コース中盤に最大勾配19%の長距離山岳が設定されたジロ第11ステージ。鋭い終盤アタックを決めたリチャル・カラパス(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト)が、総合優勝した2019年以来となるステージ優勝を飾った。

サインするチッコーネ photo:RCS Sport 
肩を組むデルトロとアユソ photo:CorVos

スタート前にチームの垣根を越えてリラックスする選手たち photo:RCS Sport

ジロ・デ・イタリア2025第11ステージ コースプロフィール image:RCS Sport 逃げ切りか、それとも総合争い勃発か。コースレイアウトからではレース展開が予想できないステージを、ジロ・デ・イタリアは大会11日目に用意した。ヴィアレッジョを出発して80kmの平坦路を進み、まず臨むのは今大会最難関とも呼ばれる1級山岳アルペ・サン・ペッリグリーノ(距離13.7km/平均8.8%)だ。
最大勾配19%のこの登りを越えても、レースはまだ半分も終わっていない。約38kmの下りを経て2級山岳を越え、ラストに待つのは2級ピエトラ・ディ・ビスマントヴァ(距離5.8km/平均5.8%)。フィニッシュ地点はそこから5km。この区間には連続するコーナーや短いアップダウンが設定されており、テクニカルなフィナーレとなる。
全21日間で争われる大会の中間ステージに臨んだのは、マリアローザを纏ったイサーク・デルトロ(メキシコ、UAEチームエミレーツXRG)を含む171名の選手たち。前日に総合上位勢を苦しめた雨は上がり、この日は太陽が選手たちを照らす。そしてアクチュアルスタートを示す旗が振られると、ワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク)が勢いよく飛び出した。

序盤から激しいアタック合戦が、集団の平均スピードを上げた photo:RCS Sport
マリアチクラミーノ(ポイント賞ジャージ)を着るマッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック)も参戦した逃げを目指す動きは加熱を極めた。最初の1時間を平均スピード53km/hの驚異的なハイペースで進むなか、ジロのピンク色に染められた列車が見守るレースは、デルトロがアタックをマークする場面も。そして背の低い丘の登りでワウト・プールス(オランダ、XDSアスタナ)とウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ヴィスマ・リースアバイク)の2名がレース先頭に立った。
後続ではメイン集団から飛び出した35名程度の追走集団が形成される。その先頭でピーダスンとマティアス・ヴァチェク(チェコ、リドル・トレック)がハイペースに持ち込んだため、1級山岳の直前でプールスとケルデルマンを吸収。依然として速いペースのまま先頭集団は1級山岳アルペ・サン・ペッリグリーノ(距離13.7km/平均8.8%)に入り、1分12秒のリードを許したプロトンはUAEチームエミレーツXRGが先導した。

1級山岳の序盤に飛び出し、先頭で頂上を通過したロレンツォ・フォルトゥナート(イタリア、XDSアスタナ) photo:RCS Sport

UAEチームエミレーツXRGの先導で登っていくプロトン photo:RCS Sport
先頭では頂上まで10km以上を残した位置からロレンツォ・フォルトゥナート(イタリア、XDSアスタナ)がアタックする。第3ステージからマリアアッズーラ(山岳賞ジャージ)を着続けるフォルトゥナートは、事実上のフィニッシュ地点を目指し軽快に脚を回す。1分26秒後方のプロトンでは、前日の個人タイムトライアルで落車し、総合タイムを大きく失ったエガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)が仕掛けた。
しかし総合11位(2分33秒遅れ)につけるベルナルの動きをUAEは許さず、すぐに引き戻す。フォルトゥナートが観客にマリアアッズーラをアピールしながら1級山岳の頂上を通過。40ポイントを加算し、ランキング2位と102ポイントの大差をつけることに成功した。
登りで絞られた逃げ集団からは、下りでプールスら4名がフォルトゥナートに合流する。そこにはナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)も入り、残り距離80km地点でようやく5名による強力な逃げグループが形成された。
残り80km地点で形成された5名の逃げグループ
ペリョ・ビルバオ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス)
ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)
ルーク・プラップ(オーストラリア、ジェイコ・アルウラー)
ロレンツォ・フォルトゥナート(イタリア、XDSアスタナ)
ワウト・プールス(オランダ、XDSアスタナ)

