主にエントリーライダーや、クロスバイクからの乗り換えとして絶大な人気を集めるオルベアのアルミロードバイク、アクア。そのアクアがレースエントリー標準の10速コンポーネントで乗りたいというユーザーの声に応え、シマノ105仕様完成車を限定200台で発売することになった。

オルベア アクア 105完成車オルベア アクア 105完成車 (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp

もともとアクアはソラ完成車(98,700円)、ティアグラ完成車(136,500円)をラインナップしてきた。コストパフォーマンスに優れる入門機として多くのロードバイカーの誕生に携わってきたアクアの人気の秘密は、パッケージングの良さに加え、デザイン面のスマートさもあるだろう。フルアルミフレームながらパイプは細めで、現在のハイボリュームカーボンバイクの流れから見ると、シンプルで潔いスマートさを感じさせる。

インテグラルヘッドだが、見た目にはすっきりとしているヘッド周りインテグラルヘッドだが、見た目にはすっきりとしているヘッド周り 前から見ると細身のパイプが使われているのがよくわかる前から見ると細身のパイプが使われているのがよくわかる フォークはオルベアオリジナルのカーボンフォークがアッセンブルされるフォークはオルベアオリジナルのカーボンフォークがアッセンブルされる


だが、グランツールを始めとする世界のトップレースで磨かれたオルベアのバイク作りのテクノロジーは、エントリーモデルのアクアの性能をクラス以上のものにしている。そのフレームポテンシャルの高さに気づいたユーザー、ライダーから「レーススタンダードの10速でアクアを乗りたい」という声が出たのも当然のことだろう。

コンポは105、ハンドル、ステム、ピラー、サドルはオルベアのオリジナルで統一感があるコンポは105、ハンドル、ステム、ピラー、サドルはオルベアのオリジナルで統一感がある 上から見ると、トップチューブの逆三角断面、ダウンチューブの尖った楕円断面の形状が伺える上から見ると、トップチューブの逆三角断面、ダウンチューブの尖った楕円断面の形状が伺える


そして今回、200台限定でシマノ105の完成車がラインアップされた。フル105装備で157,000円というコストパフォーマンスもさることながら、より注目するべきはアクアのフレーム性能をよりスパルタンに活かせるパッケージングだろう。ロードバイクエントリーバイクから、ロードレースエントリーモデルへの変貌を果たしたと言っても過言ではないだろう。

BBは68mmとオーソドックスなサイズを採用BBは68mmとオーソドックスなサイズを採用 細身のアルミパイプと、白基調オレンジの爽やかなカラーリングで品のあるデザインになっている細身のアルミパイプと、白基調オレンジの爽やかなカラーリングで品のあるデザインになっている チェーンステーは絞られ、振動吸収性を高める工夫がなされるチェーンステーは絞られ、振動吸収性を高める工夫がなされる


アクアのフレームづくりで驚かされるのは、溶接痕のなめらかさやステー部のベンドなど、品のある美しさが実現されていることだ。フレームの形状は、バイクが狙う走行特性に合わせて変わるため、美しさだけが絶対の価値にはならないが、アルミフレームらしい、シンプルな中に丁寧な作りが見られることは評価されるべきポイントだ。

トップチューブの逆三角形型やダウンチューブの細い楕円形上は、快適性能を上げるためのチューブワークだろう。ムダのない断面形状は空気抵抗の軽減にも寄与する。カドのあるチューブ形状ながら、トゲトゲしいところないデザインのバランス感覚にも注目だ。

メーカーオリジナルが搭載されることが多いクランクも含め全て105でアッセンブルされているメーカーオリジナルが搭載されることが多いクランクも含め全て105でアッセンブルされている BB周りのボリュームは昨今のカーボンバイクに比べるとすっきりとコンパクトに見えるBB周りのボリュームは昨今のカーボンバイクに比べるとすっきりとコンパクトに見える


なお、この200台限定モデルは写真のホワイトオレンジカラーのみとなる。明るいオレンジカラーはオルベアに乗るトップチームのエウスカルテルのフィードバックを思わせる。フレーム単体、ソラ完成車やティアグラ完成車ではさらにホワイトレッド、ホワイトブルー、ブラックホワイトが選べる。

