ロードバイクでは、元名選手が立ち上げたブランドがいくつかあるが、このエディ・メルクスはそれらの中でも代表格として筆頭に挙げていいブランドだろう。彼の現役時代の戦歴は果てしなく輝かしいものであり、その氏が立ち上げた『エディ・メルクス』は多くのロードバイク・ユーザーを虜にしてきた。今回、そのラインナップの中からスカンジウム合金を使ったAMX-5のレビューをお届けしたい。

エディ・メルクス AMX-5エディ・メルクス AMX-5 (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp

まず、ざっとエディ・メルクスというブランドについて整理をしてみよう。先にも述べた選手として名声を轟かせたメルクスは、現役時代にジロ・デ・イタリア、ツール・ドフランスというロード界に於いてビッグイベントであるレースを含め、実に525勝という驚くべく成績を残している。その後、16年間の選手生活を1977年に終え、自らの経験を生かしたロードレーサーを作る為に3年後、ブリュッセル郊外に自社工房を興している。

エディ・メルクスも現在主流のテーパードヘッドを採用。アッパーが1 1/8、ロワーは1 1/4になるエディ・メルクスも現在主流のテーパードヘッドを採用。アッパーが1 1/8、ロワーは1 1/4になる フルカーボンのフロントフォークは、上部に空気抵抗を考慮したような張り出しが見られるフルカーボンのフロントフォークは、上部に空気抵抗を考慮したような張り出しが見られる チェーンステーとは打って変わって、なだらかなカーブを描くカーボン製シートステーチェーンステーとは打って変わって、なだらかなカーブを描くカーボン製シートステー


現在、バイクのラインナップはカーボン素材を使ったEシリーズとアルミ素材を使ったAシリーズの2本立てで、今回紹介するAMX-5は、アタマに付く“A”が示すようにアルミをベースにしたバイクだ。
ここで“ベースにした”と述べたのは、AMX-5は純粋なアルミ素材のバイクではなく、7000番のアルミをメインにそこにスカンジウムを混ぜた合金を使用しているからだ。スカンジウム合金とする事のメリットは、例えばチューブの外径を一般のアルミ合金製よりも小さくでき、これにより10%程度軽いフレームを作ることができる事や、耐疲労性も向上する、という点である。

ヘッドチューブ、ダウンチューブどちらも真円ではなくエンドが大きく広がった形状をしているヘッドチューブ、ダウンチューブどちらも真円ではなくエンドが大きく広がった形状をしている ワイヤー類の処理は内蔵式ではなく、標準タイプを採用。試乗車はDi2仕様であったワイヤー類の処理は内蔵式ではなく、標準タイプを採用。試乗車はDi2仕様であった


更にエディ・メルクスでは7000 TBと命名したトリプルバテッド(Triple-Butted)チューブを使う事で、ライディングに適した剛性と軽さを得ることに成功しているという。もちろん、メルクスを中心とし、フレームは形状、構造、素材の細部に至るまで研究し尽くし、その技術の結集が、過酷なロードレースに耐え続けるスペックを得ているとの事だ。

それ以外のAMX-5の特徴は、カーボン製のカーブドシートステーを採用している事。これにより、路面からの突き上げを吸収する柔軟性と路面追従性を高め、高い横剛性が快適な乗り心地と加速性を両立させているという。

7000番系アルミとスカンジウムの合金を謳うトップチューブのロゴ。パイプのエンド形状も注目7000番系アルミとスカンジウムの合金を謳うトップチューブのロゴ。パイプのエンド形状も注目 チェーンステーとシートステーの接合部は、見る限り溶接ではなくボルト止めのようだチェーンステーとシートステーの接合部は、見る限り溶接ではなくボルト止めのようだ


流行のテーパードオーバーサイズヘッドチューブも注目だ。アッパー側を1 1/8"を、ロアー側を1 1/4"とし、フロント回りの剛性を高める事で、スムーズで正確なライン取りをサポート。更に、大口径のベアリングがフロントホイールからダウンチューブに伝わる振動を吸収するはたらきもあるようで、結果的に滑らかな乗り味につなっがているとの事だ。
フォークは、細かな仕様は公表されていないがカーボン製で、ハンドリングや振動吸収などに一役買っているものと思われる。

仕上げが美しいのもエディ・メルクスの特徴だ。スカンジウム合金とはいえベースはアルミ素材なので、通常は各パイプの溶接部にビード跡が残るがそれらを丁寧に取り除き、塗装にも気を配る事で滑らかなフレームワークを実現している。名選手の名を冠するバイクを所有する者の満足度をより高めてくれる。

