待ちに待ったスプリングクラシックの季節がやってきた。3月から4月にかけて、世界のトップ選手たちがイタリアのリグーリア海岸やフランドルの農道を駆け抜ける。ただテレビで観戦するのもいいけど、実際のコースを走ってみると尚一層レースを楽しめるはず。ヨーロッパにはそんなシクロスポルティフが溢れている。

各国から熱狂的シクロファンが走りに来る各国から熱狂的シクロファンが走りに来る (c)Makoto.AYANOコース上に付けられる市民シクロの案内標識コース上に付けられる市民シクロの案内標識 (c)Makoto.AYANO

ヨーロッパで開催されるクラシックレースの多くは、一般参加型のシクロスポルティフを併催している。ファビアン・カンチェラーラ(スイス、レオパード・トレック)やトム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)といったクラシックスターが走るコースを実際に走るチャンスだ。ここでは代表的なシクロスポルティフを6つ挙げてみたい。

エロイカ・ストラーデビアンケ 10月2日開催(プロレースは3月6日) 大会ホームページ

トスカーナ州の未舗装路を駆け抜けるトスカーナ州の未舗装路を駆け抜ける photo:Cor Vosエロイカの歴史はプロレースのそれよりも長い。シクロスポルティフの成功を受け、オーガナイザーが2007年にプロレースを初開催した。今年で5回目を迎えるプロレースは今週末に開催されるが、シクロスポルティフの開催日は10月2日。すでに2000人を超える参加者が登録を終えており、ランプレ・ISDのプロ選手も招待選手として走る予定だ。

コースは38km、75km、135km、205kmの4種類用意され、それぞれ距離や難易度が異なる。しかしどれもストラーデビアンケ(白い道)と呼ばれる未舗装路を含んでおり、距離が短くてもライドを堪能できるはず。オーガナイザーはヴィンテージバイクの使用を推奨している。なお、コースの案内標識は年中立っているので、イベント開催日以外でも自由に走ることができる。

ミラノ〜サンレモ 6月5日開催(プロレースは3月19日) 大会ホームページ

リグーリア海に沿ったアップダウンを繰り返すリグーリア海に沿ったアップダウンを繰り返す photo:Cor Vos今から40年前、レースのお膝元サンレモのクラブチームUCサンレモがミラノ〜サンレモのスポルティフイベントを初開催した。今年はプロレースの約2ヶ月半後にあたる6月5日に開催。ミラノからサンレモまで、300km近い世界最長のコースを辿る。もちろんトゥルキーノ峠やチプレッサ、ポッジオなどの登りがコースに組み込まれている。

「他のスポルティフと同様に、プロ選手と同じコースを走る絶好のチャンスだ。一般ライダーはそれだけで大きな喜びを得られるはず。みんな同じコースを走りたいんだ。一度地滑りでコースの変更を余儀なくされたことがあるけど、その時は参加者から不満が漏れたよ。」そう語るのはUCサンレモのファブリツィオ・スジーニ代表だ。

コース設定は290kmの1種類だけ。昨年は850名が参加し、740名が完走した。スジーニ氏は2004年大会に出場し、9時間10分で完走した。昨年トップでゴールしたミケーレ・マスケローニ氏のタイムは7時間49分で、平均スピードは37.58km/h。ちなみにプロレースの優勝タイムは6時間57分だった。

ロンド・ファン・フラーンデレン 4月2日開催(プロレースは4月3日) 大会ホームページ

ロンド・ファン・フラーンデレンの石畳の激坂を登るロンド・ファン・フラーンデレンの石畳の激坂を登る (c)Makoto.AYANO聖地カペルミュールを制覇せよ!聖地カペルミュールを制覇せよ! (c)Makoto.AYANO

数あるシクロスポルティフの中で特に有名なのがロンド・ファン・フラーンデレンだ。プロ選手たちが走る前日に、有名な急坂や石畳の登りを走ることができる。昨年は冷たい雨というクラシックらしい天候の中で開催。カンチェラーラが勝った翌日のプロレースは好天だった。