シートチューブ〜シートステーまでの造形 丁寧な溶接がなされているシートチューブ〜シートステーまでの造形 丁寧な溶接がなされている サドルは初心者でも痛くなりにくいクッション性の高いものを採用。カーボンピラーも贅沢サドルは初心者でも痛くなりにくいクッション性の高いものを採用。カーボンピラーも贅沢 砂時計型にベンドするシートステーは路面の衝撃を和らげるための設計砂時計型にベンドするシートステーは路面の衝撃を和らげるための設計


なお、この限定車200台はオルベア総代理店のダイナソアが展開する震災復興支援プロジェクト「Ride for Japan」の対象車種となっている。

10速を手に入れたこのフルアルミのスパニッシュバイクを、多くのレースを走ってきた経験を持つ2人のライダーはどう評するのか、インプレッションをお届けしよう。




―インプレッション

「『ロードレーサー』の入門にぴったりのバイク」
戸津井俊介(OVER-DOバイカーズサポート)


レーシングバイクブランドであるオルベアの、トップグレードからのフィードバックを感じました。すごく乗りやすいフレームですね。フロントセンターとリアセンターが詰まっている感じから、割とレース寄りのバイクなのかな、と。だから初めてロードバイクに乗る人で、もともと違うスポーツをやっていた人にはとても向くのではないでしょうか。この1台を最初の1台にすれば、ロングライドだけでなく、ホビーレースやヒルクライムにも使えると思います。

少しスピードを抑えめに乗っても見ましたが、低速で安定して、すごく気持ちがいい。トンガった感じの突き上げ感がなくて、振動のカドが取れているように感じます。フロントセンターは短いので、コーナーリングでは少しクイック気味。僕は足が大きいのでつま先がちょっとタイヤに触れてしまったりもしました。

落ち着かない、怖いという感覚は乗っていてありません。完成車ということでパーツに注目して、いいなと思ったのはサドルが柔らかめのところ。初心者の方に受け入れられるバイクだと思います。気になった点はハンドルの形状ですね。ほとんどの状況でブラケットや上ハンドルを持つようにはなるとは思うのですが、下ハンを持つと少し遠く感じます。今は下ハン部が近いハンドル形状が主流なので、このあたりは気になりました。

「『ロードレーサー』の入門にぴったりのバイク」戸津井俊介(OVER-DOバイカーズサポート)「『ロードレーサー』の入門にぴったりのバイク」戸津井俊介(OVER-DOバイカーズサポート)

ただ、特にアラというか、不満な点が見つからないバイク作りというのは、レースを中心とする歴史あるバイクブランドのノウハウが活きているなと感じました。ブレーキも105で、安心して下りもこなせますしね。

これは「ロードレーサー」の入門にはぴったりのバイクでしょう。これで15、6万円ならお求めやすいと思います。フロントフォークは、前にインプレで乗せて頂いたカーボンバイクのオニキスに似ていいクッション性を持っていました。ストレートフォークなのに振動をうまく和らげてくれます。ホイールのグレードを上げれば戦闘力はぐんと増すでしょう。

多少の重量は仕方ないとして、かといってグニャグニャと力が逃げるところがないのはいいですね。一度スピードに乗せてしまえば、リズムよくこいでいける気がしますし、シッティングでぐいぐい踏んでいっても足に来る感じもありません。レーサーでありながらのこの特性は初心者の方におススメしたいところです。
オレンジはオルベアのコーポレートカラーでしょうか。見た目にもとても爽やかで統一感のあるカラーリングですね。


「自転車とともにスタイルが決められる、初心者のベース車両にうってつけの一台」
鈴木祐一(Rise Ride)


「自転車とともにスタイルが決められる、初心者のベース車両にうってつけの一台」鈴木祐一(Rise Ride)「自転車とともにスタイルが決められる、初心者のベース車両にうってつけの一台」鈴木祐一(Rise Ride) 価格から言うのもアレですけれど、73,500円のフレームということで、スポーツバイクとして非常に買いやすい価格帯。初めてロードバイクに乗りたいという方にとって大切な、「買いやすい値段」だと思います。それでも通常スポーツバイクの値段が高くなってしまうのは、ダウンヒルでは初心者の方であっても時速40km、50kmと出てしまうので、その時の安全性を保証するための品質です。その中でこの価格帯に抑えてあるのは、すごく評価ができます。オルベアというブランドは品質テストが厳しいことで有名で、手抜きはしませんから。

