6月11日・12日に中国・蘇州で行われたMTBアジア選手権は、注目のXCO男子で山本幸平と平野星矢(ともにチームブリヂストン・アンカー)がワン・ツーフィニッシュを飾り、ロンドン五輪出場枠を確保した。

女子は片山梨絵(SPECIALIZED)が2位で、今大会では獲得ならず。ジュニア男子は沢田時(HARO/ENDLESS/ProRide)が2位、ジュニア女子が岩出愛未(Club SY-nak)が3位となっている。DHIでは井手川直樹(Devinci/SUNSPI.com)が2位、永田隼也(A&F/ROCKY MOUNTAIN)が3位だった。

現地の模様は小笠原崇裕監督と山本幸平選手のレポートで紹介する。

小笠原崇裕監督のレポート

DHIエリート男子 2位に井手川直樹・3位に永田隼也DHIエリート男子 2位に井手川直樹・3位に永田隼也 photo:Japan Mountain Bike Association11日のDH決勝日。昨日ほどの強雨ではないもののシトシトと降り続く雨は路面状況を一層悪化させており、選手の応用力、集中力が非常に大切なコンディションとなった。

UCIランキング下位の選手より2分おきにスタートを切って行く。暫定トップが更新されて行く中、タイの選手が一気にタイムを更新しトップに躍り出た。井手川選手がスタートを切り大きなミスも無く攻め続けゴール地点のストレートも追い込み切ってフィニッシュ、暫定2位とあと一歩及ばなかった。残るは永田選手、前日のタイムドセッションで3位の好調さをキープして挑んだが3位でフィニッシュ。

XCOエリート女子表彰 片山梨絵は2位XCOエリート女子表彰 片山梨絵は2位 photo:Japan Mountain Bike Associationトップから3位までが2秒以内と非常にハイレベルな接戦となった。2位と3位を獲得したがとても悔しい思いの方が大きく、来年は必ず優勝し一番高い場所に国旗を掲げたい。

12日はXC。ロンドン五輪に向けた非常に重要な大一番。

XCOジュニア男子 2位に沢田時XCOジュニア男子 2位に沢田時 photo:Japan Mountain Bike Association9時に女子がスタート、路面状況は泥から乾き初めているが日陰ではヌルヌルのコンディション、片山梨絵が好位置でシングルトラックに入り良いペースで展開し、途中でパンクしてしまったが3位から2位に上げ、最後まで順位を守りきり銀メダルに輝いた。

11時からは男子がスタート。号砲と共に山本幸平が飛び出し、中腹ですでに後続に20秒以上の差を付け独走を開始した。2位争いでは平野星矢が後続を抑えつつ先頭に追い付こうとペースアップをした。気温が急上昇し、掛け水で身体を冷やしながらの最終周。山本が一度も先頭を譲る事無く優勝し、2位にも平野が入った。

午後はジュニア男子で沢田時がスタートに失敗するもジワジワと順位を上げ、2位からトップを狙うものの、僅かに届かず2位でフィニッシュ。

ジュニア女子の岩出愛未は怪我からの復帰とは思えない好走を続け、灼熱の中を走りきり3位に入った。

男子XCで1、2フィニッシュ、そして参加した全クラスで入賞と強い日本をアジアに印象付けた。


山本幸平選手のレポート

スタートするXCOエリート男子スタートするXCOエリート男子 photo:Japan Mountain Bike Association今回は、4年前の北京オリンピックアジア枠の出場資格を掛けたレースと同じ会場で行われた。コースは、4年前と同じ様な感じではあったが、僕自身の成長と経験が生きているおかげか、コース自体で気になるところは無くなっていた。

唯一の強敵は、暑さと湿度だった。木曜日の試走時は、黄砂の影響で薄暗い空気だが蒸し暑くて、体感温度では40度はあるだろう。試走するだけで体力を奪われ、身体が疲労感を感じる。しかし、このイメージも4年前の経験があるから初めから対応出来ている。ホテルにはエアコンがあり、すぐに身体を涼ませる事が出来て、かなり助かった。

木曜日に身体を疲労させて、あとの2日間は、ゆっくりと焦らずにレースまでのエネルギーとイメージ作りに時間を費やした。「もう何も恐れる必要はない」と言い聞かせていた。昨年のアジア大会で屈辱の2位。

11月後半にあったレースとは言いつつも、やはりアジアでは1番で無ければ世界とは言えないと僕自身が想っているから、この半年は、どこかモヤモヤ感があった。ここで、本当の強さを見せてやろう!と心で何度も言い聞かせてレースを待った。

金曜日から降り続いた雨の影響で、木曜日とは姿を変えたコースがあった。レース当日、雨は降っておらず、湿度も日本よりは高いが、参るほどではなかった。

先頭に並び、早くスタートしたくてどうしようもなかった。もう、力を見せつけたい気持ちで一杯だった。

スタート音とともに身体が動く。50Mくらいだろうか、横にいたイラン人が元気だったが、初めのシングルトラックの入り口では、しっかりと先頭に立ち、焦らずに展開して行った。今回は、調整も上手くいっていたので、自分の普段の走りをしたら一人になるだろうと思っていたが、スタートして早々になるとは思っていなかった。

