アルベルト・コンタドール(スペイン)はドーピング疑惑の早期解決に期待を込める。疑惑が払拭された場合、コンタドールはサクソバンクのリーダーとして、1年に3つのグランツールに出場し、全て総合優勝を狙うと意気込んでいる。

2008年ジロ・デ・イタリアで総合優勝したアルベルト・コンタドール(スペイン)2008年ジロ・デ・イタリアで総合優勝したアルベルト・コンタドール(スペイン) photo:Cor Vos「早く問題が解決することを強く期待している」。コンタドールはフランスのレキップ紙にそうコメントしている。「必要書類は全て揃った。抜かりは無いはずだ。あとは科学的にデータが証明されれば」。

コンタドールの弁護団は先月26日、スペイン自転車競技連盟の懲罰委員会に答弁書を提出した。コンタドールが無実を訴えているのは、ツール・ド・フランス期間中の7月21日に検出されたクレンブテロールの陽性反応。仮に訴えが認められなければ、コンタドールはツールのタイトルを失い、2年間の出場停止処分を受ける。

2008年のブエルタ・ア・エスパーニャを制し、グランツール全制覇を果たしたアルベルト・コンタドール(スペイン)2008年のブエルタ・ア・エスパーニャを制し、グランツール全制覇を果たしたアルベルト・コンタドール(スペイン) photo:Cor Vos問題となったのは、主に減量目的や気管支拡張剤として処方されるクレンブテロール。かつては赤身肉を作るために家畜の飼料に混ぜられることもあった。

コンタドール側は、ツール期間中にスタッフがスペインから持ち込んだ食肉がクレンブテロールに汚染されていたと主張している。

今年3度目のツール制覇を果たしたアルベルト・コンタドール(スペイン)今年3度目のツール制覇を果たしたアルベルト・コンタドール(スペイン) photo:Makoto Ayanoしかしコンタドールが食した肉がクレンブテロールに汚染されていた可能性は低い。人間への毒性が確認されたため、1996年にEU(欧州連合)が肉牛へのクレンブテロールの使用を全面的に禁止しているのだ。今でも定期的に検査が行なわれており、2008年から2009年にかけて83,203頭の家畜に対して検査を実施。陽性反応が検出されたのは僅かに1頭で、しかもそれはスペイン産の肉牛ではなかった。

9月30日にクレンブテロールの陽性が発覚してから、コンタドールは比較的静かに状況を見守っている。「今は難しい時期だ。判断が下されるのを待ち続けている。結論が出るまで、メディアに露出する必要はない。早期解決が理想的だけど、事態はとても複雑なんだ。自分に有利な展開になるよう望んでいる」。

サクソバンクのビャルヌ・リース監督サクソバンクのビャルヌ・リース監督 photo:Makoto Ayanoサクソバンクのチームマネージャーを務めるビャルヌ・リースは、コンタドールを支持し続けている。コンタドールはサクソバンクと900万ユーロ(約10億円)で2年契約を結んだ。もちろんそれはドーピング疑惑発覚前の話だ。

コンタドールは、今月上旬にスペイン・フエルテベントゥーラで行なわれたサクソバンクのトレーニングキャンプに参加。そこで来シーズンのチームメイトたちと顔を合わせた。

リース監督はコンタドールを迎え入れる準備を進めたいと語る。「チームにとって彼の存在意義は大きい。彼がいなければ、チーム構想は完成しない。アルベルトは尊敬に値する男だ。彼を信じている。チームの誰もが彼の立ち位置を理解している。2011年のチームリーダーとして彼を迎え入れたい」。

スペイン自転車競技連盟が判断を下すのは、早くて来年の1月か2月。それまでコンタドールは待ち続けなければならない。コンタドール側がCAS(スポーツ仲裁裁判所)に上訴した場合は、夏までレースに出場できない事態も起こり得る。

「アルベルトに必要なのは、リラックスして状況を見守ること。自分の力で事態を打開することはできない。とにかく公平に決定がなされることを望む。処分が下されたとしても、彼が有罪と決まったわけじゃない」。リース監督にとっても苦悩の日々が続く。

仮にその疑いが晴れ、レース出場が可能になった場合、コンタドールは1年で3つのグランツール全てに出場し、総合優勝を狙う意向を示している。コンタドールは2008年からの2年間でグランツール全制覇を達成。しかし未だかつて、1年間でジロ・デ・イタリア、ツール・ド・フランス、ブエルタ・ア・エスパーニャを制した選手はいない。

「出場停止処分が下された場合、ロードレースを続行するかどうか分からない」。仮に処分が下されれば、コンタドールは引退も辞さない構えだ。

text:Gregor Brown
translation:Kei Tsuji

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