泥のコンディションで開催されたワールドカップ第8戦・ホーガハイデ大会は、同会場4連覇となるベルギーチャンピオン、ニールス・アルベール(BKCP)が優勝した。日本勢はジュニア沢田時が41位、豊岡英子が34位でフィニッシュするが、男子エリートは完走できなかった。

最終戦を制したベルギー王者アルベール

入念にアップする丸山厚(MASSA-FOCUS-SUPER B)入念にアップする丸山厚(MASSA-FOCUS-SUPER B) photo:Sonoko Tanakaシクロクロスワールドカップの最終戦が、世界選手権を翌週に控えた1月23日、オランダ・ホーガハイデで開催された。ホーガハイデは2年前に世界選手権が開催され、昨年もワールドカップに組み込まれたお馴染みのサーキットだ。

教会の裏にある広場を使った比較的フラットで、急な登り区間はあるものの、難易度はさほど高くないハイスピードなコースになっている。

激坂区間をクリアする辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー)激坂区間をクリアする辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー) photo:Sonoko Tanaka年明けからヨーロッパの寒さは一気に緩み、ベルギーやオランダを深く覆った雪も姿を消した。レース当日の天気は明け方〜朝にかけて雨が降り日中は曇り。したがって、コースコンディションは、大部分が泥となったが、欧州の過酷なコースを走り続けていた選手にとってはイージーなコンディションだったと言える。レースは9周回で開催された。

この日の優勝候補は、前週のワールドカップ、フランス・ポンシャトー大会をパスし、温暖なスペイン・マヨルカ島で調整をしてきた世界王者ゼネク・スティバル(チェコ、テレネット・フィデア)と、現在ワールドカップ首位でシリーズ王者に王手をかけるニールス・アルベール(ベルギー、BKCP)だ。

力強い走りを見せるニールス・アルベール(ベルギー、BKCP)力強い走りを見せるニールス・アルベール(ベルギー、BKCP) photo:Cor Vosアルベールは1月9日に開催されたベルギー選手権を制し、スヴェン・ネイス(ベルギー、ランドバウクレジット)からチャンピオンジャージを奪っている。また2008年ワールドカップ(U23)、2009年世界選手権、2010年ワールドカップとホーガハイデで勝っており、非常に相性のいいコースと言えるだろう。

朝からの雨は何とか上がり、いつもと同じ15時にエリートレースはスタートした。序盤から飛び出したのはゼネク・スティバル。好調ぶりを見せつけるかのようにペースアップし、最初の周回で17秒のリードする。

優勝を飾ったニールス・アルベール(ベルギー、BKCP)優勝を飾ったニールス・アルベール(ベルギー、BKCP) photo:Cor Vosその後最大20秒程度のタイム差を稼いだが、クラス・バントゥノウト(ベルギー、サンウェブ)やニールス・アルベール、ケビン・パウエルズ(ベルギー、フィデア)らの追い上げにより、6周回目で後続に追いつかれてしまう。

スティバルを吸収したあと、本格的な優勝争いがスタートすると、やはり本命ニールス・アルベールが集団から飛び出した。彼に追走するのはケビン・パウエルズ。この2人は前週のワールドカップでも優勝争いを繰り広げ、最終コーナーを優位に通過したケビンが僅差で優勝している。

シリーズンチャンピオンに輝いたニールス・アルベール(ベルギー、BKCP)シリーズンチャンピオンに輝いたニールス・アルベール(ベルギー、BKCP) photo:Cor Vos残りの周回は先頭をひた走るアルベールとその差を詰めたいケビンというオーダーのまま進行するが、その差は最後まで埋まらず、アルベールが6秒差でゴールラインで両手を上げた。今季ワールドカップ3勝目、2010-11ワールドカップのシリーズチャンピオンとなった。

序盤に飛ばしすぎた世界王者スティバルは、残り2周回でスヴェン・ネイスと3位争いを繰り広げるが、最後はネイスにリードを許されてしまう。来週の世界選手権に向け、課題の残るレースとなってしまった。

女子は今季好調なキャサリン・コンプトン(アメリカ)が18秒差で優勝。2位はベテラン36歳のハンカ・クプファーナーゲル(ドイツ)が続き、ハンカは自国開催となる世界選手権へ幸先良い結果となった。女子のワールドカップ、シリーズチャンピオンは22歳のサンヌ・ファンパーセン(オランダ)が獲得した。

ワールドカップ最終戦に挑んだ日本人5名

スタートを待つ沢田時(ENDLESS/ProRide)スタートを待つ沢田時(ENDLESS/ProRide) photo:Sonoko Tanakaレースが開催される日曜日に先駆け、世界選手権の代表選手に選ばれた丸山厚(MASSA-FOCUS-SUPER B)と豊岡英子(パナソニックレディース)、ジュニアの沢田時(ENDLESS/ProRide)が木曜日にヨーロッパ入り。

土曜日には、年末からヨーロッパで走っていた辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー)と竹之内悠(CTトマック)も合流し、日本人選手は今回全員ナショナルチームでの参加となった。

