79kmで開催された第5ステージ。勝負どころとなる残り10km地点の上りでリーダージャージを着るアミール・ザルガリ(イラン、アザド大学)がチームメイト2人とともに先行。そのまま逃げ切り、チームはステージ3勝目を挙げた。日本勢最高位は綾部勇成の4位。トップから9秒差、イラン勢に次ぐ力走を見せた。

西スマトラの小さな町を集団が駆け抜ける西スマトラの小さな町を集団が駆け抜ける

イラン勢が表彰台を独占!

第4ステージ、チーム成績首位の表彰を受けた愛三工業レーシングチーム第4ステージ、チーム成績首位の表彰を受けた愛三工業レーシングチーム 走行距離79kmで開催されたツール・ド・シンカラ第5ステージ。スタート後15kmまで上り、48km地点のスプリントポイントにかけて下り、さらにゴール前に急傾斜のアップダウンが用意されたコースレイアウトになっている。

レース序盤から集団をコントロールしたのはリーダーチームであるアザド大学。最初の上り区間でチーム全員で先頭を牽いて集団をペースアップさせた。その結果、山頂で集団はいくつものグループに分かれたが、下りで徐々に集団は1つとなってレースは振り出しにもどる。

レースをコントロールしたアザド大学チームレースをコントロールしたアザド大学チーム スプリントポイントは、ポイント賞ジャージが欲しいチャン・ジェ・ジャン(韓国、トレンガヌ・プロアジア)が先頭通過。そして「勝負するのはココだ」と多くの選手が睨んだ残り約10km地点から始まる登坂区間で先行したのは、またしてもイランのアザド大学だった。

登坂を得意とするリーダーのアミール・ザルガリ(イラン、アザド大学)とラヒン・エマミ(同)、ゴラコール・ポウルセイディ(同)、第3ステージで1、2、3フィニッシュを飾った彼らが、今回もグングンと前に出る。そしてそれを追ったのは、やはり第3ステージと同じくチョイ・キー・ホー(香港、香港ナショナルチーム)と綾部勇成(愛三工業レーシングチーム)だった。

集団内で走る木守望(愛三工業レーシングチーム)集団内で走る木守望(愛三工業レーシングチーム) 山頂通過時点で、イランの3人と綾部ら2人とのタイム差は40秒ほど。愛三工業レーシングチームの狙いはステージ優勝だったが、総合順位上位にランクアップしたい綾部は下りで果敢に攻める。「カーブでインではないほうの脚が地面に当たったんだよね…」と話すくらい強烈なダウンヒルを披露したようだ。

ステージ1位から3位、表彰台を独占したアザド大学チームステージ1位から3位、表彰台を独占したアザド大学チーム そして、ゴール手前500mにして、トラブルが発生する。車両用の迂回ルートにマーシャルの誘導で誤ってイラン3選手が入ってしまったというのだ。間違いに気づいた彼らだったが、そこからさらに迂回路を使いゴールまでショートカットするようにしてコースに戻り、またもステージ1、2、3位を独占する。そして下りでチョイ・キー・ホーを振り切った綾部が、ゴール前で行き場を失っていたコミッセールカーに今にも当たりそうになりながら、トップから9秒差のステージ4位でフィニッシュした。

イラン勢が一部コースを走らなかったことについて議論が起こったが、彼らもミスコースにより後続とのタイム差を失っていることもあり、リザルトに特別な措置は加えられなかった。しかし、選手がゴール直前にしてルートを間違えるというのは考えがたいこと。今後ASOとの共催で1クラスもしくはHCにしたいと目論んでいるツール・ド・シンカラのオーガナイザーたちだが、まだやるべき課題は多く残されているようだ。



高地トレーニングが強さの秘訣

第3ステージに引き続き、表彰台を独占するという圧倒的な強さを誇るイランのアザド大学。彼らにとってシーズン最大の目標は7月に開催されるツール・ド・チンハイレイク(2.HC)であり、今回はあくまでもその調整レースだと話すが、力の違いを日々見せつけられている。

アザド大学チームは絶好調、このステージ1位から3位の表彰台を独占アザド大学チームは絶好調、このステージ1位から3位の表彰台を独占

強さの秘訣を聞くと、トレーニングとして標高2000mほどの山岳地帯を走っていることだと言う。トレーニングを休むのはオフシーズンの2週間だけ。日常的な高地トレーニングが抜群の登坂力のベースになっている。そして何よりも驚いたのが、リーダーのザルガリと第4ステージで2位に入ったタンハは午前中トレーニングをし、午後は自転車フレームやパーツの輸入代理店で働いているそうだ。仕事を持ちながらも、彼らはアジアトップのパフォーマンスを発揮している。


