ジロ第12ステージはカステルフィダルド~ラヴェンナの184kmの完全平坦コース。今大会で最後となるスプリンター向けのステージでチームの完全アシストを受けたマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、HTC・ハイロード) がゴールスプリントを決め、今大会2勝目となる勝利を挙げた。

アドリア海に沿って平坦路を北上するアドリア海に沿って平坦路を北上する photo:Kei Tsuji

ピンクのアコーディオンを弾くコンタドール カステルフィダルドの名産品だピンクのアコーディオンを弾くコンタドール カステルフィダルドの名産品だ (c)RCS Sportsカステルフィダルドからラヴェンナまで、アドリア海沿いを北上する184kmのコースは真っ平らそのもので、山岳ポイントの設定も皆無。84km地点の丘を越えると、残り100kmは完全にフラットだ。

コースは終盤にかけてイタリアの英雄、故マルコ・パンターニ(イタリア)の生誕地チェゼナーティコを駆け抜け、広大なポー平原に位置するラヴェンナへと向かう。ゴールのラヴェンナは海抜0~3m程度の道はほぼ完璧なフラットながら、ラスト5kmで3度の90度カーブが待ち構えていた。コースの細さとコーナーのきつさからクラッシュの心配は当初からあったが、結果としてはゴール前で落車が発生し、勝負に絡めたのは前方にいた10人程度になってしまった。

快晴の天候のなか、アコーディオン生産地として有名なカステルフィダルドをスタートしたプロトンからスタート直後にアタックが決まり、4人が逃げだした。逃げたのは次の選手たち。

逃げた4人
スタフ・クレメント(オランダ、ラボバンク)
ミゲール・ミンゲス(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ)
ダヴィデ・リッチビッティ(イタリア、ファルネーゼヴィーニ・ネーリソットリ)
ミカル・ゴラス(ポーランドヴァカンソレイユ・DCM)

逃げグループを形成するスタフ・クレメント(オランダ、ラボバンク)ら逃げグループを形成するスタフ・クレメント(オランダ、ラボバンク)ら photo:Riccardo Scanferla2009年にドーフィネリベレでのステージ優勝があるクレメント以外はジロ初出場の無勝の若手選手ばかり。総合争いでも関係の無い選手の動きに、集団は早々にアタックを容認した。

道幅が非常に広く、高速道路のような状態のよい道がまっすぐに続くアドリア海のリゾートロード。集団の先頭にはHTCハイロードの選手たちが上がってペースを作った。しばらく逃げる4人を捕まえる必要がないものの、タイム差が大きく開かないように巧みにペースをコントロールした。

他に撹乱するアタックもなく、ペースを保ったままレースは淡々と進む。チェゼナーティコ付近で昨日優勝したジョン・ガドレ(フランス)が落車でバイクを壊したため、アージェードゥーゼルの選手たち3人が路上に立ちすくむ。チームメイトのサポートを受けて集団に戻るが、ガドレは追走中にもう一度ホイールを交換した。

中盤以降、HTCハイロードがコントロールする集団は、逃げる4人とのタイム差を早めに詰めだした。何が起こってもスプリントに持ち込む作戦が狂わないように働くHTCの本気度が伺える。モビスターやランプレは、HTCに圧倒されたのか、仕事を任せきりで積極的に前に出る気配はなかった。
ラスト20kmですでにタイム差は1分を切り、4人は捕まるだけとなった。

コース沿いにピンクのビキニ・ガールズが登場コース沿いにピンクのビキニ・ガールズが登場 (c)CorVosピンクのビキニ・ガールズが応援するピンクのビキニ・ガールズが応援する (c)CorVos

海から内陸へ向かい、いったん折り返してラヴェンナへとゴールするフィナーレはラスト5kmで3度の90度カーブがあることが曲者。そしてその心配どおりの落車が発生した。

マルコ・ピノッティ(イタリア、HTC・ハイロード)も集団牽引に参加マルコ・ピノッティ(イタリア、HTC・ハイロード)も集団牽引に参加 photo:Kei Tsuji広すぎた道幅のコースから、いきなりコーナーを含む狭い道に突入した集団。スピードが上がり続けるまま、ラスト2kmに突入する。

先頭付近を走るアンドローニ・ジョカトリの選手がコーナーでオーバースピードのため膨らみ、片足からペダルを外してバリアへと吸い寄せられる。それをみてたまらずスリップダウンした選手がコースをふさぎ、落車が発生する。集団はバラバラに分断された。明らかにコースがテクニカルすぎた。
コース上でロバート・ハンター(南アフリカ、レディオシャック)がサーシャ・モードロ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス)に掴みかかる一面も。多くの有力スプリンターがチャンスを失ってしまった。