スカンジウム合金を使うフレームの溶接部は滑らかな処理により、流麗そのものスカンジウム合金を使うフレームの溶接部は滑らかな処理により、流麗そのもの シートチューブとカーボンバックの繋ぎ目は、スカンジウム合金のモノステーとの組み合わせになるシートチューブとカーボンバックの繋ぎ目は、スカンジウム合金のモノステーとの組み合わせになる カーボン製のシートステーは中間部がやや幅広になりブレード状に近い形になるカーボン製のシートステーは中間部がやや幅広になりブレード状に近い形になる


現在ではカーボン素材が主流になりつつあるロードバイクだが、敢えてアルミベースのスカンジウム合金を採用したAMX-5の気になる価格だが、フレームセット販売で345,000円とそれなりの価格。スカンジウムが希少金属であるのに加えヨーロッパ生産という事なので、高価になるのは仕方がない。カラリングはパールホワイトの1色のみだ。

コアなロード乗りでなくともスポーツサイクルに関わっていれば一度は耳にするエディ・メルクス。この名ブランドの意欲的スカンジウム・バイクに2人のインプレッションライダーはどのような印象を抱いたのか、話を聞いてみよう。




—インプレッション


「しなやかでバネ感があり、それを利用して走るフレーム」
二戸康寛(なるしまフレンド立川店)

「しなやかでバネ感があり、それを利用して走るフレーム」「しなやかでバネ感があり、それを利用して走るフレーム」 スカンジウム合金を使ったフレームで、接合部に向けてハイドロフォーミングされたパイプとカーブしたバックカーボンが特徴的です。気になる、試乗を終えての第一印象は、「楽しい自転車」です。

“スカンジウム”というと“堅くてキビキビした走りのフレーム”という印象が強いですが、このAMX-5は堅さの中にも適度なたわみがあって、剛性感としなやかさを併せ持つフレームといえます。

芯のある堅さではなく、たわんでそのウィップを利用して乗るような雰囲気がありました。バネ感も強く、走行感は“しなやかさ+バネ感”が推進力に変わる、とても軽快な印象を受けます。

足が結構疲れてからでも踏み込める印象を持ちました。ただ単に剛性に振った堅いフレームよりも、こういう味付けのフレームが好きな人も多いはずです。

路面走行時の特性なのですが、整地されたきれいな路面だと接地感が強く気持ちよく走れますが、逆に凸凹したざらついた路面だとトルクをかけて踏んだ時に跳ねるような感じがあるんですね。

ただし、昨今主流のカーボン素材と較べると、アルミ素材特有の路面振動はあるものの“カンカン”と跳ね上げられるのではなく“ポコポコ”乗り越えていっているような雰囲気で、うまく押さえ込まれています。

振動が収束される感じもして、走らせ方を掴めば「ジャジャ馬」を押さえ込むような感覚で楽しささえ感じられます。このバイク特有の味わいというかキャラクターですかね。路面の接地感というのは、もしかしたらチューブレス・タイヤの影響もあるのかもしれないですけど、カーブドカーボンシートステーが効いているのかもしれませんね。

ギャップを乗り越える時の跳ね上げを抑える感覚は試乗中に随所で感じたので、そういうバンピーな路面に特に向いていると思います。ある程度のペダリングスキルも必要だと思いますが、これを巧い具合に押さえ込めれば推進力にも繋がって、戦闘力の高いフレームになると思います。レースで使っても、まったく問題ない。クイックステップがパリ~ルーベで使用した実績もうなずけます。

スカンジウム合金とひとことで表しても作り方によってはキャラクターはかなり異なってきます。このフレームの特性としてはガチガチに堅すぎない、しなやかでバネ感のある、それを利用して走るフレームだと思います。乗り心地の良さはかなりのものです。

エリート・ジオメトリーというフレームサイズを採用しているせいで、最小サイズでもシートチューブ芯々が500mmとなり、乗れるライダーが限られてしまうのだけが残念ですね。多くの人に乗ってもらって楽しさを味わってもらいたいですが、身長170cmくらいが限界かもしれません。

カーボン主流の今の流れの中では、アルミフレームで345,000円はなかなか考えさせられる価格ですが、スカンジウムがそもそも高価な材質ですしこの合金パイプを作っているところも限られているので、走りの楽しさとエディ・メルクスというブランドイメージ、それにヨーロッパメイドという点を鑑みれば、納得のプライスなのかもしれません。現代のアルミバイク、スカンジウム合金、独特のフォルムというプレミアム感は充分楽しめます。


「振動吸収性に優れいていて、乗り心地もすこぶる良い」
白川賢治(YOUCAN リバーシティ店)