レースを終えた沢田時(ENDLESS/ProRide)を澤田雄一監督が迎えるレースを終えた沢田時(ENDLESS/ProRide)を澤田雄一監督が迎える photo:Sonoko Tanaka初めてのヨーロッパでのシクロクロスレースに参戦した沢田時はトップから4分遅れの41位でフィニッシュ。レース後には悔しそうな表情を浮かべ、「正直、考えていたよりも悪い結果だった。1周目の位置取りが重要かと思って、そこにこだわりすぎてしまっていたように思う。あと小さなミスも多かった。試走時にランニング区間をあらかじめ決めておいてもよかったと思う。世界選ではそのあたりをカバーして、上位を狙っていきたい」と話す。

女子の豊岡英子は全日本選手権後3週間ほど、ヨーロッパのレースを転戦し、一時帰国してコンディションを整えて、再度ヨーロッパに入っている。結果は6分12秒遅れの34位。

「年末年始、3週間ほどヨーロッパにいたけど、今回が1番うまくいったレースだった。最初、いいスタートが切れて、最初のピットは10〜15位くらいの位置で通過できた。しかし、中盤で力尽きてしまうのが課題」とコメント。

あとわずかなタイムで脚切りとなってしまった辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー)あとわずかなタイムで脚切りとなってしまった辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー) photo:Sonoko Tanaka並んで走る竹之内悠(CTトマック)と丸山厚(MASSA-FOCUS-SUPER B)並んで走る竹之内悠(CTトマック)と丸山厚(MASSA-FOCUS-SUPER B) photo:Sonoko Tanaka日本チャンピオンジャージを着る豊岡英子(パナソニックレディース)日本チャンピオンジャージを着る豊岡英子(パナソニックレディース) photo:Sonoko Tanaka

ワールドカップ最終戦に挑む竹之内悠(CTトマック)ワールドカップ最終戦に挑む竹之内悠(CTトマック) photo:Sonoko Tanaka男子エリートは辻浦圭一、丸山厚、竹之内悠の3名での出走となったが、丸山が-3ラップ、竹之内が-2ラップ、辻浦が-1ラップでいずれも完走できなかった。

途中、メカトラもあった丸山厚は「4年ぶりとなるヨーロッパのビッグレースで、前回はだいぶ前のことになるので、レース前は不安があった。でも辻浦さんや竹之内くんと一緒に試走したりと、2人がいてくれたおかげて落ち着いてスタートすることができた。反省点はあるけど、レースの雰囲気は掴めたので、世界選に向けて頑張りたいと思う」と話す。

久々に欧州レースに挑んだ丸山厚(MASSA-FOCUS-SUPER B)久々に欧州レースに挑んだ丸山厚(MASSA-FOCUS-SUPER B) photo:Sonoko Tanaka今季からエリート1年目、春、秋とベルギーを拠点にロードレースやシクロクロスを転戦してきた竹之内悠。「世界選の代表選手に選ばれなかったので、今回がヨーロッパ最後のレースでした。スタートで落車に巻き込まれ、後ろからのスタートになってしまったけど、序盤で順位を上げていけたのは良かったと思う。自分の持ち味である中盤からの粘りが、今回はかかるのが遅かった。今季はずっとレースが続いたので、今回の結果はカラダの調子を見ても予想できていた部分もある。けれど、今回の遠征で得たものは大きい。いろいろな面で成長できたと思います」と話す。

ドイツに到着し、トレーニングに出かける辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー)ドイツに到着し、トレーニングに出かける辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー) photo:Sonoko Tanakaあとわずかなタイムで脚切りとなってしまった辻浦圭一。「ヨーロッパ遠征の前半は、レースの中盤〜後半にかけてが良くなかったので、そこを意識してトレーニングしてきた。けれど、今回そこはよくなったが、序盤のキレがなくなってしまったように思う。カラダに刺激を与えれば、何かしらの反応は出るはずなのでえ、あと1週間しかないけど、ベストを尽くしたいと思う」。今回のレースの結果は良くはないが、今季のコンディションはいいように感じる。

ワールドカップのあと、火曜日にドイツ入りしたナショナルチーム。ドイツの国境あたりから雪が目立つようになり、今日は本格的な雪が降っている。おそらく積もった雪が明け方に凍り、徐々に溶け始めるようなコンディションでの開催となるだろう。シクロクロス世界選手権は、ジュニア、アンダー23は1月29日(土曜日)、女子とエリートは翌30日(日曜日)にドイツ、セントウェンデルで開催される。


シクロクロス・ワールドカップ2010-2011第8戦ホーガハイデ大会
エリート男子
1位 ニールス・アルベール(ベルギー、BKCP)        1h04'21"
2位 ケビン・パウエルズ(ベルギー、テレネット・フィデア)     +6"
3位 スヴェン・ネイス(ベルギー、ランドバウクレジット)    +32"
4位 ゼネク・スティバル(チェコ、テレネット・フィデア)     +37"
5位 クラス・バントゥノウト(ベルギー、サンウェブ)     +38"
45位 辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー)         -1LAP
52位 竹之内悠(CTトマック)                  -2LAP
54位 丸山厚(MASSA-FOCUS-SUPER B)             -3LAP 

エリート女子
1位 キャサリン・コンプトン(アメリカ、プラネットバイク)   40'59"
2位 ハンカ・クプファーナーゲル(ドイツ)            +18"
3位 マリアンヌ・フォス(オランダ、ネーデルランド・ブロイト)  +31"
4位 サンヌ・ファンパーセン(オランダ)             +51"
5位 カトリーナ・ナッシュ(チェコ、ルナプロチーム)      +1'01"
34位 豊岡英子(パナソニックレディース)            +6'12"

text&photo:Sonoko Tanaka