2日間に渡る山岳決戦の1日目、超級山岳トリーゼンベルクの頂上ゴールでステフェン・クルイスウィック(オランダ、ラボバンク)が飛び立った。オランダの次世代オールラウンダーとして期待されるクルイスウィックが頂上ゴールを制覇。また、レース序盤に落車したマウリシオ・ソレール(コロンビア、モビスター)はヘリで病院へ搬送。頭蓋骨骨折を負った。

第6ステージ・コースプロフィール第6ステージ・コースプロフィール image:www.tourdesuisse.ch隣国リヒテンシュタインの超級山岳トリーゼンベルクにゴールするツール・ド・スイス第6ステージ。前半から比較的難易度の低いコースが続き、最後は標高1600mまで一気に駆け上がる。

メイン集団を牽引するファビアン・カンチェラーラ(スイス、レオパード・トレック)メイン集団を牽引するファビアン・カンチェラーラ(スイス、レオパード・トレック) photo:Cor Vosトリーゼンベルクは登坂距離9kmで標高差800m。厳密に言えば、ラスト1.5km地点で超級山岳ゲートを越え、更にそこから標高差180mを駆け上がる。舞台となるスイス東部は好天に恵まれた。

158kmという比較的短いコースに繰り出したのは150名。この日は序盤から落車の連続で、イエロージャージのダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD)から54秒差の総合2位につけていたマウリシオ・ソレール(コロンビア、モビスター)が、33km地点で観客と接触して落車してしまう。

フランク・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック)やダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD)を含むメイン集団フランク・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック)やダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD)を含むメイン集団 photo:Cor Vosすぐさまヘリで病院まで搬送されたソレールは、頭蓋骨骨折と肺損傷、手首骨折、全身擦過傷の重傷。昏睡状態が続いているが、命に別状はなく、状態は安定しているという。なお、接触した観客は軽傷で済んだ。

ソレールの落車によって一旦ニュートラル扱いとなったレースは、46km地点で再スタートが切られる。するとシルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ)、ゴルカ・イサギーレ(スペイン、エウスカルテル)、アンヘル・マドラソルイス(スペイン、モビスター)がエスケープを敢行し、メイン集団から5分のリードを稼ぎ出す。

フランク・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック)やダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD)を含むメイン集団フランク・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック)やダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD)を含むメイン集団 photo:Cor Vosメイン集団はランプレ・ISDがコントロール。やがてゴールまで30kmを切るとレオパード・トレックが加勢する。ファビアン・カンチェラーラ(スイス、レオパード・トレック)らの集団牽引により、逃げグループのタイム差は刻々と縮まった。

ゴールまで10kmを残して超級山岳トリーゼンベルクの登りが始まると、マドラソルイスのアタックをきっかけに逃げグループは崩壊する。最後まで粘ったイサギーレも、ゴールまで5kmを残して吸収。

ラスト2.5kmでアタックするダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD)ラスト2.5kmでアタックするダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD) photo:Cor Vosディフェンディングチャンピオンのフランク・シュレク(ルクセンブルク)のために、レオパード・トレックがペースを上げ続ける。リーナス・ゲルデマン(ドイツ)やマキシム・モンフォール(ベルギー)、ヤコブ・フグルサング(デンマーク)がペースを刻むメイン集団は、人数を減らしながら標高1600mのスキーリゾート地を目指す。

総合上位陣の中で口火を切ったのは、イエロージャージのクネゴだった。調子の良さを見せる総合リーダーは、ゴールまで2.5kmを残してアタック。しかしライバルたちを引き離すことはできず、続いてクルイスウィックが飛び出す。

超級山岳トリーゼンベルクで独走に持ち込むステフェン・クルイスウィック(オランダ、ラボバンク)超級山岳トリーゼンベルクで独走に持ち込むステフェン・クルイスウィック(オランダ、ラボバンク) photo:Cor Vosゴールまで2kmを残して独走に持ち込んだクルイスウィックは、じわりじわりと後続を引き離していく。一方のクネゴはリーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、レディオシャック)と2番手を走行。精彩を欠いたFシュレクは後退した。

