ベルギー南部のワロン地域で行なわれた第95回リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ(UCIヒストリカル)は、終盤に飛び出したアンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)が、チームメイトが抑え込む後続を振り切って独走勝利を飾った。初出場の新城幸也(Bboxブイグテレコム)は108位で完走を果たしている。

目まぐるしいアタック合戦、サクソバンクが主導権を握る

45km地点で踏切による足止めを食らう45km地点で踏切による足止めを食らう photo:Cor Vosロードレース随一の歴史を誇るリエージュ〜バストーニュ〜リエージュ。クラシックシーズンを締めくくるこの大一番だ。

レースは57km地点の上り坂でニコ・シーメンス(ベルギー、コフィディス)、シリル・ゴティエ(フランス、Bboxブイグテレコム)、マルセル・ウィス(スイス、サーヴェロ)の3名が逃げを決め、ユベール・デュポン(フランス、アージェードゥーゼル)が遅れて合流した。

観客が詰めかけたサンロシュを先頭4名が駆け上がる観客が詰めかけたサンロシュを先頭4名が駆け上がる photo:Cor Vosアタック合戦に加わった土井雪広は自身のブログで「最初の2時間、30回はアタックしたと思う。絶好調だったから、山岳で全開でアタックして、続けて現れる山岳でも全開アタック。4人5人ぐらいのグループにはなるけど、入ってないチームに全部つぶされる状況で、2時間同じ事を永遠繰り返した」と語っている。

スピードを上げないメイン集団をよそに、逃げる4名はゴールまで100kmを残して11分10秒のリードを築き上げることに成功する。やがてメイン集団でサクソバンクやランプレ、ケースデパーニュによるペースアップが始まると、先頭4名のリードは劇的に縮まった。

渾身のアタックを成功させたフィリップ・ジルベール(ベルギー、サイレンス・ロット)渾身のアタックを成功させたフィリップ・ジルベール(ベルギー、サイレンス・ロット) photo:Cor Vosワンヌ峠、ストック峠、ロジエ峠、ラ・ヴェケ峠と、長い上りをこなすうちにメイン集団は人数を減らし、ゴールまで50kmを残して先頭4名のリードは1分に。粘る土井雪広と新城幸也は、やがてメイン集団から脱落した。

活性化したメイン集団からはリーナス・ゲルデマン(ドイツ、ミルラム)ら3名が抜け出して追走グループを形成したが、アタックポイントとして知られるラ・ルドゥットの上りでメイン集団に吸収。最後まで抵抗したゴティエを含め、序盤から逃げていた4名もすべてメイン集団に飲み込まれた。

ダヴィデ・レベッリン(イタリア、ディキジョヴァンニ)のアタックに反応するフランク・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)らダヴィデ・レベッリン(イタリア、ディキジョヴァンニ)のアタックに反応するフランク・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)ら photo:Cor Vos続いてアレクサンドル・コロブネフ(ロシア、サクソバンク)らが10名ほどが新たな先頭グループを形成したがリードを得られず、メイン集団から弓矢の如く飛び出したフィリップ・ジルベール(ベルギー、サイレンス・ロット)がこのグループを撃ち抜いて行く。地元出身のジルベールがラスト28kmから独走を開始した。

単独で45秒のリードを稼ぎ出したジルベールを追って、ラスト18km地点に位置する平均勾配9.9%のラ・ロッシュ・オ・フォーコンで飛び出したのはアンディ・シュレク。すぐさまジルベールに追いつき、振るい落としたAシュレクは独走体制に入った。

独走勝利を飾ったアンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)独走勝利を飾ったアンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク) photo:Cor Vos後続のメイン集団には、アムステル・ゴールドレースでの落車から復活を果たした兄のフランク・シュレク(ルクセンブルク)を始め、カルステン・クローン(オランダ)、クリスアンケル・セレンセン(デンマーク)、ニキ・セレンセン(デンマーク)、コロブネフらが勢揃い。

これらサクソバンクの選手たちが集団のアタックを封じ込め、集団のローテーションを乱してAシュレクの独走をサポート。先頭のAシュレクから1分30秒遅れでラスト7kmの難所サンニコラに突入したメイン集団では、ダヴィデ・レベッリン(イタリア、ディキジョヴァンニ)らがアタックしたがFシュレクらに潰される。Aシュレクの逃げ切りが決まった。

