨日と同じ過ちを犯さないようにしたんだ」

素晴らしいアシストをみせたバクが言う「グライペルが昨日勝ったのは良かった。それがカヴを怒らせた」

とうとうマイヨヴェールに届いたカヴ。表彰台では受け取ると思わずジャージにキッス。

「マイヨヴェールをとれたなんて素晴らしいね。これは世界一美しいジャージだよ。これは今年ツールに来て欲しかった物のすべてなんだ」。


フェイユに怒るグライペル

「また今日もトライしたけどだめだったね。チームはすごい働きをしてくれた。でも、運がなかった」

なんとか2位に入ったグライペルなんとか2位に入ったグライペル photo:Makoto Ayano昨日の再現はならず、2位に終わったグライペル。6位になったロマン・フェイユ(ヴァカンソレイユ)に怒っているようだ。
「ルーランズのすごいアシストを受けた。ユルゲンと僕がゴール前に一緒にいたのは初めてのこと。でもフェイユとの間にちょっとした問題があった。フェイユのスプリントはクレイジーだ。彼はワガママだ。彼は誰かの後ろにつこうとして、50mごとにつくホイールを変えるんだ。すごく危ない!」
 
ゴールスプリントで動きまわるフェイユの危険さは、カヴェンディッシュも序盤に指摘している。一方で、当のフェイユは気にしない様子だ。
「僕には誰も引いてくれる人がいなかったからルーランズのホイールに飛びついたんだ。もしスプリントでリードアウトしてくれる人がいない場合、ホイールからホイールに飛びつく必要はあるよ」。


「マン島超特急」に対抗出来るのは「ゴリラ」だけ?

お互いの健闘を讃え合うカヴェンディッシュとグライペルお互いの健闘を讃え合うカヴェンディッシュとグライペル photo:Cor Vos届かなかったもののカヴにスプリントで対抗できたのはグライペルだけのように見えたゴールスプリント。昨年のマイヨヴェール覇者ペタッキ(ランプレ)はスプリント争いから脱落して28位に沈んだ。今年のペタッキのここまでは第8ステージで2位になったのみで、他に何もない。

3位のファラーは第3ステージで勝って以来精彩を欠いている。ファラーは第5ステージで落車している。フェイユはゴール後、明日からの山岳を前にツールを去ると話した。母国での勝利を願ったフェイユだが、落車で痛めた膝の状態が良くないという。夢は叶わなかった。

ジャパンカップのクリテで2位になったカチューシャ期待のデニス・ガリムジャノフ(ロシア)は、まだ勝利を争えるレベルに達してはいないようだ。
マイヨヴェールのジルベールはゴールスプリントでポイントを稼ぐことは諦める割り切りぶりで、66位フィニッシュ。ゴールスプリントでカヴの強敵と言えるのは、今のことろグライペルだけのようだ。


ヴォクレールのマイヨジョーヌは明日まで?

マイヨ・ジョーヌを着るトマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー)マイヨ・ジョーヌを着るトマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー) photo:Makoto Ayanoここまで2日間マイヨジョーヌを披露したヴォクレール。明日のルザルディダンへとゴールする山岳ステージでマイヨを失う覚悟をしている。
総合有力候補のエヴァンスが2分26秒遅れにつけるが、山岳スペシャリスト達が動けば一気になくなる差だ。ちなみに10日間マイヨジョーヌを着た2004年は、9分35秒の貯金があった。

ユーロップカーは総合さえ期待されたクリストフ・ケルヌを失っている。「経験のあるアントニー・シャルトーやピエール・ロラン、シリル・ゴティエがいるから山での働きに期待できるけど、ケルヌがいないのは大きな痛手なんだ」(ヴォクレール)

しかし2004年のヴォクレールは、山岳でもアームストロングら山岳スペシャリストに遅れながらもマイヨジョーヌを守る走りを粘り強く披露してフランス中の喝采を浴びた。貯金は少ないが、ヴォクレールが明日もマイヨを守ることにフランスじゅうが期待している。

なにしろ総合優勝候補たちはまだマイヨジョーヌを着たくないという膠着状態が続いている。もしヴォクレールがアタックしても気にしないだろう。そして、ヴォクレールは今山岳ポイントでも5点差でフーガランドについで2位。マイヨ・アポア獲得に向けてアタックに動くことも視野にあるはずだ。

酷な話だが、フーガランドの容態によってはヴォクレールに水玉ジャージが移る可能性がある。
なんたって明日はキャトーズ・ジュイエ、フランス革命記念日なのだから。


photo&text:Makoto.AYANO
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