ツール・ド・フランス2011第7ステージ。ボーネンやウィギンスなどの有力選手がリタイヤする波乱の一日だった。ゴールを制したのは、HTCの高速列車から飛び出したカヴェンディッシュ。

ステージ2勝目のマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、HTC・ハイロード)

ステージ優勝を挙げたマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、HTC・ハイロード)ステージ優勝を挙げたマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、HTC・ハイロード) photo:Makoto Ayanoチームのみんなが信じられないくらいのペースを維持してて、最後の15kmはまさにチームが一体だった……これって超超スゴイことなんだよ。ゴール地点でも、高速で牽いてペースを維持してくれたおかげで、自分ではあまり加速しなかったんだ。フィニッシュライン行きの超高速旅行だったからね。すばらしい勝利だ。今夜みんなで勝利を祝うときが待ちきれないよ。

このシャトールーは特別な場所で、格別な思いがある。2008年のツールで、初めてステージ優勝した場所なんだ。ツール通算17勝のうちの最初の勝利だから大切なんだよ。

マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、HTC・ハイロード)が集団スプリントで2勝目を挙げるマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、HTC・ハイロード)が集団スプリントで2勝目を挙げる photo:Makoto Ayanoシーズン全体を賭けて、このツールに打ち込んでる。最高の調子を最高のチームで維持して、ここで勝ち続けることが、何よりも大事なんだ。チームのみんなが今日どんなにいい働きをしたか、わかるだろう? 完璧に訓練され、一日中休むことなく働き続け、最後まで先頭を牽き続ける——これが伝統的なHTCトレインだ。ぼくのために力を尽くしてくれる、すばらしい仲間がいるんだ。

ゴールまでたった25kmしかないところで中間スプリントを争わなければならなかったから、大変だったよ。乱暴者が大勢いる、危険なスプリントだった。[中間スプリントのあったビュザンセで]誰かがぼくの靴に当たってきて、残り500mほどは気を引き締めて走らないといけなかった。その後の時間は、横風の中で回復につとめた。チームがぼくの面倒を見てくれた。おかげで、先頭に位置してゴールでライバルを抜き去れるぐらいに回復することができたんだ。

ブラッド(ウィギンズ)がリタイアしたのはショックだ。疑問に思うひともいるだろうけど、彼はここで大きく勝負に出るつもりだったと思う。彼のことで、とても動転している。早くよくなってほしい。


マイヨジョーヌを維持したトル・フースホフト(ノルウェー、ガーミン・サーヴェロ)

マイヨ・ジョーヌをキープしたトル・フースホフト(ノルウェー、ガーミン・サーヴェロ)マイヨ・ジョーヌをキープしたトル・フースホフト(ノルウェー、ガーミン・サーヴェロ) photo:Makoto Ayanoこのマイヨジョーヌを守るために、できることをすべてやった。ツール・ド・フランスでは毎日が戦いなんだ。みんな身体が疲れてきているし、その上、このストレスのかかるレースにうんざりしている。今日はスカイが不運にも、ウィギンズを失ってしまった。

マイヨジョーヌを次に着る選手を選べるんだったら、チームメイトのデーヴィット・ミラーを指名したい。この1週間ずっとぼくのために働いてくれているのに、8秒差しかついてないんだ。彼がぼくからこのジャージを奪ってくれたらいいんだが……夢のシナリオだね。

この1週間は、ぼくが今までツール・ド・フランスで経験してきたものとはまるで違っていた。マイヨジョーヌを5日間着られたことで、任務達成という気分になれたよ。その上、チームタイムトライアルで勝てたことで、完璧な1週間になった。この先ぼくに必要なのは、ステージ優勝だけだ。

今日はHTCが一日中働いていた。彼らが世界最高のスプリントのお膳立てをするチームだということは、みんな知ってる。今日もまたそれがくり返されたわけだけど、驚くことじゃない。その上、彼らと争えるスカイがゴールスプリントの場面にはいなかったしね。

ツールの第1週はいつもナーバスなものだけど、今年は天候、とりわけ風のせいでいっそうひどくなった。みんなが前方に位置取りしたがって、それが落車を引き起こしてしまうんだ。

明日はマイヨジョーヌを守るつもりはない。(頂上ゴールのある)シュペル・ベスで、ぼくはついていけない。他の誰かにマイヨジョーヌを渡すときが来た。総合上位を狙う有力選手たちがこのジャージを着るときなんだ。


