より厳しさを増した山岳コースで開催された第3ステージ。1級山岳での山頂ゴールを制したのは2008年のU23世界チャンピオン、ドゥアルテだった。総合首位はスカルポーニがキープ。優勝候補のニーバリは大きく遅れてしまい、ジロを前に心配な結果になった。現地から田中苑子が伝える。

2008年U23世界チャンピオン、ドゥアルテが厳しい山岳ステージを制す

スタート前のミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・ISD)スタート前のミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・ISD) photo:Sonoko.TANAKAジロ・デル・トレンティーノ第3ステージは、レドロ・モリーナからファイ・デッラ・パガネッラまでの170kmで争われた。2級山岳を越えてループコースに入り、高低差770m、平均勾配7.2%の1級山岳を2度越えて、2度目の山頂がゴールとなるコースレイアウトだ。

ジロ・デ・イタリアの前哨戦と言われる今大会だが、ジロの山岳コースがそのままコースになったような厳しい山岳のステージだった。

スタート前、原始人にヤラれる新城幸也(ユーロップカー)スタート前、原始人にヤラれる新城幸也(ユーロップカー) photo:Sonoko.TANAKAレースが始まり、この日も序盤にできたアントニー・シャルトー(フランス、ユーロップカー)、ステファノ・ボルチ(イタリア、デローザ・チェラミカフラミニア)、アドリアン・ホンキス(ポーランド、CCCポルサット・ポルコウィス)3人の逃げが後半まで先行する。

1回目の1級山岳の登りで集団はバラけはじめるが、やはり決定的な勝負は最後の登りに集約された。先頭集団はどんどん加速しながら選手をふるい落とし、ゴール手前では7人の選手に絞られた。その中には、総合1位のミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・ISD)や2位のティアゴ・マシャド(ポルトガル、レディオシャック)が含まれている。しかし、優勝候補と言われているヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)の姿はこの中にはなかった。

レドロ・モリーナをスタートしていく選手たちレドロ・モリーナをスタートしていく選手たち photo:Sonoko.TANAKAそして、ゴール手前の急傾斜な坂を越えて、7人はゴールスプリントの体制に入る。そこで飛び出したのが、ファビオアンドレス・ドゥアルテ(コロンビア、ジェオックス・TMC)だった。イタリア・ヴァレーゼで開催された2008年の世界選手権U23のチャンピオンである彼が、大きな勝利を掴んだ。

「今日、自分が勝てる自信があった。ジロ・デ・イタリアではチームのエースであるカルロス・サストレ(スペイン、ジェオックス・TMC)のアシストをすることになると思うが、近い将来、自分がエースとして走れる日がくるといいと思う」とレース後に語った。

ステージ優勝したファビオアンドレス・ドゥアルテ(コロンビア、ジェオックス・TMC)ステージ優勝したファビオアンドレス・ドゥアルテ(コロンビア、ジェオックス・TMC) photo:Sonoko.TANAKAドゥアルテと同タイムの2位、ゴールしたのはティアゴ・マシャド。そして3秒差の3位にリーダージャージを着るミケーレ・スカルポーニが続き、スカルポーニは総合首位をキープするが、2位のマシャドとのタイム差が12秒から7秒に縮んだ。

スカルポーニは「2回アタックを試みたけど、彼らを振り切ることはできなかった。最後のスプリントには疲れもあったので加わらなかった。いま、自分がベストコンディションでないことを知っている。ジロに向けてコンディションを上げている最中だからね。でも、チームは非常に良く動いている。それをとても幸せに感じている」と話し、総合優勝をかけた最終ステージに挑む。

ニーバリに代わりアスカーニが総合3位浮上

1級山岳を登るルーカ・アスカーニ(イタリア、ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)1級山岳を登るルーカ・アスカーニ(イタリア、ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO) photo:Sonoko.TANAKAヴィンチェンツォ・ニーバリは、トップから1分26秒差の22位でゴール。総合順位を3位から15位に落としてしまった。スカルポーニとニーバリ、ジロ・デ・イタリアを狙うイタリア人2選手の明暗が大きく分かれるステージだった。

そしてニーバリを抜いて、総合4位に付けていたルーカ・アスカーニ(イタリア、ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)が、この日も順調な走りを見せ、17秒差でフィニッシュし、総合順位を3位にランクアップさせた。