ただ求めやすいだけじゃなくて、このアクアの性能に関しては、安定性があって、自転車の楽しさをライダーに訴えるいい設計がされていると思います。値段面からフレームの材質の制約があるために、バイクを持った時の重量はカーボンフレームなどと比べるとどうしても感じますが、そのネガティブな要素をフレームジオメトリーや設計で補っていると思います。

素材が違うので、そのままトップモデルと同じようには作れない。そこで、ヘッドを立てたり、フロントセンターとリアセンターを詰めることで、ホイールベースを短くして軽快感を向上していると思います。ただ、ハンドルは下を持つと遠くて、シャロー形状全盛の中で少し気になるところです。初めての人にとっては前傾姿勢は怖いものだと思うので。

このバイクのターゲットは初めてロードバイクに乗る人だと思います。これからレースに出てみたい人や、ツーリングを楽しみたいという人まで様々いると思いますが、アクアは方向性を決めやすい自転車だと思います。軽快で運動性能も高いので、自分のスタイルをバイクと一緒に決めていくといいのではないでしょうか。

このバイクの特性として、踏みつけて加速するよりも、回転で進んでいくバイクだと思いました。初心者の方にとっては、きれいなペダリングという基本的な技術の向上を自分のカラダで身につけることのできるいいバイクだと思います。このスペックで乗り込むことで、ロードのライディングテクニックが身に付いていくはずです。

パーツにすべて105がついたことで、他のパーツとの互換性も高くなりました。このバイクでロードバイクを体感することができたら、そこでみつけた自分のスタイルに合わせたパーツのグレードアップも将来的にできる利点が生まれましたね。ロードバイクの初めてのベース車両として、すごくバランスのとれたバイクだと思います。

ティアグラモデルよりお買い得な点はいろいろ挙げられます。ブレーキもハードにかけられて安全ですし、ホイールやタイヤなどの細かいパーツをグレードアップすることでトータルでバイクの性能が上がっている。そのベースとなる部分は、105を搭載することですでにできていると思います。価格以上にお買い得なバイクだと思います。





オルベア アクア 105完成車オルベア アクア 105完成車 (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp

オルベア アクア 105完成車
限定200台 
コンポーネンツ:シマノ105
ギア:シマノ105(50-34T/12-25T)
ハンドル:オルベアオリジナル
ステム;オルベアオリジナル
シートポスト:オルベアオリジナル
サイズ:48、51、54
カラー:ホワイトオレンジ
価格:157,500円(税込)




インプレライダーのプロフィール


戸津井俊介(OVER-DOバイカーズサポート)戸津井俊介(OVER-DOバイカーズサポート) 戸津井俊介(OVER-DOバイカーズサポート)

1990年代から2000年代にかけて、日本を代表するマウンテンバイクライダーとして世界を舞台に活躍した経歴を持つ。1999年アジア大陸マウンテンバイク選手権チャンピオン。MTBレースと並行してロードでも活躍しており、2002年の3DAY CYCLE ROAD熊野BR-2 第3ステージ優勝など、数多くの優勝・入賞経験を持つ。現在はOVER-DOバイカーズサポート代表。ショップ経営のかたわら、お客さんとのトレーニングやツーリングなどで飛び回り、忙しい毎日を送っている。09年からは「キャノンデール・ジャパンMTBチーム」のメカニカルディレクターも務める。
最近埼玉県所沢市北秋津に2店舗目となるOVER DO所沢店を開店した(日常勤務も所沢店)。
OVER-DOバイカーズサポート


鈴木祐一鈴木祐一 鈴木 祐一(Rise Ride)

サイクルショップ・ライズライド代表。バイシクルトライアル、シクロクロス、MTB-XCの3つで世界選手権日本代表となった経歴を持つ。元ブリヂストン MTBクロスカントリーチーム選手としても活躍した。2007年春、神奈川県橋本市にショップをオープン。クラブ員ともにバイクライドを楽しみながらショップを経営中。各種レースにも参戦中。セルフディスカバリー王滝100Km覇者。
サイクルショップ・ライズライド


ウェア協力:SUGOi


text:Yufta.OMATA
photo:Makoto.AYANO

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