マイヨ・ヴェールを取り返したホセホアキン・ロハス(スペイン、モビスター)マイヨ・ヴェールを取り返したホセホアキン・ロハス(スペイン、モビスター) photo:Makoto Ayanoマイヨヴェールに返り咲いたホセホアキン・ロハス(スペイン、モビスター)

明日は、カヴェンディッシュはそんなにポイントを稼ごうとはしないと思う。ぼくにとっては、もっとポイントを稼いでカヴェンディッシュを引き離すチャンスだ。今のところ、彼がマイヨヴェールの一番危険なライバルだと思う。でもレースはまだ長いんだよね。いずれにせよ、彼は自分が最速スプリンターであることを証明してるわけだし。




新人賞のロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)

マイヨ・ブランがロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)のもとへマイヨ・ブランがロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)のもとへ photo:Makoto Ayano明日はほんとうに重要な日になる。この新人賞ジャージを着ることができたのは、ひとえにチームのおかげだ。今日の大事な局面で、彼らがぼくをこの場所に立たせてくれた。最後の70kmは緊張の連続だったけど、みんながぼくを風から守っていい位置取りをしてくれた。だからとてもうれしいよ。

シュペル・ベスがゴールの明日は、大事な一日になるだろう。大きな変動があるだろうから、ゴールを争える位置に残ることが重要だ。今日この位置につけて、問題なくゴールできたことに満足している。落車の後、日に日に回復してきているし、このツールでの決定的なステージまでには、いい調子を取り戻せると思う。

今日は風のせいで、集団のみんながとてもナーバスになっていた。それにぼく自身、この間の落車のせいであまり調子はよくなかった。でも、ぼくが風にさらされず、今日の落車にも遭わずに済んだのは、ラボバンクのみんなのおかげだと思う。


見事なHTCトレインを構成したマシュー・ゴス(オーストラリア、HTC・ハイロード)

今日は完璧だったよ。一日の大半、レースをコントロールして、そのあとに絶対的な勝利をつかんだ。カヴェンディッシュ、優勝おめでとう!


落車による鎖骨骨折でリタイアしたブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)

クリテリウム・ドゥ・ドーフィネではウィギンスが総合優勝をはたしたのだがクリテリウム・ドゥ・ドーフィネではウィギンスが総合優勝をはたしたのだが photo:Cor Vos誰もが前に出ようとして、押し合いへし合いしていた。ひっきりなしに無線で「中切れでタイムを失うな、前にいるんだ」と言われ続けていた。みんなそう言われていたんだろう。200人もの選手が前にいようとして、あんな狭い道を走っていたら、起こることなんてわかりきってる。今回もそれが起こっただけだ。

損得勘定を抜きにして、どうしても起き上がれなかった。道の脇でなんとか起き上がったら、みんなが「乗るつもり?」と言ってきた。でもそれは、もう無理だった。
これが自転車レースってものだよね。こういうステージレースではトラブルを回避しようとするけれど、自転車選手としてリスクは負わざるを得ない。それでも人生は続くんだ。調子はよかった。単に(鎖骨を)折っただけだから、すぐに回復して、シーズン終盤には必ず復帰するつもりだ。


チームスカイのスポーツディレクター、ショーン・イェーツ

ブラドレーについては、みんな残念に思っている。ツールはただの伝統的な自転車レースじゃない。ツールをシーズン中最高の目標としてきたし、ツールに向けて心身ともに入念な準備を重ねてきた。あの落車は大規模で、大打撃だった。今となっては「あの落車がなかったら?」と思うだけだね。

こうなった以上、残ったチームの役割が変わるのは明らかだ。昨日はエドヴァルド(ボアッソン)がステージ優勝したけれど、さらに勝利を狙うべき状況になった。ベン(スウィフト)はツール・ド・フランス初出場で、スプリントに向いている。リゴベルト(ウラン)は優れたクライマーだ。ほかの面々もサプライズを引き起こす可能性を秘めている。獲得すべきものは、まだまだたくさんあるんだ。


ソースは現地取材、記者会見、主催者公式サイト、チーム公式ウェブサイト、選手個人のウェブサイトおよびTwitter、Facebookなど。


translation & text : Taiko.YAMASAKI + Seiya.YAMASAKI