ロバート・ハンター(南アフリカ、レディオシャック)がサーシャ・モードロ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス)に掴みかかる一面もロバート・ハンター(南アフリカ、レディオシャック)がサーシャ・モードロ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス)に掴みかかる一面も (c)RCS Sports幸い大きな負傷をした選手はいないが、ファイナルスプリントに向けて、影響を受けずに前方に残れた選手は10数名という状態。それでもカヴェンディッシュやペタッキはそのなかに含まれた。

牽引役のマーク・レンショーに引かれ、最高のタイミングまで待ったカヴェンディッシュは得意の加速でスプリント開始。ペタッキが続くが、スピードは伸びず。それに代わって勢い良くカヴに迫ったのはダヴィデ・アッポローニオ(イタリア、チームスカイ)だった。

しかしカヴェンディッシュは余裕の笑顔でゴールラインを越えると、指2本で「ジロ2勝目」をアピールして第9ステージに続いて今大会2勝目となる勝利を挙げた。アッポローニオはペタッキを下し2位。ペタッキは3位に沈んだ。

ラヴェンナのフィニッシュに飛び込むマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、HTC・ハイロード)ラヴェンナのフィニッシュに飛び込むマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、HTC・ハイロード) (c)RCS Sportsマリアローザのコンタドールらは落車の影響を受けたものの怪我なくフィニッシュ。別府史之(レディオシャック)も同じ集団でゴールしている。

終日完璧なチーム力を発揮したHTCハイロードのチーム力、そしてそれに確実に勝利という形で応えたカヴェンディッシュのずば抜けたスピードと実力が光った、まさにHTCハイロードの日になった。

カヴェンディッシュのコメント
「1500mは流れに乗っていたんだ。ラスト500mでレンショーの出番になった。ペタッキがすぐ後について力を残していた。それが気がかりだったけど、残り200mで加速したとき、ぼくはひとりで抜け出すことができた。そのおかげで比較的楽に勝つことができたんだ。
明日イギリスに帰るよ。やることはいろいろあるし、彼女にも会いたいしね。それと、次のレースに向けてトレーニングを始めるよ」。

スプリンターに適したステージがこの後もうなく、厳しすぎる山岳ステージが続くためにカヴェンディッシュは公言していたとおりこの日をもってリタイアし、家に帰る。そしてペタッキ、キッキ(クイックステップ)、ベントソ(モビスター)らもリタイアすることになった。


第12ステージ結果
1位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、HTC・ハイロード) 4h17'25"
2位 ダヴィデ・アッポローニオ(イタリア、チームスカイ)
3位 アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、ランプレ・ISD)
4位 ロベルト・フェラーリ(イタリア、アンドローニ・ジョカトリ)
5位 ゲラルド・チオレック(ドイツ、クイックステップ)
6位 ファビオ・サバティーニ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)
7位 マヌエル・ベレッティ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス)
8位 ミルコ・セルヴァッジ(イタリアヴァカンソレイユ・DCM)
9位 マーク・レンショー(オーストラリア、HTC・ハイロード)
10位 マヌエル・カルドソ(ポルトガル、レディオシャック)

個人総合成績 マリアローザ
1位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・サンガード)44h55'16"
2位 カンスタンティン・シウトソウ(ベラルーシ、HTC・ハイロード)+59"
3位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)+01'21"
4位 クリストフ・ルメヴェル(フランス、ガーミン・サーヴェロ)+01'28"
5位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・ISD)+01'28"
6位 ダビ・アローヨ(スペイン、モビスターチーム)+01'37"
7位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、アスタナ)+01'41"
8位 ホセ・セルパ(コロンビア、アンドローニ・ジョカトリ)+01'47"
9位 ダリオ・カタルド(イタリア、クイックステップ)+02'21"
10位 マッテーオ・カラーラ(イタリアヴァカンソレイユ・DCM)

ポイント賞 マリアロッサ・パッシオーネ
アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、ランプレ・ISD)

山岳賞 マリアヴェルデ
フィリッポ・サヴィーニ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス)

新人賞 マリアビアンカ
ロマン・クロイツィゲル(チェコ、アスタナ)

チーム総合成績
アスタナ


text:Makoto.AYANO
photo:Kei Tsuji,Riccardo Scanferla,CorVos

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