スプリントで競り合うセルゲイ・イワノフ(ロシア、カチューシャ)、フィリップ・ジルベール(ベルギー、サイレンス・ロット)、ダヴィデ・レベッリン(イタリア、ディキジョヴァンニ)スプリントで競り合うセルゲイ・イワノフ(ロシア、カチューシャ)、フィリップ・ジルベール(ベルギー、サイレンス・ロット)、ダヴィデ・レベッリン(イタリア、ディキジョヴァンニ) photo:Cor Vosアンスのゴール地点に向かう緩斜面で、メイン集団から飛び出したホアキン・ロドリゲス(スペイン、ケースデパーニュ)は、逃げ切りを達成したAシュレクから遅れること1分17秒で2位ゴール。その7秒後では表彰台争いのスプリントが繰り広げられ、レベッリンが3位の座を射止めている。
サクソバンクの完勝、23歳の新チャンピオン

兄フランクと抱き合うアンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)兄フランクと抱き合うアンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク) photo:Cor Vosゴール後、兄のFシュレクやビャルヌ・リース監督、チームスタッフと抱き合い、大勝利の喜びを分かち合ったAシュレク。サクソバンクのリエージュ制覇は、CSC時代の2003年タイラー・ハミルトン(アメリカ)以来2度目の快挙。

チーム公式サイトの中でAシュレクは「リエージュは自分の中で最高のワンディレース。今日は夢が叶ったよ。リエージュの表彰台の真ん中に立つなんて、言葉では言い表せない感情。チームの働き無しにはこの勝利は無かった」と喜びを語る。

表彰台、左から2位ホアキン・ロドリゲス(スペイン、ケースデパーニュ)、優勝アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)、3位ダヴィデ・レベッリン(イタリア、ディキジョヴァンニ)表彰台、左から2位ホアキン・ロドリゲス(スペイン、ケースデパーニュ)、優勝アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)、3位ダヴィデ・レベッリン(イタリア、ディキジョヴァンニ) photo:Cor Vos「フレーシュ・ワロンヌ2位という結果は少し残念だったけど、逆にリエージュに向けてのいいモチヴェーションになったんだ。僕のチャンスは一発でアタックを決めて、ゴールまで独走することだった」。Aシュレクはその言葉通りの逃げ切り勝利を成功させた。

クラシックシーズンを最高の形で終えたAシュレクの視線の先にあるのはツール・ド・フランスだ。「この世界有数のビッグレースでの勝利は、次なる大きな目標であるツールに向けて素晴らしい自信を与えてくれる」。2007年のジロ・デ・イタリアで驚きの総合2位&新人賞に輝いた23歳の次世代オールラウンダーは、兄Fシュレクとともにマイヨジョーヌ獲得を目指す。

アシストとして力を使い果たし、集団から遅れる土井雪広(日本、スキル・シマノ)アシストとして力を使い果たし、集団から遅れる土井雪広(日本、スキル・シマノ) photo:Cor Vos最後の上りでアタックを成功させ、2位に入ったロドリゲスはチームのプレスリリースの中で「逃げ切りを成功させたAシュレクには賛辞を贈りたい。僕にとってこの2位は優勝に匹敵する好成績。何年も挑んでようやく表彰台を手にしたんだ。いつの日か将来、このレースで勝てることを証明できた。この好調を維持して、ジロ・デ・イタリアに挑みたい」と語っている。

急遽出場が決定し、初めてリエージュの洗礼を受けた新城幸也は、チーム内で5位の結果にあたる108位で完走。グランツールに向け、このアルデンヌ3連戦でチーム内の評価を上げたことは間違いない。

第2補給ポイントで審判バイクにレース終了を告げられ、バイクを降りた土井雪広は、自身のブログの中で「今までのトレーニングの成果をすべて出し切った。ほんと120%の力を発揮できたと思う。仕事を終えたあとも、残っていない力を振り絞って前の人のホイールだけを見て粘って粘って。アシストを終えてやめていく選手を見ながら、粘った」と語る。完走者2名のスキル・シマノは、イヴェールの77位が最高位だった。

リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ2009結果
1位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)6h34'32"
2位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、ケースデパーニュ)+1'17"
3位 ダヴィデ・レベッリン(イタリア、ディキジョヴァンニ)+1'24"
4位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、サイレンス・ロット)
5位 セルゲイ・イワノフ(ロシア、カチューシャ)
6位 サイモン・ジェランス(オーストラリア、サーヴェロ)
7位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ)
8位 ブノワ・ヴォグルナール(フランス、フランセーズデジュー)
9位 アレクサンドル・コロブネフ(ロシア、サクソバンク)
10位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)
108位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)+14'20"
DNF 土井雪広(日本、スキル・シマノ)