2010年11月21日、国内唯一のUCIレースである関西シクロクロス第2戦が滋賀県高島市マキノ高原で開催された。C1は小坂正則(スワコレーシングチーム)との稀に見る接戦を制した辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー)が優勝。CL1はシーズン初戦の豊岡英子(パナソニックレディース)が制した。

丘の上からはコース全体が見渡せる丘の上からはコース全体が見渡せる photo:Kei Tsuji滋賀県北部に位置するマキノ高原で、国内で唯一のUCI(国際自転車競技連合)登録レースが行なわれた。会場は大阪から約2時間というロケーション。全カテゴリーを合わせて330名がエントリーした。

スキー場の緩やかな斜面を利用したコースの大半は草地で、路面は重い。昨年まで「マキノ名物」として選手たちを恐れさせた63段の階段はコースから外され、代わりに短い階段が2つ加わった。急勾配の登りも設定されており、選手たちからは「休み所の無いタフなコース」と嘆きの声がこぼれた。

世界選手権代表セレクションレースの一戦でもあり、全日本選手権並みの豪華なメンバーが集結した。全日本チャンピオンの辻浦圭一はもちろんのこと、長野県から参戦の小坂親子、1週間前に金沢県キゴ山で開催されたセレクションレース第1戦で優勝した丸山厚(MASSA-FOCUS-OUTDOORPRODUCTS)が参戦。更には、直前にヨーロッパから帰国したばかりの竹之内悠(Team Eurasia Museeuw Bikes)や、今年のJサイクルツアー年間王者で、ジャパンカップで日本人として13年振りに表彰台に上った畑中勇介(シマノレーシング)、日本屈指のヒルクライマーである筧五郎(イナーメ信濃山形)らが顔を揃えた。

C1 選手たちを苦しめた階段区間C1 選手たちを苦しめた階段区間 photo:Kei TsujiC1 1週間前の北陸クロスを制している丸山厚(MASSA-FOCUS-OUTDOORPRODUCTS)C1 1週間前の北陸クロスを制している丸山厚(MASSA-FOCUS-OUTDOORPRODUCTS) photo:Kei Tsuji畑中勇介(シマノレーシング)今季クロス初参戦畑中勇介(シマノレーシング)今季クロス初参戦 photo:Hideaki.TAKAGI

C1 辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー)らを先頭にスタートC1 辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー)らを先頭にスタート photo:Kei Tsuji当日の天候は晴れ。11月下旬のスキー場とは思えない陽気で、気温は20度近くまで上昇した。

レースは開始早々ナショナルチャンピオンジャージを着る辻浦圭一がリード。これに小坂正則(スワコレーシングチーム)と小坂光(宇都宮ブリッツェン)、丸山厚、竹之内悠、筧五郎が食らいつき、先頭パックを形成して1周目を終了。やがて竹之内悠と筧五郎がそれぞれ遅れ、先頭は4名に絞られた。

C1 丸山厚(MASSA-FOCUS-OUTDOORPRODUCTS)が先頭グループのペースを上げるC1 丸山厚(MASSA-FOCUS-OUTDOORPRODUCTS)が先頭グループのペースを上げる photo:Kei Tsuji懸命にペースを上げたのは小坂正則と丸山厚。少し距離が開く場面も見られたが、辻浦圭一は落ち着いて状況をコントロール。すると小坂光が遅れ、レースが半分を経過する頃には先頭は3名(辻浦、小坂、丸山)に。

その後も接戦の我慢比べが続き、丸山厚が脱落すると、レースは辻浦圭一と小坂正則の一騎打ちの様相を呈す。ペースを落とした丸山厚の後方には小坂光が迫り、こちらも接戦の表彰台争いが繰り広げられた。

互いにアタックを仕掛けて揺さぶる辻浦圭一と小坂正則。しかし2人の力は拮抗し、決定的な距離が広がらない。コーナー毎に先頭が入れ替わる接戦の末、上り基調の最終ストレートでのスプリントバトルに持ち込まれた。

C1 5周目で先頭は小坂正則(スワコレーシングチーム)、辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー)、丸山厚(MASSA-FOCUS-OUTDOORPRODUCTS)の3名にC1 5周目で先頭は小坂正則(スワコレーシングチーム)、辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー)、丸山厚(MASSA-FOCUS-OUTDOORPRODUCTS)の3名に photo:Kei TsujiC1 3番手の丸山厚(MASSA-FOCUS-OUTDOORPRODUCTS)に小坂光(宇都宮ブリッツェン)が合流C1 3番手の丸山厚(MASSA-FOCUS-OUTDOORPRODUCTS)に小坂光(宇都宮ブリッツェン)が合流 photo:Kei TsujiC1 競り合う小坂正則(スワコレーシングチーム)と辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー)C1 競り合う小坂正則(スワコレーシングチーム)と辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー) photo:Kei Tsuji

