イタリアの名門ブランド「ボッテキア」が2010年、アックア・エ・サポーネチームに供給したモデルがこのSP9だ。エースであるステファノ・ガルゼッリが超難関のプラン・デ・コロネス山岳ステージTTで優勝した時に駆ったバイクも、もちろんSP9だった。一見、エアロ系バイクのような形状だが、ジロの山岳を制したという事実からもわかる通り、上りでも抜群の性能を発揮する軽量・高性能バイクだ。

ボッテキアSP9 TEAMボッテキアSP9 TEAM (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp

2010年からイタリアのアックア・エ・サポーネチームをサポートしているボッテキア。しかし新しいブランドではなく、日本のファンでもかつてグレッグレモンが駆って1989年のツール・ド・フランスを制したことに想いを馳せる人は多いことだろう。

ブランドの創設は1909年。今年で創業102年を迎えた北イタリアはヴェネチアの工房だ。ボッテキアの名前は、ツール・ド・フランスをかつて2度制したオッタビオ・ボッテキアに由来する。

特徴的な突起を持つヘッドチューブ特徴的な突起を持つヘッドチューブ 美しいフォルムを見せるリヤビュー。トップチューブからシートステーにかけては滑らかな曲線でつながる美しいフォルムを見せるリヤビュー。トップチューブからシートステーにかけては滑らかな曲線でつながる


そのボッテキアが2010年にアックア・エ・サポーネに供給するモデルが、ここに紹介するSP9だ。「SID」と名付けられたエアロ形状のインテグラルシートポストを採用し、軽量化と高剛性化を両立したモデルだ。

「エアロ形状のインテグラルシートポスト」というと、平坦に的を絞った高速走行モデルと勘違いされてしまうかもしれないが、このSP9は平坦から山岳まで何でもこなせる万能選手として仕上げられている。事実、2010年のジロ・デ・イタリアでは、エースのステファノ・ガルゼッリがSP9を駆って山岳のタイムトライアルステージを制覇。その高いポテンシャルを証明してみせた。

1Kカーボンのモノコックフロントフォーク1Kカーボンのモノコックフロントフォーク シートチューブはタイムトライアルバイクのような形状だシートチューブはタイムトライアルバイクのような形状だ ショック吸収性に富んだシートステーショック吸収性に富んだシートステー


フレーム素材は東レの1Kカーボンだ。フォークにも1Kカーボンのモノコックを組み合わせる。フレーム単体重量はインテグラルシートポストも含めて1200gと超軽量。パーツの組み合わせ次第では、UCI(国際自転車競技連合)が定める最低重量6.8kgを下回る軽さになってしまうだろう。

ヘッドは上下とも1-1/8"だが、トップチューブとダウンチューブから伸びるリブを設けることにより、剛性アップを果たしている。このリブはヘッドチューブの前で合わさって特徴的な突起を形成しているが、これは剛性アップだけでなく、空気抵抗の低減にも一役買っているという。

トップチューブにはアックア・エ・サポーネチームのロゴが入るトップチューブにはアックア・エ・サポーネチームのロゴが入る パワー伝達効率のよいチェーンステーパワー伝達効率のよいチェーンステー


ガルゼッリ曰く「上りを飛ぶために生まれたバイク」であるSP9。日本でのサイズ展開は44、48、51、54cmの4種、カラーリングはホワイト×レッド×カーボン、ホワイト×ブルーのほか、アックア・エ・サポーネチームが2010年に使用した「チームレプリカ」も用意される。

イタリア製であることを示すエンブレムがダウンチューブに輝くイタリア製であることを示すエンブレムがダウンチューブに輝く トップチューブからシートステーにかけては滑らかな曲線でつながるトップチューブからシートステーにかけては滑らかな曲線でつながる エアロ形状をしたインテグラルシートポストエアロ形状をしたインテグラルシートポスト


そんな最先端モデル、ボッテキア・SP9をテストするのは、元プロサイクリストの三船雅彦と自転車ジャーナリストの仲沢隆。果たしてその実力はどのようなものだったのだろうか? さっそくインプレッションをお届けしよう!