レース中盤で形成された5名の逃げ集団 photo:RCS Sport

プロトンがリラックスペースに移行したため、逃げ切りが決まったかと思われた photo:RCS Sport
続く2級山岳もフォルトゥナートが先頭通過する頃に、プロトンとの差は2分43秒まで拡大する。この時点で残り距離は39.1km。先頭5名にステージ優勝が絞られたと思われたレースは一転、ここから激しい動きを見せた。
その要因となったのは総合8位のジュリオ・チッコーネ(イタリア)を要するリドル・トレックだった。マリアローザ擁するUAEが集団前方で人数を固めるなか、リドル・トレックのピーダスンがハイペースの牽引を開始し、逃げとの差を徐々に縮めていく。ボーナスタイムが与えられるレッドブルKM(残り23.6km)を過ぎた時点でリドルは1分20秒まで縮め、先行する逃げ集団と総合上位勢にプレッシャーをかけていった。

2級山岳の頂上手前でリドル・トレックがプロトンのペースアックを敢行 photo:RCS Sport
そしてピーダスンが残り12km地点で役割を終え、最終2級山岳ピエトラ・ディ・ビスマントヴァ(距離5.8km/平均5.8%)に入ると、今度はEFエデュケーション・イージーポストが牽引を始める。フィニッシュまで残り9km、頂上まで4.4km地点でプロトンが逃げを捉える直前にリチャル・カラパス(エクアドル)がアタック。この総合9位(2分10秒遅れ)の飛び出しを、先導するUAEは1度静観した。
しかしすぐにマリアローザのデルトロが自ら追走を開始する。この動きにアントニオ・ティベーリ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス)らも追従し、一時バラバラになったプロトンはすぐに1つにまとまる。その間もダンシングで踏み続けたカラパスは2級山岳の頂上を通過し、短い下りとフィニッシュまで続く平坦路へ。

最終2級山岳で仕掛けたリチャル・カラパス(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト) photo:RCS Sport
後続ではラファウ・マイカ(ポーランド、UAEチームエミレーツXRG)がライバルのアタックを抑制するハイペースを刻み、プロトンは沈静化する。2021年の東京五輪ロードレースで独走勝利を決めたカラパスは、ラスト1km地点で18秒のリードをキープ。そして白地にピンクのスペシャルジャージで参戦するEFのエースが、9.1kmの独走から勝利を手に入れた。

9.1kmの独走を決めたリチャル・カラパス(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト) photo:CorVos

6年ぶりとなる、ジロステージ優勝を飾ったリチャル・カラパス(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト) photo:CorVos
総合優勝した2019年大会の第14ステージ以来、実に6年振りのジロ区間優勝を飾ったカラパス。「僕らは終盤まで待ち、そして仕掛けた。1つ目の山岳から多くの選手たちが苦しむ、とても辛いステージだった。僕自身の調子はそれほど良くないなか、適切なタイミングで飛び出すことができた。最後はまるでタイムトライアルのようだったよ」と、総合でも6位に上がったカラパスは振り返った。
10秒遅れでやってきたプロトンは、デルトロがスプリントで先着しボーナスタイム6秒を加算。逃げ吸収のきっかけを作ったリドルのチッコーネが3位に入り、総合順位を7位に1つ上げている。

2位スプリントはマリアローザのイサーク・デルトロ(メキシコ、UAEチームエミレーツXRG)が制す photo:CorVos




最大勾配19%のこの登りを越えても、レースはまだ半分も終わっていない。約38kmの下りを経て2級山岳を越え、ラストに待つのは2級ピエトラ・ディ・ビスマントヴァ(距離5.8km/平均5.8%)。フィニッシュ地点はそこから5km。この区間には連続するコーナーや短いアップダウンが設定されており、テクニカルなフィナーレとなる。
全21日間で争われる大会の中間ステージに臨んだのは、マリアローザを纏ったイサーク・デルトロ(メキシコ、UAEチームエミレーツXRG)を含む171名の選手たち。前日に総合上位勢を苦しめた雨は上がり、この日は太陽が選手たちを照らす。そしてアクチュアルスタートを示す旗が振られると、ワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク)が勢いよく飛び出した。