「振動吸収性に優れいていて、乗り心地もすこぶる良い」「振動吸収性に優れいていて、乗り心地もすこぶる良い」 スカンジウム=金属プラスカーボンバックという構成のバイクです。素材の分類としては“金属系”のフレームですけども、その金属のフレームというイメージで選びますと、求めているものとは違うところにいってしまうでしょう。

というのが、すごく振動吸収性に優れいていて、乗り心地もすこぶる良いんです。踏み込んだ時の反応性は際立っていいわけではないですが、逆にそれがマッタリ、モッサリという感じでもなく、この特性がすごくライダーを助けてくれます。「バネ感がある」というような表現が合うバイクだと思います。快適性も相当高いですね。

試乗車の組合せがチューブレス・タイヤというチョイスも、より相乗効果を高めているのかも知れませんが、とにかく快適な乗り味です。

踏み込んだパワーをガチガチに堅いフレームでロスなく推進力に変えるのではなく、入力をフレームがため込み、先程のバネ感のある軽さに変換しながら伸びて行く感覚が味わえました。

レースとかをガンガン走るという人でなくとも、長距離を快適に速く走れてしまいます。

ここまでの感想だと、バネ感があって柔らかいフレームなんだ、という印象を抱かれしまうかもしれませんが、パワーのある人でも、これを柔らかく感じてしまう踏み込み方をするのではなく、このフレームにあった踏み込み方をすれば、バイクが持っている特性が凄い武器になると思います。

本当にパワフルにグイグイ踏んでしまうと剛性感のなさが気になってしまうかもしれませんが、その入力を優しく優しく入力していってあげると予想以上にバイクが伸びて行ってくれて、さらに踏んでいけると思います。パッと乗ってみて「柔らかいなー」と感じても長く乗ってみると、きっとこの良さがわかります。選手レベルでもこの良さは感じ取ってもらえるハズです。

エディ・メルクスのバイクは直進性にクセがあるという話をたまに聞きますが、このバイクはそんなに強い印象はありません。ダンシングもし易くて、全体のハンドリングとかコーナリングなどの性能にマッタリという感じもありません。フレーム自体が振動吸収性のよいマイルドな性格でも、動作に不安感があったりすることはないので、長距離を楽に快適に尚かつ速く。もしくはパワーを温存して後半に勝負という人には選択肢として面白いバイクと思いますね。

この手のバイクは、パッと試乗しただけでは重量の軽さとか快適性は感じられても、その先に隠れている本当の良さは、なかなか感じ取りにくいモノです。短時間の試乗会とかでは本当のよさは伝わりにくいかもしれませんね。ですから、ここでこのバイクの良さをプッシュしておきます(笑)。




エディ・メルクス AMX-5エディ・メルクス AMX-5 (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp
*スペック
カラー:パールホワイト
チューブ:スカンジウム合金 7000
サイズ:500、520、540mm(エリート・ジオメトリー)
重量:1,620g(フレーム、フォーク)
カーボンフォーク:トップ: 1-1/8 ボトム:1-1/4
価格:フレームセット 345,000円(税込)




インプレライダーのプロフィール

二戸康寛(なるしまフレンド立川店二戸康寛(なるしまフレンド立川店 二戸康寛(なるしまフレンド立川店)

なるしまフレンド神宮店販売チーフを経て現在は立川店勤務。かつて実業団チーム日本鋪道(昨年までのチームNIPPO)に所属してツール・ド・北海道をはじめとした国内外のトップレースを走った経験を持つ。高校時のインターハイ2位を始めツールド北海道特別賞(堅実なアシストに贈られる賞)やツールド東北総合4位等の実績を持つ。なるしまフレンドに入社後もレース活動を欠かさない36歳にしていまだ現役のJPTレーサー。ショップではレースから得た経験を通じ自転車の魅力と楽しさをより多くの人に伝えられるよう日々自分磨きに勤しんでいる。現在の愛車はタイム・RXインスティンクト。
なるしまフレンド


白川賢治(YOU CAN リバーシティ店)白川賢治(YOU CAN リバーシティ店) 白川賢治(YOU CAN リバーシティ店)

2010年4月に山梨県中央市にOPENしたYOUCANリバーシティ店の店長。高校時代から20代後半まで競技に打ち込み、現役時代にはツール・ド・北海道総合スプリント賞や全日本選手権100kmチームタイムトライアル優勝、全日本選手権ポイントレース3位等の成績を収める。実業団レースを走った経験や、輸入代理店において広報車両のセットアップを担当した経験を生かしながら、自身の「自転車大好き」な気持ちで一生つき合える自転車の楽しみを提供できるショップを目指している。普段はキャノンデール・スーパーシックスHI-MODに乗る。
YOU CAN


ウェア協力:MAVIC

text:Harumichi SATO
photo:Makoto AYANO
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