―インプレッション

「レーシングバイクとして完成された性能」
三船雅彦(元プロサイクリスト)


「レーシングバイクとして完成されている」三船雅彦「レーシングバイクとして完成されている」三船雅彦 本当に走りの軽いバイクだ。踏み出しからスーッとスピードに乗り、ペダルに力を加えると、想定以上にグイグイ加速していくフィーリングなのだ。高速走行時の安定感も素晴らしい。実にレーシングバイクらしい味付けである。

エアロ系のマッチョなフォルムをしているが、予想外に上りの性能が良かった。ダンシングでの振りはそれほど軽いと感じなかったのだが、とにかく走りの軽さが格別だ。
シッティングで回しながら一定ペースで踏んでいく時のフィーリングは文句なし。ガルゼッリがこのバイクでジロの山岳ステージを制したというのも納得できる。

外見上は硬いフレームという印象だが、実際に乗ってみるとレーシングバイクとして必要な振動吸収性もちゃんと確保されている。トップチューブやシートステーだけでなく、ダウンチューブにも緩い曲げが施されているが、この辺の設計が絶妙な乗り味を生み出しているのだろう。

全体のフォルムは実にグラマラスだ。ダウンチューブのカーブ、シートチューブのエアロ形状、ヘッドの突きだした形状など、どれをとってもカーボンらしい造形である。現代的でアバンギャルドなデザインという点でも評価したくなるバイクだといえるだろう。個人的にも、このバイクの造形は大好きだ。

さすがアックア・エ・サポーネチームが選んだバイクだ。レーシングバイクとして完成されている。もし僕がまだ現役選手で、このバイクを渡されたならば何の不満もなくこのバイクに乗ることが出来る。いや、それどころか、大喜びしてこのバイクに乗るだろう。

唯一難点を挙げるとしたら、インテグラルシートポストだろうか? やはり、このタイプのシートポストは微調整がしづらいので、プロの実戦で使うのにはノーマルシートポストのバイクの方が扱いやすいだろう。ただし、このバイクのインテグラルシートポストはとてもリジッドな感じで作られているので、シッティングでパワーをかけて踏み込むようなシチュエーションでは非常に安定したペダリングを約束してくれそうだ。

オススメしたいのは、やはりレース指向の人だ。レーシングバイクとしてのツボを完全に押さえているバイクだから、ホビーレースに参加するようなベテランライダーが乗ってこそ、その真価が発揮されるだろう。



「シッティングでトルクをかけた時にグイグイ伸びる」
仲沢 隆(自転車ジャーナリスト)


シートチューブの形状やエアロタイプのインテグラルシートポストなど、平坦の高速走行を意識したような形状のバイクだが、意外や意外、上りの性能がとても良かった。ガルゼッリがこのバイクを駆り、ジロの山岳ステージを制したというが、確かにこの軽い上りでの挙動は山岳ステージで威力を発揮したことだろう。

特に良いと感じたのは、シッティングでグイグイとトルクをかけるようなペダリングをした時だ。エアロ形状のインテグラルシートポストは剛性が高く、体重のあるライダーがパワーをかけてもビクともしないのである。

最近のスローピングフレームで細い27.2mmのカーボンシートポストを長く出しているバイクなど、パワーをかけたペダリングでフレームではなくシートポストのしなりが感じられることがあるが、SP9ではそれがないのだ。この乗り味はキツい上りにおいてトルクをかけて上る時にありがたい。とにかくグイグイと上ってくれるフィーリングだ。

「シッティングでトルクをかけた時にグイグイ伸びる」仲沢 隆「シッティングでトルクをかけた時にグイグイ伸びる」仲沢 隆

ショック吸収性はイマイチなのかなと思ったが、これも意外や意外、レーシングバイクとして適度なショック吸収性がしっかりと確保されている。緩く湾曲したトップチューブやシートステー、ダウンチューブがしっかりと働いているのだろう。実に上手い設計である。