コース設定は3種類で、登場する急坂の数と距離が異なる。5カ所の急坂が詰め込まれた75km、12カ所の急坂を含む150km、そして18カ所の急坂を含む260kmの3種類。もちろん有名なコッペンベルグも登場する。短い2つのコースはニノーヴェを発着。260kmコースはプロレース同様ブルージュをスタートする。

昨年は2000名が参加し、その多くが翌日のプロレースを観戦した。ベルギービール片手に、カンチェラーラの走りを堪能したはずだ。

パリ〜ルーベ 4月9日開催(プロレースは4月10日) 大会ホームページ

乾燥したパヴェから砂埃が舞い上がる乾燥したパヴェから砂埃が舞い上がる photo:Cor Vosパリ〜ルーベの長い歴史の中で、今年初めてASOがシクロスポルティフ「パリ〜ルーベ・チャレンジ」を主催する。これまでは、地元クラブチームのVCルーベが同様のスポルティフイベントを2年に1回の頻度で開催してきた。

フランスのサン・カンタンをスタートする162kmのコースには、18区間・合計31.6kmのパヴェが詰め込まれている。ゴール地点はルーベのヴェロドロームだ。コース発表に立ち会ったかつての優勝者ベルナール・イノー氏は「参加者へのアドバイスは、ベストなラインを見つけて走ること。一般ライダーもラインを見極めながら、なるべくグループの先頭で走ることが必要だ」と語っている。

プロレース同様、マヴィックが大会をサポート。コース3カ所にメカニカルサポートポイントを設置する。ASOは参加者の上限を3000人と決めており、出場するならば今すぐ登録を。

アムステル・ゴールドレース 4月16日(プロレースは4月17日) 大会ホームページ

アムステル・ゴールドレースを締めくくるカウベルグの登りアムステル・ゴールドレースを締めくくるカウベルグの登り photo:Cor Vosマーストリヒト近郊の入り組んだ丘陵地帯を駆け抜けるアムステル・ゴールドレース。プロ選手たちでさえ、標識を見落とすとコースが分からなくなるという複雑なコースが設定されている。一般ライダーは、交通規制が敷かれたコースをプロレースの前日に走ることができる。

スタート地点は全てファルケンブルグで、ゴール地点は有名なカウベルグ。ゴール後は、大会のスポンサーであるアムステル・ゴールドビールがついてくる。オーガナイザーはいくつものオプションを用意しており、最も短いコースは65km。最長は17カ所の急坂を含むは250kmだ。

よほどのクラシック好きならば、3週間のヨーロッパ滞在でロンド・ファン・フラーンデレン、パリ〜ルーベ、アムステル・ゴールドレースの3連続スポルティフ参加が可能。もちろん翌日のレース観戦付きだ。

リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ 7月30日(プロレースは4月24日) 大会ホームページ

急勾配で知られるサンロシュの坂を上る選手たち急勾配で知られるサンロシュの坂を上る選手たち photo:A.S.O.リエージュ〜バストーニュ〜リエージュのシクロスポルティフは、プロレースの3ヶ月後に開催される。真夏のアルデンヌ地方は天候に恵まれることが多いため、暖かい太陽の下、ラ・ルドゥットのような登りを楽しみながら走ることができる。

フルコースはプロレースと同じくリエージュを発着する。リエージュ南部に広がる丘陵地帯を245kmかけて駆け抜ける。獲得標高は3700mオーバー。もしあなたがアンディ・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック)タイプのライダーではないのなら、130km(獲得標高1800m)や170km(獲得標高2700m)のショートコースも選択肢の一つだ。参加者数は3500名前後を予定。すでにホームページでの登録が始まっている。




「こっちでいいのかな?」「こっちでいいのかな?」 (c)Makoto.AYANOパヴェの振動を体験してみる?パヴェの振動を体験してみる? (c)Makoto.AYANO

コッペンベルグを体験してみればプロの凄さが理解できるコッペンベルグを体験してみればプロの凄さが理解できる (c)Makoto.AYANO市民シクロでは補給食が用意されることが多い市民シクロでは補給食が用意されることが多い (c)Makoto.AYANO


※なお、執筆者のグレゴー・ブラウンはロンド・ファン・フラーンデレンとミラノ〜サンレモのスポルティフに出場予定だ。

text:Gregor Brown
translation:Kei Tsuji