アスカーニは言う「今日は、プロチームがコントロールするレースに必死で付いていった。常に全開だったので、レースのことをよく覚えていないくらい。明日は総合3位を守りたいと思うけど、調子が良くチャンスがあれば、ステージ優勝を狙っていきたい。チームメイトの佐野や内間も助けてくれるだろうね。」

苦しんだ日本勢、佐野淳哉は73位でゴール

ゴールへと向かう佐野淳哉(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)(写真右端)ゴールへと向かう佐野淳哉(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)(写真右端) photo:Sonoko.TANAKA日本勢のトップは、佐野淳哉(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)。14分15秒差の73位でフィニッシュした。

「日本では登坂力があると言われていたけど、今日のトップの走りを見て、唖然としているのが正直な感想です。日本やアジアのレースだと、厳しい登坂になると麓から徐々にスピードが落ちていくけど、イタリアのトップは頂上に近づくにつれ、加速していく印象がある。速い選手が集まると、ここまで速いのか!って思います。

ゴールへと向かう内間康平(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)ゴールへと向かう内間康平(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO) photo:Sonoko.TANAKA初日のタイムトライアルでは29位だったので、ある程度のパワーを持っているということはわかります。でも、これでどうしたらもっと速く登れるのか、1つは身体を絞ることだと思いますが、これから考えていきたいと思います」

新城幸也(ユーロップカー)はグルペットでゴール。プロ1年目の内間も厳しい山岳ステージを走りきっている。


最終ステージはパンターニゆかりの峠にゴール

明日で4日間のステージレースは最終日を迎える。最終日も2級山岳を2つ越えて、1級山岳の頂上ゴールとなる厳しいもの。最後まで総合順位は決まらず、白熱した闘いになるだろう。またゴール地点であるマドンナ・ ディ・カンピーリオはイタリアの英雄・パンターニのエピソードで有名な場所。99年のジロ・デ・イタリア、マドンナ・ ディ・カンピーリオにゴールするステージで優勝したパンターニ。しかし、その後UCIの抜きうちドーピング検査が入り、総合首位でありながら、最終日を目前にレースを追放され、その後の悲劇の始まりとなってしまった。

そんな場所で、どんなレースが繰り広げられるのだろうか? 北イタリア、ドロミテの澄み切った空が、挑戦者を迎えようとしている。

ジロ・デル・トレンティーノ2011第3ステージ結果
1位 ファビオアンドレス・ドゥアルテ(コロンビア、ジェオックス・TMC)4h41'05"
2位 ティアゴ・マシャド(ポルトガル、レディオシャック)
3位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・ISD)+3"
4位 スティーブ・モラビート(スイス、BMCレーシングチーム)
5位 ロバート・キセロフスキー(クロアチア、アスタナ)
6位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス)
7位 ホセ・ルハノ(ベネズエラ、アンドローニ・ジョカトーリ)+6"
8位 シルヴェスタ・シュミット(ポーランド、リクイガス・キャノンデール)+15"
9位 ジャンパオロ・カルーソ(イタリア、カチューシャ)+15"
10位 ルーカ・アスカーニ(イタリア、ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)+17"
73位 佐野淳哉(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)+14'15"
107位 新城幸也(ユーロップカー)+17'47"
112位 内間康平(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)19'25"

総合順位
1位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・ISD)9h44'49"
2位 ティアゴ・マシャド(ポルトガル、レディオシャック)+7"
3位 ルーカ・アスカーニ(イタリア、ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)+33"
4位 スティーブ・モラビート(スイス、BMCレーシングチーム)+34"
5位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス)+35"
6位 ロベルト・キセルトヴスキ(クロアチア、アスタナ)+42"
7位 ウラディミール・ミホロヴィッチ(クロアチア・アックア・エ・サポーネ)+58"
8位 トマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー)+1'12"
9位 シルヴェスタ・シュミット(ポーランド、リクイガス・キャノンデール)+1'14"
10位 ホセ・ルハノ(ベネズエラ、アンドローニ・ジョカトーリ)+1'16"
82位 佐野淳哉(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)+20'22"
98位 新城幸也(ユーロップカー)+25'06"
112位 内間康平(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)+28'42"

新人賞
ステファノ・ピラッツィ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス)

山岳賞
アドリアン・ホンキス(ポーランド、CCCポルサット・ポルコウィス)

ポイント賞
ステファノ・ボルチ(イタリア、デローザ・チェラミカフラミニア)

チーム首位
アスタナ

text&photo:Sonoko Tanaka