ハンドリングは直進安定性重視の味付けだ。これはヨーロッパのロードバイク全般にいえることなのだが、手放しで乗ってもどこまでもまっすぐに走っていける安定したハンドリングである。かといって、タイトなコーナーが連続するようなところも難なくこなしてくれる。ニュートラルなハンドリングなので、思い通りのラインを描くことができ、安心してコーナーに突っ込んでいけるのだ。

ブレーキング時の挙動も秀逸だった。下りのハイスピードからのフルブレーキングでも、フレームが暴れてしまうようなことはなく、何もなかったかのようにグッと止まってくれる。さすがプロチームの実戦で鍛え上げられたバイクだ。これならばドロミテやアルプス、ピレネーの下りでも、何ら不安感を覚えることはないだろう。

レース指向の人が乗ってこそ生きるフレームであると思うが、とにかく完成度が高いので、週末のロングライドなどに使う人が乗っても「うん、良いバイクだな」と実感できるだろう。それどころか、初心者が乗っても満足感が得られるはずだ。

予算さえ許せば、万人が乗って良さが感じられるフレームであると思う。イタ車が気になる人にとって、実に魅力的は選択肢が増えたといえるだろう。




ボッテキアSP9 TEAMボッテキアSP9 TEAM (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp

ボッテキアSP9

フレーム:東レ 1Kカーボン、「SID」インテグレイテッド・ダイナミック・システム
フォーク:1Kカーボンモノコック
フレーム単体重量:1200g(インテグラルシートポストを含む)
サイズ:44、48、51、54cm
カラー:ホワイト×レッド×カーボン、ホワイト×ブルー、チームレプリカ
価格:デュラエース完成車 859,950円
カンパニョーロ・コーラス完成車 649,950円
カンパニョーロ・アテナ完成車 649.950円(チームレプリカは670,950円)
アルテグラ完成車 576,450円(チームレプリカは597,450円)
フレームセット 429,450円(チームレプリカは450,450円)





インプレライダーのプロフィール

三船雅彦(元プロサイクリスト)三船雅彦(元プロサイクリスト) 三船雅彦(元プロサイクリスト)

9シーズンをプロとして走り(プロチームとの契約年数は8年)プロで700レース以上、プロアマ通算1,000レース以上を経験した、日本屈指の元プロサイクルロードレーサー。入賞回数は実に200レースほどにのぼる。2003年より国内のチームに移籍し活動中。国内の主要レースを中心に各地を転戦。レース以外の活動も精力的に行い、2003年度よりJスポーツのサイクルロードレースではゲスト解説を。特にベルギーでのレースにおいては、10年間在住していた地理感などを生かした解説に定評がある。2005年より若手育成のためにチームマサヒコミフネドットコムを立ち上げ、オーナーとしてチーム運営も行っている。
過去数多くのバイクに乗り、実戦で闘ってきたばかりでなく、タイヤや各種スポーツバイクエキップメントの開発アドバイザーを担う。その評価の目は厳しく、辛辣だ。選手活動からは2009年を持って引退したが、今シーズンからはスポーツバイク普及のためのさまざまな活動を始めている。ホビー大会のゲスト参加やセミナー開催にも意欲的だ。
マサヒコ・ミフネ・ドットコム


仲沢 隆(自転車ジャーナリスト)仲沢 隆(自転車ジャーナリスト) 仲沢 隆(自転車ジャーナリスト)

ツール・ド・フランスやジロ・デ・イタリアなどのロードレースの取材、選手が使用するロードバイクの取材、自転車工房の取材などを精力的に続けている自転車ジャーナリスト。ロードバイクのインプレッションも得意としており、乗り味だけでなく、そのバイクの文化的背景にまで言及できる数少ないジャーナリストだ。これまで試乗したロードバイクの数は、ゆうに500台を超える。2007年からは早稲田大学大学院博士後期課程(文化人類学専攻)に在学し、自転車文化に関する研究を数多く発表している。





text:Takashi.NAKAZAWA
photo:Makoto.AYANO
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