肩幅がありながらもクライマー体型のクルイスウィックは、後続の追撃を振り切ってゴールに向かう。昨年ラボバンクでプロ入りした24歳が、ツール・ド・スイスの超級山岳でプロ初勝利を飾った。ライプハイマーは9秒遅れでゴール。イエロージャージのクネゴは18秒遅れだった。

独走でゴールに飛び込むステフェン・クルイスウィック(オランダ、ラボバンク)独走でゴールに飛び込むステフェン・クルイスウィック(オランダ、ラボバンク) photo:Cor Vosあどけなさの残るクルイスウィックは、オランダが期待する次世代クライマー系オールラウンダー。今年のジロ・デ・イタリアではロマン・クロイツィゲル(チェコ、アスタナ)と新人賞争いを繰り広げ、難関山岳ステージでトップ10フィニッシュを繰り返している。最終的に総合9位。新人賞2位。

「レオパード・トレックが登りでテンポを上げたけど、問題なく付いていけたし、調子の良さを感じていたので飛び出すタイミングを伺っていた。そして勾配がキツくなったところでアタックしたんだ。クネゴとはゴール勝負に持ち込みたくなかった。ゴールまで急勾配が続いたので、ずっと全開走行だったよ」。

イエロージャージを守ったダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD)イエロージャージを守ったダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD) photo:Cor Vosチームメイトで同じく24歳のバウク・モレマ(オランダ)も好走してステージ4位。ラボバンクは総合2位と3位に若手を送り込むことに成功している。山岳賞ジャージのローレンス・テンダム(オランダ)も総合6位につける。

しかしクルイスウィックは決して油断していない。「今日はTTを得意とするフグルサングとヴァンガーデレンが大きく遅れた。でもライプハイマーは依然として危険な存在だ。明日の山岳ステージでも早めに攻撃を仕掛ける必要があると思う」。

そのラボバンク若手コンビから1分30秒前後の総合リードを得ているのがクネゴ。今年はステージレースで安定感ある走りを見せている。「今日の登りは厳しかった。でも調子が良かったのでゴール2.5km手前でアタックしたんだ。(Fシュレクらから)タイム差を稼ぐことができたし、概ね良いレースだったと思う。ソレールの落車は見ていないけど、彼がレースを去ったことは残念。早い回復を祈っているよ」。

クネゴは最終個人TTでライバルたちから遅れを取ると見られており、翌日の山岳ではリードを広げる走りが要求される。「とにかくイエロージャージを守りたい。ライバルたちとのタイム差を広げることができれば最高だ」。ツール・ド・スイスの山岳決戦は第7ステージでクライマックスを迎える。

選手コメントはレース公式サイト、ならびにラボバンク公式サイトより。

ツール・ド・スイス2011第6ステージ結果
1位 ステフェン・クルイスウィック(オランダ、ラボバンク)     4h12'03"
2位 リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、レディオシャック)      +09"
3位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD)           +18"
4位 バウク・モレマ(オランダ、ラボバンク)               +21"
5位 ジャンパオロ・カルーゾ(イタリア、カチューシャ)
6位 フランク・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック)     +30"
7位 マティアス・フランク(スイス、BMCレーシングチーム)
8位 ローレンス・テンダム(オランダ、ラボバンク)           +1'19"
9位 ヤコブ・フグルサング(デンマーク、レオパード・トレック)     +1'27"
10位 トム・ダニエルソン(アメリカ、ガーミン・サーヴェロ)      +1'42"

個人総合成績
1位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD)         21h26'28"
2位 バウク・モレマ(オランダ、ラボバンク)              +1'23"
3位 ステフェン・クルイスウィック(オランダ、ラボバンク)       +1'36"
4位 フランク・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック)    +1'41"
5位 リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、レディオシャック)     +1'59"
6位 ローレンス・テンダム(オランダ、ラボバンク)           +2'24"
7位 ヤコブ・フグルサング(デンマーク、レオパード・トレック)     +2'45"
8位 マティアス・フランク(スイス、BMCレーシングチーム)       +3'10"
9位 ジャンパオロ・カルーゾ(イタリア、カチューシャ)         +3'11"
10位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、HTC・ハイロード)   +3'22"

ポイント賞
ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)

山岳賞
ローレンス・テンダム(オランダ、ラボバンク)

中間スプリント賞
ロイド・モンドリー(フランス、アージェードゥーゼル)

チーム総合成績
ラボバンク

text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos

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