11月3日、東松山市のシクロパビリオンにおいてエキップアサダの2011年体制発表会が行われた。来シーズンより非UCI登録国内チームとしてレース活動を再開すること、シクリズムジャポンとして多角的な経営を目指しながら若手の育成にシフトして活動することなどを発表した。

パソコンを手元に説明する浅田 顕パソコンを手元に説明する浅田 顕 (c)Makoto.AYANO

体制発表会に集まった人たち体制発表会に集まった人たち (c)Makoto.AYANO午後4時、メディアやサポーターがシクロパビリオンに入りきらないほど集まったなか、発表会の席についたのは浅田顕代表と補佐役の広報担当・山崎健一氏。レース活動を休止した2010年、そして現在構築中の2011年の体制、そしてその将来の方向性を説明した。

国内での自転車熱の高まり、そして自らがかつて育成に携わった新城幸也(Bboxブイグテレコム)や別府史之(レディオシャック)の世界に通用する成長ぶり。いくつかの明るい材料を提示しながらも、浅田顕がレース活動休止期間中にもっとも強く感じたのは、「若手を育成する仕組みが日本にはないこと」だった。
そして再びそれを自分の手でやることこそがエキップアサダの役割であり、ツール・ド・フランスにつながる道であることを説明した。

若手をイチから育てるクラブチームとしての再発足

2011年、エキップアサダはレースに戻ってくるが、非UCI登録の国内クラブチームとして活動する。2010年にエカーズとして育成をはかった選手を基礎に、トライアウト(選手登用テスト)などで選抜した選手を加え、若いチームとして発足する。かつて所属した選手たちを呼び戻すことはしない。

UCIコンチネンタルチームとしての登録をせずに、クラブチームとして活動するが、Jサイクルツアーなどに出場できるように実業団登録はする。

桜吹雪がデザインされたエキップアサダカー桜吹雪がデザインされたエキップアサダカー (c)Makoto.AYANOメンバーは6~8名。監督1、コーチ1、メカニック1、マッサー1名という規模を予定。東松山のシクロパビリオンと、フランスのトゥールーズにあるチームハウスの2箇所を拠点とし、日本と欧州で活動する。
欧州40レース、日本国内20レースへの出場を予定している。

非UCI登録のチームとして活動するのは、登録すると海外で選手を活動させる場合に支障があるのも理由の一つだ。UCI登録チームに所属する選手は、他のチームのユニフォームで走ることはできない。チームでの選手の貸し借りができないということは、海外のクラブチームに選手を派遣して走らせる場合に支障となるからだ。その自由度を重視したという。

かつての選手を呼び戻さない 

浅田氏は近年の方向性として、「かつての選手を呼び戻さない」という考え方を説明した。新城幸也(Bboxブイグテレコム)、TEAM NIPPOに行った宮澤崇史、ブリヂストンアンカーで走る清水都貴、クムサン・ジンセン・アジアを立ち上げた福島晋一など、かつてエキップアサダを構成した選手たちを呼び戻す考えはないということを。

浅田氏は、「2010年度の1年間のレース活動休止期間中に、将来(ツール・ド・フランス)につながる道を探した際に、本当にそこに到達するには、次の世代につながることをしなければダメだということに気づいた」と言う。現在選手登用のために行っているトライアウトでも、可能性を感じる選手候補が何人も見つかった。強化活動として、可能性ある選手を育て、経験を積ませる。そのための欧州拠点は維持することができた。そして現在のブイグテレコム(ヴァンデ・シクリズム)などといった欧州プロチームと根元からコラボレーションできるつながりと経験がある。

2010年にはヴァンデ・シクリズム代表のジャンルネ=ベルノドー氏と密接なつながりをもち、選手を本場フランスで走らせるルートを確保し、プロチーム運営に関するノウハウを吸収した。サテライトチームのヴァンデUとともに活動することもできる。それらの経験は「時がくれば活かせる」、と。

2011年度のレース活動の概要2011年度のレース活動の概要 (c)シクリズムジャポン

クラブチーム構想の概念図クラブチーム構想の概念図 (c)シクリズムジャポンクラブチームとしての広がり 活動の多角化

浅田氏は、上を目指すチームに加え、シクロパビリオンを中心とした「エンジョイ派」のクラブチームの活動の幅を広げる考えだ。シクロパビリオンでは近隣のコースにホビーライダーを案内する講習つきライドや、シクロ軽井沢などのサポート付きチャレンジ型ロングライドが好評だ。自転車に楽しく・上手に乗ることを目的とする人たちの活動も支援していく。それが基盤となって、チームを支える力になる。

チームやシクロパビリオンとして自転車の普及活動や社会貢献活動にも積極的に参加し、「伝えたいことを伝える」メディア活動も重視する。
先日協力した「埼玉サイクリングフェスティバル」など、地域に芽生えつつある自転車を楽しむ流れに協力し、地元「埼玉」で貢献できることに、寄与していく方向を意識して活動していくという考えだ。


「将来ツール・ド・フランスを目指す」ことには変り無し

ここまでに構築したものを追わず、基礎から再び創り上げる。エキップアサダの再出発を説明する説明会には「何年後にツール・ド・フランスを目指す」といった、かつての決まり文句は並ばなかった。しかし、その先にあるものは「日本人を中心としたチームでツール・ド・フランスを目指す」ということには何ら変わりがないという。

浅田氏は「我々は選べる立場でない」としながらも、チーム活動を支えるスポンサーについては、「いつもスポンサーを探している状況だが、今までの活動を支援してくださっているスポンサーさんも、決して宣伝効果だけでなく、チームの将来を目指す姿勢や方向性に共感して支援してくださっている。だからその点は何ら変わらないだろうと思う。ひとつの大スポンサーの名を掲げるのではなく、多くの企業や団体の支援を受けるスタイルにはなると思う」と言う。

シクリズムジャポンの全スタッフシクリズムジャポンの全スタッフ (c)Makoto.AYANOエキップアサダの拠点である東松山市のシクロパビリオンエキップアサダの拠点である東松山市のシクロパビリオン (c)Makoto.AYANO


育成チームのエカーズのジャージ育成チームのエカーズのジャージ (c)Makoto.AYANO2011年所属選手は追って発表される

エキップアサダで走る選手の構成は後日決まり次第発表される見込みだ。エカーズとして走った選手に、トライアウトで発掘した選手など、いずれも若手を中心とした構成になる。主力になると思われていた小森亮平は他チームへと移籍する。「発表しても無名の選手が多いと思います」と浅田氏は言う。

体制発表会の全容については下の動画レポートを御覧ください。

photo&text Makoto.AYANO





エキップアサダ2011体制説明会
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