本格始動したツアー・ダウンアンダー。平坦コースで行なわれた第1ステージは、またもやマシュー・ゴス(オーストラリア、HTC・ハイロード)の手に落ちた。前哨戦クリテリウムに続く連勝を飾ったゴスは黄土色のオーカージャージを獲得。チームメイトのマーク・カヴェンディッシュ(イギリス)はスプリントに絡めず62位に終わった。

注目を集めるタイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・サーヴェロ)注目を集めるタイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・サーヴェロ) photo:Kei Tsujiアデレード近郊のモーソン・レイクスを出発し、緩やかな丘陵地帯を抜けてアンガストンを目指す138kmの旅程。終盤には29kmの周回コースを2周半し、緩斜面を駆け上がってアンガストンにゴールする。19チーム・133名の選手が熱く乾いたコースに繰り出した。

今年も初日からエウスカルテルとUniSAオーストラリアが積極的に動く。小高い丘の上に設定されたKOM(山岳ポイント)でエウスカルテルが攻勢に出たが、アデレード出身のルーク・ロバーツ(オーストラリア、UniSAオーストラリア)が抑え込んで先頭通過。その後メイン集団に吸収される。

KOMで動きを見せるトーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユ)KOMで動きを見せるトーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユ) photo:Kei Tsuji断続的なアタックの末に、マチュー・ペルジェ(フランス、アージェードゥーゼル)が飛び出し、ゴルカ・イサギーレ(スペイン、エウスカルテル)、ミゲル・ミンゲス(スペイン、エウスカルテル)、ルーク・ロバーツ(オーストラリア、UniSAオーストラリア)、ミッチェル・ドッカー(オーストラリア、UniSAオーストラリア)、サイモン・クラーク(オーストラリア、アスタナ)が合流して逃げグループを形成。メイン集団はこの5名の動きを見送った。

ベアト・グラブシュ(ドイツ、HTC・ハイロード)がプロトンを牽引ベアト・グラブシュ(ドイツ、HTC・ハイロード)がプロトンを牽引 photo:Kei Tsuji穏やかにアップダウンを繰り返すワインディングロードでタイム差は4分まで拡大。HTC・ハイロード、チームスカイ、オメガファーマ・ロットの3チームが集団コントロールを担い、ゴール地点アンガストンの周回コースが近づくとタイム差を2分に抑え込んだ。

途中設定された2つのスプリントポイントはドッカーとペルジェが獲得。しかしマイケル・ロジャース(オーストラリア、チームスカイ)やベアト・グラブシュ(ドイツ、HTC・ハイロード)の献身的な集団牽引によりタイム差は縮まるばかり。ガーミン・サーヴェロがこれに加わると、タイム差の縮小は加速した。

最後まで諦めないクラークもゴールまで距離を残して吸収。ブドウ畑に囲まれたアンガストンに向かう緩斜面でスプリンターチームはハイスピードバトルを繰り広げ、HTC・ハイロードが主導権を握ってラスト1kmを通過。

ワイン畑の中を進む逃げグループワイン畑の中を進む逃げグループ photo:Kei Tsuji

補給ポイントを通過するサイモン・クラーク(オーストラリア、アスタナ)ら補給ポイントを通過するサイモン・クラーク(オーストラリア、アスタナ)ら photo:Kei Tsuji発射台役マーク・レンショー(オーストラリア)のすぐ後ろ、スプリントのポールポジションを獲得したのはカヴェンディッシュではなくゴスだった。

リクイガスやラボバンクの攻撃に耐えたレンショーはラスト250mでゴスを発射。その後方からアンドレ・グライペル(ドイツ、オメガファーマ・ロット)やロビー・マキュアン(オーストラリア、レディオシャック)が追い上げる展開に。

グライペルを振り切ったマシュー・ゴス(オーストラリア、HTC・ハイロード)が先頭でゴールへグライペルを振り切ったマシュー・ゴス(オーストラリア、HTC・ハイロード)が先頭でゴールへ photo:Kei Tsuji最終コーナーを抜け、フィニッシュラインを一目見たゴスは頭を下げてペダルを踏み込む。昨年圧倒的な力を見せたグライペルの力を持ってしてもゴスには届かない。ゴスは他の追随を許さないままガッツポーズを決めた。