マリアチクラミーノ(ポイント賞ジャージ)を着るマッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック)も参戦した逃げを目指す動きは加熱を極めた。最初の1時間を平均スピード53km/hの驚異的なハイペースで進むなか、ジロのピンク色に染められた列車が見守るレースは、デルトロがアタックをマークする場面も。そして背の低い丘の登りでワウト・プールス(オランダ、XDSアスタナ)とウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ヴィスマ・リースアバイク)の2名がレース先頭に立った。
後続ではメイン集団から飛び出した35名程度の追走集団が形成される。その先頭でピーダスンとマティアス・ヴァチェク(チェコ、リドル・トレック)がハイペースに持ち込んだため、1級山岳の直前でプールスとケルデルマンを吸収。依然として速いペースのまま先頭集団は1級山岳アルペ・サン・ペッリグリーノ(距離13.7km/平均8.8%)に入り、1分12秒のリードを許したプロトンはUAEチームエミレーツXRGが先導した。


先頭では頂上まで10km以上を残した位置からロレンツォ・フォルトゥナート(イタリア、XDSアスタナ)がアタックする。第3ステージからマリアアッズーラ(山岳賞ジャージ)を着続けるフォルトゥナートは、事実上のフィニッシュ地点を目指し軽快に脚を回す。1分26秒後方のプロトンでは、前日の個人タイムトライアルで落車し、総合タイムを大きく失ったエガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)が仕掛けた。
しかし総合11位(2分33秒遅れ)につけるベルナルの動きをUAEは許さず、すぐに引き戻す。フォルトゥナートが観客にマリアアッズーラをアピールしながら1級山岳の頂上を通過。40ポイントを加算し、ランキング2位と102ポイントの大差をつけることに成功した。
登りで絞られた逃げ集団からは、下りでプールスら4名がフォルトゥナートに合流する。そこにはナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)も入り、残り距離80km地点でようやく5名による強力な逃げグループが形成された。
残り80km地点で形成された5名の逃げグループ
ペリョ・ビルバオ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス)
ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)
ルーク・プラップ(オーストラリア、ジェイコ・アルウラー)
ロレンツォ・フォルトゥナート(イタリア、XDSアスタナ)
ワウト・プールス(オランダ、XDSアスタナ)


続く2級山岳もフォルトゥナートが先頭通過する頃に、プロトンとの差は2分43秒まで拡大する。この時点で残り距離は39.1km。先頭5名にステージ優勝が絞られたと思われたレースは一転、ここから激しい動きを見せた。
その要因となったのは総合8位のジュリオ・チッコーネ(イタリア)を要するリドル・トレックだった。マリアローザ擁するUAEが集団前方で人数を固めるなか、リドル・トレックのピーダスンがハイペースの牽引を開始し、逃げとの差を徐々に縮めていく。ボーナスタイムが与えられるレッドブルKM(残り23.6km)を過ぎた時点でリドルは1分20秒まで縮め、先行する逃げ集団と総合上位勢にプレッシャーをかけていった。

そしてピーダスンが残り12km地点で役割を終え、最終2級山岳ピエトラ・ディ・ビスマントヴァ(距離5.8km/平均5.8%)に入ると、今度はEFエデュケーション・イージーポストが牽引を始める。フィニッシュまで残り9km、頂上まで4.4km地点でプロトンが逃げを捉える直前にリチャル・カラパス(エクアドル)がアタック。この総合9位(2分10秒遅れ)の飛び出しを、先導するUAEは1度静観した。
しかしすぐにマリアローザのデルトロが自ら追走を開始する。この動きにアントニオ・ティベーリ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス)らも追従し、一時バラバラになったプロトンはすぐに1つにまとまる。その間もダンシングで踏み続けたカラパスは2級山岳の頂上を通過し、短い下りとフィニッシュまで続く平坦路へ。

