2010年9月29日から10月3日までの5日間、オーストラリア・メルボルン(メイン会場はジーロング)を舞台にロード世界選手権が開催される。ロードレースに先立って行なわれるのが個人タイムトライアル(エリート男子、エリート女子、U23)。世界最速を決める高速バトルの注目選手をチェックしておこう。

メルボルン近郊のジーロングを舞台にした世界最速決定戦

ロード世界選手権2010エリート男子/女子個人タイムトライアル・コースマップロード世界選手権2010エリート男子/女子個人タイムトライアル・コースマップ image:www.melbourne2010.com.au2010年ロード世界選手権メルボルン大会のメイン会場は、メルボルンの南西75kmに位置するジーロング。人口16万人の地方都市だが、オーストラリア随一の自転車競技が盛んな街として知られている。2009年のツアー・オブ・ジャパンでステージ3勝を飾ったリー・ハワード(オーストラリア)はこのジーロング出身だ。

ロード世界選手権2010エリート男子/女子個人タイムトライアル・コースプロフィールロード世界選手権2010エリート男子/女子個人タイムトライアル・コースプロフィール image:www.melbourne2010.com.au個人タイムトライアルのコースは、ロードレースのゴール地点であるジーロング中心部を発着する22.9km。ロードレースと似通ったコースだが、周回後半の平坦区間が延長されている。個人TTとしては起伏に富んだコース設定。1周の高低差は200mを超える。

エリート男子はこの22.9kmの周回コースを2周(45.8km)、エリート女子は22.9kmを1周。U23のみ平坦区間を短縮した15.9kmの周回コースを2周(31.8km)する。上りはどれも短いが、勾配が10%を超えるものも。重厚なTTスペシャリストがビッグギアを踏んで巡航するハイスピードコースとは言えない。平地独走力だけでなく、登坂力も問われるコースだ。


カンチェラーラの連覇に黄信号?

4度目の世界タイトル獲得を目指すファビアン・カンチェラーラ(スイス)4度目の世界タイトル獲得を目指すファビアン・カンチェラーラ(スイス) photo:Makoto AYANOエリート男子カテゴリーのアルカンシェル最有力選手は、やはりディフェンディングチャンピオンのファビアン・カンチェラーラ(スイス)だろう。

2006年、2007年、2009年大会で優勝しているカンチェラーラは今年、パリ〜ルーベ2勝目、ロンド・ファン・フラーンデレン初優勝、ツール・ド・フランス区間2勝と、その戦歴を一層輝かすことに成功している。

カンチェラーラの対抗馬として期待されるトニ・マルティン(ドイツ)カンチェラーラの対抗馬として期待されるトニ・マルティン(ドイツ) photo:Makoto Ayanoしかし直前のブエルタ・ア・エスパーニャではステージ0勝に終わり、チームとの不仲が取り沙汰されながら後味悪くリタイア。サクソバンクとの契約を1年前倒しで解消することを決めた。コンディションが整っていないとして一時は世界選欠場を臭わせたものの、直前に出場を発表。最速男のメンツにかけても、出場するからには連覇を狙ってくる。

カンチェラーラの対抗馬として注目を集めているのがトニ・マルティン(ドイツ)だ。現ドイツTTチャンピオンの25歳マルティンは、昨年の世界選TTで銅メダル獲得。ツール・ド・スイスでは地元カンチェラーラを敗って個人TTで優勝している。

昨年の大会でカンチェラーラにパスされながらも粘り強く走って銀メダルを獲得したグスタフエリック・ラーション(スウェーデン)昨年の大会でカンチェラーラにパスされながらも粘り強く走って銀メダルを獲得したグスタフエリック・ラーション(スウェーデン) photo:Cor Vosその他、ツアー・オブ・カリフォルニアとエネコツアーでも個人TT制覇(エネコは総合優勝)。ツールでは2つの個人TTでカンチェラーラに次いで2位だった。現在最も力を伸ばしているTTスペシャリストだ。ドイツからは2008年世界チャンピオンのベアト・グラブシュも出場する。

2008年の北京五輪個人TTと2009年ロード世界選個人TTでカンチェラーラに次いで2位だったグスタフエリック・ラーション(スウェーデン)は今年も優勝候補の一角。普段チームメイトのカンチェラーラに今度こそ一矢報いることが出来るか。