イラン勢に次ぐステージ4位でフィニッシュした綾部勇成

そして、この日ステージ4位に入った綾部勇成。「ケロック44では機材トラブルで遅れてしまったので、今日はチームのみんなに車輪が壊れなければ、本当は強かったんだということを証明したかったんです!」とのこと。すかさず若手選手からは「上りが始まってすぐに、綾部さん速いって思っていましたけどね」と声が上がる…。

ステージ4位、レース後の綾部勇成(愛三工業レーシングチーム)ステージ4位、レース後の綾部勇成(愛三工業レーシングチーム)

イランには届かなかったものの、春先の不調を払拭する安定した登坂力を見せている綾部。本人の感覚としても、イランのレース時よりもコンディションが良く、集中できていると言う。イラン勢とのタイム差は開いてしまったものの、その中間にいるUCIポイント圏内の選手とのタイム差は縮ることができ、総合10位にランクアップした。


ハードな1日2ステージが続く

ツール・ド・シンカラは残すところあと2日、両日とも午前午後の2レースが用意されている。総合順位を決定づけるのが、最終日、山岳ステージの7Aステージとなるが、それ以外の3ステージで、愛三工業はステージ優勝を狙いに行く。翌6Aステージはシンカラ湖を半周する上り基調下りゴールの94.6km、6Bステージも同じく上り基調下りゴールの39kmとなっている。愛三工業にきている“いい流れ”。再度、嬉しいニュースを日本に届けられることを祈りたい。

日本のふりかけやお茶漬けが欠かせない日本のふりかけやお茶漬けが欠かせない 初インドネシア初ドリアン!木守望(愛三工業レーシングチーム)初インドネシア初ドリアン!木守望(愛三工業レーシングチーム) スタート前にコースプロフィールをチェックする中島康晴(愛三工業レーシングチーム)スタート前にコースプロフィールをチェックする中島康晴(愛三工業レーシングチーム)


ステージ成績
1位 アミール・ザルガリ(イラン、アザド大学)1h50'35"
2位 ラヒン・エマミ(イラン、アザド大学)+04"
3位 ゴラコール・ポウルセイディ(イラン、アザド大学)+06"
4位 綾部勇成(愛三工業レーシングチーム)+09"
5位 チョイ・キー・ホー(香港、香港ナショナルチーム)+14"
6位 ロビン・マヌラン(インドネシア、プリマウタマ)+32"
7位 バンバン・スルヤディ(インドネシア、ポリゴンスイートナイス)
8位 ホー・チン・コワ(香港、香港ナショナルチーム)
9位 ボッシュ・マント・ベルケン(オランダ、グローバルサイクリング)
10位 ダリ・スルヤディ(インドネシア、プリマムッダ)
20位 伊藤雅和(愛三工業レーシングチーム)+1'09"
44位 中島康晴(愛三工業レーシングチーム)+2'35"
48位 松尾修作(フジ・サイクリングタイムドットコム)+2'43"
62位 五十嵐丈士(フジ・サイクリングタイムドットコム)+3'23"
74位 木守望(愛三工業レーシングチーム)+4'25 "
83位 鈴木謙一(愛三工業レーシングチーム)+6'00"


総合順位
1位 アミール・ザルガリ(イラン、アザド大学)10h12'20"
2位 ラヒン・エマミ(イラン、アザド大学)+14"
3位 ゴラコール・ポウルセイディ(イラン、アザド大学)+2'
4位 チョイ・キー・ホー(香港、香港ナショナルチーム)+5'49"
5位 ボッシュ・マント・ベルケン(オランダ、グローバルサイクリング)+6'56"
6位 アガング・アリシャバナ(インドネシア、プリマウタマ)+7'35"
7位 ハリ・フィティリナント(インドネシア、プリマウタマ)+7'59"
8位 ラン・アリエハーン・ヒルマント(インドネシア、プリマウタマ)+8'38"
9位 シェリー・アリスタヤ(インドネシア、ポリゴンスイートナイス)+9'36"
10位 綾部勇成(愛三工業レーシングチーム)+9'39"
14位 中島康晴(愛三工業レーシングチーム)10'09"
15位 伊藤雅和(愛三工業レーシングチーム)10'15"
33位 松尾修作(フジ・サイクリングタイムドットコム)+18'24"
50位 鈴木謙一(愛三工業レーシングチーム)+26'49"
54位 木守望(愛三工業レーシングチーム)+26'49"
65位 五十嵐丈士(フジ・サイクリングタイムドットコム)+31'56"

チーム総合首位
アザド大学

ポイント賞
チャン・ジェ・ジャン(韓国、トレンガヌ・プロアジア)

山岳賞
アミール・ザルガリ(イラン、アザド大学)

photo&text Sonoko Tanaka