焦る必要はなく、ただ気持ちを前に、そして勝ちだけを求めて走って行った。

先頭を走る山本幸平先頭を走る山本幸平 photo:Japan Mountain Bike Association


誰も付いてきていないのを感じる。オーバーヒートしない様な走りでレースを進めて行った。試走時に感じたコースの状況をイメージトレーニングした走りと照らし合わせながら進んでいった。
イメージした走りをクリアして行く事に徹底して進む。1周目を終えて「後ろと20秒」と聞いた。
気持ちはパワーで満ちている。イメージした通りに走り続ける。2周目。後ろとは2分以上と伝えられた。しかもそれが日本チームの平野星矢が単独と聞いて、嬉しくなった。

もう、半分が過ぎた。3周目は、無駄をなくそうと思い、ワールドカップで感じた走り方を試してみた。良い感じだ、スピードが一定の走りを上手く出来ている。
ラスト周回。後ろとは、差が開いたみたいだ。あとは、僕に出来る事は、無事にゴールラインを通過するのみ。パンクのリスクを避けて無難に走って行った。勝ちたいと言う気持ちが湧いてくる。

今年は、前週の日本のレースでは優勝していたが、大きなレースでは久しぶりの優勝だった。最後の最後まで気が抜けずに、優勝したとは思わない様に走っていたが、ゴールを通過した時の監督とマッサーに最高の笑顔で迎えられて抱き合った時に、あー勝った!!と心から想えた。

XCOエリート男子 山本幸平と平野星矢でワンツー勝利XCOエリート男子 山本幸平と平野星矢でワンツー勝利 photo:Japan Mountain Bike Association日本チームに優勝、日の丸を掲げる事が出来て最高の瞬間だった。コーチともメカニックともチームメイトとも喜びを分かち会えた嬉しい勝利だ!!

今回は、MTB日本チームとして、新たなスタートだった。日本自転車競技連盟や日本マウンテンバイク協会を含めて、監督もそうだし、皆が入れ替わり、事業仕訳による変化もあり、いろいろな対応の中、MTB日本チームが中国入りをした。さまざまな想いがある中、挑んだレースだったと思われる。
いろいろと状況を伝えられたり、発言をしたりと言う場面がある中、やはり僕たち選手はレースで力を出すことが仕事なのである。それぞれ仕事分担をしっかりと行い、全てをプロ集団で挑む事が重要だと思う。

今回のレースは、今までよりも選手として扱われている様に感じて、生活面でストレスが少なく感じた。今までには無かった空間がある様に感じたし、この遠征をキッカケに、強いMTB日本チームが出来るのではないかとも感じた遠征になった。

そして、ここで知って欲しい事があります。マウンテンバイク日本代表チームを応援して貰いたいです。

今年からは、事業仕訳により、日本自転車競技連盟からの金銭支援が、遠征で掛る費用に対して3分の2だけとなりました。残りの3分の1は個人負担、もしくは日本マウンテンバイク協会の日本チームをサポートしたいという、サポーターや企業が支援していく方向になったという事。

今回のアジア選手権派遣では、残りの3分の1の掛った費用を、MTBチーム関係者が個人支援をしてくれ、僕たちは個人負担無しで、MTB日本チームがアジア選手権大会へ派遣出来たのです。今までは、MTB日本チームをサポート出来る体制が無かったが、今回からは、サポート出来る体制になったという自由度もプラスで考えるとあるということ。

これから少しでもMTB日本チームをサポートして行きたいというサポーターや企業の方がいらっしゃいましたら、日本マウンテンバイク協会まで連絡していただきたいです。

今回のレースで、2012年ロンドンオリンピックの日本男子出場枠を1枠獲得しました。この勝利で弾みを付けて、さらなる成長を致します。

ありがとう。

MTBアジア選手権2011中国・蘇州大会リザルト
XCO男子エリート
1位 山本幸平      1:34:10
2位 平野星矢      +03:37
3位 TONG Weisong   +06:06
4位 DUAN Zhiqiang   +07:47
5位 CHAN Chun Hing  +08:20
6位 MARDANI, Parviz   +09:30
7位 山本和弘       +10:36
16位 辻浦圭一       +19:47

XCO女子エリート
1位 SHI Qinglan     1:23:13
2位 片山梨絵       +05:00
3位 LIU Yin        +07:06

XCOジュニア男子
1位 KWON Soon Woo   1:15:41
2位 沢田時        +00:47
3位 HOBALISOHI, Hamid  +06:51
4位 CHIANG Sheng Shan +07:30
5位 小橋勇利       +07:42

XCOジュニア女子
1位 SUKSAWAT, Mesiya   1:09:18
2位 LUCHSHENKO, Rimma  +02:34
3位 岩出愛未        +04:10

DHIエリート男子
1位 JARUPENG, Tanaphon 02:05.011
2位 井手川直樹        +01.604
3位 永田隼也         +01.706

text&photo:Japan Mountain Bike Association