後続ではラファウ・マイカ(ポーランド、UAEチームエミレーツXRG)がライバルのアタックを抑制するハイペースを刻み、プロトンは沈静化する。2021年の東京五輪ロードレースで独走勝利を決めたカラパスは、ラスト1km地点で18秒のリードをキープ。そして白地にピンクのスペシャルジャージで参戦するEFのエースが、9.1kmの独走から勝利を手に入れた。


総合優勝した2019年大会の第14ステージ以来、実に6年振りのジロ区間優勝を飾ったカラパス。「僕らは終盤まで待ち、そして仕掛けた。1つ目の山岳から多くの選手たちが苦しむ、とても辛いステージだった。僕自身の調子はそれほど良くないなか、適切なタイミングで飛び出すことができた。最後はまるでタイムトライアルのようだったよ」と、総合でも6位に上がったカラパスは振り返った。
10秒遅れでやってきたプロトンは、デルトロがスプリントで先着しボーナスタイム6秒を加算。逃げ吸収のきっかけを作ったリドルのチッコーネが3位に入り、総合順位を7位に1つ上げている。

ジロ・デ・イタリア2025第11ステージ結果
1位 | リチャル・カラパス(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト) | 4:35:20 |
2位 | イサーク・デルトロ(メキシコ、UAEチームエミレーツXRG) | +0:10 |
3位 | ジュリオ・チッコーネ(イタリア、リドル・トレック) | |
4位 | トーマス・ピドコック(イギリス、Q36.5プロサイクリング) | |
5位 | エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ) | |
6位 | アントニオ・ティベーリ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス) | |
7位 | フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツXRG) | |
8位 | エイネル・ルビオ(コロンビア、モビスター) | |
9位 | デレク・ジー(カナダ、イスラエル・プレミアテック) | |
10位 | ディエゴ・ウリッシ(イタリア、XDSアスタナ) | |
12位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) |
マリアローザ 個人総合成績
1位 | イサーク・デルトロ(メキシコ、UAEチームエミレーツXRG) | 38:47:01 |
2位 | フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツXRG) | +0:31 |
3位 | アントニオ・ティベーリ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス) | +1:07 |
4位 | サイモン・イェーツ(イギリス、ヴィスマ・リースアバイク) | +1:09 |
5位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) | +1:24 |
6位 | リチャル・カラパス(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト) | +1:56 |
7位 | ジュリオ・チッコーネ(イタリア、リドル・トレック) | +2:09 |
8位 | ブランドン・マクナルティ(アメリカ、UAEチームエミレーツXRG) | +2:16 |
9位 | アダム・イェーツ(イギリス、UAEチームエミレーツXRG) | +2:33 |
10位 | テイメン・アレンスマン(オランダ、イネオス・グレナディアーズ) |
マリアチクラミーノ(ポイント賞)
1位 | マッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック) | 153pts |
2位 | アレッサンドロ・トネッリ(イタリア、ポルティ・ビジットマルタ) | 64pts |
3位 | オラフ・コーイ(オランダ、ヴィスマ・リースアバイク) | 55pts |
マリアアッズーラ(山岳賞)
1位 | ロレンツォ・フォルトゥナート(イタリア、XDSアスタナ) | 156pts |
2位 | フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツXRG) | 54pts |
3位 | ポール・ダブル(イギリス、ジェイコ・アルウラー) | 36pts |
マリアビアンカ(ヤングライダー賞)
1位 | イサーク・デルトロ(メキシコ、UAEチームエミレーツXRG) | 38:47:01 |
2位 | フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツXRG) | +0:31 |
3位 | アントニオ・ティベーリ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス) | +1:07 |
チーム総合成績
1位 | UAEチームエミレーツXRG | 116:17:15 |
2位 | バーレーン・ヴィクトリアス | +20:30 |
3位 | リドル・トレック | +22:11 |
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos, RCS Sport
photo:CorVos, RCS Sport
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