ブエルタの最終個人TTで驚きのトップタイムをマークしたピーター・ベリトス(スロバキア)ブエルタの最終個人TTで驚きのトップタイムをマークしたピーター・ベリトス(スロバキア) photo:Unipublicブエルタの第17ステージ個人TTで驚きの優勝を飾り、総合3位に入ったピーター・ベリトス(スロバキア)は双子のマーティンとともにエントリー。カンチェラーラやメンショフ、ラーションをらを敗ったその脚はオーストラリアの地でも炸裂するのだろうか。TTスペシャリストたちが勾配のある上りで苦戦することを考えると、ベリトスにも充分チャンスがある。

デーヴィット・ザブリスキー(アメリカ)やデーヴィット・ミラー(イギリス)、スヴェイン・タフト(カナダ)のガーミン・トランジションズ勢は上位に絡んでくるはず。ちなみに2008年大会2位のタフトは、来季プロツアーチーム入りを目指しているオーストラリアのフライVへの移籍が決まっている。

その他、世界各国からTTスペシャリストたちがオーストラリアに集結。ラテン系3大国のTTチャンピオン、マルコ・ピノッティ(イタリア)、ルイスレオン・サンチェス(スペイン)、ニコラ・ヴォゴンディ(フランス)にも注目したい。

地元オーストラリアの期待を背負って出場するのは、2003年から3年連続で世界チャンピオンに輝いたマイケル・ロジャースと、現ロードレース世界チャンピオンのカデル・エヴァンス。特にロードレースでの2連覇が厳しいと目されているエヴァンスは、この個人TTに闘志を燃やしているはずだ(※エヴァンスはロードレースに専念するためTTを欠場することに。リッチー・ポルトの活躍に期待がかかっている)。なお、カテゴリーを通して日本人選手の個人TTへのエントリーは無い。


群雄割拠のエリート女子

昨年の表彰台、左から2位ノエミ・カンテーレ(イタリア)、優勝クリスティン・アームストロング(アメリカ)、3位リンダ・ヴィルムセン(デンマーク)昨年の表彰台、左から2位ノエミ・カンテーレ(イタリア)、優勝クリスティン・アームストロング(アメリカ)、3位リンダ・ヴィルムセン(デンマーク) photo:Cor Vosエリート女子のアルカンシェル争いは混沌としている。近年最も力を見せていたのはアメリカ。しかし若手の台頭が見られないのが苦しいところだ。昨年2度目の優勝を飾った北京五輪TT金メダリストのクリスティン・アームストロングは引退。2008年大会覇者アンバー・ネーベン(アメリカ)は35歳。ベテランの力でアメリカに3年連続タイトルをもたらすことが出来るだろうか。

昨年2位に入ったノエミ・カンテーレ(イタリア)は母国初のタイトル獲得を目指す。同じく、未だに世界チャンピオンを出せていないオーストラリアは地元でチャンスを掴むか?表彰台の常連ドイツは昨年4位のユーディト・アルントや、現ナショナルロードチャンピオンのシャルロッテ・ベッカーらが有力だろう。

2006年に19歳の若さでロード世界チャンピオンに輝き、シクロクロスやトラック競技のポイントレースでも世界の頂点に立ったマリアンヌ・フォス(オランダ)はその非凡な才能を見せつけることが出来るか。まだ世界選の個人TTでは結果を残していない。


アメリカの新星フィニーの活躍に注目が集まるU23

個人タイムトライアルで強さを発揮するタイラー・フィニー(アメリカ)個人タイムトライアルで強さを発揮するタイラー・フィニー(アメリカ) photo:Cor VosU23の最有力候補は、来季BMCレーシングチームへの移籍を発表したタイラー・フィニー(アメリカ)だ。現アメリカTTチャンピオンのフィニーは、身長193cm・体重82kgという恵まれた体格の持ち主。2009年から2年連続トラック世界選手権個人追い抜きで優勝を飾っている。トラック競技で磨いたTT能力に注目したい。

トラック競技で勢力を増しているオーストラリアは、将来有望なTTスペシャリストを多く輩出している。昨年はジャック・ボブリッジがヨーロッパ勢を蹴散らす最速タイムで優勝した。ボブリッジに続きたいのが、今年のTOJ(ツアー・オブ・ジャパン)第1ステージ個人TTを制したマイケル・マシューズや、トラック世界選手権団体追い抜き銀メダルのローハン・デニス。その選手層は厚い。

シクロワイアードではテキストライブやレースレポートでロード世界選手権をお届け!更に、オーストラリアに飛んだグレゴー・ブラウンと辻啓の現地取材情報盛り沢山でお届けします!

※エリート女子の記載について訂正しました(9月28日21時55分)。

text:Kei Tsuji

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