C1 徐々に順位を上げる畑中勇介(シマノレーシング)C1 徐々に順位を上げる畑中勇介(シマノレーシング) photo:Kei Tsuji]テクニカルな最終コーナーを抜けて2人のスプリントが始まる。伸びのあるスプリントで先行した辻浦圭一が、追いすがる小坂正則を振り切って勝利。歓喜の表情でゴールラインを駆け抜けた。

体調不良のため、1週間前のセレクションレース第1戦で5位に沈んでいた辻浦圭一。何とかコンディションを戻し、UCIレースに合わせてきた。それだけにゴール後の喜びも一入の様子。

C1 最終周回で激しい攻防を繰り広げる小坂正則(スワコレーシングチーム)と辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー)C1 最終周回で激しい攻防を繰り広げる小坂正則(スワコレーシングチーム)と辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー) photo:Kei Tsuji「今日は本当に小坂正則選手が強かった。しばらく体調を崩していたので、前半は脚が動かなかった。中盤から攻めの走りに切り替えたんですけど、小坂選手が強くて先が読めず、ヒヤヒヤしました。ゴール直前まで諦めずに踏んだことが勝利に繋がったのだと思います」。

期待されるのは3週間後に迫った全日本選手権での大会9連覇。全日本の会場は昨年UCIレースが開催された滋賀県野洲市のビワコマイアミランドだ。辻浦圭一は「体調不良を抜け出したので、これからコンディションは上がって行くと思います」とコメントしている。

C1 小坂正則を振り切った辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー)が先頭でゴールC1 小坂正則を振り切った辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー)が先頭でゴール photo:Kei Tsuji3位に入ったのは、丸山厚との接戦を制した小坂光。4日前のトレーニング中に落車し、腰を痛めながらの参戦。しかし安定感のある走りで表彰台を射止めた。ロードレースから、パワー系の走りを必要とするシクロクロスに徐々にカラダを慣らしている様子だ。

スタート直後に落車して順位を下げ、手や腰に怪我を負いながらも、中盤にかけてペースを上げた畑中勇介は6位。「コーナリングのテクニックで差が出ました。60分のレースは長い。45分を過ぎると集中力も切れてしまった。今度はチームメイトを連れてきたいと思います」。オフシーズンのトレーニングとして、今シーズンは4戦ほどシクロクロスに出場する予定だ。

C1 激しい闘いを繰り広げた小坂正則(スワコレーシングチーム)と辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー)が握手C1 激しい闘いを繰り広げた小坂正則(スワコレーシングチーム)と辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー)が握手 photo:Kei Tsuji

CL1 2周目から独走を開始した豊岡英子(パナソニックレディース)CL1 2周目から独走を開始した豊岡英子(パナソニックレディース) photo:Kei TsujiCL1は全日本チャンピオンの豊岡英子(パナソニックレディース)と福本千佳(Ready Go JAPAN大阪履正社)が1周目からレースをリード。膝に故障を抱える福本千佳は伸びず、豊岡英子がゴールまで独走した。

今シーズン初戦で勝利した豊岡英子は、辻浦圭一と同様、3週間後の全日本選手権ではタイトルを守る立場にある。全日本6連覇に向けて「これから毎週レースに出場してコンディションを上げて行きたい」と意気込んだ。

関西シクロクロスの次戦は、12月5日に京都府福知山市由良川で開催。同日、セレクションレース第3戦にあたる信州シクロクロス第5戦が長野県諏訪市霧が峰高原で開催される予定だ。

レースの模様はフォトギャラリーで!

C1(10周回)
1位 辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー)1h00'54"
2位 小坂正則(スワコレーシングチーム)+01"
3位 小坂光(宇都宮ブリッツェン)+25"
4位 丸山厚(MASSA-FOCUS-OUTDOORPRODUCTS)+30"
5位 竹之内悠(Team Eurasia Museeuw Bikes)+2'26"
6位 畑中勇介(シマノレーシング)+3'14"
7位 大塚潤(GRUPPO ACQUA TAMA)+3'16"
8位 池本真也(和光機器タムラクラブ)+3'35"
9位 松井正史(シマノドリンキング)+5'06"
10位 木村圭祐(京都産業大学)+5'12"

CL1(5周回)
1位 豊岡英子(パナソニックレディース)36'37"
2位 福本千佳(Ready Go JAPAN大阪履正社)+1'46"
3位 宮内佐季子(CLUB Viento)+3'22"
4位 中道のぞみ(Salata bianca kobe)+4'40"
5位 埜真 賢美(Teamクルーズ)+4'50"

C2(6周回)
1位 中井路雅(瀬田工業高校)40'53"
2位 中西重智(龍谷大学)+1'12"
3位 中原学(Bike Team回転木馬)+1'42"
4位 中澤道継(三上山林道クラブ)+1'48"
5位 森圭司(つうばいつうR) +2'06"

CM1(6周回)
1位 大河内二郎(シルクロード)43'21"
2位 佐野光宏(ストラーダR)+16"
3位 筧太一(イナーメ信濃山形)+28"
4位 吉中和彦(Euro-Works)+1'16"
5位 巳波一郎(Euro-Works)+1'38"

text:Kei Tsuji
photo:Kei Tsuji, Hideaki Takagi