「今日は上り基調のスプリントで、しかもアンドレ(グライペル)がすぐ後ろにいたので少し焦った。でもマーク(レンショー)のリードアウトは完璧だった。追いすがるアンドレを振り切れたし、本当に満足している」ゴール直後のインタビューで興奮気味のゴスはそう語った。

連勝を飾ったマシュー・ゴス(オーストラリア、HTC・ハイロード)連勝を飾ったマシュー・ゴス(オーストラリア、HTC・ハイロード) photo:Kei Tsujiゴスは今シーズン1勝目。UCI(国際自転車競技連合)公認レースではないジェイコ・ベイクラシックでのステージ優勝とキャンサーカウンシル・クラシックの勝利を合わせるとこれが今シーズン4勝目だ。

ゴスはステージ優勝に伴うボーナスタイム10秒を獲得して総合首位に立ち、オレンジを少し薄めたような色調のオーカージャージ(総合リーダージャージ)に袖を通した。レンショーのリードアウトを差し引いても、ゴスのスプリント力&コンディションは頭一つ出ている。期待されるのは総合優勝だ。

リーダージャージに袖を通したマシュー・ゴス(オーストラリア、HTC・ハイロード)リーダージャージに袖を通したマシュー・ゴス(オーストラリア、HTC・ハイロード) photo:Kei Tsuji「もちろんこの総合リードを守りたい。でもまだまだレースはこれから。厳しいステージも待っているし、一日一日をしっかり走って様子を見たい。チーム力は抜群で、ステージ優勝を狙えるのは自分だけではない。日曜日(最終日)にチームの誰かがこのジャージを着ていることを願っているよ」

グライペルとの直接対決が期待されていたカヴェンディッシュは集団後方の62位でフィニッシュ。カヴェンディッシュは報道陣の質問を「今日はただスプリントに絡めなかっただけ」と受け流す。「チームメイトが勝って今晩シャンパンを飲めればそれで満足。何よりもチームが勝つことが大事」そんなコメントを残すカヴェンディッシュの様子からは焦りを感じない。

第2ステージはテーレム・ベンドからマナムまでの、今大会最長146kmで行なわれる。ラスト25kmはほぼ真っ平らであり、第1ステージ以上にハイスピードなスプリントバトルに注目したい。

ツアー・ダウンアンダー2011第1ステージ結果
1位 マシュー・ゴス(オーストラリア、HTC・ハイロード)       3h17'08"
2位 アンドレ・グライペル(ドイツ、オメガファーマ・ロット)
3位 ロビー・マキュアン(オーストラリア、レディオシャック)
4位 クリストファー・サットン(オーストラリア、チームスカイ)
5位 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)
6位 ロメン・フェイユ(フランス、ヴァカンソレイユ)
7位 アレッサンドロ・バッラン(イタリア、BMCレーシングチーム)
8位 イニャキ・イサーシ(スペイン、エウスカルテル)
9位 ホセホアキン・ロハス(スペイン、モビスター)
10位 グレゴリー・ヘンダーソン(ニュージーランド、チームスカイ)

個人総合成績
1位 マシュー・ゴス(オーストラリア、HTC・ハイロード)       3h16'58"
2位 アンドレ・グライペル(ドイツ、オメガファーマ・ロット)       +04"
3位 ロビー・マキュアン(オーストラリア、レディオシャック)       +06"
4位 ミッチェル・ドッカー(オーストラリア、UniSAオーストラリア)    +07"
5位 マチュー・ペルジェ(フランス、アージェードゥーゼル)
6位 サイモン・クラーク(オーストラリア、アスタナ)
7位 ミゲル・ミンゲス(スペイン、エウスカルテル)
8位 クリストファー・サットン(オーストラリア、チームスカイ)      +10"
9位 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)
10位 ロメン・フェイユ(フランス、ヴァカンソレイユ)

新人賞
マシュー・ゴス(オーストラリア、HTC・ハイロード)

スプリント賞
マシュー・ゴス(オーストラリア、HTC・ハイロード)

山岳賞
ルーク・ロバーツ(オーストラリア、UniSAオーストラリア)

敢闘賞
サイモン・クラーク(オーストラリア、アスタナ)

text&photo:Kei Tsuji in Adelaide, Australia