フランドルを舞台にした3日間の闘い　グライペルが劇的な逃げ切り

2011年3月29日、ベルギーでKBCデパンヌ3日間レース（UCI2.HC）が開幕した。初日はワンデークラシックさながらの急坂が12カ所設定された194km。辛うじてメイン集団を振り切った4名の先頭グループが逃げ切り、アンドレ・グライペル（ドイツ、オメガファーマ・ロット）が勝利した。

逃げグループに入ったアンドレ・グライペル（ドイツ、オメガファーマ・ロット） photo:Cor Vosベルギー・フランドル地方を舞台にしたKBCデパンヌ3日間レース（正式名称KBC Driedaagse De Panne - Koksijde）は、その名の通り3日間のステージレース。メジャークラシックに登場する急坂がいくつも設定されている。週末のロンド・ファン・フラーンデレンに向けて、フランドル地方はクラシック熱を上げて行く。

開催期間は3日間だが、最終日に2ステージ（ロードレースと個人TT）が行なわれるため、ステージ数は4つ。最終個人タイムトライアルで総合成績が大きく変動する可能性が高い。

メイン集団を振り切ってゴールするアンドレ・グライペル（ドイツ、オメガファーマ・ロット） photo:Cor Vos第1ステージは北海沿いのミッデルケルケからゾッテヘムまでの194kmで、急坂の数は合計12。終盤の周回コースにはレベルグやヴァルケンベルグ、エイケンモレンなどの急坂が設定されている。この日のアタック合戦が収束したのは77km地点だった。

逃げを試みたのはミカエル・ドラージュ（フランス、FDJ）やバート・デバッカー（ベルギー、スキル・シマノ）、ローレンス・デヴリーゼ（ベルギー、トップスポート・フラーンデレン）ら8名。連続する急坂で積極的に山岳ポイントを狙ったデヴリーゼは、山岳賞ジャージを獲得した。

チームメイトに祝福されるアンドレ・グライペル（ドイツ、オメガファーマ・ロット） photo:Cor Vos最大4分まで広がったタイム差は、ラボバンクを中心とした集団コントロールにより、ゾッテヘムの周回コースに入る頃には1分台に。ここからヘント〜ウェベルヘムを制したクイックステップ勢が積極性を見せ、シルヴァン・シャヴァネル（フランス）やヘルト・ステーグマン（ベルギー）が攻撃を仕掛ける。レディオシャックも断続的に動き、ペースが上がったメイン集団は縮小した。

その後もアタックは止まらず、集団を飛び出したウラディミール・グセフ（ロシア、カチューシャ）やデミトリ・ムラフエフ（カザフスタン、レディオシャック）、リエーベ・ヴェストラ（オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM）、グライペルらが先頭グループに合流する。

リーダージャージに袖を通すアンドレ・グライペル（ドイツ、オメガファーマ・ロット） photo:Cor Vosそんな中、落車に巻き込まれた優勝候補の一角レイフ・ホステ（ベルギー、カチューシャ）はリタイアを余儀なくされた。前歯を折り、右目上部を深く切ったホステは週末のロンド・ファン・フラーンデレンを欠場する危機に。

やがてゴールまで30kmを切ると、ヴェストラのアタックを切っ掛けに先頭グループは崩壊する。ヴェストラ、グセフ、ムラフエフ、グライペルの4名が先行し、これをメイン集団が追う展開。タイム差が15秒を推移する緊迫した状況が続き、ラスト5kmで早くも10秒を切る。先頭4名は僅か5秒のリードでラスト1kmを通過した。

猛烈な勢いで追い上げたメイン集団。しかし先頭4名は最後まで粘り、ラスト250mでスプリントを開始したグライペルが先頭でゴールに向かって突進。メイン集団を引き連れる形で、グライペルが両手を広げてゴールした。

劇的な逃げ切りで今シーズン2勝目を手にしたグライペルは、この日の勝利で新境地を切り開く。「今日は脚が良く回っていた。でもさすがに急坂セクションでは他の逃げメンバーに食らいつくのがやっとだった。自分はスプリンターだけど、石畳のクラシックでも結果を残すことができるという自信を得たよ」。

ステージ優勝とボーナスタイムを獲得したグライペルは総合首位に。グライペルは週末のロンド・ファン・フラーンデレンにも出場するが、そこではフィリップ・ジルベール（ベルギー）のアシストに回るという。「ロンドは全く別物だ。ロンドではジルベールをアシストする。彼はプロトン最強の選手の一人だ」。

この日は113名がメイン集団内でゴール。総合優勝候補と目されるブラドレー・ウィギンズ（イギリス、チームスカイ）やアレッサンドロ・バッラン（イタリア、BMCレーシングチーム）、ステイン・デヴォルデル（ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM）は集団内でゴールした。

レース展開はストリーミング映像、選手コメントはベルギー・Sporza紙より。

KBCデパンヌ3日間レース2011第1ステージ結果
1位　アンドレ・グライペル（ドイツ、オメガファーマ・ロット）　　　　　4h22'33"
2位　リエーベ・ヴェストラ（オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM）
3位　デミトリ・ムラフエフ（カザフスタン、レディオシャック）
4位　ウラディミール・グセフ（ロシア、カチューシャ）
5位　ロメン・フェイユ（フランス、ヴァカンソレイユ・DCM）
6位　ペーター・サガン（スロバキア、リクイガス・キャノンデール）
7位　ダニーロ・ホンド（ドイツ、ランプレ・ISD）
8位　アラン・デーヴィス（オーストラリア、アスタナ）
9位　マーク・レンショー（オーストラリア、HTC・ハイロード）
10位　ヤウヘニ・フタロヴィッチ（ベラルーシ、FDJ）

個人総合成績
1位　アンドレ・グライペル（ドイツ、オメガファーマ・ロット）　　　　 4h22'33"
2位　バート・デバッカー（ベルギー、スキル・シマノ）　　　　　　　　　　　+03"
3位　リエーベ・ヴェストラ（オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM）　　　　　　+05"
4位　ピム・リヒハルト（オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM）
5位　デミトリ・ムラフエフ（カザフスタン、レディオシャック）　　　　　　　+07"
6位　ミカエル・ドラージュ（フランス、FDJ）　　　　　　+09"
7位　ウラディミール・グセフ（ロシア、カチューシャ）　　　　　　　　　　　+11"
8位　ロメン・フェイユ（フランス、ヴァカンソレイユ・DCM）
9位　ペーター・サガン（スロバキア、リクイガス・キャノンデール）
10位　ダニーロ・ホンド（ドイツ、ランプレ・ISD）

ポイント賞
アンドレ・グライペル（ドイツ、オメガファーマ・ロット）

山岳賞
ローレンス・デヴリーゼ（ベルギー、トップスポート・フラーンデレン）

チーム総合成績
ヴァカンソレイユ・DCM

text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos