盛り上がる北のクラシックシーズンの後半を彩るセミクラシック、シュヘルデプライスは落車含みの混乱の集団スプリントを、マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームHTC・コロンビア)が危なげなく制し、自身3度目の栄誉に浴した。

別府史之(レディオシャック)別府史之(レディオシャック) (c)Makoto.AYANO石畳の激坂に特徴づけられる北のクラシックにあって、シュヘルデプライスは平坦基調のスプリンターのためのセミクラシックだ。今年で99回目の開催を数える、ベルギークラシックの中では最も古い歴史を持つ格式のレースだ。

過去10年の優勝者の名前に、ロビー・マキュアン(オーストラリア、レディオシャック)、トム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)、マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームHTC・ハイロード)、アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、ランプレ・ファルネーゼヴィニ)、タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)と名だたるスプリンターが並ぶ。この内、ペタッキを除いた選手が出場。全員が優勝候補だ。

北のクラシックの状景たる冷雨はどこへやら、この日は初夏を思わせる陽光。先日のロンド・ファン・フラーンデレンを完走したフミこと別府史之(日本、レディオシャック)も週末のパリ〜ルーベを見据えながらスタートを切った。
ディフェンディングチャンピオンのファラーを擁するガーミン・サーヴェロディフェンディングチャンピオンのファラーを擁するガーミン・サーヴェロ (c)Makoto.AYANO10kmを過ぎて、早くもこの日の逃げグループが形成される。メンバーは、アドリアーノ・マローリ(イタリア、ランプレ・ISD)、ダヴィ・ブシェ(フランス、オメガファーマ・ロット)、パティスト・プランカールト(ベルギー、ランドバウクレジット)、ディエテル・カペル(ベルギー、フェランダス・ヴィレムスアクセント)、ヴラディミル・イサイシェフ(ロシア、カチューシャ)の5名。

集団では優勝候補の一角、ボーネンが2度の落車に見舞われる。幸い大きな怪我ではなかったものの、日曜日にすべてを駆けるボーネンにとって、ひやりとする一幕。同じくパリ〜ルーベを見据えるジョージ・ヒンカピー(アメリカ、BMCレーシング)も落車し、大事をとってリタイヤしている。ワンデイクラシックならではの緊張感が、終日集団を支配。逃げ続ける5人が稼ぎ出したリードも3分を越えることはなく、残り50kmになって減少に転じる。

ゴール地点のショーテンから周回コースに入る逃げグループゴール地点のショーテンから周回コースに入る逃げグループ (c)Makoto.AYANOスプリンターのためのクラシックとあって有力選手を抱えるクイックステップ、HTC・ハイロード、ガーミン・サーヴェロ、サクソバンクらが入り乱れて集団を牽引。残り40kmで54秒あった差は、残り25kmで20秒、残り21kmで最後まで粘ったマノーリを吸収し、レースは振り出しに。

そこから集団前方では各チームの熾烈な主導権争いが勃発。フミも集団前方で積極的にエースのマキュアンをサポートする走りを見せる。

残り3kmで主導権を握ったのはチームスカイ。マシュー・ヘイマン(オーストラリア)、ファンアントニオ・フレチャ(スペイン)らが一列になるも、コーナーの立ち上がりで分裂。スプリンターが入り乱れたまま残り1km。

ゴール前200mで落車したタイラー・ファラー(ガーミン・サーヴェロ)ゴール前200mで落車したタイラー・ファラー(ガーミン・サーヴェロ) (c)Makoto.AYANO残り300mで最初にスプリントを仕掛け先頭に立ったのはヤウヘニ・フタロヴィッチ(ベラルーシ、フランセーズデジュー)。すぐにこの動きに乗ったのはカヴェンディッシュ。そこにファラーが続く展開。

スプリントの開始で横に広がった選手たちの中で、4番手につけていたワウテル・ウェイラント(ベルギー、チームスカイ)が大きくバランスを崩し落車。これに前を走るファラーが接触し、続いて落車する事態に。落車の前にいたカヴェンディッシュがフタロヴィッチをかわして悠々と勝利。3本指をあげて、自身の3勝目をアピールする余裕を見せた。

指を3本突き出してゴールするマーク・カヴェンディッシュ指を3本突き出してゴールするマーク・カヴェンディッシュ (c)Makoto.AYANO

ゴール前で落車に巻き込まれたワウテル・ウェイラント(ベルギー、レオパードトレック)ゴール前で落車に巻き込まれたワウテル・ウェイラント(ベルギー、レオパードトレック) photo:Makoto.AYANO2位にはファラーとぶつかりながらもスプリントを続けたデニス・ガリムジャノフ(ロシア、カチューシャ)。3位にフタロヴィッチが入った。落車したファラーには大きなケガはなく、日曜日のパリ〜ルーベに出場する見通しだ。

フミは集団で仕事を着実にこなし、マキュアンの5位に貢献するとともに、自身も26位と上位でゴールしている。日曜日のパリ〜ルーベの完走への見通しは明るい。


シュヘルデプライス2011
1位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームHTC・ハイロード)4h29'57"
2位 デニス・ガリムジャノフ(ロシア、カチューシャ) 
3位 ヤウヘニ・フタロヴィッチ(ベラルーシ、フランセーズデジュー)
4位 シュテファン・ファンダイク(オランダ、フェランダス・ヴィレムスアクセント)
5位 ロビー・マキュアン(オーストラリア、レディオシャック)
6位 フランチェスコ・キッキ(イタリア、クイックステップ)
7位 アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、BMCレーシング)
8位 テオ・ボス(オランダ、ラボバンク)
9位 フレデリック・ロバート(ベルギー、クイックステップ)
10位 ケニーロバート・ファンヒュンメル(オランダ、スキル・シマノ)
26位 別府史之(日本、レディオシャック)


text:Yufta Omata
photo:Makoto Ayano,Cor Vos